弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     一、 原判決を次のとおり変更する。
     被控訴人は控訴人に対し金七拾五万円及びうち金六拾万円に対する昭和
四拾五年九月弐日以降右金員完済に至るまでの年五分の割合による金員を支払え。
     控訴人のその余の請求を棄却する。
     二、 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
     三、 この判決は控訴人勝訴の部分に限り、仮に執行することができ
る。
         事    実
 控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人は控訴人に対し金七五万円及びこれ
に対する昭和四五年九月二日以降右完済に至るまでの年五分の割合による金員を支
払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との旨の判決及び仮執
行の宣言を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の主張及び証拠の関係は、控訴代理人において、甲第五号証
及び第六号証の一ないし三を提出し、甲第六号証の一は、昭和四八年一〇月一日控
訴代理人が被控訴人所有の店舗建物を撮影した写真、同号証の二及び三は、同年一
二月三日控訴代理人が、訴外株式会社高野商事の事務所兼店舗を撮影した写真であ
るが、現在右建物は貸家に改造されて他に賃貸されているものであると付陳し、当
審における控訴人及び被控訴人本人尋問の結果を援用し、被控訴代理人において、
当審における被控訴人本人尋問の結果を援用し、上記甲第五号証の成立及び第六号
証の一ないし三が控訴人説明のとおりの写真であることを認めたことを付加するほ
かは、原判決事実摘示と同一である。
         理    由
 一、 控訴人が昭和四三年四月三〇日訴外株式会社高野商事(以下訴外会社とい
う。)の取締役になつたことおよび控訴人が同年六月頃訴外会社に対して金一〇〇
万円を交付したことは、当事者間に争いがない。
 二、 控訴人は、訴外会社に対し右金一〇〇万円を貸付けたものであるところ、
昭和四五年九月一日訴外会社との間において、右金一〇〇万円のうち金六〇万円を
目的として準消費貸借契約を締結し、被控訴人は訴外会社の右債務を保証した旨主
張するので、この点について判断する。
 成立に争いのない甲第一、第二号証、第四、第五号証及び乙第一ないし第四号
証、原本の存在および成立につき争いのない甲第三号証、原審証人A及び同Bの各
証言(但しいずれも後記措信しない部分を除く。)原審および当審における控訴人
本人尋問の結果、当審における被控訴人本人尋問の結果(但し後記措信しない部分
を除く。)並びに弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。
 被控訴人は訴外C及び同Aとともに昭和四三年二月一四日株式会社高野商事を設
立し、食糧品、衣料および雑貨の販売業を営んでいたが、右CおよびAは、殆んど
訴外会社の経営に関与することなく、被控訴人がこれに当つていたところ、同年四
月頃Aが訴外会社の取締役を辞任するに当り、同人および被控訴人の要請により、
控訴人が新たに訴外会社取締役に就任することとなり、同年四月三〇日その旨の登
記がなされたのであるが、控訴人も殆んど訴外会社の経営に関与せず、引続き被控
訴人がこれに当つてきたこと、然し訴外会社の経営が次第に苦しくなつて行つたた
め、控訴人は同年六月頃被控訴人の求めに応じて訴外会社に対し金一〇〇万円を利
息日歩二銭五厘で弁済期の定めなく貸与し、同会社はこれを営業資金として使用し
たが、依然として同会社の業績は好転することなく、遂に同会社は同年九月頃店舗
を閉鎖し同年一〇月頃には従業員も解雇し、事実上消滅するに至つたのであるが、
これより先同年八月末頃、控訴人は被控訴人に対し訴外会社取締役の辞任を申出た
ところから、控訴人と被控訴人との間において、前記金一〇〇万円が控訴人の訴外
会社に対する貸付金であるか出資金であるかにつき争が生じ、結局同年九月一日、
控訴人と訴外会社の代表者としての被控訴人との間において、右金一〇〇万円のう
ち金六〇万円を元金とし、弁済期昭和四五年九月一日、弁済期までの利息合計金一
五万円とする準消費貸借が成立し、かつ、被控訴人は個人として訴外会社の右債務
につき保証をしたこと、およそ以上の事実が認められる。原審証人A及び同Bの各
証言並びに当審における被控訴人本人尋問の結果のうち上記認定と牴触する部分は
原審および当審における控訴人本人尋問の結果と対比してたやすく措信することが
できず、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。
 三、 被控訴人は、控訴人と訴外会社との間における金一〇〇万円の金銭消費貸
借および右に認定した金六〇万円の準消費貸借は、いずれも商法第二六五条に規定
する会社と取締役間の取引に該当するところ、右各取引については訴外会社取締役
会の承認を得ていないので無効であり、従つて被控訴人の保証債務も存在しない旨
主張する。然しながら、前顕乙第一ないし第四号証、原審証人Bおよび同Aの各証
言、原審および当審における控訴人本人尋問の結果、当審における被控訴人本人尋
問の結果(但し後記措信しない部分を除く。)並びに弁論の全趣旨を総合すると、
訴外会社は、登記簿上昭和四三年二月一四日に設立された株式会社であるが、その
財産的基礎は、設立に当つて訴外Cおよび同Aが各金一〇〇万円を出資したほかは
すべて被控訴人の出資に依存しており、その経営についても、当初右CおよびAが
取締役に就任したが間もなく辞任し、これに代つて控訴人が取締役に就任したもの
の、営業の実権は設立以来代表取締役であつた被控訴人がこれを掌握しており、同
人の妻訴外Dも当初は監査役に、後に取締役の一員となつたが、これまた名目だけ
であり、また株券も発行されておらず、株主総会或は取締役会も実際上開催された
ことはなく、単に書類上議事録が作成されるにとどまり、諸事すべて専ら被控訴人
の個人的判断に基いて処理されているという状況であつたことが認められる。当審
における被控訴人本人尋問の結果のうち上記認定と牴触する部分は、前顕B証人お
よびA証人の各証書並びに控訴人本人尋問の結果と対比してたやすく措信すること
ができず、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。
 <要旨>右認定の事実によれば、訴外会社は形式上株式会社ではあるが、その実質
は被控訴人の個人企業に外ならないのであつて、さきに認定したとおりの経
過で成立した控訴人と訴外会社間の金一〇〇万円の消費貸借および金六〇万円の準
消費貸借につき、商法第二六五条の規定を根拠としてこれを無効とする被控訴人の
主張は、信義則上許されないものといわなければならない。さらに、前顕甲第一号
証及び乙第一号証によれば、前認定の準消費貸借が成立した昭和四三年九月一日当
時(控訴人が訴外会社に金一〇〇万円を貸付けた同年六月当時も同様である。)に
おける訴外会社の取締役は、被控訴人、同人妻Dおよび控訴人の三名であつたとこ
ろ、被控訴人と控訴人が立会の上で右準消費貸借契約が締結されたことが明かであ
つて、被控訴人の妻Dが右契約締結に反対する特段の事情があつたとも認められな
いので、右契約締結については実質上訴外会社取締役会の承認があつたとも言うこ
とができないわけではなく、いずれにしでも被控訴人の前記主張はこれを採用する
ことができない。
 してみれば控訴人の本訴請求は、金七五万円およびうち金六〇万円に対する昭和
四五年九月二日以降右完済に至るまでの年五分の割合による遅延損害金の支払を求
める限度において正当として認容すべく、その余は失当として棄却すべきである。
 四、 よつて、右と結論を異にする原判決は一部不当であるから、民事訴訟法第
三八四条第一項及び第三八六条の規定によつて原判決を変更すべく訴訟費用の負担
につき同法第九六条及び第九二条但書、仮執行の宣言につき同法第一九六条の規定
を適用し、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 平賀健太 裁判官 安達昌彦 裁判官 後藤文彦)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛