弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を禁錮一年に処する。
     ただし、本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
     原審における訴訟費用は全部被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人三宅西男提出の控訴趣意書記載のとおりであつて、こ
れに対する当裁判所の判断はつぎに示すとおりである。
 論旨第一点について。
 所論は、要するに原判決は判示第一として業務上過失致死の事実を、第二として
酩酊運転の事実を各認定し、右第一及び第二の罪を併合罪として処断しているが、
右両罪は本件事実関係のもとでは刑法第五四条第一項前段により一罪として処断す
べきであるから、原判決は法令の適用を誤つたものであるというのである。
 <要旨>よつて、審按するのに、原判決挙示の各証拠によれば、原判示とほぼ同様
の事実、即ち被告人は原判示の日時清酒約六合位を飲んで酩酊し、普通貨物
自動車を運転して判示道路を進行中、前方を注視することも、ハンドルを確実に操
作することもできない状態に至つたことを自覚したので、このような場合自動車運
転者としては酔がさめて正常な運転ができるようになるまで運転を中止し、もつて
事故を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り敢えて右運転を継
続したため、判示古賀新市a附近道路にさしかかつた際には泥酔状態に陥り、正常
な注意力、判断力も運転能力も全く失い、折から右道路右側端に駐車中の軽四輪自
動車の前部に自車の前部を激突させて軽四輪自動車を後退させ、たまたま同所を通
行中のAに同車の後部車体を衝突させて転倒させ、同人を死亡するに至らしめたこ
とが認められ、このような本件事故の経過に徴すると、本件事故発生の直前におい
て前方を注視し、衝突事故を避けるため適宜の措置をとる等通常の運転者に期待さ
れうる注意義務の遵守を、被告人に対し期待することは右のような心身の状況にて
らし殆んど不可能であるから、この点で被告人の過失責任を認めることはできず、
原判決認定のとおり被告人に運転中止を期待しえた時点においてそれにもかかわら
ず被告人が敢えて酩酊運転を継続したこと自体を本件業務上過失致死罪における過
失行為と認める外はない。そしてこのように業務上過失致死事件において過失行為
が酩酊運転行為以外には認められない本件のような場合には、自然的、社会的事実
として一個である酩酊運転の行為が右道路交通法違反罪に触れると同時に業務上過
失致死罪にも触れる場合にあたると解するのが相当である。
 従つて、被告人の本件道路交通法違反罪と業務上過失致死罪とは想像的競合の関
係にあり、刑法第五四条第一項前段第一〇条により一罪として処断すべきである。
然るに、原判決が右両罪を刑法第四五条前段の併合罪であるとして処断したのは法
令の解釈及び適用を誤つたもので、その誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかで
あるから、論旨は理由がある。
 以上説示のとおり原判決には刑事訴訟法第三八〇条に規定する事由があるので、
論旨第二点についての判断を須いず、同法第三九七条第一項に則り原判決を破棄
し、同法第四〇〇条但書に従つて更に次のように判決する。
 原判決が確定した事実に法律を適用すると、被告人の判示第一の所為は刑法第二
一一条前段に、判示第二の所為は道路交通法第六五条、第一一七条の二第一号、同
法施行令第二六条の二に各該当し、右は一個の行為で数個の罪名に触れる場合であ
るから、刑法第五四条第一項前段、第一〇条により重い判示第一の罪の刑に従い処
断することとし、所定刑中禁錮刑を選択し、その刑期の範囲内で被告人を禁錮一年
に処し、なお被告人の本件過失は重大で人一名を死亡させた責任はまことに重大で
あるが、被告人には何らの前科なく、本件事故後被害者の遺族に十分の誠意を示し
三一〇万円の損害賠償の示談を成立させ、現在までその内金二一三万円以上を支払
つていることその他諸般の情状を考慮するときは刑の執行を猶予するのが相当と思
料されるので、刑法第二五条第一項を適用し、本裁判確定の日から三年間右刑の執
行を猶予し、原審における訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項本文により全部
被告人に負担させ、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 柳原幸雄 裁判官 至勢忠一 裁判官 武智保之助)

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