弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
原判決及び第1審判決を破棄する。
本件を大阪地方裁判所に差し戻す。
理由
検察官の上告趣意は,判例違反をいう点を含め,実質は事実誤認の主張であっ
て,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
しかしながら,所論にかんがみ職権をもって調査すると,原判決は,刑訴法41
1条3号により破棄を免れない。その理由は,以下のとおりである。
1本件公訴事実の要旨は,「被告人は,暴力団五代目A組若頭補佐兼B会総長
であるが,第1同会幹部兼C会会長補佐DことEと共謀の上,法定の除外事由が
ないのに,平成9年9月20日午前10時40分ころ,大阪市北区d所在のVホテ
ル南側出入口前通路上において,口径0.38インチ回転弾倉式けん銃1丁を,こ
れに適合する実包10発と共に携帯して所持し第2同会幹部兼C会会長補佐F
と共謀の上,法定の除外事由がないのに,上記日時場所において,口径0.38イ
ンチ回転弾倉式けん銃1丁を,これに適合する実包10発と共に携帯して所持し
た」というものである。
第1審判決は,E(以下「E」という。)及びF(以下「F」という。)が,被
告人を警護する役目のボディーガードであって,このようなEらが被告人を警護す
るために本件けん銃等を所持していることを被告人としても概括的にせよ確定的に
認識しながら,それを当然のこととして受け入れて認容し,同人らもこれを承知し
ていたと推認されるのであれば,被告人とE及びFとの間にけん銃等の所持に関す
る黙示的な意思の連絡があったものと認められるが,本件では,全証拠を総合して
も,被告人において,E及びFがけん銃等を携行して警護しているものと概括的に
せよ確定的に認識しながら,それを受け入れて容認していたとするにはいまだ合理
的な疑いが残るとして無罪を言い渡した。これに対し,検察官が事実誤認を理由に
控訴したが,原判決は,被告人を無罪とした第1審判決に事実の誤認はないとし
て,検察官の控訴を棄却した。
その理由の要旨は,次のとおりである。すなわち,原判決は,E及びFは,暴力
団G会関係者による襲撃から被告人を警護するため,本件けん銃等を所持した上,
A組総本部における定例の幹部会に出席するため阪神地区に向かった被告人に,そ
の秘書役のH及び総長付きのIと共にJR浜松駅から同行し,同駅から新幹線を利
用して新神戸駅に着くまでの間や,その後,同駅からA組総本部に向かうまでの
間,被告人の身近に随行し,あるいは被告人の乗車した車を別の車に乗って追従
し,Vホテル(以下「本件ホテル」という。)においては,被告人と同じ階の部屋
に宿泊して,本件当日も本件ホテルロビーで逮捕されるまでの間,被告人らと行動
を共にしていたことは明らかであるとした。その上で,原判決は,ア被告人が,
G会関係者からB会が攻撃を受ける可能性はさほどではなく,特段の警護をするま
でのことはないと考えていたとしても不自然ではない状況にあった,イB会本部
事務所付近における警戒態勢が平成9年9月1日以降特に厳重なものであったとは
認められない,ウ本件前日の同月19日のJR浜松駅から本件ホテル到着までの
警護状況につき,EやFの立場は被告人の警護役専門ではなく,荷物持ちとしての
役割の方が大きいとみる余地が多分にある,エ本件ホテルにおいて,被告人らB
会関係者の警護の程度は,同じ階に宿泊していた暴力団A組系J会関係者の警護,
警戒の状況と比べると格段に低かった,オ本件直前,ホテルロビーにおいて,被
告人は集団の中心付近ではなく,その最前列を歩いており,警察官が職務質問のた
めに被告人に接近しても,Eらは,これを制止するなどの行動に出た形跡がうかが
われない,カA組若頭補佐のK及びLについてけん銃等所持の共謀共同正犯が認
定された同人らに係る各銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件と異なり,B会で
は,けん銃を所持するなどした組長の警護組織の存在がみられないなどとした。そ
して,原判決は,被告人がEらのけん銃等所持についての共同正犯としての責任を
負うには,被告人において,E及びFが本件けん銃等を所持していたことについて
概括的にせよ確定的に認識していたことを認めるに足りる証拠が必要であるとこ
ろ,前記アないしカの諸点に照らすと,関係証拠によってもそのような認識が被告
人にあったことが認められるような事実は存せず,被告人において,E及びFがけ
ん銃等を携行して警護しているものと概括的にせよ確定的に認識しながら,これを
受け入れて容認していたとするには合理的な疑いが残るとして,本件公訴事実の証
明がないとし,被告人を無罪とした第1審判決に事実の誤認はないというものであ
る。
2しかしながら,検察官主張の各間接事実に関する原判決の認定評価等は,以
下に述べるとおり,著しく合理性を欠き,是認することができない。その理由は,
次のとおりである。
⑴G会関係者からの襲撃に関する被告人の認識について
原判決は,本件当時,被告人が,G会関係者からB会が攻撃を受ける可能性はさ
ほどではなく,特段の警護をするまでのことはないと考えていたとしても不自然で
はない状況にあったとする第1審判決の判断に誤りはないという。
しかしながら,本件当時の平成9年9月20日ころは,A組若頭MがG会傘下組
員の襲撃を受けてけん銃で射殺され,これにより同組若頭補佐であったN(以下
「N」という。)が絶縁処分(破門処分よりも厳しい処分であって,将来A組への
復帰が困難となる処分である。)とされてから日も浅い上,B会を含むA組関係者
によるG会関係先への発砲事件が頻発し,本件前日の同月19日にはG会O組P組
相談役がけん銃で射殺される事件まで起き,平時とは異なる状況下にあったという
べきであり,被告人も,当時の新聞,雑誌等の報道により,これらの情勢を把握し
ていたものと認められる。そして,このような状況のもとでは,G会からの反撃も
十分に予想され,Nの絶縁処分にかかわったA組執行部構成員である被告人らに対
して,G会関係者による襲撃の危険があると考えることが自然な状況にあったので
あり,後記⑵で述べるとおり,現にB会本部事務所及び被告人の自宅の警戒も強化
されていたことにもかんがみると,被告人も同様の認識を有していたものと認める
のが相当である。
原判決は,アNが絶縁処分に対して反発し何らかの行動を起こそうとしたとう
かがわれる事情は認められず,A組関係者の発砲事件に対し,G会関係者が再報復
として起こした事件は1件もない,イA組執行部は,傘下組織に対し,G会への
報復を禁止する旨の通達や指示を出しており,被告人は,Nが組員に対し,A組か
ら何をされようが耐えよと言った旨の情報を持っていたという。しかし,Nが行動
を起こそうとしていたか否かは明らかでない上,当時はいまだ事件から日が浅く,
情勢はなお流動的であったと解され,G会関係者からの再報復である事件がそれま
でに発生していなかったからといって,その後も発生しないと予測されるような状
況にあったとはいい難く,後記⑵で述べるように,現にB会本部事務所や被告人の
自宅の警戒を強化している事実からすると,上記アの事実は,被告人の認識に関す
る前記認定を左右するものとはいえない。また,上記イのG会への報復を禁止する
旨の通達や指示が出されていたとかNの耐えよとの指示があったとかいう点につい
ては,いずれもその真偽は定かではなく,報復に関しては,現にこれに反して,M
襲撃事件から本件発生の日までにB会を含むA組関係者による19件もの発砲事件
が起きている。そして,Eらは,被告人を警護すべく,けん銃をいつでも発射でき
る状態で携帯所持した上,被告人に随行していたものであり,その理由は,正に被
告人がG会関係者から襲撃を受ける危険があると考えたことにあると認められ,同
じ機会にJ会が,G会関係者からの襲撃を危ぐして,配下組員がけん銃を適合実包
と共に携帯所持して組長の警護に当たっていたことも併せ考慮すると,独り被告人
のみが,そのような危険はなく,特段の警護をするまでのことはないと判断してい
たとしても不自然ではないという原判決の評価は,不合理なものというほかはな
い。
⑵B会本部事務所及び被告人の自宅の警戒強化について
原判決は,B会本部事務所付近における警戒態勢が平成9年9月1日以降特に厳
重なものであったとは認められないとした第1審判決の判断に誤りがあるとはいえ
ないという。
しかしながら,第1審公判で,Q警察官は,少なくとも相当回数の視察を行った
結果として「B会本部事務所付近の駐車場や被告人方付近の宅地造成地に,複数名
のB会関係者の乗車した車両が駐車され,警戒していた」旨の証言をしていること
が明らかであり,G会関係者による襲撃の危険性が少なくなるなど状況に変化がな
い以上,同様の警戒態勢を一定期間取り続けることは自然なことであり,現に同月
19日,翌20日の本件時には,被告人を警護するためEらはいつでもけん銃を発
射できる状態で携帯所持し被告人に随行していたことに照らしても,同月4日以降
は警戒態勢が敷かれていなかったというのは考え難く,B会本部事務所等の警戒が
強化されていたとのQ警察官らの証言の基本的部分の信用性を否定する理由はない
ものと思われる。そうすると,同月1日以降,B会本部事務所や被告人の自宅付近
で,B会関係者による警戒態勢が強化されていた旨を否定する原判断は,相当では
ない。
⑶JR浜松駅から本件ホテルに至るまでの被告人に対する警護について
関係証拠によれば,被告人は,A組総本部で開かれる幹部会に出席するため,秘
書役のH,総長付きのIに加え,当時荷物持ちなどの役割を果たしていたRやSで
はなく,B会若頭補佐のE及びFを同行させたものであり,しかもそれら随行者の
様子を見ても,JR浜松駅及び名古屋駅で被告人らがホームや階段,エスカレータ
ー等を通行する様子が録画されたビデオテープには,けん銃を携帯所持したE及び
Fの両名又はうち1名が,常に被告人の身辺に随行している光景が映っており,加
えて周囲を見るなど安全を確認している状況もうかがわれるとともに,被告人がエ
スカレーターを使用する際も随行者のうちの1人は常に非常時に動きの取りやすい
階段を使用していることなども認められ,E,Fらによる被告人に対する厳重な警
護が行われていたものと認められる。そして,Fの証言からも認められるように,
同人らは被告人がG会関係者から襲撃された場合に被告人を守るためにけん銃等を
携帯所持して同行したものであって,ひかり41号車内,あるいはA組総本部から
本件ホテルへの移動に際しても,特段の事情のない限り,駅ホームなどと同様の,
あるいはこれに準じた警護態勢が取られていたことが推認されるというべきであ
り,被告人もこれら眼前の警護状況を当然のことながら認識していたものと認めら
れる。
これらに関し,原判決は,ア新幹線駅ホーム等に設置された監視カメラによる
映像は被告人らが駅構内にいた短時間の限られた場所における行動を対象にしたも
のにすぎず,それ以外の時刻,場所における被告人らの一連の行動は,被告人らの
供述によるほかなく,また,E及びFの立場は,警護役専門ではなく荷物持ちとし
ての役割の方が大きいとみる余地が多分にある,イひかり41号車内での警護状
況につき,被告人が乗車したグリーン車2階席に通じる階段付近に配下組員が立つ
などして監視していたとの事実を認めるに足りるものはない,ウ被告人は,A組
総本部を出た後,本件ホテルに到着する前に車を降り,L,Tと共に,ふぐ料理店
「W」で食事を取った後に同ホテルに入ったか,少なくとも同ホテルに直行するこ
となく,一時別の場所にいたことがうかがわれ,その間,E及びFが被告人に付き
従っていたことを認めるに足りる証拠はないから,被告人は,その間,Eらの警護
を受けていなかったものといえるなどという。
しかしながら,上記ア及びイについてみると,新幹線駅における監視カメラの映
像におけるEらの行動は,先に述べたとおり,その動きやE,Fのけん銃等を携帯
所持した同行の目的からして,明らかに警護態勢と認めるべきものであり,荷物持
ちとしての役割が大きいという点も,そうであれば,Eらを同行させる必要はない
上,監視カメラの映像などをみても,Hらに加え,わざわざEら2名が随行するま
での荷物があったとも認められない。また,Eらが荷物を持つ場合があったとして
も,護衛としての行動に支障が生じるようなものであったとは認められない。そし
て,新幹線車内を含め監視カメラの映像以外の場所においても,襲撃を受ける危険
性について事情が異なるとはいえない上,けん銃をいつでも発射できる状態で携帯
所持して被告人の警護に当たっていたEらが,新幹線乗車後,あるいは監視カメラ
の映像以外の場所では被告人の警護をすることなく,被告人を無防備の状態に置い
たとは考えられないから,駅ホームなどにおけるのと同様の警護態勢が取られてい
たと推認すべきである。また,上記ウについても,前記JR浜松駅や名古屋駅での
警護状況に照らし,G会の地盤である京阪神に入ったにもかかわらず,被告人の警
護に当たっていたEらが,被告人の飲食時は警護をしなかったとは考え難く,仮に
本件ホテルに到着する前に一時別の場所に立ち寄ったとしても,特段の事情がない
限りは,被告人に随行し,それまでと同様の,あるいはこれに準じた警護態勢を取
っていたものと推認すべきものである上,ふぐ料理店「W」での飲食については,
第1審判決が説示するように,これを認めることはできないというべきである。原
判決の説示は不合理で,是認できない。
⑷被告人の本件ホテル滞在中の警護態勢について
関係証拠によれば,本件ホテル滞在中の被告人の宿泊部屋は,配下組員の部屋に
囲まれ警護しやすい配置となっており,また,本件前日夕方から本件当日朝にかけ
て,B会ないしJ会の配下組員が宿泊客用エレベーターのホールなどに立ち,それ
とともに廊下を通行する人物を廊下の左右の部屋からのぞいて確認するなどしてい
たことが認められ,その他チェックアウト時までのB会関係者のホテルからの外出
状況にもかんがみると,被告人の配下組員は,被告人を警護する態勢を整え,午後
6時ころのチェックイン後,継続的に監視の目を光らせ,その警護に当たっていた
ことが明らかである。
原判決は,アB会,J会関係者において,意図的に不審者を警戒しやすい巧妙
な部屋割りの配置にしたとはいえない,イJ会のLとは異なり,a被告人は長
時間マッサージを受け,その間,ドアには施錠がされず,すき間が空く状態にして
あった,b本件当日朝,被告人は朝食のルームサービスを受けたが,従業員を直
接部屋内に招じ入れている,c本件ホテルの宿泊者名簿にJ会関係者ではLの実
名の記載がないのに比べ,B会関係者では被告人の実名が記載されていたことなど
から,J会の警護,警戒の状況に比べB会関係者の警護の程度は格段に低いなどと
して,宿泊時の状況からは,被告人は,配下組員が自分を厳重に警護していること
を確定的に認識していたと認めるには至らないという。
しかしながら,B会関係者の宿泊室の1つが当初予定された2801号室から被
告人の宿泊した2811号室に近い2814号室へ変更されたのは,Iが部屋替え
を申し出たことによるものと認められ,しかも先に述べた,配下組員が宿泊客用エ
レベーターのホールなどに立ち,あるいはホテル従業員が業務用エレベーターを利
用してバックサイドから客室部分の廊下に入って来た際も含め,廊下を通行する人
物を部屋からのぞいて確認していたなどの状況に照らすと,部屋の配置も意識して
なされたものとみるのが自然である。また,マッサージサービスの間施錠がしてい
なかったり,ルームサービスの従業員を部屋に招じ入れたりしても,上記に述べた
警護状況のほか,例えば,ルームサービスの際には被告人の客室内には複数の配下
組員がいたなどの状況に照らすと,十分な警護態勢が取られていたというべきであ
って,B会関係者の警護の程度がJ会のそれに比べ格段に低いとはいえない。さら
に,宿泊者名簿に被告人の実名が記載されたことについては,それが直ちにG会関
係者からの襲撃の危険性を増幅させるものであるのか疑問である上,いずれにして
も被告人の警護態勢に関する認識等についての認定を左右するまでの事情とも解さ
れない。また,確かにJ会のLとの間で警護の程度に違いはあるにしても,両会と
も2名の配下組員がけん銃をいつでも発射できる状態で携帯所持して警護していた
という,それ自体厳重な警護というべき態勢が基本的に変わるものではない。本件
ホテル宿泊中,被告人に対する警護が継続的かつ厳重に行われていたといえるとと
もに,被告人も,眼前におけるこのような配下組員の警護の状況を認識していたも
のと解される。
⑸本件当日における本件ホテルロビーでの警護態勢について
関係証拠によれば,被告人は,本件直前に,ホテル客室からH,E,Fらと共に
宿泊客用エレベーターに乗って1階に降りたこと,本件ホテルロビーを南側出入口
に向け進むときは,けん銃をいつでも発射可能な状態で携帯所持したE,Fが被告
人に近接した位置におり,しかも10名を超す集団で移動する状況にあったことが
認められる。
原判決は,被告人はホテルロビーにおいて集団の中心付近ではなく,その最前列
を歩いていたこと,警察官のUが職務質問のために被告人に接近しても,E及びF
はもとよりJ会関係者においても,これに気付かず,Uの接近を阻止するなどの行
動に出た形跡がうかがわれないことから,被告人に対する警護状況はさほど厳重な
ものではなかったなどという。
しかしながら,仮に被告人が集団の最前列を歩いていたとしても,ホテルロビー
を配下組員を含む多人数で一団となって歩き,けん銃をいつでも発射可能な状態で
携帯所持した配下組員2名が,一団に接近する者の有無,その状況を警戒しなが
ら,危急の場合に防御や反撃ができる程度に被告人に近接した位置にいれば,その
警護に必ずしも支障があるともいえない。また,警察官のUは,職務質問を開始す
るに際し,暴力団組員と間違われてけん銃で撃たれることがないように警察官であ
ることを明示する略帽を歩きながらかぶったというのであり,警護の配下組員も,
組長の生命,身体をねらう危険かつ不穏な動きでなければ,制止のための行動に出
ないことは何ら不可解なことではないから,指摘の事情が被告人に対する警護状況
が厳重でなかったことを示すものと評価するのは適切ではない。
⑹組長の警護組織の有無について
原判決は,A組若頭補佐のK及びLに係る各銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事
件においては,けん銃等を所持するなどした組長の警護組織が認められるのに対
し,本件ではそのような警護組織がみられないのであって,このことは被告人の本
件共謀の存否を判断する上で上記両事件と重大な違いがあるという。
しかしながら,このような専従の警護組織を作るかどうかは,当該組織の規模,
従前の経緯のほか,組長や幹部の考え方といった種々の事情に左右される事柄であ
り,そのような専従の警護組織があれば共謀が認められやすいとはいえても,それ
が認められないからといって,共謀の認定を直接左右するまでの事情になるものと
は考え難い。そして,現実に行われたB会とJ会の警護態勢を比較しても,随行者
数はほぼ同数であり,実包を装てんしたけん銃を携帯所持していた者はいずれも2
名であって,B会の警護態勢はJ会のそれと比べてさほどそん色のあるものではな
いということができる。原判決の評価は当たらない。
⑺そうすると,前記⑴ないし⑹に述べた検察官主張の各間接事実に関する原判
決の認定評価等及び第1審判決におけるこれと同旨の認定評価等に係る部分は,是
認することができない。そして,前記⑴ないし⑹で述べたところによれば,B会幹
部であるEとFは,JR浜松駅から本件ホテルロビーに至るまでの間,G会からの
けん銃による襲撃に備えてけん銃等を所持しB会総長である被告人の警護に当たっ
ていたものであるところ,被告人もそのようなけん銃による襲撃の危険性を十分に
認識し,これに対応するため配下のE,Fらを同行させて警護に当たらせていたも
のと認められるのであり,このような状況のもとにおいては,他に特段の事情がな
い限り,被告人においても,E,Fがけん銃を所持していることを認識した上で,
それを当然のこととして受け入れて認容していたものと推認するのが相当である。
けん銃等の所持の共謀が認められないとした第1審判決及びこれを是認した原判決
には,重大な事実誤認の疑いがある。
3以上によれば,本件公訴事実の証明がないとして被告人を無罪とした第1審
判決及びこれに事実の誤認はないとして是認した原判決は,間接事実の認定評価等
を誤り,ひいて重大な事実誤認をした疑いがあるというべきである。そして,これ
が判決に影響を及ぼすことは明らかであって,第1審判決及びこれを是認した原判
決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。
よって,刑訴法411条3号により原判決及び第1審判決を破棄し,同法413
条本文に従い,本件を大阪地方裁判所に差し戻すこととし,裁判官全員一致の意見
で,主文のとおり判決する。
検察官八幡雄治公判出席
(裁判長裁判官中川了滋裁判官今井功裁判官古田佑紀裁判官
竹内行夫)

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