弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 弁護人桜川玄陽の上告趣意は、単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、いず
れも刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
 しかし、所論にかんがみ、職権で調査するに、第一審裁判所は、「被告人は、自
動車運転の業務に従事するものであるが、昭和四四年一〇月一日午前三時四〇分頃
大型貨物自動車を運転し時速約六〇粁で碧海郡a町大字b字cd番地先国道一号線
を西進中、前方を同方向に進行していたA運転の大型貨物自動車を追い抜きしよう
とした際、そのころ反対方向からB運転の大型貨物自動車が対面進行中であり、同
車ともすれ違いをする状況になつたのであるが、このように三車両が一度にすれ違
いをすることは各車両の間隔がすれすれであつて、危険であるから追い抜きを差し
控え事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのに、敢えて同速度の
まま前記A車両を追い抜いた過失により、その追い抜き直後、前方に近迫していた
B車両とすれ違いをするにあたり、危険を感じて左転把し、自車の後半部をセンタ
ーラインの右側にはみ出してB車両の右前部に接触させて同人に運転を誤らせて右
側に暴走するに至らしめ、折りから反対方向(東方)から対面進行して来たC運転
の大型貨物自動車の右側部にB車の前部を衝突させて同人に加療約一〇日間を要す
る顔面、右膝挫傷等を与え、更に同車の後方に追従していたD運転の大型貨物自動
車の右側にもB車前部を衝突させて、同人に加療約二週間を要する胸部等挫傷を与
え、同車に同乗していたEに加療一〇日間を要する左前腕挫傷、左足挫傷の各傷害
を与えたものである。」との事実を認定して被告人に有罪の判決を言い渡したとこ
ろ、右過失の認定を争う被告人の控訴に対し、原審は、右第一審判決の認定判断を
維持是認して右控訴を棄却する判決を言い渡した。
 しかし、原判決の判示するところによれば、本件事故現場付近の前示国道一号線
は、総幅員一三・六米、走行車線(路肩寄り)幅員各三・六米、追越し車線(セン
ターライン寄り)幅員各三・二米、片側二車線都合四車線の道路であつて、被告人
は、大型貨物自動車(車幅二・四九米、車長一〇・五八米、積載定量一〇屯、以下
「被告人車両」という。)を運転し、本件事故現場付近の道路の追越し車線に入つ
て西進し、走行車線を先行するA運転の大型貨物自動車(車幅約二・五米、車長約
一一米、積載定量一一屯)を追い抜こうとしたところ、反対方向からB運転の大型
貨物自動車(車幅二・四九米、車長一〇・五〇米、積載定量一一・五屯、以下「B
車両」という。)が対進してきたというのであるから、以上の各車両がそれぞれ自
己の進行車線を走行すれば、特別の事情のない限り、互に接触する危険はない筈で
ある。ところで、原判決は、被告人は、センターライン一杯に追越し車線を時速約
六〇粁で走行し、A運転の車両を被告人車両の半分位追い抜いたとき、同じくセン
ターライン寄りを走行して来たB車両とすれ違いをする際、同車との接触衝突の危
険を感じて左に転把し、そのため被告人車両の荷台後部をセンターラインの右側に
(被告人車両の進行方向に向つて)少しくはみ出させて、B車両の右前部に接触さ
せた旨判示しているが、原判決は、一方被告人車両との本件接触事故により、被告
人車両は、その前部右側バツクミラーが破損し、右側後輪タイヤの外側に約一〇セ
ンチメートルの亀裂を生じ、中のチユーブが覗かれ、同後輪のホイルリム部が曲損
していることが認められる旨判示しているのである。そうすると、原判決の認定す
る事実を前提とすれば、被告人車両とB車両との接触は、両車両が対進中、まず被
告人車両の前部右側バツクミラーがB車両と接触し、次いで被告人車両の荷台後部
がB車両の右前部と接触衝突したものと解せざるを得ない。何となれば、被告人が
自車を左転把して自車荷台後部をセンターラインの右側にはみ出させたため、被告
人車両の荷台後部がB車両の右前部と接触衝突したものならば、それ以前に自車前
部右側バツクミラーが破損することは、特段の事情がない限り考えられない。被告
人もしくはBに当時前方注視義務違反があつたとか、被告人車両またはB車両のい
ずれか一方が、何んらかの事情により、突然センターラインを越えて相手車両の進
行車線内に進入したとかいう特別の事情でもない限り、原判決の説示する両車両が
当時センターライン寄りを対進接近中であつたという事実のみをもつてしては、直
ちに、被告人車両の前部右側バツクミラーの破損を合理的に説明できる特段の事情
とはなしがたいものといわなくてはならない。してみると、原判決および第一審判
決は、右特段の事情のあることを何んら確定していないことに帰し、被告人が左転
把したため被告人車両がB車両と接触した旨の第一審判決をたやすく是認した原判
決は、事実の認定を誤つた疑いがあり、これを破棄しなければ著しく正義に反する
ものと認むべきである。
 よつて、刑訴法四一一条三号により、原判決を破棄し、更に審理させるため、同
法四一三条本文により、本件を原裁判所である名古屋高等裁判所に差し戻すことと
し、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官 蒲原大輔公判出席
  昭和四七年一一月一六日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   田       誠
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一

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