弁護士法人ITJ法律事務所

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       主   文
原告の請求は、棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
この判決に対する上告のための附加期間を九十日とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
 原告訴訟代理人は、「特許庁が、昭和四十一年十一月三十日、同庁昭和三九年審
判第五、七三〇号事件についてした審決は、取り消す。訴訟費用は、被告の負担と
する」との判決を求め、被告訴訟代理人は、主文第一、二項同旨の判決を求めた。
第二 請求の原因
原告訴訟代理人は、本訴請求の原因として、次のとおり述べた。
一 特許庁における手続の経緯
 被告は、昭和三十九年十一月二十四日、原告を被請求人として、原告の権利に属
する登録第二二九、三六三号「電話機」に関する登録意匠につき登録無効の審判を
請求し、昭和三九年審判第五、七三〇号事件として審理されたが、昭和四十一年十
一月三十日、「右意匠の登録は、これを無効とする」旨の審決があり、その謄本は
昭和四十二年一月十一日原告に送達された(出訴のための附加期間三か月)。
二 本件審決理由の要点
 本件審決は、まず、「被請求人は、請求人が本件審判を請求するにつき利害関係
がないと争つているが、その主張には何らの立証がなく、請求人が本件審判請求に
つき利害関係がないものとすることはできない」としたうえ、本件登録意匠とHo
useBeutiful(一九六〇年発行の十一月号)の第一二二頁に掲載された
電話機の意匠とを比較し、両者はその構成が類似するから、本件登録意匠は意匠法
第三条第一項第三号の規定に該当し、その登録は、同条の規定に違反してされたも
のであり、これを無効にすべきものである、とした。
三 本件審決を取り消すべき事由
 本件審決は、請求人である被告は、本件登録無効の審判請求につき利益がないに
かかわらず、これを看過誤認したものであり、その点において違法であり(その他
の実質的判断の正当性は争わない)、取り消されるべきものである。すなわち、現
行意匠法は、第一次には意匠権の権利としての法的安定を重視する立場をとるもの
であるから、登録意匠につき登録無効の審判を請求しうる者は、
当該意匠権の存在することにより何らかの不利益を感ずる者、すなわち、右審判を
請求するについて法律上の利益を有する者でなければならないと解するを相当とす
るところ、被告がその取締役である三商物産株式会社及びその前身である株式会社
三晃宝飾は、設立当初より現在に至るまで、本件登録意匠にかかる物品(電話機)
とは無関係の業務(その営業目的には電話機の製造・販売・輸入等の業務はない)
を行なつているものであり、その一取締役である被告も、右会社と同様、本件登録
意匠の存在することに何らの痛痒を感じない筈のものである。仮に被告が将来、本
件登録意匠にかかる電話機の輸出業務を行う意思があつたとしても、それだけでは
利害関係人とはいえないし、また、登録無効審判請求の利益もないものである。
 ちなみに、現在わが国における電話機のメーカーは、日本電信電話公社の認可を
受けたものに限られ、その部品メーカーも右公社から認可を受けた会社が、とくに
その認定を受けて許可されたものでなければならないし、右公社は既存メーカーの
保護育成のため電話機及びその部品のメーカーは新たには認可しない実情であり、
さらに、その輸出は海外における信用維持のため右公社の指導のもとに、既存の認
可された会社が結成した協会の輸出部で検査を受けたものでなければ輸出しえない
ことになつている。したがつて、被告において、将来とも、電話機の輸出を行なう
ことは不可能である。
第三 被告の答弁
被告訴訟代理人は、答弁として、次のとおり述べた。
 原告主張の事実中、本件に関する特許庁における手続の経緯及び本件審決理由の
要点が原告主張のとおりであることは認めるが、その余は争う。本件審決が審判請
求の利益の点に深く触れなかつたことは正当であり、この点につき原告主張の違法
はない。被告は、最初の就職先が貿易会社であつた関係上、当時(約十五年前)か
ら今日まで一貫して貿易の仕事に従事しており、輸出に向く物品は何でも手掛けて
きたが、本件登録意匠のような古風な電話機を丸善株式会社発行の工芸ニユース
(一九五五年九月号二八頁)で見、輸出商品に適すると考え、被告の輸出向商品で
ある装身具、宝石ケースと組み合せて輸出すべく(専門メーカーに発注して製作さ
せたうえ)、まず被告訴訟代理人である【A】弁理士にダイヤル式に改良して登録
できるかどうかを相談したところ、本件登録意匠の存在を知つたので、被告の輸出
計画を実行するためには、本件登録意匠の無効を先にしてその確定を待たざるをえ
ない実情となつたものである。このように、本件審判の請求は、被告個人の必要に
基いてしたものであるから、原告の主張は失当である。
第四 証拠関係(省略)
       理   由
(争いのない事実)
一 本件に関する特許庁における手続の経緯及び本件審決理由の要点がいずれも原
告主張のとおりであることは、当事者間に争いのないところである。
(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 原告は本件審決を取り消すべき唯一の事由として、本件審決が請求人である被
告が本件審判を請求するにつき法律上の利益を有しないものであることを看過誤認
したことを挙げ、その論拠として、被告は、本件登録意匠の存在により何らかの不
利益ないし痛痒を感ずる立場にはないものである旨強調するが、原本の存在及びそ
の成立に争いのない乙第三号証、被告本人尋問の結果及び本件口頭弁論の全趣旨を
総合すると、被告はかねて貿易業に従事してきたものであるが、昭和三十六年頃、
いわゆるクラシツク電話機が外国向商品として輸出に好適であると考え、バイヤー
との折衝を開始すると同時に【A】弁理士に依頼してパテントの問題を調査したと
ころ、本件登録意匠の存在する事実を発見し、以前から周知のこの種電話機に意匠
権のあることに驚き、その輸出の計画の妨げとなる本件登録意匠の登録無効の審判
を請求したものであることを認めうべく、これを左右するに足る何らの資料もない
のであるから、原告の前記主張は、その前提において、すでに失当なものといわざ
るをえない。けだし、右認定のような事実関係のもとにおいては、被告をもつて、
本件登録意匠の存在によつて少なからざる不利益ないし痛痒を感ずる立場にあるも
のとみるを相当とするからである。
(むずび)
三 叙上のとおりであるから、その主張の点に違法のあることを理由に本件審決の
取消を求める原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がな
いものというほかはない。よつて、これを棄却することとし、行政事件訴訟法第七
条、民事訴訟法八十九条、第百五十八条第二項を適用して、主文のとおり判決す
る。
(裁判官 服部高顕 三宅正雄 石沢健)

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