弁護士法人ITJ法律事務所

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○ 主文
一 原告らの訴えをいずれも却下する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
(原告A、同B、同C、同D、同E、同F、同G、同H、同I、同J、同K及び同
L(以下、原告Aらという。)について)
1 主位的請求
原告らについて、別紙当事者目録記載の肩書地において、被告が住民基本台帳法五
条ないし八条に基づく住民票の記載(住民基本台帳への登録)をする義務が存在す
ることを確認する。
2 予備的請求
原告らについて、原告らの旧住所地(熊本県阿蘇郡<地名略>)へ転入した旨の届
出に対する被告の転入届不受理処分を取消す。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
(原告Aらを除くその余の原告らについて)
1 主位的請求
原告らが別紙転入届提出日及び不受理処分通知日一覧表(以下、別紙一覧表とい
う。)記載のとおり、別紙当事者目録記載の肩書住所地へ転入した旨の届出につ
き、被告に住民基本台帳法五条ないし八条に基づく住民票の記載をする義務が存在
することを確記する。
2 予備的請求
原告らが別紙一覧表記載のとおり、別紙当事者目録記載の肩書住所地へ転入した旨
の届出につき、被告の不受理処分を取消す。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
二 本案前の答弁
主文同旨
三 請求の趣旨に対する答弁
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二 当事者の主張
(原告Aらの請求について)
一 請求原因
1 主位的請求について
(一) 原告らは、熊本県阿蘇郡<地名略>(以下、本件土地乙という。)に転入
し、別紙一覧表の各転入届提出日欄記載の日に、それぞれ被告に対して転入届を提
出したが、被告は、別紙一覧表の各不受理処分通知日欄記載の日に、これをいずれ
も不受理とする処分をなした。
(二) 原告らは、平成二年一一月二日に、熊本県阿蘇郡<地名略>(以下、同<
地名略>の土地を含め本件土地甲という。)の住所に移転した。
(三) 被告には、住民基本台帳法五条ないし八条に基づき住民票の記載をする義
務がある。
よって、被告には、原告らについて、別紙当事者目録記載の肩書住所地において、
住民基本台帳法五条ないし八条に基づく住民票の記載(住民基本台帳への登録)を
する義務が存在することの確認を求める。
2 予備的請求について
(一) 主位的請求原因事実(一)に同じ。
(二) 被告には、住民基本台帳法五条ないし八条に基づき住民票の記載をする義
務があるのであって、右各不受理処分は違法である。
よって、被告の原告らについてなした原告らの旧住所地である本件土地乙に転入し
た旨の届出に対する転入届不受理処分の取消を求める。
二 本案前の被告の主張
1 主位的請求の不適法
(一) 本件のようないわゆる義務確認訴訟は、行政庁の積極的または消極的態度
によって外部的に形成された違法状態の除去を求め、処分の相手方の法的地位を防
衛するという行政事件訴訟法に定める抗告訴訟を超えるものであって許されない。
(二) 更に、本件訴訟は行政処分をすべき義務があることの確認を求めるもので
あるが、行政処分をするかしないかは専ら行政庁固有の権限に属するものであるか
ら、裁判所は特に明文の規定がない限り、本件のような行政庁に行政処分をすべき
義務があることを確認する旨の判決であるとか、行政庁に代わって自ら処分したの
と同様の効果を生ずる判決をなすことは三権分立の原則から基本的に許されない。
(三) 仮に、そうでないとしても、本件のような義務確認訴訟は法定抗告訴訟に
対し補充的地位に立つものであり、法定抗告訴訟によっては救済できない場合、行
政庁の権限、義務が一義的に明白であって、一次的判断権を行使させる必要がない
場合等の厳しい要件が要求されるところ、本件の場合、仮に被告の不受理処分が違
法であれば、法定抗告訴訟たる取消訴訟により、十分救済できるのであり、また、
被告が受理・不受理の決定をするにあたっては、原告らの住所が当該届出地にある
か否か、あるいは当該届出地を住所と認めることができるか否かを含め、住所の認
定に関する一切の調査をすることができるのであるから、被告の義務の存否が一義
的に明白とはいえないのであって、原告らの請求は不適法である。
2 予備的請求の不適法
(一) 原告らの請求は、行政事件訴訟法一四条に定める出訴期間を経過してお
り、不適法である。
(二) 原告らが本件土地乙に住所を有しないことは明らかであって、原告らには
取消を求める利益がない。
三 請求原因に対する認否及び本案に対する被告の主張
l主位的請求について
(一) 請求原因(一)の事実は認める。
(二) 請求原因(二)の事実は知らない。
(三) 請求原因(三)は争う。
2 予備的請求について
(一) 請求原因(一)の事実は認める。
(二) 請求原因(二)は争う。
3 本案に対する被告の主張
(一) 転入届に基づき住民票に記載するためには、転入者が転入届記載の住所地
に「住所」、すなわち生活の本拠を有していなければならないが、右生活の本拠の
認定は、居住の意思と居住の事実の総合判断によるところ、本件土地甲において
は、その居住実態についての確認が著しく困難な状況にあり、調査によっても容易
に生活の本拠を認定することは不可能であり、本件土地乙については、その賃借期
間が平成二年七月二〇日から三か月というごく短期間のものであること等から、単
なる一時的居所という性格のものであり、生活の本拠と認定することはできない。
(二) 本件土地甲は、国土利用計画法及び森林法に違反して取得開発され、かつ
熊本県知事の開発中止命令をも無視して開発を続行してきたものであり、本件土地
乙はこれと密接不可分の関係にあり、農地法・農業振興地域の整備に関する法律に
違反して建築された建物の所在地であるのであって、このような悪質な違法行為は
原告らオウム真理教そのものによって作出されたものであるから、原告らの転入届
を受理することは、法体系の統一性を害し、その整合性を著しく損なうことになり
許されない。
四 被告の主張に対する原告らの反論
1 主位的請求の適法性
(一) 義務付け訴訟の許容性について
取消訴訟のみでは行政からの国民の救済手段としては不十分である。
(二) 本件においては、義務付け認容判決のための要件を備えている。
(1) 一義的明白性について
住民基本台帳法は任意調査を原則としており、立入り調査も任意調査であって、同
法も実務も立入り調査を全く予定していない。したがって、原告らが仮に調査を拒
否したとしても、これを理由として住民票不受理の理由とすることは、被告の職権
濫用である。
原告らは、本人が役場窓口を訪れて転入手続を行っており、被告側はそこでパスポ
ートや運転免許証等の提示によって本人確認を終了しており、原告らが肩書住所地
に居住していることは、
平成二年一〇月の国勢調査により原告らを含む合計四六九名が肩書地住所に居住し
ていることが公に確認されたというべきである。
転入届に対し住民票に記載することは、住民基本台帳法一条、三条からも分かるよ
うに、一義的に明白な羈束行為であり、被告の裁量の働く余地がなく、本件では転
入届不受理という被告の第一次判断はすでに行使されている。
(2) 緊急性について
住民票に記載されないことによって、原告らは、国民の重要な基本的人権である参
政権、例えば選挙権・被選挙権・事務の監査請求権・議会の解散請求権を行使でき
ず、国民健康保険やパスポートの交付等も受けられず、ゴミやし尿の回収などの行
政サービスも拒絶され、更に義務教育の対象となる子供が義務教育を受けられない
といったなどの重大な不利益が存在する以上、緊急に救済される必要がある。
(3) 補充性について
本件においては、本件不受理処分を取り消したとしても、その後何らの処分もしな
いことが十分に予想される。すなわち、被告は原告らの転入届事務に関して「受
理」の前段階として「受付」「保留」なる概念を案出し、「受付」しない、「受
付」はするが「受理」しない、あるいは「受付」しても「保留」としておくといっ
た変則的対応をし、何とか「受理」まで至らせないようにするという作為的態度が
明白であった。
更に、際限なく不受理処分の理由を持ち出して来ることが十分に予想されるのであ
って、法定抗告訴訟によっては原告らの救済の実効性がない。
(三) 以上によれば、主位的請求は適法である。
(原告Aらを除くその余の原告らについて)
一 請求原因
1 原告らは、別紙当事者目録記載の肩書住所地に転入し、別紙一覧表の各転入届
提出日欄記載の日に、それぞれ被告に対して転入届を提出したが、被告は、別紙一
覧表の各不受理処分通知日欄記載の日に、これをいずれも不受理とする処分をなし
た。
2 被告には、住民基本台帳法五条ないし八条に基づき住民票の記載をする義務が
あるのであって、右各不受理処分は違法である。
よって、主位的に、被告には、原告らについて、別紙当事者目録記載の肩書地にお
いて、住民基本台帳法五条ないし八条に基づく住民票の記載(住民基本台帳への登
録)をする義務が存在することの確認を求めるとともに、予備的に、原告らが別紙
一覧表記載のとおり、
別紙当事者目録記載の肩書住所地へ転入した旨の届出につき、被告がなした不受理
処分の取消を求める。
二 本案前の被告の主張
1 主位的請求の不適法
原告Aらに対する本案前の被告の主張1に同じ。
2 予備的請求の不適法
原告Aらに対する本案前の被告の主張2の(一)に同じ。
三 請求原因に対する認否及び本案に対する被告の主張
1 請求原因1の事実は認める。
2 請求原因2は争う。
3 本案に対する被告の主張
原告Aらに対する請求原因に対する認否及び本案に対する被告の主張3に同じ。
四 被告の主張に対する原告らの反論
原告Aらに関する被告の主張に対する原告らの反論に同じ。
第三 証拠(省略)
○ 理由
一 各主位的請求(義務確認訴訟)の適法性について
1 行政庁に対し作為義務の確認を求める訴えについては、行政事件訴訟法に明文
の規定はない。このような場合、三権分立の原則からして、当該行政行為をなすこ
とまたはなさないことの行政庁の第一次判断権は尊重されるべきものであって、裁
判所の審理・判断は基本的には事後審査を原則とすると解されるところ、右に鑑み
ると、原告らの各主位的請求のような義務確認訴訟は無条件に許されるということ
はできず、行政庁が当該処分をなすべきこと又はなすべからざることについて法律
上羈束されており、行政庁に自由裁量の余地が全く残されておらず、事前審査を認
めないことによる損害が大きく、事前の救済の必要性が顕著であって、他に適切な
救済方法がない場合に限って許容されるものというべきである。
2 ところで、本件の場合には、原告らには、端的に不受理処分の取消を求める訴
訟によって救済を図る方法があり、現に原告らも予備的請求として主張していると
ころである。原告らは取消訴訟では救済の実効性がない旨主張するが、取消訴訟に
よって不受理処分が取り消された場合には、行政事件訴訟法三三条二項により、被
告は、判決の趣旨に従って改めて申請に対する処分をしなければならないのである
から、右主張を直ちに採用することはできない。
3 したがって、原告らの各主位的請求はいずれも義務確認訴訟における「他に適
切な救済方法がない」という補充性の要件を欠くものというべきであって、不適法
なものであるといわざるをえない。
二 各予備的請求の適法性について
そこで、
不受理処分の取消を求める訴訟について検討する。
1 住民基本台帳法三二条、三一条の二によれば、市町村長がした処分の取消しの
訴えは、都道府県知事に対する審査請求の裁決を受けた後でなければ、提起してば
ならないと規定している。
2 ところで、弁論の全趣旨によれば、本件においては、原告らが熊本県知事に対
する審査請求を経由していないことは明らかであるから、原告らの取消訴訟は、不
適法である。(なお、弁論の全趣旨によれば、原告らは、審査請求をしても県が不
受理処分を支持する裁決をすることは明らかであるとして、県知事に対する審査請
求をしなかったことが窺われるが、被告と県知事とでは当事者を異にすることを考
慮すると、どのような裁決となるかそれほど明らかであるとはいえないうえ主観的
な予測によって事を決することもできないから、裁決を経ないことにつき正当な理
由があるとまではいえない。)
三 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告らの訴えはいず
れも不適法であるから却下することとし、訴訟費用の負担については行政事件訴訟
法七条、民事訴訟法八九条、九三条一項を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 足立昭二 大原英雄 横溝邦彦)
別紙(省略)

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