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平成20年(行ケ)第10002号審決取消請求事件
平成20年7月9日判決言渡,平成20年4月23日口頭弁論終結
判決
原告株式会社ナナオ
訴訟代理人弁理士鈴江武彦,河野哲,福原淑弘,國生泰広
被告X
主文
特許庁が無効2007−800070号事件について平成19年11月19日に
した審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1原告の求めた裁判
主文と同旨の判決。
第2事案の概要
本件は,被告の有する下記1()の特許(以下「本件特許」という)について,1。
原告が無効審判請求をしたところ,特許庁は,同審判請求は成り立たないとの審決
をしたため,原告が,同審決の取消しを求める事案である。
()本件特許(甲第11号証)1
本件特許に係る出願は,特願平7−147445号の出願を原出願とする分割出
願である。
特許権者:X(被告)
発明の名称:表示装置」「
特許出願日:平成15年10月2日(特願2003−344634号)
原出願日:平成7年6月14日
設定登録日:平成16年6月25日
特許番号:特許第3569522号
()本件手続2
審判請求日:平成19年4月5日(無効2007−800070号)
審決日:平成19年11月19日
審決の結論:本件審判の請求は,成り立たない」「。
審決謄本送達日:平成19年11月29日(原告に対し)
2本件発明の要旨
本件特許に係る発明の要旨は以下のとおりである(以下,請求項1記載の発明を
「本件特許発明」という。。)
「請求項1】【
LCDを備え,
前記LCDに異なる画像を順次表示する場合において,
前記LCDに1フィールドあるいは1フレーム分の映像信号を入力する毎に,前
記LCDに全画面黒表示を行わせるための全画面黒信号を入力することを特徴とす
る表示装置。
【請求項2】
前記LCDにおける前記全画面黒信号の入力時の画面走査時の周波数を,前記映
像信号のそれよりも高くするようにしたことを特徴とする請求項1に記載の表示装
置。
【請求項3】
前記LCDにおいて,前記映像信号の入力と前記全画面黒信号の入力との間に入
力信号が無い期間を設けたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置」。
3審決の理由の要点
審決は,本件特許発明は,三次元表示装置であり,二次元表示装置をも含むもの
であると解する余地はないとして,原告の提出に係る無効理由のうち,本件特許発
明が二次元表示装置を含むことを前提とする無効理由1,2を採用することはでき
ないとした上,本件特許発明が二次元表示装置を含まないことを前提とする無効事
由3につき,本件特許発明が,原告の主張に係る下記甲第6号証,第7号証及び第
4号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたもので
あるとはいえないから,本件特許発明に係る特許及び本件特許発明を引用する請求
項2∼3記載の発明に係る特許は,原告の主張及び証拠方法によっては無効とする
ことができないとした。
甲第4号証国際公開95/01701パンフレット(特表平8−500915
号公報(甲第5号証)は,同国際出願に係る公表公報である)。
甲第6号証特開平6−205446号公報
甲第7号証国際公開94/06249パンフレット(特表平8−505014
号公報(甲第8号証)は,同国際出願に係る公表公報である)。
審決の理由のうち,本件特許発明が,甲第6号証,第7号証及び第4号証に記載
された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるとはいえ
ないとする部分は,以下のとおりである(各章の番号又は符号を変更した部分があ
る。。)
()各甲号証の記載事項の認定1
ア甲第6号証(特開平6−205446号公報)
「産業上の利用分野〉〈
(ア)『本発明は眼鏡を必要としない立体映像表示装置に係り,特に,解像度が高く,明るい立
体映像を表示することのできる立体映像表示装置に関する(段落)。』0001
〈実施例〉
(イ)『以下に添付図面を参照して実施例により本発明を詳細に説明する。図5に示す従来型と
の違いが一目して分かるように,本発明による立体映像表示装置を上方から見た原理図で示し
たのが図1である(段落)。』0009
(ウ)『図1において,LCDなど透過形映像表示板の映像表示面には,図5のように各方向像
が方向の順に繰り返し並ぶのではなく,いずれか1種類の方向像を表わす映像VD1またはV
D2が表示画素P1,P2,P3,に表示されてこれが観察者の左眼EYE1または右眼E---
YE2にそれぞれ照射されるようにする。そして映像表示面が左眼EYE1用の映像VD1を
表示しているときには,観察者からみて映像表示板の背後に配置された複数の線状光源Lのう
ち●で示す左眼EYE1用の光源LL1のみを点燈し,○で示す右眼EYE2用の光源LL2
は消燈しているようにする(段落)。』0010
(エ)『次の時点で映像表示面に右眼EYE2用映像VD2が表示され,これに合わせて複数の
線状光源Lのうち○で示す右眼EYE2用の光源LL2が点燈し,●で示す左眼EYE1用の
光源LL1は消燈する。この表示映像VD1,VD2と線状光源LL1,LL2が時間の経過
とともに変化していく状態を図2に示す(段落)。』0011
(オ)『以上のように,本発明は,従来LCDなど透過形映像表示板の映像表示面を空間的に分
割して左眼用,右眼用映像を表示させていたのを,映像表示面に左眼用ないし右眼用映像とし
て全面同じ側の映像を表示させて,映像照射用の複数の線状光源も含めこれを左眼用,右眼用
と時分割的に切り替える(状態変化)ようにしたことに特徴があり,これにより方向数の増加
等による解像度の低下を生ずることがなくなった(段落)。』0012
〈発明の効果〉
(カ)『本発明によれば,装置に使用する透過形映像表示板の画面全体に同じ方向からの方向像
を表示するようにしてあるため,複数の方向像を同時に表示する従来の立体映像表示装置に比
し,等価的に方向数倍に横方向画素数を増やすことができ,従って高解像度の立体映像を再生
することが可能となる(段落)。』0019
(キ)『なお,透過形映像表示板に表示する映像を毎フィールドごとに異なる方向像とせず,同
一映像を繰り返し表示することによって立体(3次元)映像の表示でなく通常の2次元映像の
表示も可能となる(段落」。』)0021
イ甲第7号証
ThetimingsequenceofLCDscanduringwhichallpixelsareaddressed,pixeltransmittance(ク)『()
changestoformthenextimagecomponent,andlightsourceturnonandturnoffwhenasmallnumber
oflampsisusedforfullresolution3-DimagingasinFIG.2isshowninFIG.s3a-3c.
ThetimingdiagramisshowninFIG.s3a-3c.FIG.3adepictstherepeatedaddressofLCDrows
startingatthetoprowandproceedingtothebottomrow.FIG.3bshowsthechangefrom"off"or
opaquestateto"on"orclearstateorviceversaofthefirstandthelastpixelsinavideofield,after()
thesepixelshavebeenaddressed,andtheflashingofthefirstlightemittingpointorlamp42shownin
FIG.2.InthecaseofTFTandFerroelectricLCDs,whenapixelisturnedonduringthescanofan
LCD,itstaysonuntilturnedoff,inthiscaseuntilthescanoftheentireLCDtodisplayonevideo
frameiscompleted,andthelastpixelshavehadtimetochangetheirstate.
AsshowninFIG.3athetimeperiodbetweenthestartofoneLCDscanandthestartofthenextis
dividedintothreeperiodsduringwhichthreeactionsoccur:afirstperiod22duringwhichtheLCDis
scannedanditsrowssequentiallyaddressedusuallystartingatthetoprow20andendingatthebottom
row21causingthepixelstochangestateinordertodisplaythenextimage,apauseorwaitingperiod
23duringwhichnothinghappens,andanoptionalblankingperiod24ofbeneficialeffectinsome
LCDsinwhichtheLCDisscannedagainandallthepixelsareaddressedandmadetochangestateto
eitherfullonorfulloffdependingonLCDconfiguration,tocompletelyerasethepreviousimage.
Typically,allthepixelsofagivenrowareaddressedatthesametime.
ThesignaltochangethestatesofthefirstrowpixelsisgiventotheLCD6attimetg.Forillustrative
purposes,itisassumedthatadelayofabout3.5msoccursbeforethepixelcompletesitschangetoa
newstateinresponsetotheappliedsignal-itbeginstoturnonattimetandcompletesthechangein
itsstatebetweenopaqueandclearattimet2asshowninFIG.3b.AlthoughinFIG.3bpixelsare
shownturningbetweenfulloffandfullonitisunderstoodthattypicallysomewillbeturningfromon
tooffandotherswillturningbetweenoneintermediategraystateandanother.Thelastpixelstartsits
statechangeattimet3afteritisaddressedattimetandcompletesitattimet4.Atthisinstantthe
videoframeiscompleteandthelightsource7flashes,asshowninFIG.3c,thustransferringthe
informationinthefirstfieldtotheobserver.AsseeninFIG.3aapauseperiod23duringwhichno
addressingoftheLCDhappensisinsertedinordertogiveallthepixelstimetochangetotheirnew
statebeforethelampisfired.Ifthetimeittakesapixeltochangestateislongenough,orthetime
requiredforascanisshortenough,asecondscancanoccurduringthepauseperiod.Duringthe
secondscanthesameimageinformationistransferredtotheLCDasinthefirstscan.Theoptional
blankingscancanthenoccurfollowedbythenextaddressoftheLCDduringwhichthepixelsare
addressedinordertocreatethesecondimagefield.Thesequenceinthesecondframeisthesameasin
thefirstframeexceptthatlamp43flashes.Likewise,thetimingofeventsisidenticalinsubsequent
frames,theonlydifferencebeingtheinformationwrittentotheLCDandwhichofthelampsflashes.
AgainasshowninFIG.s3a-3c,thepixelstakeacertainperiodoftimetochangestateoncetheyare
addressed.Inthiscase3.5msisshownforillustration,thatbeingtheperiodtypicalofacustompixel
LCDbeingmadebyanLCDdevelopmentlabforDimensionTechnologiesInc.Thetimerequiredto
turnofffromfullonmaybedifferentthanthetimerequiredforfullontofulloff,orthetimerequired
tochangebetweenvariousintermediategraylevels.Insuchcases,thelongesttimeperiodrequiredto
changebetweentwostatesismostrelevant,andmustbeaccommodatedsothatallpixels,regardlessof
whichstatesthechangetoorfrom,cancompletetheirchangebeforealampisfired.
Lamps,ofcourse,neverflashinstantaneously,butratheremitlightforashorttimeandthenturnoff.
Thedurationthatthelampisemittinglightdependsonthelamp,andcanbecontrolledwithsome
lamps,suchasLEDs.Ingeneral,thelampshouldemitlightonlyduringthetimeperiodbetweenthe
completionofthelastpixel*schangeandthebeginningofthenextaddressscan.However,ifa
blankingscanisused,andtheLCDisblankedtoadarkstate,thelampsmayemitlightduringthe
blankingperiodwithoutsignificantimagedegradation.However,iftheLCDisblankedtothebrightor
transparentstate,thelampsshouldstopemittinglightbeforetheblankingperiodbegins.Otherwise,
contrastwillbelessenedconsiderably.
Atotalof16.7mshaselapsedfromthetimetheturnonsignalhasbeenappliedtothefirstpixelto
thecompletionofthechangeinstateofthelastpixelandflashofthelightsource,andblankingatall
thepixels,andbeginningofthenextscan.Thus,thereare60fieldspersecondor30imagesvideo(
framespersecond.Thisframefrequencywillresultinanearlyflickerlessimageinthisparticular)
configurationgiventypicalscreensizesandbrightnesslevels.Otherconfigurationsinwhichmorethan
twosetsoflightlinesorspotsarecreatedmayrequirehigherframefrequenciestoavoidflicker.This
scanning,changing,andflashsequenceproceedscontinuously,assubsequentimageframes,each
consistingoftwosequentialfieldsmadevisibletotheobserverbymeansoftwolampflashes,are
displayed.Thetwoimagefieldseachconsistofinterleavedrightandlefteyemembersofastereopair
(頁行∼頁行)imageasdescribedinUS-A-5,036,385.29353227』
(LCD走査のタイミング順序(この間全ての画素がアドレス指定される,次の画像成分を)
形成するための画素透過率変化,及び少数のランプが第2図におけるような完全解像度3−D
作像に使用されるときの光源ターンオン,ターンオフが,第3a−3c図に示されている。
タイミング線図が,第3a−3c図に示されている。第3a図は,最上行で開始しかつ最下
行へ進行するLCD行の繰り返しアドレス指定を描く。第3b図は,それらの画素がアドレス
指定された後ビデオフィールド内の最初及び最後の画素のオフ又はオペーク状態からオ,『』『
ン』又はクリヤ状態への(又はこの逆の)変化,及び第2図に示された第1発光点又はランプ
(42)のフラッシングを示す。TFT及び強誘電体LCDの場合,LCDの走査中画素がタ
ーンオンされると,それはターンオフされるまで,この場合1ビデオフレームを表示するため
の全LCDの走査が完了し,かつ最終の画素がそれらの状態を変化する時間を持つまで,オン
に滞在する。
第3a図に示されたように,1つのLCD走査の開始と次の開始との間の時間区間は3つの
期間に分割され,これらの間中3つの作用が起こる。すなわち,第1期間(22)中LCDが
走査されかつその行が通常最上行で開始しかつ最下行で終端する順次アドレス指定されて,次
の画像を表示するために画素の状態を変化させ,休止又は待機期間(23)中何も起こらず,
或る種のLCDにおいて有益な効果のある動作消去期間(24)中LCDは再び走査され及び
全ての画素がアドレス指定され,かつ先行画像を完全に消去するために,LCDの構成に応じ
てフルオン又はフルオフのどちらかをするように状態を変化させられる。典型的に,所与の行
の全ての画素は,同じ時刻にアドレス指定される。
最初の行の画素の状態を変化させる信号は,時刻tにLCD(6)に与えられる。図解目0
的のために,この画素が印加信号に応答して新状態へのその変化を完了させる−それは,第3
b図に示されたように,時刻tにターンオンし始めかつオペークと時刻tにおけるクリヤ12
との間にその状態の変化を完了する前に約3.5msの遅延が起こる。第3b図において,画
素はフルオンとフルオフとの間でターンするように示されているが,云うまでもなく典型的に
は或るものはオンからオフへターンし,他は1の中間グレー状態から他へターンすることにな
る。最後の画素は,それが時刻tにおいてアドレス指定された後,時刻tにその状態変化23
を開始し,かつそれを時刻tにおいて完了する。この瞬間に,第3c図に示されたように,4
ビデオフレームが完了され,かつ光源(7)がフラッシュし,それゆえ,第1フィールド内の
情報を観察者へ転送する。第3a図で判るように,LCDのアドレス指定が起こらない休止期
間(23)が,ランプが点灯される前に全ての画素にそれらの新状態へ変化する時間を与える
ために挿入される。もし画素に状態変化を取らせる時間が充分に長いか,又は走査に要求され
る時間が充分に短ければ,第2走査が休止期間中に起こり得る。第2走査中,第1走査におけ
ると同じ画像情報がLCDへ転送される。次いで,動作帰線消去走査を起こすことができこれ
にLCDのアドレス指定が続き,この間中第2画像フィールドを創出するために画素がアドレ
ス指定される。第2フレーム内の順序はランプ(43)がフラッシュすることを除き第1フレ
ームにおけるのと同じである。同様に,事象のタイミングは,後続フレームにおいても同等で
あり,ただ異なるのは,LCDへの書込み情報及びランプのどれがフラッシュするかである。
再び第3a−3c図に示されたように,画素は,いったんそれらがアドレス指定されると状
態を変化するために或る期間を費やす。この場合,3.5msは照明のために示され,これは
ディメンションテクノロジーズ社()のために或るLCD開発研究所DimensionTechnologiesInc.
によって作製されるカスタム画素LCDの典型的期間である。フルオフからフルオンへのター
ンに要求される時間は,フルオンからフルオフに対して要求される時間,又は種々の中間グレ
ーレベル間の変化に要求される時間と異なることがある。このような場合,2つの状態間の変
化に要求される最長時間が,最も関係性があり,全ての画素が,その変化がどの状態へ又はか
らにかかわらず,ランプが点灯される前にそれらの変化を完了することができるように,適応
しなければならない。
ランプは,もちろん,決して瞬間的にフラッシュはぜず,短い時間にわたり発光し,次いで
ターンオフする。ランプが発光する持続時間はそのランプに依存し,かつLEDのような,或
るランプで以て制御され得る。一般に,ランプは,最後の画素の変化の完了と次のアドレス指
定走査の開始との間の時間区間中にのみ発光するべきである。しかしながら,もし帰線消去走
査が使用され,LCDが暗状態へ帰線消去されるならば,ランプは有意な画像劣化を伴うこと
なく帰線消去期間中発光すると云える。しかしながら,もしLCDが明るい又は透明状態へ帰
線消去されるならば,帰線消去期間が始まる前にランプは発光を停止するべきである。そうし
ないと,コントラストが可なり低下しよう。
ターンオン信号が最初の画素に印加された時刻から最後の画素の状態の変化の完了,光源の
フラッシュ,全ての画素における帰線消去,及び次の走査の始まりまでに合計16.7msが
経過する。それゆえ,60フィールド毎秒,又は30画像(ビデオフレーム)毎秒がある。こ
のフレーム周波数は,与えられ特定スクリーン寸法及び輝度レベルにおいてほとんどフリッカ
レス画像を生じることになる。光線条又はスポットの3集合以上を創出する他の構成は,フリ
ッカを回避するために更に高いフレーム周波数を必要とすることがある。この走査,変化,及
びフラッシュ順序は,2つのランプフラッシュによって観察者の眼に見えるようにさせられた
2つの順次フィールドから各々がなる,後続の画像フレームが表示されるに従って,連続的に
進行する。これら2つの画像フィールドの各々は,米国特許第5,036,385号に説明さ
れたステレオ対のインタリーブ右及び左眼要素からなる(甲第8号証を参照する際の対応す。』
る箇所は,頁4行∼頁行」384022。)
ウ甲第4号証
TurningnowtothesystemembodimentofFigure2,thenfollowingthewritingofdataforone「(ケ)『
TVfieldintothedisplaypanel10inadisplayinformationaddressperiodcomprisingonehalftheTV
signalfieldperiodaspreviouslydescribed,thepictureelementsofthearrayareaddressedagaininthe
intervalcomprisingtheremaininghalfoftheTVsignalfieldperiodtodrivethemtotheirsubstantially
non-transmissive,black,state,unliketheschemedescribedinEP-A-0487140inwhichthepicture
elementsareaddressedagainwiththesamedisplayinformationinthesecondhalfoftheTVfield
period.Toachievethis,selectionsignalsareagainsuppliedbytherowdrivercircuit20toeachofthe
rowconductorsinturnduringthisintervalcorrespondingtothelatterhalfoftheTVfieldperiodwith
theselectionsignalofthefirstrowconductorcoincidingsubstantiallywiththebeginningofthe
interval.Forthedurationofthisperiodapredeterminedreferencevoltage,VB,isappliedtoeachofthe
columnconductors16,whichisselectedsuchthatthepictureelementsaredriventotheirsubstantially
non-transmissivestate.Thereferencevoltageisappliedbymeansofaswitchcircuit35connected
betweentheoutputsofthecolumndrivercurrent22andthesetofcolumnconductorswhichswitches
thecolumnconductorsbetweenthecolumndrivercircuit'soutputsandthereferencevoltageunderthe
controlofaswitchingsignalSsuppliedbythecircuit21.Therowconductorsarescannedwitha
selectionsignalatthesamerateaspreviouslysothattherowsofpictureelementsaresettotheir
substantiallynon-transmissivestatesinsequencewiththefinalrowsbeingsetclosetotheendofthe
interval.InoneTVfieldperiod,therefore,therearetwodisplaypaneladdressperiodsnamelyadisplay
informationaddressperiodinwhichthepictureelementsaredriventotherequireddisplaystatesanda
succeedingintervalinwhichtheyaredriventotheirsubstantiallynon-transmissivestates.
AttheendoftheTVfieldperiod,thechange-overswitches28and32areoperated,andtheswitch
circuit35reset,sothatthedatasignalsforthenextTVfieldarereadouttothecircuit24fromthe
otherstore,againattwicethefieldrateoftheTVsignalandinsynchronismwithscanningoftherow
conductorsattwicetheconventionalrateandwhilethesubsequentTVfieldisbeingloadedintothe
firststore.Afterthisnextfieldhasbeenloadedintothedisplaypanel,thepictureelementsareagain
driventotheirsubstantiallynon-transmissivedisplaystatesasbeforeintheremaininglatterhalfofthe
TVfieldperiod.ThismannerofoperationisrepeatedforsuccessiveTVfields.
Thus,theoperationofthedisplaypaneloccupiesasuccessionofapproximatelyequalperiodsoftime,
eachcorrespondingtoapproximatelyonehalfoftheTVsignalfieldperiod,e.g.10ms,inwhich
alternateperiodsconstitutefirstdisplaypanelfieldperiodsduringwhichthepictureelementsare
loadedwithdisplayinformationforarespectiveTVfieldandinwhichtheinterveningintervals
constituteseconddisplaypanelfieldperiodsduringwhichthepictureelementsofthearrayaredriven
()totheirblackstate.ThisisdepicteddiagrammaticallyinFigure4inwhichTrepresentstimeandFA
toFDdenotefoursuccessivefieldperiodsoftheappliedTVsignal,VS.Therelativetimingsof()
theoperatingperiodsofthedisplaypanel,DP,areillustratedinwhichfAtofCrepresentthefirst()()
displaypanelfielddisplayinformationaddressperiods,andtheperiodsfrepresenttheintervals()
(頁行∼頁5行)therebetweenconstitutingtheseconddisplaypaneladdressperiods.181120』
『ここで図2のシステムの実施例を考えると,画素を,TVフィールド周期の他の半分内に同
じ表示情報によって再びアドレスする欧州特許出願公開明細書第0487140号に記述され
ている方法とは異なり,上述したようなTV信号フィールド周期の半分から成る表示情報アド
レス期間内で1TVフィールドに関するデータを表示パネル10に書き込むのに続いて,画素
の配列を,TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間内に再びアドレスしてほぼ非透
過(黒い)状態に駆動する。これを達成するために,TVフィールド期間の後半に等しいこの
期間の間に,間隔の開始とほぼ一致する第1の行導線の選択信号によって,選択信号を行駆動
回路20によって各行導線に順番に再び供給する。この期間が続いている間,画素をほぼ非透
過状態に駆動するように選択される予め定めた基準電圧VBを列導線16の各々に印加する。
基準電圧を,列駆動回路22の出力端子と列導線の組との間に接続され,回路21によって供
給される切り換え信号Sの制御のもとに,列導線を行駆動回路の出力と基準電圧との間で切り
換える切り換え回路35によって印加する。行導線を,あらかじめ,画素の行が時間間隔の終
了時に最終行が完了するまで順番にほぼ非透過状態に設定されるように,選択信号によって同
じ速度において走査する。したがって1TVフィールド周期において,2つの表示情報アドレ
ス期間,すなわち,画素を液晶表示状態に駆動する表示情報アドレス期間と,それに続く,画
素をほぼ非透過状態に駆動する時間間隔とが存在する。
TVフィールド期間の終わりにおいて,再びTV信号のフィールド速度の2倍の速度におい
て,通常の2倍の速度における行導線の走査に同期して次のTVフィールドを第1の記憶装置
にロードしている間,次のTVフィールドに関するデータ信号が他の記憶装置から回路24に
読み出されるように,切り換えスイッチ28および32を動作する。この次のフィールドを表
示パネル内にロードした後,以前のようにTVフィールド周期の残りの後半内で,ほぼ非透過
表示状態に再び駆動する。この動作方法を,順次のTVフィールドに対して繰り返す。
したがって,表示パネルの動作は,各々がTV信号フィールド周期のほぼ半分,例えば10
msに相当する連続したほぼ等しい期間を必要とし,一つ置きの期間は,画素が各々のTVフ
ィールドに関する表示情報によってロードされる間の第1の表示パネルフィールド期間を構成
し,それらの間の時間間隔は,配列の画素を黒い状態に駆動する間の第2の表示パネルフィー
ルド期間を構成する。これを図4に図式的に示し,ここでここでTは時間を表し,F(A)か
らF(D)は供給されたTV信号VSの4つの連続するフィールド期間を示す。表示パネルの
動作期間の相対的なタイミングDPは,f(A)からf(C)が第1の表示パネルフィールド
(表示情報アドレス)期間を示し,期間f′がそれらの間の第2の表示パネルアドレス期間を
示す(甲第5号証を参照する際の対応する箇所は,頁7行∼頁行」。』。)181913
()本件特許発明と甲第6号証記載の発明との対比2
「本件特許発明と甲第6号証に記載された発明とを対比すると以下の対応が認められる。すな
わち,
甲第6号証では,映像表示面として『LCDなどの透過形映像表示板(記載(ウ))を用い』
ている。
甲第6号証では『映像表示面に左眼用ないし右眼用映像として全面同じ側の映像を表示さ,
せて映像照射用の複数の線状光源も含めこれを左眼用右眼用と時分割的に切り替える記,,』(
載(オ)ようにしている。これにつき,図2には,期間t1には左(右)眼用映像VD1を入)
力し,続く期間2には右(左)眼用映像VD2を入力し,続く期間t3には再び左(右)眼用
映像VD1を入力するというよう左眼用映像と右眼用映像を時分割的に切り替えることが見て
取れる。ここで,期間t1,t2・・・がフィールド期間またはフレーム期間であることは,
明らかである。
そうすると,甲第6号証の『左眼用映像と右眼用映像』が本件特許発明の『異なる画像』に
相当し,甲第6号証に,本件特許発明にいう『LCDに異なる画像を順次表示する場合におい
て,LCDに1フィールドあるいは1フレーム分の映像信号を入力する』に相当する構成の開
示が認められる。
もっとも,甲第6号証には,本件特許発明にいう『LCDに全画面黒表示を行わせる』に相
当する構成の開示はない。相違が認められる」。
()一致点・相違点の認定3
「。本件特許発明と甲第6号証に記載された発明との一致点および相違点は以下のとおりである
記(一致点)
LCDを備え,
前記LCDに異なる画像を順次表示する場合において,
前記LCDに1フィールドあるいは1フレーム分の映像信号を入力する,
表示装置。
記(相違点)
本件特許発明は『LCDに1フィールドあるいは1フレーム分の映像信号を入力する毎に,
LCDに全画面黒表示を行わせるための全画面黒信号を入力する』のに対して,甲第6号証に
はそのような『LCDに全画面黒表示を行わせる』ことについて記載がない点」。
()相違点についての判断4
「(ア)本件特許発明
特許明細書には,以下の記載がある。
『眼鏡を使用しないで立体映像を表示するには・・・その観察位置に両眼を置くと自律的に左
右両眼にそれぞれ左右映像が分離投影され,立体映像として観察できるようにする必要があ
る(段落)。』0002
『また,図33(a)に示すようなフィールド毎に時分割した映像入力による映像は・・・透
過型映像表示板としてLCDに表示した場合,表示面上の画素は次にこの画素が操作されるま
で表示を続けるので,斜線領域全てで映像R−1と映像L−1の表示が継続するため時間的に
分離されていないという問題点があった(段落)。』0016
『本発明は前記のような問題点を解消するためになされたもので,その目的は)時分割した(,
方向像を表示する透過型映像表示板にLCDを使用しても,時分割した方向像を時間的に分離
して表示することができる立体映像表示装置を得るものである(段落,段落)。』00170031
『この発明の表示装置によれば,どの任意の時間で前後の画像が一部分でも同時に表示される
ことが無く,前後の映像を時間的に分離して表示することができる(段落)。』0033
これらによれば,本件特許発明は,立体映像表示装置に関し,異なる画像(時分割した方向
像)を順次表示するLCD立体映像表示装置において『左右両眼に左右映像が分離投影され,
ず,立体映像として観察できない』という問題点の解消を目的とするものである。そして,そ
の問題点は,表示画像の性状(異なる画像(時分割した方向像)を順次表示すること)に由来
することは明らかである。
(イ)甲第6号証
甲第6号証(同号証は,特許明細書に,本件特許発明の従来例として記載された刊行物でも
ある)は,異なる画像(時分割した方向像)を順次表示するLCD立体映像表示装置は開示す
るが,特許明細書が指摘する『左右両眼に左右映像が分離投影されず,立体映像として観察で
きない』という問題点の認識や,本件特許発明の『時分割した方向像を時間的に分離して表示
する』という目的の開示は見られない。
(ウ)甲第7号証および甲第4号証
a甲第7号証の『帰線消去』は『先行画像を完全に消去するために(記載(ク))とする』
のものであり『或る種のLCDにおいて有益な効果のある(記載(ク))とされ『LCDの,』,
構成に応じて(記載ク)消去した後の状態は透過状態でも非透過状態(黒状態)でもよいと』
される『先行画像の完全消去』は,特定のLCD装置の表示特性(例えば,一度ターンオン。
されるとターンオフされない限りオン状態にある,記載(ク))に由来し,表示画像の性状とは
,。関係なくLCD装置の表示特性上装備することが必要もしくは好ましいとされる動作である
甲第4号証の『画素の配列を,TV信号フィールド周期の残りの半分から成る期間内に再び
アドレスしてほぼ非透過(黒い)状態に駆動する(記載(ケ)『この期間が続いている間,画』),
素をほぼ非透過状態に駆動するように選択される予め定めた基準電圧VBを列導線16の各々
theproblemofunwantedvisualeffectに印加する(記載ケ)は,隣接フィールド間に発生する『』
動いている像を表示している場合の好ましくない視覚現象審whendisplayingmovingimages』((
2021決注:ボケ現象,スメアリング現象)の問題)を『(軽減)し(3頁行∼toalleviate』
),『』行therebyresultingintheimprovementtotheperceivedresolutionofmovingimages
(動いている物の解像度が改善される,8頁行∼行)ことを目的とする動作である1112
これらによれば,甲第7号証および甲第4号証は,表示画像の性状とは関係なく,専ら,L
CD装置の表示特性に由来して隣接フィールド間に発生する問題点(ボケ現象,先行画像の残
),『』,。存の解決を図るものであり異なる画像など表示画像の性状を考慮したものではない
『,』特許明細書が指摘する左右両眼に左右映像が分離投影されず立体映像として観察できない
という問題点の認識や『時分割した方向像を時間的に分離して表示する』という目的の開示,
は見られない。
b甲第7号証の『動作走査期間(24)中LCDは再び走査され及び全ての画素がアドレ
ス指定され・・・状態を変化させられる(記載(ク))動作において,同動作が『信号』として』
入力されたものによるとの記載はない『全画面黒信号を入力する』構成を開示するものでは。
ない。
c甲第7号証の映像は『2つの画像フィールドの各々は・・・ステレオ対のインタリーブ
右及び左眼要素からなる』ものである。この『ステレオ対のインタリーブ右及び左眼要素』を
さらに『左及び右眼画像の位置をフリップする』ことも記載されている。これは,立体表示に
供される映像ではあるものの,1フィールド内に左眼用映像と右眼用映像の各半分(要素)ず
つを同時に表示するものであり(空間的分割,本件特許発明にいう『異なる画像』には当た)
らない。
d甲第4号証の『基準電圧VB』は,同期セパレータ26から同期信号が供給されるタイ
ミング兼制御回路21により発生される『電圧(垂直走査期間内の所定期間に切換信号Sの』
制御の下にLCDに供給される電圧)であって『信号』として入力(例えば入力端子25に)
されるものではない『全画面黒信号を入力する』構成を開示するものではない。。
(エ)小括
以上,甲第6号証,甲第7号証および甲第4号証のいずれにも本件特許発明の目的の開示は
ない。また,甲第6号証では,すでに『全面同じ側の映像を表示させて・・・左眼用,右眼用
と時分割』を果たしており『左眼用,右眼用を時分割』するために更なる手段を付加する必,
然もなく,甲第7号証および甲第4号証は,LCD装置の表示特性上,前後の画像が重ならな
いようにするために次画像を表示する際に前画像を消去するものであり,結果的に全画面が同
時に消去状態にあったとしても,この消去動作に『全画面黒表示を行わせる』という思想があ
るわけではない。したがって,甲第6号証,甲第7号証および甲第4号証からは『時分割し,
た方向像を時間的に分離して表示する』ために『全画面黒表示を行わせる』思想を見い出すこ
とはできず,本件特許発明に至る動機付けを欠いている。
加えて,甲第6号証,甲第7号証および甲第4号証のいずれにも本件特許発明の『全画面黒
信号を入力する』構成の開示もない。
したがって,上記相違点に係る構成が甲第7号証および甲第4号証に記載されたものから容
易になし得るとすることはできない。
(オ)請求人は,方向像を左右両眼に分離投影させることは立体映像表示装置として成立させ
るための原理原則であること,甲第6号証の『左眼用,右眼用と時分割に切り替えるようにし
た(記載)との記載は,左眼用と右眼用とを時間的に分離する動機付けと成りうる事項であ』
る,と主張をする。
立体表示の原理原則方向像を左右両眼に分離投影させることは認められるとしても異(),『
なる画像(方向像)を順次表示する』立体表示方式における分離投影の問題点ついてはいずれ
の甲号証にも記載がないことは前記のとおりである。そして,本件特許発明はこの立体表示方
式において効果が認められることは後記のとおりである。
甲第6号証にいう『時分割的に切り替える』は,従来『映像表示面を空間的に分割して1,
画面に左右映像を表示させていた』のを『全面同じ側の映像を表示させて『時分割的に切り』
替える』ようにしたものであり『左右画像を画面単位で時間的に配列する(異なる画像を順,』
)。『』,次表示することを意味する左右画像を画面単位で時間的に配列するからさらに進んで
入力される左右画像の画面を他の画面『第3の映像供給源から出力される)全画面黒信号』(
でもって時間的に分離して表示することを示唆するものではない。
主張は採用することができない。
(カ)効果
本件特許発明の効果は『どの任意の時間で前後の画像が一部分でも同時に表示されることが
,』()。無く前後の映像を時間的に分離して表示することができる段落というものである0033
ここでの『前後の映像を時間的に分離』が入力される左右画像の画面を他の画面で分離するこ
とであることは前記のとおりであり,甲第7号証および甲第4号証の『前後の映像を時間的に
分離』が同一画像の連続する2つのフィールド間を分離することであることも前記のとおりで
ある。本件特許発明は甲第7号証および甲第4号証と『時間的に分離』する対象が異なるもの
であり,その効果は,甲第7号証および甲第4号証から予測できるものではない。他方,立体
感の減損を回避する点においてその効果を評価することができる。
(キ)まとめ
以上によれば,本件特許発明は甲第6号証,甲第7号証および甲第4号証に記載された発明
に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである,ということはできない」。
第3原告の主張(審決取消事由)の要点
審決は,本件特許発明と甲第6号証記載の発明との相違点の認定を誤り(取消事
由1,また,同相違点についての判断を誤って(取消事由2,本件特許発明が,))
甲第6号証,第7号証及び第4号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に
発明することができたものであるとはいえないとの誤った結論に至ったものである
から,取り消されるべきである。
1取消事由1(相違点の認定の誤り)
審決は,本件特許発明と甲第6号証記載の発明との対比に当たり「甲第6号証,
には,本件特許発明にいう『LCDに全画面黒表示を行わせる』に相当する構成の
開示はない。相違が認められる」とした上で,本件特許発明と甲第6号証記載の。
発明とが「本件特許発明は『LCDに1フィールドあるいは1フレーム分の映像,
信号を入力する毎に,LCDに全画面黒表示を行わせるための全画面黒信号を入力
』,『』するのに対して甲第6号証にはそのようなLCDに全画面黒表示を行わせる
ことについて記載がない点」で相違する旨認定した。。
しかしながら,甲第6号証には,審決が摘記する段落【,段落【】の00100011】
各記載があるほか,その図2には,線状光源LL1とLL2の点灯期間の間に両光
源が消灯している消灯期間が示されており,この消灯期間には,1フィールド又は
1フレーム分の表示映像であるVD1及びVD2のいずれも表示されていないこと
も図示されている。すなわち,この消灯期間では,両光源が消灯しているので,L
CDの全画面が黒色であり,観察者はVD1,VD2のいずれの映像も見ることが
できない。
そして,甲第6号証に記載の発明における,上記消灯期間におけるLCDの全画
面は,いずれの映像も表示されていない黒色画面である点で,本件特許発明の「全
画面黒表示」と相違するものではなく,当然,その作用効果も同一である。
したがって,甲第6号証記載の発明は,本件特許発明の「LCDに1フィールド
あるいは1フレーム分の映像信号を入力する毎に,前記LCDに全画面黒表示を行
わせる」構成を備えるものであり,ただ,LCDに全画面黒表示を行わせるための
手段として,本件特許発明は「全画面黒信号を入力する」構成によっているのに対
し,甲第6号証記載の発明は「線状光源LL1,LL2の点灯期間の間に両光源の
消灯期間を設ける」技術を採用している点で相違するだけである。
したがって,審決の上記相違点の認定は明らかに誤りである。
2取消事由2(相違点についての判断の誤り)
仮に,審決の上記相違点の認定に誤りがないとしても,当該相違点についての判
断は,以下のとおり誤りである。
()審決は,上記相違点について「甲第6号証,甲第7号証および甲第4号証1,
のいずれにも本件特許発明の目的の開示はないまた甲第6号証ではすでに全。,,『
面同じ側の映像を表示させて・・・左眼用右眼用と時分割を果たしており左,』,『
眼用,右眼用を時分割』するために更なる手段を付加する必然もなく,甲第7号証
および甲第4号証は,LCD装置の表示特性上,前後の画像が重ならないようにす
るために次画像を表示する際に前画像を消去するものであり,結果的に全画面が同
時に消去状態にあったとしても,この消去動作に『全画面黒表示を行わせる』とい
う思想があるわけではない。したがって,甲第6号証,甲第7号証および甲第4号
証からは『時分割した方向像を時間的に分離して表示する』ために『全画面黒表,
示を行わせる』思想を見い出すことはできず,本件特許発明に至る動機付けを欠い
ている「甲第6号証,甲第7号証および甲第4号証のいずれにも本件特許発明。」,
の『全画面黒信号を入力する』構成の開示もない」として「相違点に係る構成が。,
甲第7号証および甲第4号証に記載されたものから容易になし得るとすることはで
きない」と判断した。。
()審決のいう「本件特許発明の目的」とは「立体映像表示装置に関し,異な2,
る画像時分割した方向像を順次表示するLCD立体映像表示装置において左(),『
右両眼に左右映像が分離投影されず,立体映像として観察できない』という問題点
の解消」を意味するものである。
しかるところ,甲第7号証には「上に説明されたシステムが画素列間の画像フ,
リップを使用する際,ランプの1つの集合と他との間をスイッチするとき,左及び
右眼画像の位置をフリップするためにLCD上の画素が変化する短い期間の全体又
はほとんどの間中両ランプをオフに維持することが望ましい。そうしなければ,デ
ィスプレイの画素が1つの状態から次に変化している短い時間中,二重画像が瞬間
だけ眼に見えるようになる(甲第8号証34頁16∼21行(甲第7号証の翻訳。」
文は,甲第8号証で代用する。以下同じ)との記載があり,この記載は,例えば。)
「右眼画像列→左眼画像列→右眼画像列→左眼画像列・・・」の順に配置された原
画面の画素列を「左眼画像列→右眼画像列→左眼画像列→右眼画像列・・・」の,
順に配置された次画面の画素列に切り換える(フリップ」は「切り換える」とい「
う意味である)際,LCD上の画素が変化する短い期間(の全期間又はほとんど。
の期間)中,両ランプを消灯する(LCD画面は黒色になる)ことをしないと,。
,,原画面と次画面の二重画像が目に入るということを述べているのでありすなわち
立体映像表示装置に関し,異なる画像(時分割した方向像)を順次表示するLCD
立体映像表示装置において「左右両眼に左右映像が分離投影されず,立体映像と,
して観察できない」という問題点と,その解決のために,ランプを消灯して,時分
割した方向像を時間的に分離して表示するという解決手段を開示するものである。
したがって「甲第7号証・・・に・・・本件特許発明の目的の開示はない」と,
した審決の判断は誤りである。
()甲第6号証記載の発明が「すでに『全面同じ側の映像を表示させて・・・3,
,』」,,左眼用右眼用と時分割を果たしていることは審決の認定のとおりであるが
甲第6号証記載の発明が,LCDを用いた立体映像表示装置である以上,立体表示
技術上の改善はもとより,LCD自体の解像度を向上させる技術が開発されれば,
その技術を適用しようとすることは,当然なされ得ることである。
例えば,甲第4号証には,液晶画素を備えるマトリックス表示システムにおける
解像度を改善する技術に関し「表示フィールドが見る人に表示される順次の期間,
が,ほぼ表示出力が生成されない時間間隔によって分離されるように,画素の行を
駆動することによって動作する。生じる暗い時間間隔は,動いている像の知覚され
る解像度を改善する(甲第5号証1頁左欄【要約】7∼11行(甲第4号証の翻。」
訳文は甲第5号証で代用する。以下同じ)と記載されているのであるから,かか。)
,,る技術を適用して甲第6号証記載の発明のLCD自体の解像度を改善することは
当業者が当然試みることである。したがって,甲第6号証記載の発明が「すでに,
『全面同じ側の映像を表示させて・・・左眼用,右眼用と時分割』を果たして」い
るとしても「左眼用,右眼用を時分割』するために更なる手段を付加する必然も,『
なく」とした審決の判断は誤りである。
()甲第7号証には「しかしながら,もし帰線消去走査が使用され,LCDが4,
暗状態へ帰線消去されるならば,ランプは有意な画像劣化を伴うことなく帰線消去
期間中発光すると云える。しかしながら,もしLCDが明るい又は透明状態へ帰線
,。消去されるならば帰線消去期間が始まる前にランプは発光を停止するべきである
,。」(。そうしないとコントラストが可なり低下しよう甲第8号証40頁6∼10行
thelampsmayなおランプは・・・帰線消去期間中発光するとの部分の原文は,「」「
(甲第7号証32頁5行)であって「ランプはemitlightduringtheblankingperiod」,
・・・帰線消去期間中発光することができる」との訳が正しい)との記載があっ。
て,時分割した方向像を時間的に分離して表示するための技術として,上記()の2
ランプの消灯と並んで「暗状態」へ「帰線消去走査」することが示されている。,
そして「TFT及び強誘電体LCDの場合,LCDの走査中画素がターンオンさ,
れると,それはターンオフされるまで,この場合1ビデオフレームを表示するため
の全LCDの走査が完了し,かつ最終の画素がそれらの状態を変化する時間を持つ
までオンに滞在する甲第8号証38頁13∼16行との記載によれば走,。」(),「
査」とは画素をターンオン又はターンオフするための動作であることが理解される
ところこの動作が信号によって実施されることは技術常識であるから結局帰,,,「
線消去走査」とは,画素に信号を送り,その液晶分子の方向を制御して,LCDを
暗状態にすることを意味するものであり,これは,本件特許発明の構成の「LCD
に全画面黒表示を行わせるための全画面黒信号を入力すること」に相当するもので
ある。
したがって,審決が「甲第7号証・・・からは『時分割した方向像を時間的に,,
分離して表示する』ために『全画面黒表示を行わせる』思想を見い出すことはでき
ず,本件特許発明に至る動機付けを欠いている「甲第7号証・・・に・・・本。」,
件特許発明の『全画面黒信号を入力する』構成の開示もない」とした判断は誤り。
である。
()さらに,甲第4号証には「表示パネル10は,各画素12が開閉装置とし5,
て動作するTFT11に関連しており,且つ,行および列アドレス導線14および
,。16の組の交点に各々隣接して配置されている従来型のTFT型パネルを具える
同じ行の画素に関連する全てのTFT11のゲート端子を,共通列導線14に接続
し,この導線には動作時に選択(ゲート)信号が供給される。さらに,同じ列の全
ての画素に関連するソース端子を共通列導線16に接続し,データ(ビデオ情報)
信号を供給する。TFTのドレイン端子を,画素の一部を形成し,この画素を規
定する各々の透明画素電極18に各々接続する(甲第5号証13頁16∼23。」
行「液晶材料が,画素を通過した光を,その両端間に印加された電圧に従って変),
調させると共に,各画素は,パネルを通過した光を,その各々の画素の両端間に印
加された電圧に従って変化させることができる。画素は,印加された電圧のレベル
に従って動作し,ほとんど透過しない,すなわち黒から,ほぼ完全に透過する,す
なわち白のレベルまで変動する,複数の透過レベルを形成する。標準的なやり方に
従って,行導線14を選択信号によって順次に走査してTFTの各行を順次にター
ンオンさせ,ゲート信号と同期して画素の各行に対する列導線にデータ信号を適切
に供給することにより,パネルを時間軸で行毎に駆動し,完全な表示画像を構成す
。,。るTVディスプレイの場合画素の各行にTVラインの画像情報信号を供給する
1行を一度にアドレスすると,アドレスされた行の全てのTFT11は,選択信号
,,の持続時間によって決定される行アドレス期間に対してスイッチオンされその間
キャパシタが列導線16上のビデオ情報信号の電圧レベルに従って充電される。そ
の後,選択信号の終了によって,この行のTFTはターンオフし,それによって画
素は導線16から絶縁され,画素に供給された電荷は,画素が次のフィールド期間
において再びアドレスされるまで蓄積されるようにする(甲第5号証14頁5∼。」
20行「これを達成するために,TVフィールド期間の後半に等しいこの期間の),
間に,間隔の開始とほぼ一致する第1の行導線の選択信号によって,選択信号を行
駆動回路20によって各行導線に順番に再び供給する。この期間が続いている間,
画素をほぼ非透過状態に駆動するように選択される予め定めた基準電圧VBを列導
線16の各々に印加する。基準電圧を,列駆動回路22の出力端子と列導線の組と
の間に接続され,回路21によって供給される切り換え信号Sの制御のもとに,列
導線を行駆動回路の出力と基準電圧との間で切り換える切り換え回路35によって
印加する。行導線を,あらかじめ,画素の行が時間間隔の終了時に最終行が完了す
るまで順番にほぼ非透過状態に設定されるように,選択信号によって同じ速度にお
いて走査する(甲第5号証18頁13∼22行)との各記載があり,これらの記。」
載によれば,甲第4号証に記載された発明において,基準電圧VBは,画素電極に
印加される電圧であり,画素をほとんど光透過しない(すなわち黒色)状態にする
機能を有するものである。
したがって,審決が,甲第4号証につき「本件特許発明の『全画面黒信号を入,
力する』構成の開示もない」とした判断は誤りである。。
()本件特許発明は,甲第6号証記載の発明の「線状光源LL1,LL2の点灯6
期間の間に両光源の消灯期間を設ける」構成に代えて,甲第7号証又は甲第4号証
に記載されたLCDを全面黒表示させる信号を入力する技術を適用した程度のもの
であり,当業者が容易になし得るものである。
第4被告の反論の要点
1取消事由1(相違点の認定の誤り)に対し
原告はLCDに全画面黒表示を行わせるための手段として本件特許発明は全,,「
画面黒信号を入力する」構成によっているのに対し,甲第6号証記載の発明は「線
状光源LL1,LL2の点灯期間の間に両光源の消灯期間を設ける」技術を採用し
ている点で相違するだけであると主張する。
しかしながら,甲第6号証には,全画面黒表示についての記載はない。また,線
状光源LL1,LL2(バックライト)を消灯させれば,黒画面となることは,技
術上当然のことであり,この点に何ら技術的な意義はない。
2取消事由2(相違点についての判断の誤り)に対し
()甲第7号証に記載された発明は,強誘電体LCDであって,その帰線消去期1
間は,電界除去後も分子配向が維持される強誘電体LCDの特性上,やむを得ず必
要な期間である。これに対し,本件特許発明のLCDは,誘電分極原理(ネマティ
ック液晶)によるものであり,自発分極原理(強誘電体LCD)によるものではな
い。
,,「」,「」また甲第7号証には帰線消去フルオン又はフルオフのどちらかにする
との記載があるだけで「黒表示」との文言はない。,
()甲第4号証に記載されたマトリックス表示システム(TFT液晶ディスプレ2
イ)には,ノーマリーホワイトモードとノーマリーブラックモードとがあることは
周知であり,基準電圧VBを印加することにより「全画面黒表示」となることを規
定することはできない。
また,甲第4号証には「全画面黒表示」の記載はない。
第5当裁判所の判断
1取消事由1(相違点の認定の誤り)について
()甲第6号証には,以下の記載がある。1
「産業上の利用分野】本発明は眼鏡を必要としない立体映像表示装置に係り,特に,解ア【
(段落像度が高く,明るい立体映像を表示することのできる立体映像表示装置に関する。」
【)0001】
「【】,,イ従来の技術眼鏡を必要としないで立体映像を表示するにはなんらかの光学作用で
立体映像を構成する多方向像のうち各方向像に対応する表示光線を観察者の眼の位置で収束さ
せ,それぞれの収束点が横方向に観察者の左右両眼の間隔(瞳孔間隔)になるようにすること
によって,そこに両眼を置くと自律的に左右両眼にそれぞれ左右映像が分離投影され,立体映
(段落【)像として観察できるようにする必要がある。」0002】
・・・図5に上方から見た原理図で示すように,映像表示装置として背面照射型の液ウ「
晶表示板(LCD)など透過型映像表示板を用い,このLCDをはさんで観察者とは反対側に
複数の線状の光源Lを配置して構成するものも考えられている。LCDに表示する映像とし
ては,その表示面上に各方向像が方向の順で繰り返し並ぶようにする。図5では,方向数が立
体映像を構成しうる最低の2方向とした場合を示し,図中に示される表示画素P1は観察者の
左眼EYE1への映像を,表示画素P2は観察者の右眼EYE2への映像をそれぞれ示してい
る。図示のように,観察者の左眼EYE1と表示画素P1ならびに観察者の右眼EYE2と表
示画素P2をそれぞれ結ぶ各線の交点に線状光源Lを配置すれば,線状光源からの照射光によ
るLCD上に繰り返し並んでいる表示画素P1とP2はそれぞれ観察者の左眼EYE1と右眼
EYE2の位置に分離して収束し,ここに左右眼を置いたとき,眼鏡を必要としないで立体映
(段落【【)像が観察できるようになる。」00040005】,】
「発明が解決しようとする課題】図5について説明した従来の立体映像表示装置は,Lエ【
CDの照射光源として複数の線状光源を使用しているため,線状光源Lの輝度を高めることに
より原理的には大幅な明るさ向上が見込め,また,レンチキュラー板レンズ等を使用していな
いので収差ボケもあり得ない。従ってこの種の立体映像表示装置は,従来のスリット板やレン
チキュラー板レンズを使ったものに比し,大幅に改善されたものであるということができる。
しかしこの改善された立体映像表示装置においても他の種類の表示装置と同様方向数図,,,(
5の場合は2)の増加とともにLCDの表示面全体に1方向像の占める割合が1/方向数とな
って小さくなり,その面での解像度低下は免れ得ない。本発明の解決しようとする課題は,
図5について説明した種類の立体映像表示装置を改良して,明るい表示映像が得られるなど装
置のもつ本来的に優れた利点はそのまま維持しながら,方向数に関係なく高解像度な映像表示
段が行なえるようにしそのための立体映像表示装置を提供することが本発明の目的である,。」(
落【【)00060007】,】
「実施例】以下に添付図面を参照して実施例により本発明を詳細に説明する。図5に示オ【
す従来型との違いが一目して分かるように,本発明による立体映像表示装置を上方から見た原
理図で示したのが図1である。図1において,LCDなど透過形映像表示板の映像表示面に
は,図5のように各方向像が方向の順に繰り返し並ぶのではなく,いずれか1種類の方向像を
表わす映像VD1またはVD2が表示画素P1,P2,P3,に表示されてこれが観察者---
の左眼EYE1または右眼EYE2にそれぞれ照射されるようにする。そして映像表示面が左
眼EYE1用の映像VD1を表示しているときには,観察者からみて映像表示板の背後に配置
された複数の線状光源Lのうち●で示す左眼EYE1用の光源LL1のみを点燈し,○で示す
右眼EYE2用の光源LL2は消燈しているようにする。次の時点で映像表示面に右眼EY
E2用映像VD2が表示され,これに合わせて複数の線状光源Lのうち○で示す右眼EYE2
用の光源LL2が点燈し,●で示す左眼EYE1用の光源LL1は消燈する。この表示映像V
,,。D1VD2と線状光源LL1LL2が時間の経過とともに変化していく状態を図2に示す
以上のように,本発明は,従来LCDなど透過形映像表示板の映像表示面を空間的に分割し
て左眼用,右眼用映像を表示させていたのを,映像表示面に左眼用ないし右眼用映像として全
面同じ側の映像を表示させて,映像照射用の複数の線状光源も含めこれを左眼用,右眼用と時
分割的に切り替える(状態変化)ようにしたことに特徴があり,これにより方向数の増加等に
(段落【】∼【)よる解像度の低下を生ずることがなくなった。」00090012】
()上記()の各記載によれば,甲第6号証には,背面照射型の液晶表示板(L21
CD)等の透過型映像表示板を用いた立体映像表示装置において,LCD上に,観
察者の左眼EYE1への映像表示画素P1と,右眼EYE2への映像表示画素P2
を交互に並べ,それぞれの線状光源からの照射光により,表示画素P1とP2が各
々観察者の左眼EYE1と右眼EYE2の位置に分離して収束するようにした従来
技術における,LCDの表示面全体に対する1方向像の占める割合が,方向数の増
加とともに小さくなり,解像度が低下するという問題を,解決すべき技術課題とし
,,,てLCD表示面を空間的に分割して左眼用右眼用映像を表示させるのではなく
表示面全面に左眼用又は右眼用の同一方向の映像を表示させ,左眼用映像VD1が
表示された時は観察者の左眼位置に収束する左眼用の映像照射用線状光源LL1の
みが点灯し,右眼用映像VD2が表示された時は観察者の右眼位置に収束する右眼
用の映像照射用線状光源LL2のみが点灯するようにするとともに,かかる表示映
像と映像照射用線状光源とを,左眼用,右眼用と時分割的に切り替えるように構成
した立体映像表示装置の発明が記載されているものと認められる。
,,「,しかるところ上記のとおり甲第6号証記載の発明における表示映像VD1
VD2と線状光源LL1,LL2が時間の経過とともに変化していく状態」を示し
た図2には,下記のとおり,時間区分t1では,液晶表示板(LCD)上に映像V
D1を表示させるとともに,線状光源LL1を点灯させ,次の時間区分t2では,
表示映像をVD2に切り替えるとともに,線状光源LL2を点灯させ,この手順を
t3,t4・・・と繰り返すことにより,映像VD1と映像VD2を時分割的に切
り替えて表示させることのほか,一方の映像から他方の映像に切り替わる際に,線
状光源LL1及びLL2がいずれも消灯している時間が短時間存在することが示さ
れており,映像が時分割的に切り替わる短時間の間は,LCD表示面上に何も表示
されない状態(暗状態)となることを看て取ることができる。
【図2】
,(),そしてLCD表示面上に何も表示されない状態暗状態となるということは
LCDが全画面黒表示となるということであるから,甲第6号証記載の発明は,表
示映像が切り替わる間,線状光源LL1及びLL2のいずれをも消灯させることに
より,LCDが全画面黒表示となる構成を備えているものと認められる。
()そうすると,本件特許発明と甲第6号証記載の発明とが「本件特許発明は3,
『LCDに1フィールドあるいは1フレーム分の映像信号を入力する毎に,LCD
に全画面黒表示を行わせるための全画面黒信号を入力する』のに対して,甲第6号
『』」証にはそのようなLCDに全画面黒表示を行わせることについて記載がない点
で相違するとした審決の認定は「甲第6号証には(LCDに1フィールドあるい,
は1フレーム分の映像信号を入力する毎に『LCDに全画面黒表示を行わせる』)
ことについて記載がない(括弧内の限定は「そのような」との文言に含まれてい」
るものと解される)との部分において,誤りであるといわざるを得ない。。
もっとも,甲第6号証記載の発明における「LCDに全画面黒表示を行わせる」
技術手段は,上記のとおり,表示映像が切り替わる間(すなわち,LCDに1フィ
ールドあるいは1フレーム分の映像信号を入力する毎に,線状光源LL1及びL)
L2のいずれをも消灯させることであって,本件特許発明のように「全画面黒信号
を入力する」手段によるものではないから,審決の上記相違点の認定は,その点の
相違を摘示する限度では誤りがない(甲第6号証記載の発明についての「そのよう
な」との文言は「全画面黒信号を入力する方法により」との趣旨も含まれている,
ものと解される。したがって,仮に,甲第6号証記載の発明に他の引用例(甲第。)
4,第7号証)記載の技術事項を適用したとしても「全画面黒信号を入力する方,
法により」との構成を容易に想到することはできないと判断されるのであれば,審
決の相違点の認定に係る上記の誤りは,結局,審決の結論に影響を及ぼさないこと
になる。
そこで,進んで「全画面黒信号を入力する方法により」との構成を容易に想到,
,()することができるか否かの点に限って取消事由2相違点についての判断の誤り
につき検討する。
2取消事由2(相違点についての判断の誤り)について
()甲第7号証には,以下の記載がある。1
「1.発明の分野この発明は,コンピュータ,テレビジョン,及び同様のビューインア
グ装置内に使用される,液晶及び類似のフラットパネル伝送性三次元(3−D)ディスプレイ
及びエンハンスト解像度かつ色彩二次元(2−D)ディスプレイ内の画像解像度を改善しかつ
ルックアラウンド()ビューイングをできるようにするために設計された照明シスlookaround
(甲第8号証13頁4∼9行)テムに関する。」
「好適実施例の説明この発明の立体照明システム目的を使用するディスプレイの基本イ
構想が,このシステムを組み込んでいる立体及び2−Dディスプレイの全体構成を概略的に描
く第1図を参照して説明される。液晶パネル(LCD)又は類似の作像デバイスのような,二
次元ライトバルブアレイ(6)は,個々の画素の行と列で構築されるアレイ(6)を電子的に
走査することによって画像を発生するために使用される。このような作像デバイスの動作は,
。,()()当業者に周知である情報は通常リボンケーブルである入力10を経由してLCD6
に入力される。LCD(6)の照明は,立体又は非立体光源手段(3)によって提供され,
この光源手段は次にそのいくつかの品型において説明されるが,いくつかの型式の光源から構
築され,一部の光源は電気光学シャッタと組み合わせられる。これらの光源の発光領域は,米
国特許第5,036,385号に説明されたように,全体的に長く,細く,垂直に配向される
か,又は小さく,点状である。光源手段(3)は,電子制御モジュール(1)から入力(9)
を通して信号によって制御されかつ駆動される。制御モジュール(1)は,入力(8)を通し
てそのタイミング信号を受信し,かつLCD(6)上の画像の発生と適当に同期を取らされた
光フラッシュの順序を発生する。光源及び電気光学シャッタに加えて,光源手段(3)は,適
当な反射器,機械的支持機構,冷却手段,及び照明システムの所望幾何学を達成するために前
。(),()記光源の位置を調節する手段を含むオペーク平坦黒色非反射性障壁96が光を光源3
()(),()から外へ出せない又は光源3から光源3以外の点から反射されないように光源3
の両側間及び両側に対するエリヤをふさぐ。障壁(96)は,光源(3)の前方のその表面に
(甲第8号証19頁9行∼20スロット又は孔を切られた平坦黒色金属板であってよい。」
頁3行)
「上に説明されたシステムが画素列間の画像フリップを使用する際,ランプの1つの集ウ
合と他との間をスイッチするとき,左及び右眼画像の位置をフリップするためにLCD上の画
素が変化する短い期間の全体又はほとんどの間中両ランプをオフに維持することが望ましい。
そうしなければ,ディスプレイの画素が1つの状態から次に変化している短い時間中,二重画
(甲第8号証34頁16∼21行)像が瞬間だけ眼に見えるようになる。」
「LCD走査のタイミング順序(この間全ての画素がアドレス指定される,次の画像成エ)
分を形成するための画素透過率変化,及び少数のランプが第2図におけるような完全解像度3
,,。−D作像に使用されるときの光源ターンオンターンオフが第3a−3c図に示されている
タイミング線図が,第3a−3c図に示されている。第3a図は,最上行で開始しかつ最下
行へ進行するLCD行の繰り返しアドレス指定を描く。第3b図は,それらの画素がアドレス
指定された後ビデオフィールド内の最初及び最後の画素のオフ又はオペーク状態からオ,『』『
ン』又はクリヤ状態への(又はこの逆の)変化,及び第2図に示された第1発光点又はランプ
(42)のフラッシングを示す。TFT及び強誘電体LCDの場合,LCDの走査中画素がタ
ーンオンされると,それはターンオフされるまで,この場合1ビデオフレームを表示するため
の全LCDの走査が完了し,かつ最終の画素がそれらの状態を変化する時間を持つまで,オン
に滞在する。第3a図に示されたように,1つのLCD走査の開始と次の開始との間の時間区
間は3つの期間に分割され,これらの間中3つの作用が起こる。すなわち,第1期間(22)
中LCDが走査されかつその行が通常最上行で開始しかつ最下行で終端する順次アドレス指定
されて,次の画像を表示するために画素の状態を変化させ,休止又は待機期間(23)中何も
起こらず,或る種のLCDにおいて有益な効果のある動作消去期間(24)中LCDは再び走
査され及び全ての画素がアドレス指定され,かつ先行画像を完全に消去するために,LCDの
。,構成に応じてフルオン又はフルオフのどちらかをするように状態を変化させられる典型的に
(甲第8号証38頁4∼25所与の行の全ての画素は,同じ時刻にアドレス指定される。」
行。なお,上記エの記載中の「TFT及び強誘電体LCDの場合」とある部分の原
文(甲第7号証)の文言は「(30頁8,」InthecaseofTFTandFerroelectricLCDs
行)であり「」が複数形であること,及びこの記載部分で問題となっている,LCDs
のは,液晶表示器(LCD)の特性であって,TFT(薄膜トランジスタ)自体が
問題となっているものではないことに照らして「TFT及び強誘電体LCDの場,
合(」とは「TFT(駆動型の)LCDInthecaseofTFTandFerroelectricLCDs),
及び強誘電体LCDの場合(」の趣旨InthecaseofTFTLCDandFerroelectricLCD)
であることが明らかである)。
「ランプは,もちろん,決して瞬間的にフラッシュはせず,短い時間にわたり発光し,オ
次いでターンオフする。ランプが発光する持続時間はそのランプに依存し,かつLEDのよう
な,或るランプで以て制御され得る。一般に,ランプは,最後の画素の変化の完了と次のアド
レス指定走査の開始との間の時間区間中にのみ発光するべきである。しかしながら,もし帰線
消去走査が使用され,LCDが暗状態へ帰線消去されるならば,ランプは有意な画像劣化を伴
うことなく帰線消去期間中発光すると云える。しかしながら,もしLCDが明るい又は透明状
態へ帰線消去されるならば,帰線消去期間が始まる前にランプは発光を停止するべきである。
(甲第8号証40頁2∼10行。なそうしないと,コントラストが可なり低下しよう。」
お「ランプは有意な画像劣化を伴うことなく帰線消去期間中発光すると云える」,。
thelanpsmayemitlightduringtheとある部分の原文(甲第7号証)の文言は「,
(32頁5∼6行)であり,こblankingperiodwithoutsignificantimagedegradation.」
の文言の「」は「∼である場合がある。∼をすることがある。∼することがmay,
できよう」というような意味で用いられていることが明らかであるから,上記文。
言は「ランプは有意な画像劣化を伴うことなく,帰線消去期間中,発光すること,
ができよう」との趣旨であるものと認めることができる)。。
()上記()の各記載によれば,甲第7号証には,液晶パネル(LCD)とラン21
プとを備え,右眼用画像と左眼用画像とを切り替えて(,表示する三次元又はflip)
彩色二次元ディスプレイの照明システムの発明に関し,①右眼用画像と左眼用画像
とを切り替える短い時間の間は,右眼用ランプと左眼用ランプの両方をオフにする
ことが望ましく,そうしないと,切り替えの短時間に,二重画像が瞬間だけ眼に入
ること,②TFT駆動型LCDや強誘電体型LCDの場合は,LCDの全画素(1
フレーム)が走査され画像が表示されると,次にこのLCDの画素が走査されて状
態が変更されるまで従前の表示状態が保持されるところ,甲第7号証記載の発明の
照明システムでは,LCDの構成に応じて,LCDをすべてオンの状態又はすべて
オフの状態に走査することにより,前の表示状態を消去する制御が用意されている
こと,③ランプは,画素の変化の完了(すなわち,画像を表示する1フレーム分の
走査の完了)と次のアドレス指定走査の開始との間の時間区間中にのみ発光させる
ようにすべきであるが,帰線消去走査が使用され,LCDが暗状態へ帰線消去され
る場合は,ランプは,有意な画像劣化を招来させることなく,帰線消去期間中,発
光させたままとすることができること,以上の事項が記載されているものと認める
ことができる。
すなわち,甲第7号証は,甲第6号証記載の発明と同様,LCDと映像照射用光
源(ランプ)とを備え,表示映像(画像)と映像照射用光源とを,左眼用,右眼用
と時分割的に切り替えるように構成した立体(三次元)映像表示装置において,一
方の映像から他方の映像に切り替える際に,二重画像が瞬間だけ眼に入る(前の画
像と後の画像が表示面上で時間的に重なって,分離されないということであり,画
質の低下を招来するものであることは,技術常識上明らかである)という問題点。
があることを指摘した上,この問題点を解決するための技術手段として,第1に,
一方の映像から他方の映像に切り替える短時間の間,左眼用光源と右眼用光源の双
方とも消灯するという手段を,第2に,上記映像の切り替えの際にLCDを暗状態
(黒状態)とするような帰線消去走査を行うという手段を開示しているものといえ
るところ,これらの手段は,いずれも「LCDに全画面黒表示を行わせる」ため,
の技術手段であり,上記()のオの「帰線消去走査が使用され,LCDが暗状態へ1
帰線消去されるならば,ランプは有意な画像劣化を伴うことなく帰線消去期間中発
光すると云える(発光すると云える」との文言が「発光することができよう」と」「
の趣旨であることは,上記のとおりである)との文言にかんがみて,相互に代替。
することのできる並列的な手段として開示されたものであることは明らかである。
そして,このうちの第1の手段は,甲第6号証記載の発明が採用した構成であり,
また,第2の手段は,本件特許発明が採用した「全画面黒信号を入力する」構成に
ほかならない。
そうすると,上記のとおり,表示映像が切り替わる間(すなわち,LCDに1フ
ィールドあるいは1フレーム分の映像信号を入力する毎に,線状光源LL1及び)
LL2(すなわち,右眼用光源及び左眼用光源)のいずれをも消灯させることによ
り「LCDに全画面黒表示を行わせる」甲第6号証記載の発明について,線状光,
源LL1及びLL2のいずれをも消灯させることに代えて,甲第7号証に開示され
ている「LCDを暗状態(黒状態)とするような帰線消去走査を行う」手段を採用
し,本件特許発明に係る「全画面黒信号を入力する方法により」との構成とするこ
とは,当業者であれば,容易になし得たものと認めることができる。
()被告は,甲第7号証に記載された発明は,強誘電体LCDであるのに対し,3
本件特許発明のLCDは,誘電分極原理(ネマティック液晶)によるものであると
主張するが,本件特許発明のLCDは,誘電分極原理(ネマティック液晶)による
ものであることは,本件特許発明の要旨の規定するところではなく,上記主張は,
発明の要旨に基づかないものとして失当であるまた被告は甲第7号証には黒。,,「
表示」との文言はないと主張するが,上記()のオの「LCDが暗状態へ帰線消去1
される」ことは,LCDを「黒表示」することに相当するものであるから,この主
張も失当である。
また,審決は「甲第6号証,甲第7号証および甲第4号証のいずれにも本件特,
許発明の目的の開示はない。また,甲第6号証では,すでに『全面同じ側の映像を
表示させて・・・左眼用,右眼用と時分割』を果たしており『左眼用,右眼用を,
時分割』するために更なる手段を付加する必然もなく,甲第7号証および甲第4号
証は,LCD装置の表示特性上,前後の画像が重ならないようにするために次画像
を表示する際に前画像を消去するものであり,結果的に全画面が同時に消去状態に
あったとしても,この消去動作に『全画面黒表示を行わせる』という思想があるわ
けではない。したがって,甲第6号証,甲第7号証および甲第4号証からは『時,
分割した方向像を時間的に分離して表示する』ために『全画面黒表示を行わせる』
思想を見い出すことはできず,本件特許発明に至る動機付けを欠いている。加え
て,甲第6号証,甲第7号証および甲第4号証のいずれにも本件特許発明の『全画
面黒信号を入力する』構成の開示もない」と説示する。そして,審決がここでい。
う「本件特許発明の目的」とは「左右両眼に左右映像が分離投影されず,立体映,『
像として観察できない』という問題点の解消」のことである。
しかしながら,甲第6号証及び甲第7号証に記載されている「左眼用,右眼用の
両光源をいずれも消灯すること」並びに甲第7号証に記載された「LCDを暗状態
とするような帰線消去走査を行う」ことが,LCDに「全画面黒表示を行わせる」
ことであることは,明らかであり,また,甲第7号証には,二重画像が瞬間だけ眼
に入ること(前の画像と後の画像が表示面上で時間的に重なって,分離されないこ
と)を避けるために,両光源をいずれも消灯することが記載されており(上記()1
のウ,これにより,前の画像と後の画像が時間的に分離されることも,技術常識)
上明白である。
そうすると,甲第7号証には,本件特許発明と同様の課題を解決する目的で,左
眼用,右眼用の両光源をいずれも消灯することにより,LCDに全画面黒表示を行
わせて,前の画像と後の画像を時間的に分離することが記載されており,かつ,上
,「」,「,記のとおりLCDに全画面黒表示を行わせるための技術手段として左眼用
」,右眼用の両光源をいずれも消灯することと相互に代替可能な並列的な手段として
「LCDを暗状態とするような帰線消去走査を行うこと,すなわち「全画面黒信」,
号を入力すること」が開示されていると認められるのであるから,甲第7号証に接
した当業者が,甲第6号証記載の発明の「左眼用,右眼用の両光源をいずれも消灯
すること」の技術的意義を認識し,かつ,この構成を「全画面黒信号を入力する」
構成に置き換えて,本件特許発明の相違点に係る構成とすることは,十分な動機付
けを有し,容易であることといわざるを得ず,審決の上記説示は誤りというほかな
い。
()したがって,甲第4号証の記載について検討するまでもなく,甲第6号証記4
載の発明に,甲第7号証記載の技術事項を適用し,相違点に係る「全画面黒信号を
入力する方法により」との構成を容易に想到することができるものというべきであ
る。
3結論
以上によれば,審決には,結論に影響を及ぼすべき誤りがあるから,取消しを免
れない。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
田中信義
裁判官
石原直樹
裁判官
杜下弘記

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