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平成25年1月22日判決言渡し
平成24年(行コ)第177号各国籍確認請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成22年(行ウ)第38号等)
主文
1本件控訴をいずれも棄却する。
2控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決中,控訴人らに係る部分をいずれも取り消す。
2控訴人らがそれぞれ日本国籍を有することを確認する。
第2事案の概要
1(1)本件は,日本国籍を有する父とフィリピン共和国(以下「フィリピン」
という。)の国籍を有する母との間の嫡出子としてフィリピン国内で出生し,
フィリピン国籍を有する控訴人ら18名及び1審原告ら9名の合計27名が,
出生後3か月以内に父母等による日本国籍を留保する旨の意思表示がされな
かったことにより,国籍法12条に基づき出生の時にさかのぼって日本国籍
を失ったものとされたところ,同条は日本国憲法(以下「憲法」という。)
13条及び14条1項に違反する無効なものであるとして,それぞれ日本国
籍を有することの確認を求めた事案である。
また,1審原告Aは,予備的に,国籍法12条が無効でないとしても,同
法17条1項に基づく国籍取得の届出を有効に行ったから日本国籍を取得し
たと主張した。
(2)原審は,①国籍法12条の立法目的が,実効性のない形骸化した日本国
籍の発生防止及び重国籍の発生防止・解消にあるところ,この立法目的には
合理性が認められる上,同条に関する「出生地による区別」(原判決5頁6
行目参照),「国籍留保の意思表示の有無による区別」(同10行目参照)
及び「出生後に認知を受けた非嫡出子との区別」(同15行目参照)はいず
れも立法目的との合理的関連性が認められるから,憲法14条に違反すると
はいえない,②憲法13条により保障されている権利ないし利益を国籍法1
2条が侵害しているということもできないとして,控訴人ら及び1審原告ら
(1審原告Aを除く。)の本訴請求を棄却したが,1審原告Aの本訴請求に
ついては,予備的主張を採用して認容した。
これについて,控訴人ら18名及び1審原告らのうち5名が控訴したもの
の,その後,控訴した1審原告ら5名は,控訴を取り下げた。
2関係法令等,争いのない事実,争点及びこれについての当事者の主張の要旨
は,次項において,当審における控訴人Bの予備的主張及びこれに対する被控
訴人の主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の第2の1,2
(1),3(1)(2)及び4(原判決別紙「当事者の主張の要旨」記載のうち第1及
び第2)に記載するとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決35
頁24行目の「欠く」の次に「。」を加える。)。
3当審における控訴人Bの予備的主張(以下「本件予備的主張」という。)
(1)仮に,国籍法12条が違憲無効ではないとしても,控訴人Bは,以下の
理由により,日本国籍を有している。すなわち,控訴人Bの父であるCが,
控訴人Bの出生日から3か月以内に国籍法12条,戸籍法104条1項所定
の国籍留保の届出(以下「留保届」という。)をすることができなかったの
は,同条3項所定の「天災その他第一項に規定する者の責めに帰することが
できない事由」(以下「障害事由」という。)があったからであり,Cは,
その後,届出をすることができるに至った時から14日以内に留保届をして
いるから,控訴人Bは日本国籍を保持しているというべきである。
(2)Cの留保届に関する経緯は,以下のとおりである。
ア日本人であるCは,フィリピンにおいて,Dとの間に4人の婚外子をも
うけた後,平成9年▲月▲日,同国の方式によりDと婚姻した。Dが控
訴人Bを妊娠している同年10月末ころ,Cは,在マニラ日本大使館に赴
き,担当者のEに対し,Dとの婚姻届,控訴人Bの兄姉の認知届及び出生
予定の控訴人Bの出生届について相談した。
Cは,Eから,婚姻届と認知届について,「大使館に提出すると外務省
と法務省を経由して時間を要するので,もし近々,日本に帰国する予定が
あるなら,本籍地である○区に届け出てはどうか。」との指導を受けた。
当時,  ○   銀行に勤務していたCは,大蔵省及び日本輸出入銀行か
ら,同年12月に日本で開催されるセミナーの講師を要請されていたため,
Eの指導に従うこととし,「12月ころ,日本に出張する予定があるので,
その際,○区に届を提出する。」と同人に回答した。
また,Cは,Eから,出生届について,「認知届のように出生届を作成
して,出生証明書の翻訳を添付して,出張を利用して○区に提出してほ
しい。」と言われ,出生届の用紙を受領した。しかし,Eは,出張が出生
後3か月を経過した後になる場合についての指示説明をせず,出生後3か
月以内に留保届を提出しなければ日本国籍を喪失することになるとは説明
しなかった。そこで,Cは,国外で子が出生した場合に出生届の届出期間
が3か月であることは知っていたものの,日本国内では届出期間を経過し
ても出生届が受理されることや,何らの罰則が科されることもないことな
どから,Eの指示どおりに日本で提出すればよいと信じて疑わなかった。
イDは,平成▲年▲月▲日,フィリピンにおいて,Cとの間の子である控
訴人Bを出産した。
しかし,Cが参加する予定であった前記セミナーの日程が平成10年2
月23日ないし24日に変更されたために,Cの日本への帰国も同月17
日となった。そして,Cは,当時,通常の業務に加えて帰国に向けた資料
作成等に忙殺されていたため,控訴人Bの出生後3か月という期限にまで
は考えが至らず,ただ,Eの「日本で提出すればよい」との指示説明の内
容を信じて疑わず,日本に帰国した際に控訴人Bに係る出生届を提出すれ
ば足りるものと思い込んでいたのである。
ウCは,平成10年2月17日に日本に帰国し,翌18日に○区役所に
赴き,Dとの婚姻届,控訴人Bの兄姉に係る認知届4通及び控訴人Bの出
生届を提出した。その際,Cは,同区役所の担当者から出生届を返還され
た上で,控訴人Bについても認知届を提出するよう求められたため,その
指示に従い認知届を提出した。
しかし,Cが同月26日に同区役所○出張所で戸籍謄本を取得して確
認したところ,控訴人Bが戸籍に記載されていなかったことから,Cは,
直ちに同区役所の窓口で質問したところ,担当者から,控訴人Bが国籍を
喪失したことを知らされたのである。
(3)国籍法12条所定の国籍喪失制度は,一般に周知されておらず,むしろ,
大多数の日本人は,出生の事実のみによって当然に日本国籍を取得し,これ
を保持するものと考えている。そして,日本国籍は,日本の構成員としての
資格であるとともに,基本的人権の保障,公的資格の付与,公的給付等に関
する重要な法的地位でもあるから,出生後3か月以内の留保届がないことの
みをもって自動的に国籍を喪失させることはあまりにも過酷な不利益を及ぼ
すものである。
したがって,戸籍法104条3項所定の障害事由については,緩やかに解
釈するべきであり,天変地異や交通の途絶といった客観的・外部的な事情に
限らず,届出義務者の病気,怪我,身体拘束,言語的な障壁,必要書類の不
備などの事情により留保届を提出することが現実的に困難である場合や,在
外公館職員の不適切な助言,指導等により留保届を提出する機会が失われた
場合なども障害事由に当たると解するのが相当である。
また,同項所定の「届出をすることができるに至つた時」とは,留保届を
3か月以内に提出することの妨げとなっていた客観的な事情が完全に払拭さ
れるに至った時をいうものと解するべきである。
(4)したがって,Cは,大使館職員であるEが,「認知届のように出生届を
作成して,出生証明書の翻訳を添付して,○区に提出してほしい。」との
不適切な助言,指導をしたことにより,控訴人Bの出生から3か月以内に留
保届を提出する機会を奪われたのであり,戸籍法104条3項所定の障害事
由があったというべきであるから,Cが「届出をすることができるに至つた
時」とは,控訴人Bの国籍喪失を認識した平成10年2月26日と解するべ
きである。
そして,Cは,それより以前である同月18日には控訴人Bの出生届を
○区役所の窓口に提出していたのであるから,戸籍法104条3項所定の届
出期間は遵守されているというべきである。
4本件予備的主張に対する被控訴人の主張
(1)原審における審理経過に照らすと,控訴人Bが本件予備的主張を原審に
おいて主張しなかったことには故意又は重大な過失があり,また,訴訟当事
者間における信義にも反するというべきである。また,控訴審で本件予備的
主張を新たな争点として審理するのは,事実関係について新たな主張立証を
必要とすることになる上,戸籍法104条3項の解釈適用も新たな争点とな
る可能性があり,これにより訴訟の完結を遅延させるものである。
したがって,本件予備的主張は,時機に後れた攻撃防御方法に当たり,行
政事件訴訟法7条,民事訴訟法157条1項により却下されるべきである
(以下「本件却下申立て」という。)。
(2)仮に,本件却下申立てが容れられないとしても,控訴人Bの主張する事
情は,戸籍法104条3項所定の障害事由には当たらず,本件予備的主張は
理由がない。すなわち,控訴人Bの主張する事実の真偽は不明であるが,こ
れが真実であると仮定しても,EのCに対する指導内容が誤ったものである
とはいえず,その対応に過誤があったとはいえない。
すなわち,在外公館において届書等を受け付けると,その処理には時間を
要するのが通常であるから,控訴人Bの出生後間もない時期にCが日本に帰
国する予定があるならば,その際に市区町村長に対して出生届をする方が迅
速に処理されることになり,Cや控訴人Bの便益にもかなうのであるから,
控訴人Bの主張に係るEの助言・指導内容には過誤があるわけではない。
また,戸籍法104条3項所定の「責めに帰することができない事由」
(障害事由)とは,遠隔地又は交通不便な地に居住している場合,届書,証
明書の不備等に関する場合,戦争等の特殊事情がある場合をいうのであって,
単なる法律の不知や業務の多忙はこれに当たらないと解されているから,控
訴人Bの主張に係る事情は上記の障害事由には当たらない。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人らの本訴請求はいずれも理由がないものと判断する。そ
の理由は,次項において,「本件予備的主張及びこれに対する被控訴人の主張
に対する判断」を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の第3の1及
び2に記載するとおりであるから,これを引用する。
2本件予備的主張及びこれに対する被控訴人の主張に対する判断
(1)本件却下申立てについて
ア被控訴人は,控訴人Bの本件予備的主張が時機に後れたものであって却
下されるべきであると主張するところ,一件記録及び弁論の全趣旨によれ
ば,本件訴訟の経緯について,以下の事実が認められる。
(ア)C及びDは,控訴人Bの法定代理人親権者として,他の1審原告ら
3名とともに,多数の弁護士に委任して,平成22年2月2日,本件訴
訟を提起した。
また,他の1審原告ら24名も,同様に多数の弁護士に委任して,同
年7月21日,本件訴訟を提起し,同年12月22日までに,各事件が
併合された(以下,控訴人らを含む1審原告らの訴訟代理人弁護士の訴
訟行為も,便宜上,単に1審原告らの行為として表記する。)。
(イ)1審原告らは,原審において,当初,日本国籍を有することの法的
根拠としては「国籍法12条が憲法13条及び14条1項に違反するこ
と」だけを主張していた。そして,控訴人Bは,平成22年4月21日
の原審第1回口頭弁論期日で陳述した訴状や,同年7月7日の原審第2
回口頭弁論期日で陳述した原告ら準備書面(1)等により,CがEに相談
した経緯や○区役所における事情についても主張していたが,その法
的な位置付けは明確にはされていなかった。
(ウ)1審原告らは,平成23年2月4日の原審第5回口頭弁論期日にお
いて,1審原告らの国籍留保届が提出されなかったことに関する当時の
事実関係については単なる事情として主張しているものであって,この
点について何らかの法律的な主張をするものではないことを明らかにし,
その旨が同期日の口頭弁論調書に記載された。
(エ)被控訴人(1審被告)は,平成23年5月13日の原審第6回口頭
弁論期日で陳述した第6準備書面により,「原告らは,前回口頭弁論期
日において,国籍留保届を提出しなかったことに関する当時の事実関係
を単なる事情として主張していると明言し,救済規定(戸籍法104条
3項)の適用の可能性を自ら放棄している。このように,原告らが個別
具体的な事情に基づく救済可能性を自ら放棄し,あえて抽象論による議
論に終始するのは,原告らの多くが,フィリピン共和国とは緊密な繋が
りを有する一方で,我が国との結び付きは単に日本人父と血が繋がって
いるという事情しかないからである。」などと主張した。
(オ)1審原告らは,平成23年8月3日の原審第7回口頭弁論期日にお
いて,1審原告F及び1審原告Aの予備的主張として,両名が国籍法1
7条1項所定の届出をしたという法的根拠及び事実を主張したものの,
控訴人Bを含む他の1審原告らは,同様の予備的な主張をすることはな
かった。
(カ)被控訴人は,1審原告Fの上記予備的主張に対応する事実関係を調
査確認した上で,平成23年9月16日の原審第8回口頭弁論期日にお
いて,1審原告Fが国籍法17条所定の届出を適法に行っていたことに
より日本国籍を再取得したことを認める旨の陳述をした。そして,これ
を受けて,1審原告Fは,平成23年12月9日に本件訴えの取下書を
提出し,被控訴人が同月16日に同意して,1審原告Fの本件訴えはこ
の取下げにより終了した。
また,1審原告Aの上記予備的主張については,国籍法17条1項所
定の届出の事実を被控訴人が争ったことから,当事者双方は,平成23
年11月4日の原審第9回口頭弁論期日において,「本件の争点は,国
籍法17条1項の国籍取得の届出は,国籍法施行規則1条3項により書
面によって行われる要式行為とされているところ,原告Aは書面を提出
していないが,国籍取得の届出があったと認められるか否かである。」
と確認し,被控訴人が「原告Aが,平成22年6月23日に千葉地方法
務局に持参した国籍法17条1項の国籍取得のための書類に不備はなく,
届出書の提出さえすれば,国籍取得要件をすべて充たしていたことは認
める。」と陳述するなどの主張整理が行われた後に,平成23年12月
16日の原審第10回口頭弁論期日にも当事者による主張立証がされた
上で,原審の口頭弁論が終結された。
原審の口頭弁論が終結されるまでの間,控訴人Bは,本件予備的主張
をしなかった。
(キ)原判決が言い渡された後,控訴人Bを含む控訴人ら18名及び1審
原告ら5名は,平成24年4月5日,これを不服として控訴を提起し
(その後,控訴した1審原告ら5名は,控訴を取り下げた。),民事訴
訟規則182条所定の提出期限(同年5月25日)を経過した後の同年
7月10日に提出した控訴理由書により,控訴人Bが本件予備的主張を
することを明らかにし,同月17日の当審第1回口頭弁論期日において
これを陳述した。
被控訴人は,同年10月5日,本件却下申立てを記載した第1準備書
面を提出し,同月30日の当審第2回口頭弁論期日においてこれを陳述
した。
イ以上の審理経過に基づき検討するところ,1審原告らの訴訟代理人弁護
士は,原審における審理の当初から,Cが留保届を提出しなかった経緯に
ついてもある程度主張していたのであるから,これに関する経緯もCから
聴取していたことがうかがわれるところ,平成23年2月4日の原審第5
回口頭弁論期日には,これについて単なる事情である旨を明らかにしてい
るのであり,その後も,戸籍法104条3項等に基づく予備的な主張をし
ない方針であることを裁判所及び被控訴人に対して表明したものと認める
のが相当である。さらに,これを受けて,被控訴人は,同年5月13日の
原審第6回口頭弁論期日において,戸籍法104条3項の規定を具体的に
例示した上で,1審原告らが具体的,個別的な事情に基づく主張をせずに
抽象論に終始していると指摘して反論したところ,その後,1審原告らの
うち1審原告F及び同Aについては前記のとおり予備的な主張が始められ
た一方で,控訴人Bに係る本件予備的主張は主張されなかったのである
(前記のとおり,当審における控訴理由書の提出により,初めて本件予備
的主張が示された。)。
以上によれば,原審において,控訴人Bが本件予備的主張を検討する機
会と時間は十分にあり,これを主張する具体的な機会も十分に確保されて
いたものというべきであり,これを主張することにつき格別の支障があっ
たと認めることは到底できないのであって,本件予備的主張は,少なくと
も重大な過失により時機に後れて提出されたものと認めるのが相当である。
また,本件予備的主張について本案の審理を行うこととなれば,控訴人B
の主張に係る事実関係につき当事者双方の主張立証が必要となることが予
想される上,戸籍法104条等に関する法律上の争点についても,主張や
反論の機会を確保する必要が生じる可能性が高いというべきであるから,
訴訟の完結を遅延させることになるものと認められる。
したがって,被控訴人の本件却下申立てには理由があるというべきであ
り,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法157条1項により,控訴人Bの本
件予備的主張は却下するのが相当である。
(2)なお,控訴人Bの本件予備的主張の内容を踏まえて補足するところ,C
作成の陳述書(甲62)には,同人がEに相談した経緯や控訴人Bの出生か
ら3か月以内に留保届を提出しなかった経緯について,本件予備的主張に沿
う事実が記載された部分があるほか,「Eは『今は出生届の提出が3か月に
なったので良くなったのですが,昔は2週間でした。』と述べ,私は,提出
期限が3か月になったことは知りましたが,3か月を1日でも過ぎれば子供
の国籍が剥奪される国籍留保制度の説明はありませんでした。私は,認知並
びに出生届の打ち合わせのために忙しい勤務時間を割いて3,4回の半日休
暇を取っており,Eの『出張を利用して,認知並びに出生届を日本で提出し
なさい』との指示を聞いたときに,ほっとし,これで仕事に専念できると思
いました。私はこうして3か月の提出期限を知りましたが,日本国内に提出
することがこの規定を打ち消しているものと思いました。というのは,出生
届の提出期限は国内で出産した場合にもあるが,その規定通りに出生届を出
している人は少ないし,もし遅れても何の罰則もない。さらにEから出張が
遅れたときに対する指示は一切なかったので,大使館の指示通りに日本で届
ければよいとそう信じていました。」旨の記載部分がある。
しかし,戸籍法104条3項所定の障害事由は,例示として「天災」が挙
げられている点に照らしても,天災に準じ,あるいはこれに類する事情をい
うものと解するのが相当であるところ,上記陳述書によっても,Eに相談し
た当時(平成9年10月頃)は同年12月に日本に出張することが予定され
ていたというのであるから,Cが出生後3か月を超えてから出生届を提出す
ることになるという状況にあったわけではないし,EはCに対して出生届の
提出期限が3か月であることを伝えたというにとどまり,3か月を徒過する
ことの可否をCがEに質したわけではないのみならず,この提出期限を遵守
しなくても構わない旨が教示されたというのでもなく,要するに,3か月を
経過した後に出生届を提出しても構わないであろうとCが自分で判断したと
いうにすぎないのである(なお,出生届を提出しようとすれば,運用上,子
の国籍を留保する旨の意思表示をすることになることは,原判決(15頁1
0行目以下)が説示するとおりである。)。そうすると,上記陳述書に記載
されているような事情が仮に存在するとしても,これが戸籍法104条3項
所定の障害事由に当たるものとはいえないと判断するのが相当である。
第4結論
以上によれば,控訴人らの本訴請求はいずれも理由がないところ,これと同
旨の原判決は相当であり,控訴人らの本件控訴はいずれも理由がないから,こ
れを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第16民事部
裁判長裁判官奥田隆文
裁判官片山憲一
裁判官清藤健一

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