弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中被告人に関する部分を破棄する。
     被告人を懲役二年に処する。
     原審における未決勾留日数中四〇〇日を右刑に算入する。
     この裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予する。
     原審における訴訟費用中証人A、同B、同C、同D、同E、同F、同
G、同Hに支給した分は原審相被告人I、同J、同K、同L、同M、同Nとの連帯
負担とする。
     原審の訴因変更許可決定により追加された、被告人が昭和四四年一〇月
二一日午後七時二五分ころ東京都新宿区a町b丁目c番地O交差点付近道路上で兇
器準備集合、公務執行妨害をした、との訴因については、公訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は被告人P、弁護人高木伸學、同千葉睿一連名提出の控訴趣意書
に記載されたとおりであり、これに対する答弁は検事辰巳信夫提出の答弁書のとお
りであるからここにこれらを引用する。
 控訴趣意第二点について。
 論旨は、要するに、原判決は、被告人が昭和四四年一〇月二一日午後七時五分こ
ろ東京都新宿区戸塚町二丁目一九一番地警視庁戸塚警察署前付近路上においてした
兇器準備集合及び公務執行妨害の各所為と同日午後七時二五分ころ同都同区a町b
丁目c番地先O交差点付近路上においてした前同各所為をもつて、それぞれ同一犯
意を継続して行つた兇器準備集合及び公務執行妨害の各包括一罪となる所為と判断
し、原審第八回公判において、検察官が前記戸塚警察署前付近路上の各所為につい
ての当初の訴因に、前記O交差点付近路上の各所為についての訴因を追加する訴因
変更の請求をしたのを許可したのは、公訴事実の同一性のない事実について訴因変
更を許可したもので判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続上の法令違反をし
たものであり、またこれにもとずいて原判示事実を認定したのは審判の請求を受け
ない事件につき判決をしたもので刑訴法三七八条三号後段の事由に当る違法があ
る、また仮りに右訴因変更許可決定が当初の訴因事実を明確にしただけのものとす
るならば、右訴因変更によつても、包括一罪とした各行為はそれぞれ明確にされて
いないのに一括したまま審理の対象としたもので、訴因不特定のまま訴訟手続を進
行させた訴訟手続上の法令違反があり、これが判決に影響を及ぼすことが明らかで
ある、というのである。
 記録によると、原審第八回公判期日において、検察官は左記の訴因、すなわち、
 被告人は
 第一昭和四四年一〇月二一日午後七時五分過ぎころ、東京都新宿区戸塚町二丁目
一九一番地戸塚警察署前付近道路上において、多数の者が共同して投石、火炎びん
投てき、殴打等により警備の警察官らの身体・財産に対し危害を加える目的をもっ
て多数の石塊・火炎びん・鉄パイプ等を準備して集合した際、鉄パイプを所持して
右集団に加わり、もつて他人の身体・財産に対し共同して害を加える目的で兇器を
準備して集合し、
 第二 多数の者と共謀のうえ、前同日向時刻ころ、前同所付近において、被告人
らの違法行為を制止・検挙する任務に従事中の警視庁警察官らに対し、多数の石塊
や火炎びんを投げつけ、鉄パイプで殴りかかるなどの暴行を加え、もつて右警察官
らの職務執行を妨害し
 たものである、
 との訴因につき、
 公訴事実第一の記載中、「午後七時五分過ぎころ」の次に、「から午後七時二五
分ころまでの間」を、「戸塚警察署前付近道路上」の次に、「および同町b丁目c
番地先O交差点付近路上」を加える、
と書面にもとずいて訴因変更請求をし、口頭で右訴因変更は公訴事実第二について
も請求するものである旨補足し、同第九回公判期日において、原審は右訴因変更を
許可する旨の決定をしたことが明らかである。
 右訴因変更請求は、公訴事実第二にも及ぶ旨が検察官提出の訴因変更請求書には
明確に指摘されていないが、公訴事実第一について日時、場所が変更されたもので
あるから、公訴事実第二の「前同日同時刻ころ、前同所付近において」は、これを
うけて変更されたものと解することもできること、検察官が口頭でこの趣旨を明ら
かにしていること、第八回公判期日における訴因変更請求の手続の効果は同日不出
頭許可をうけて出頭しなかつた被告人にも及ぶこと、同公判期日における弁護人の
訴因変更申請に対する意見も不出頭の被告人に対しても訴因変更請求があつたこと
を前提としていること等からみて、右訴因変更は公訴事実第二についてもされたも
のと認めるのが相当である。
 そこで当初の訴因事実と訴因変更により追加された訴因事実との間の公訴事実の
同一性について検討する。
 記録、原審の取り調べた各証拠、当審の事実取調の結果によると、被告人は昭和
四四年一〇月二一日午後七時五分過ぎころ、東京都新宿区戸塚町二丁目一九一番地
警視庁戸塚警察署前付近のいわゆるQ通り路上で、約二〇〇名からなる軍団組織に
編成された学生らが共同して、警備中の警察官らの身体・財産に対し危害を加える
目的をもつて、多数の者が火炎びん・鉄。パイプ等を所持して集合した際、鉄パイ
プ一本を持つてこれに加わつたこと、同所で、右学生らと共謀のうえ、被告人らの
右の違法行為の制止・検挙に当つた警視庁第五、第七、第八方面機動隊に属する警
察官らに対し、投石、火炎びん投てき等をしてその公務の執行を妨害したこと、右
集団は右機動隊によつて直ちに規制され、一部の学生らは逮捕され、他の学生らは
前記Q通りを北方に、あるいは東西両側の路地に算を乱して逃げ去り、付近は静穏
に復したこと、被告人は右道路東側の路地に逃げ込み、そのうちに付近に逃げ込ん
だ他の学生らも三三五五加わつて三〇ないし四〇名となり、ともかくd地区に行こ
うとして通称R通りに出たこと、その後同日午後七時二五分ころ前同町b丁目c番
地先O交差点付近で機動隊が阻止線を張つているのを見て、これを突破しなければ
d地区へは到達できないとして、携えていた火炎びん、鉄パイプをもつて、共同し
て右警備中の警視庁第八方面機動隊に属する警察官らの身体・財産に害を加える目
的をもつて、集団となり、たがいに意思を通じて右警察官らの阻止線に突進し、火
炎びんを投げつけ、鉄パイプ等で殴りかかり右警察官らの被告人らの違法行為を制
止・検挙する公務の執行を妨害したこと、被告人は同所付近で、兇器準備集合、公
務執行妨害で現行犯逮捕されたことが認められる。
 <要旨>右の事実関係から考察すると、当初の約二〇〇名の学生らの組織的集団に
よる戸塚警察署前付近路上における兇器準備集合状態は、同集団の同所にお
ける機動隊員に対する投石、火炎びんの投てき等の所為に対する機動隊の規制によ
つて四散し、一度解消したもので、刑法二〇八条ノ二にいう「集合」の要件を欠く
に至つたものであり、その後の前記O交差点付近路上での集団は、時間的、場所的
な近接性、当初の集団である約二〇〇名の中の約三〇ないし四〇名ではあるが、と
もかく当初と集団構成員が共通していること、数量は少くなつたが当初と兇器の同
一性があることか認められるにしても、当初の組織的集団の解消後新たに生じた集
団であり当初の集団の継続とは認められずまた証拠によれば前に戸塚警察署前付近
路上において阻止線隊形を張り右約二〇〇名の学生集団の公務執行妨害の対象とな
つた警察官らとO交差点付近路上において阻止線を張つて右約三〇ないし四〇名の
学生の公務執行妨害の対象となつた警察官らとはその人数、構成内容においてもそ
の対抗力においても異なつていたものであり、右戸塚警察署付近路上における学生
集団と機動隊との衝突による紛争は一旦鎮静され、その紛争状態は右O交差点付近
に至る間の道路上で継続しではいないのであるから、右両地点における兇器準備集
合及び公務執行妨害の各所為はそれぞれ日時、場所を異にする別個の紛争であり、
これをそれぞれ包括して一罪として評価することはできず、各独立した数罪となる
と認めるのを相当とする。
 それゆえ、原審が前記のように検察官の訴因変更請求を許可したのは公訴事実の
同一性の限度を害したもので、刑訴法三一二条一項に違反し、これにもとずき審理
判決をしたのは刑訴法三七八条三号後段の審判の請求を受けない事件について判決
をした違法があり、予備的主張について判断するまでもない。
 原審は本件において、当初の訴因事実及び変更後の訴因事実をそれぞれ認め、そ
れぞれ兇器準備集合及び公務執行妨害の包括一罪の不可分の関係にあるものとして
認定処断しているのであるから、刑訴法三九七条一項、三七九号、三七八条三号後
段により、原判決中被告人に関する部分の全部につきこれを破棄すべきであるが、
本件控訴趣意中、警察官らの原判示第二の警察官らの職務執行は適法性を欠く旨主
張する点は、証拠によると、警察官らは、被告人らが兇器準備集合の違法行為に出
たため、その現に行われている犯罪を制止し、検挙するに至つたものであることが
認められるから、公共の安全と秩序の維持を職責とする警察官の正当な職務執行で
あることは明らかで到底採用できないし、被告人の所為が違法性を欠くとの主張、
量刑不当の控訴趣意については後に判断を示すとおりであつて、同法四〇〇条但書
によつて当裁判所において更に次のとおり判決する。
 (罪となるべき事実)
 被告人はS同盟に所属し、昭和四四年一〇月二一日のいわゆる一〇・二一国際反
戦デーにおいて、機動隊の阻止線を突破し、d地区を制圧すると共に首相官邸を占
拠するとのスローガンの下に、同年九月五日T大学U校舎で開催された右同盟の下
部組織であるV戦線の結成大会において、Wと称する部隊が組織編成された際、右
V戦線の議長となつたものであるが、
 第一 昭和四四年一〇月二一日午後七時五分過ぎころ、東京都新宿区戸塚町二丁
目一九一番地警視庁戸塚警察署前付近道路上において、約二〇〇名の学生らが共同
して、投石、火炎びんの投てき、鉄パイプ等による殴打等により警備中の警察官ら
の身体、財産に危害を加える目的をもつて、多数の石塊、火炎びん、鉄パイプ等を
準備して集合した際、鉄パイプ一本を所持して右集団に加わり、もつて他人の身
体、財産に対し共同して害を加える目的で兇器を準備して集合し、
 第二 右の約二〇〇名の学生らと共謀のうえ、前同日同時刻ころ、前同所付近に
おいて、被告人らの違法行為を制止し、検挙する職務に従事中の警察官らに対し、
多数の石塊、火炎びんを投げつけ、鉄パイプで殴りかかる等の暴行を加え、もつて
右警察官らの職務の執行を妨害し
たものである。
 (証拠の標目)(省略)
 被告人、弁護人らは、被告人の本件所為は目的において正当であり、当時の情況
上やむをえない所為であつて、全法秩序からみて超法規的に違法性を阻却すると主
張するが、被告人がどのような政治的信条をもつにせよ、そのこと自体は自由であ
るが、これを達成するために判示のように社会の平穏、秩序を侵害するような過激
な実力を行使することは現行法秩序においては到底これを容認することができない
ものであるから、右主張は採用できない。
 なお本件当時における警察官らの職務執行が違法であることを前提として正当防
衛を主張する点があるけれども、その前提において失当であることはすでに判示し
たところにより明らかであるから右主張は採用できない。
 (法令の適用)
 被告人の判示所為中第一は刑法二〇八条ノ二、一項、罰金等臨時措置法三条一項
一号(刑法六条、一〇条により昭和四七年法律第六一号による改正前のもの。)
に、同第二は刑法九五条一項、六〇条に該当するから、所定刑中いずれも懲役刑を
選択し、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条によ
り重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役二年に処
し、同法二一条により原審における未決勾留日数中四〇〇日を右刑に算入するが、
被告人が現在本件の所為について反省をし、政治的活動から退いて学業に励んでお
り、節度のある社会生活を続けることが期待できる等の情状に照し同法二五条一項
を適用し、この裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予することとし、原審にお
ける訴訟費用中証人A、同B、同C、同D、同E、同F、同G、同Hに支給した分
のは刑訴法一八一条一項本文、一八二条により原審相被告人I、同J、同K、同
L、同M、同Nとの連帯負担とする。
 なお、
 被告人は
 第一 昭和四四年一〇月二一日午後七時二五分ころ東京都新宿区a町b丁目c番
地先O交差点付近路上において、多数の者が共同して投石・火炎びん投てき、殴打
等により警備の警察官らの身体・財産に対し危害を加える目的をもつて、多数の石
塊・火炎びん・鉄パイプ等を準備して集合した際、鉄パイプを所持して右集団に加
わり、もつて他人の身体・財産に対し共同して害を加える目的で兇器を準備して集
合し、
 第二 多数の者と共謀のうえ、前同日同時刻ころ前同所付近において、被告人ら
の違法行為を制止・検挙する任務に従事中の警視庁警察官らに対し、多数の石塊や
火炎びんを投げつけ、鉄パイプで殴りかかるなどの暴行を加え、もつて右警察官の
職務の執行を妨害し
たものである、
との訴因変更によつて追加された部分は、検察官において公訴提起により審判を求
めるべきであるのにこの措置に出なかつたもので、原審に事実上繋属するに至つた
のに止るから、右事実については適法な公訴提起がなかつたものとして刑訴法三三
八条四号により、この点につきいずれも公訴を棄却するものとする。
 よつて主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 田原義衛 判事 吉澤潤三 判事 小泉祐康)

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