弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主       文
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
被告らは,北海道に対し,連帯して1340万円及びこれに対する被告株式会社
旭鉄工所,被告豊平製鋼株式会社,被告A及び被告Bについては平成13年9月2
2日から,被告株式会社田原製作所及び被告Cについては同月23日から,その余
の被告らについては同月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
第2 事案の概要
本件は,被告川崎重工業株式会社(以下,原則として「株式会社」を省略して表
記する。)及び被告丸島アクアシステムの特定建設工事共同企業体(以下「川重・
丸島JV」という。)が,北海道帯広土木現業所(以下「帯広土木現業所」という。)の
発注に係る工事番号0527の売買川改修工事を指名競争入札の方法により受注
したことについて,北海道の住民である原告が,上記指名競争入札は,指名業者
らと北海道の担当職員らとの間で行われたいわゆる官製談合によるもので,これ
により,北海道は,公正な競争によって形成されたであろう価格と現実の落札価格
との差額相当額の損害を被ったのであるから,上記指名業者及び担当職員らに対
して不法行為に基づく損害賠償請求権を有するとして,地方自治法242条の2第1
項4号(ただし,平成14年法律第4号による改正前のもの。以下同じ。)に基づき,
上記損害賠償請求権の行使を怠っている北海道に代位して,怠る事実の相手方な
いし違法な行為をした当該職員であるとする被告らに対し,損害賠償を請求した住
民訴訟である。
なお,本件訴訟において当初被告とされた酒井鉄工所及び楢崎製作所に対す
る訴えは取り下げられた。
1 前提となる事実(争いのない事実は証拠を掲記しない。)
(1) 原告は,北海道の住民である(弁論の全趣旨)。
(2) 帯広土木現業所は,平成12年5月18日,以下の内容の工事(以下「0501工
事」という。)の指名競争入札を行ったが,指名業者の入札価格がいずれも最低
制限価格(なお,予定価格及び最低制限価格は,それぞれこれに対応する予定
価格調書中の入札書比較価格をいう。以下同じ。)を下回ったため,入札を打ち
切った(甲5,8)。
工事番号  0501
工事名  売買川改修工事(放水路地区)売買川ゲート工場製作(2次補
正)
工事内容  取水堰及びこれに付随する電気設備等の工事(以下「01工
事」という。)
取水樋門及びこれに付随する電気設備等の工事(以
下「02工事」という。)
予定価格  1億4077万円
最低制限価格  1億1965万円
指名業者及び  ①川重・丸島JV       1億0800万円
その入札価格  ②被告石川島播磨重工業    1億0900万円
③被告西田鉄工及び被告豊国工業の特定建設工事
共同企業体(以下「西田・豊国JV」という。)
               1億0950万円
④被告旭鉄工所        1億1000万円
⑤酒井鉄工所及び被告田原製作所の特定建設工事
共同企業体(以下「酒井・田原JV」という。)
               1億1000万円
⑥被告栗本鐵工所       1億1030万円
⑦被告JFEエンジニアリング 1億1050万円
⑧楢崎製作所         1億1080万円
⑨被告豊平製鋼        1億1100万円
⑩被告函館どつく       1億1100万円
(3) 帯広土木現業所は,平成12年6月22日,以下の内容の工事(以下「0527工
事」といい,これと0501工事を併せて「本件各工事」という。)の指名競争入札を
行い,川重・丸島JVが,1億0800万円で同工事を落札した(甲5,8)。川重・丸
島JVは,同月27日,上記指名競争入札の結果に基づき,帯広土木現業所長
から1億1340万円(うち消費税額540万円)で0527工事を受注した(甲8)。
工事番号  0527
工事名  売買川改修工事(放水路地区)売買川ゲート工場製作(2次補
正)
工事内容  0501工事のうち,01工事に当たるもの(ただし,電気設備の
一部を除く。)
予定価格  1億0991万円
最低制限価格  9342万円
指名業者及び  ①川重・丸島JV       1億0800万円
その入札価格  ②被告石川島播磨重工業    1億0900万円
③酒井・田原JV       1億0900万円
④被告栗本鐵工所       1億0950万円
⑤被告旭鉄工所        1億1100万円
⑥被告JFEエンジニアリング 1億1200万円
⑦西田・豊国JV       1億1400万円
⑧被告函館どつく       1億1400万円
⑨楢崎製作所         1億1600万円
⑩被告豊平製鋼        1億1800万円
(4) 帯広土木現業所は,平成12年7月27日,以下の内容の工事(以下「0546工
事」という。)の指名競争入札を行い,被告西田鉄工が,2600万円で同工事を
落札した(甲8)。被告西田鉄工は,同年8月1日,上記指名競争入札の結果に
基づき,帯広土木現業所長から2730万円(うち消費税額130万円)で0546工
事を受注した(甲8)。
工事番号  0546
工事名  売買川改修工事(放水路地区)取水ゲート工場製作(2次補正)
工事内容  0501工事のうち,02工事に当たるもの
予定価格  2620万円
最低制限価格  2227万円
指名業者及び   ①被告西田鉄工          2600万円
その入札価格   ②被告旭鉄工所          2620万円
③表鉄工所            2620万円
④釧路製作所           2650万円
⑤被告豊平製鋼          2660万円
⑥楢崎製作所           2670万円
⑦日進製作所           2670万円
(5) 本件各工事の指名競争入札が行われた当時,被告Aは北海道知事,被告B
は北海道建設部長,被告Cは帯広土木現業所長の各地位にあった(なお,被告
らのうち,上記3者を併せて「被告職員」と,これに他の北海道の職員を加えて
「被告職員等」と,その余の被告を併せて「被告企業」と,これに酒井鉄工所及び
楢崎製作所を加えて「被告企業等」という。)。
(6) 原告は,平成13年6月19日,北海道監査委員に対し,本件訴訟に係る住民
監査請求を申し立てたが,北海道監査委員は,同年8月9日付けで,同監査請
求を棄却する旨決定した(甲2,3)。
原告は,同年9月7日,本件訴訟を提起した。
2 争点
(1) 被告Bに対する訴えの適法性
(被告Bの主張)
原告の被告Bに対する訴えは,被告Bが地方自治法242条の2第1項4号に
いう「当該職員」に当たることを前提とするものであると解されるが,本件各工事
について,その財務会計上の行為を行う権限は,北海道財務規則上,北海道知
事から帯広土木現業所長に直接委任されており,建設部長であった被告Bは,
上記財務会計上の行為につき権限を有しておらず,また,権限の委任も受けて
いないから,前記当該職員には当たらない。
したがって,原告の被告Bに対する訴えは,不適法であるので,却下されるべ
きである。
   (原告の主張)
    北海道には公共工事を巡る官製談合が蔓延しており,被告Bは建設部の官製談
合問題を以前から認識していたにもかかわらず,その防止策を一切講じようとせ
ずに放置したため,本件における談合を誘発し,被告企業等及び被告Cとともに
北海道に損害を与えたものであるから,他の被告らと連帯してその損害を賠償
する責任がある。
(2) 談合行為の有無
(原告の主張)
ア 0501工事の入札において,指名業者の入札価格がいずれも最低制限価
格を下回る結果となったこと,本件各工事の入札における指名業者は同一で
あるところ,0527工事は0501工事から取水樋門等の工事を除いたもので
あり,その予定価格が約3000万円下がっているにもかかわらず,0527工
事の入札における入札価格は,いずれの指名業者とも,0501工事のそれと
ほぼ同額ないしこれを上回る価格であり,予定価格に極めて近い水準となっ
ていること,本件各工事とも最低価格で入札したのは川重・丸島JVであり,そ
の入札価格も同額であることなど,本件各工事の入札については,多くの不
自然な点が存在する。また,北海道農政部が組織的に官製談合を行っていた
ことからすれば,同建設部でも組織的に官製談合が行われていた可能性が
極めて高い。
したがって,直接的な証拠はないものの,0527工事の入札に当たっては,
被告らの間で,被告Cあるいは同人の指示を受けた北海道の職員某が,平成
12年6月20日ころ,被告企業等の1社あるいは数社に対し,0527工事の落
札予定業者が川重・丸島JVであること及び同工事の入札予定価格が1億09
91万円であることを教え,このことを教えられた被告企業等が,同日ころ,一
堂に会しあるいは順次連絡を取り合いながら,同工事の入札において,川重・
丸島JVが1億0800万円で入札し,その余の被告企業等は同額よりも高い
価格で入札することを申し合わせたという,官製談合が行われていたとしか考
えらない。
イ 被告企業等は,本件各工事の指名競争入札における前記の不自然な点に
ついて,それぞれ理由がある旨主張するが,以下のとおり,いずれも不合理
である。
(ア) 被告川崎重工業及び被告丸島アクアシステムは,本件各工事の入札価
格が同額になった理由について,0501工事と0527工事では,積算の基
礎となる労務費及び機械の単価が違うこと,0527工事においては,050
1工事の場合と異なりほとんど値引きをしていないことを主張する。
しかし,他の被告企業等の関係者は,平成11年度と平成12年度を比較
して,労務費等の単価についてほとんど差異がないとしていること,再度の
最低制限価格割れを危惧したとしても,0501工事で15パーセントもの値
引きをしておきながら,0527工事では2パーセント程度の値引きしかしな
いことはあり得ないことなどからすれば,上記主張は合理性を欠く。
(イ) 被告石川島播磨重工業及び被告函館どつくは,本件各工事の入札価格
がほぼ同額になった理由について,0501工事の積算の際に取水樋門等
の工事(02工事)を見落したためであると主張する。
しかし,0501工事の設計図書を見て,同工事から02工事を見落とすこ
とは考えられないこと,平成12年3月23日に行われた第2売買川ゲート工
場製作工事(工事番号9261)においては,0501工事とほぼ同じ工事内
容,設計図書内容であったにもかかわらず,被告石川島播磨重工業を含
め,これに応札した指名業者の中には最低制限価格を下回った者が存在
しないこと,0527工事においては,0501工事から02工事が除かれただ
けではなく,01工事の電気設備の一部(464万2000円相当の工事)も除
かれたのであるから,02工事の見落しのみを理由として,本件各工事の積
算金額がほぼ同額になるということはあり得ないことなどからすれば,上記
主張は合理性を欠く。
(ウ) 被告西田鉄工及び被告豊国工業は,0501工事において最低制限価格
を下回る価格で入札した理由について,約3000万円相当の電気設備等
の工事を見落してしまったためであると主張するが,このような主張は,上
記両被告以外の被告企業等からは一切されていないことなどからすれば,
合理性を欠く。
(エ) 被告旭鉄工所,被告田原製作所,被告栗本鐵工所及び被告JFEエンジ
ニアリングは,0501工事において最低制限価格を下回る価格で入札した
理由について,0501工事では,受注意欲が高かったために大幅な値引き
に踏み切ったが,0527工事では,再度の最低制限価格割れを回避するた
めに,値引率を最小限に押さえたことなどを主張する。
しかし,上記各被告らは,受注意欲があるとしながら0527工事において
0501工事の最低入札価格より高い価格で入札していること,再度の最低
制限価格割れは絶対に避けなければならない事態ではないこと,北海道の
場合,最低制限価格は予定価格の85パーセントから3分の2までと規定さ
れているのであるから,上記各被告らの行った程度の値引きでは0527工
事の最低制限価格を下回らないことが明らかであることなどからすれば,
上記主張は合理性を欠く。
また,被告JFEエンジニアリングは,0527工事の積算に当たって,050
1工事から除かれた02工事の予定価格を1000万円程度と概算したとして
いるが,これは実際の02工事(0546工事)の予定価格である2620万円
を大幅に下回る価格であって,このような積算をすること自体あり得ない。
(オ) 被告豊平製鋼は,0501工事において最低制限価格を下回る価格で入
札した理由について,製作工数の違算や電気設備の過少積算があったた
めであると主張するが,0527工事において,0501工事の最低入札価格
よりも高い価格で入札していることなどからすれば,上記主張は合理性を
欠く。
(被告らの主張)
ア 本件請求は,不法行為に基づく損害賠償請求であるが,原告は,その要件
事実となる談合行為の主体,時期,場所,合意内容等について何ら具体的に
特定していないから,主張自体失当であって棄却されるべきである。
イ 本件各工事の入札に当たって,被告らの間で談合が行われていた事実はな
い。
原告は,0501工事の入札において,指名業者の入札価格がいずれも最
低制限価格を下回ったことや,0527工事の入札における入札価格は,いず
れの指名業者とも0501工事のそれとほぼ同額であることなどの間接事実を
基に,本件において談合があった旨主張する。しかし,北海道建設部発注に
係る指名競争入札において,すべての指名業者の入札価格が最低制限価格
を下回った事例は,本件以外にも少なからず存在すること,本件について,指
名業者及び北海道職員の関係者全員が談合行為の存在を明確に否定して
いること,後述の各被告らの主張のとおり,被告らは,本件各工事の積算方
法等について,それぞれ具体的かつ合理的な説明をしていることなどからす
れば,原告が指摘する上記間接事実をもって,被告らが談合を行っていたと
することはできない。
(被告川崎重工業,被告丸島アクアシステム,被告石川島播磨重工業,被告田
原製作所,被告旭鉄工所,被告函館どつく及び被告豊平製鋼の主張)
本件各工事の入札に参加した企業は,それぞれ独自の積算方法を用いて積
算を行い,その積算価格を基に各社各様の考え方に基づいて入札価格を決定
した。本件において,0501工事の入札では,すべての指名業者の入札価格が
最低制限価格を下回ったのに対し,0527工事の指名競争入札では,すべての
指名業者の入札価格が予定価格に近い金額となったことについては,0501工
事の入札において指名業者全員が最低制限価格を下回った直後に0527工事
の入札が行われたという事実経過による入札に対する姿勢の変化,0501工事
と0527工事の工事内容の違い,公示用設計図書の特殊な記載方法等に起因
した積算ミスの有無,各入札時点における工場稼働率の高低による落札への意
欲の多寡,入札時期の違いによる労務費単価の変更又は資材調達のメリットの
有無による積算内容の変化等の客観的条件によって生じた結果であり,談合に
よる結果ではない。
(被告栗本鐵工所の主張)
被告栗本鐵工所は,本件各工事の指名競争入札に際し,必要な工事情報を
自ら収集し,これに基づき具体的な見積りを行った上で,独自に最終的な入札
価格を決定した。
すなわち,0501工事については,担当者が帯広土木現業所に赴き,公示さ
れていた設計図書を書き写し,これを基に積算を行った。そして,見積金額を1
億4700万円とした上で,工場稼働率や受注実績等を考慮し,強い受注意欲の
下に25パーセントの大幅な値引きを行い,入札価格を1億1030万円と決定し
た。これに対し,0527工事については,同様の方法で積算を行い,見積金額を
1億2150万円とした上で,再度最低制限価格を下回ることがないように値引率
を10パーセントにとどめ,入札価格を1億0950万円と決定した。
したがって,被告栗本鐵工所の本件各工事における入札価格は何ら不合理
なものではなく,これをもって同被告の談合行為の存在を推認することはできな
い。
(被告JFEエンジニアリングの主張)
被告JFEエンジニアリングが,0501工事において最低制限価格を下回る価
格で入札した理由は,これまで北海道発注に係る水門工事の受注実績がなかっ
たことなどから,強い受注意識をもって臨んだためであり,他方で,0527工事に
おいて0501工事よりも高い価格で入札した理由は,その後の指名される機会
の喪失の危険に鑑み,再度最低制限価格を下回る事態を避けるなどの事情か
ら,値引率を抑えて慎重に価格を決定したためである。したがって,本件各工事
の入札における被告JFEエンジニアリングの積算方法は,十分な合理性を有す
るものである。
なお,被告JFEエンジニアリングは,0501工事において,02工事につき約1
000万円相当の工事であると積算しているが,これは,01工事との一括受注に
よる経費削減等の相応のコストダウンを図ることができたためであって,02工事
(0546工事)の実際の予定価格が2620万円であった事実に何ら矛盾するも
のではない。
(被告西田鉄工及び被告豊国工業の主張)
西田・豊国JVは,本件各工事の入札に当たり,被告西田鉄工の主導のもと,
設計図書の閲覧,謄写,入札価格の算定等をした。被告西田鉄工は,設計図書
中の数量調書に基づいて0501工事の積算を行ったが,同調書には開度検出
器以外の電気設備が記載されていなかった(なお,工種内訳書には電気設備の
すべてが記載されていたが,被告西田鉄工の担当者は,これを謄写していなか
った。)ため,開度検出器を除く電気設備の見積りを落としてしまい,その結果,
最低制限価格を下回る価格で入札することとなった。これに対し,0527工事に
ついては,すべての設計図書を閲覧,謄写し,見落しのないように慎重に積算を
行った上で,独自に入札価格を決定した。
(被告職員の主張)
本件各工事の入札に参加した指名業者は,いずれも独自に積算を行って入
札価格を決定したのであり,被告職員等が被告企業等に落札予定業者や予定
価格を教えた事実はない。
本件における特定建設工事共同企業体(以下「特定共同企業体」という。)の
申請手続や指名業者の選定方法には何ら問題となる点はなく,本件各工事の
入札手続に係る事実経過をもって,被告職員等が事前に落札予定業者を決定
していたことが認められることにはならない。また,0501工事に係る予定価格
調書は1つであって,01工事及び02工事のぞれぞれに対応した予定価格が決
められたり,予定価格調書が作成されたりするものではないこと,0501工事に
係る予定価格調書は,その入札日の前日に作成されたこと,0501工事の入札
前に,0527工事の予定価格なるものは存在していなかったこと,0527工事に
係る予定価格調書は,その入札日の2日前に作成されたことなどからすれば,
被告職員等が事前に本件各工事の予定価格を漏らすことはあり得ない。
(3) 損害
(原告の主張)
ア 公共事業において談合が行われた場合に地方公共団体が被る損害の額
は,適正な競争入札が行われたならば落札価格となったであろう価格(想定
落札価格)と実際の落札価格との差額とするのが相当である。
したがって,本件においては,0527工事の最低制限価格が予定価格の8
5パーセントであることから,想定落札価格は予定価格の86ないし87パーセ
ント程度になると予想され,川重・丸島JVによる実際の落札率が98.26パー
セントであることからすれば,想定落札価格と実際の落札価格との差額は,入
札価格の10パーセントを下ることはないというべきである。
イ 仮に,0527工事の想定落札価格が,予定価格の86ないし87パーセント程
度になることを認定できないとしても,本件のような公共事業における談合に
よって地方公共団体が被る損害の額を立証することは,その性質上極めて困
難であるから,裁判所は,民事訴訟法248条により相当な損害額を認定すべ
きであり,前記アのとおり,入札価格の10パーセントをもって相当な損害額と
すべきである。
そして,0501工事と0527工事の入札において被告らの間で談合が行わ
れたのであれば,0501工事から分離された02工事を内容とする0546工事
の入札においても談合が行われたとみるべきであるから,損害額は,0527
工事の落札額1億0800万円と0546工事の落札額2600万円の合計額1
億3400万円の10パーセントの額である1340万円を下ることはない。
ウ 仮に,0546工事については談合が認められないとしても,その場合の損害
額は,0527工事の落札額1億0800万円の10パーセントの額である1080
万円を下らないというべきである。
(被告川崎重工業,被告丸島アクアシステム,被告石川島播磨重工業,被告田
原製作所,被告旭鉄工所,被告函館どつく,被告豊平製鋼及び被告栗本鐵
工所の主張)
原告の主張する損害は,その発生及び額について何ら立証されておらず,民
事訴訟法248条によっても,これを認めることは許されない。
また,原告が本件において問題としている不法行為は,本件各工事の入札に
係る談合行為であるから,本件各工事とは別個の工事である0546工事の落札
価格についても損害額の対象とする原告の主張は,失当である。
第3 争点に対する判断
1 争点(1)(被告Bに対する訴えの適法性)について
被告Bは,同被告は本件各工事の指名競争入札に係る財務会計上の行為を行
う権限を有しておらず,地方自治法242条の2第1項4号にいう当該職員に当たら
ないから,原告の被告Bに対する訴えは不適法であり,却下されるべきである旨主
張する。
しかし,被告Bが上記当該職員に当たるか否かは措くとして,同号に定める訴訟
のうち,当該行為又は怠る事実の相手方を被告とするものについては,上記のよう
な財務会計上の行為を行う権限の所在は問題とならず,被告適格等の訴訟要件
を満たす限り,このような訴えも適法である。そして,原告の本件訴えは,被告らが
本件各工事の指名競争入札において官製談合を行ったことを不法行為の内容と
するものであり,そうすると,被告Bは,自らが不法行為者として,北海道から損害
賠償を請求され得る立場にあるから,同号にいう怠る事実の相手方に当たるという
ことができる。
したがって,被告Bは,本件訴えについて,怠る事実の相手方として被告適格を
有していると解され,ほかに訴訟要件を欠くなどの事情も見当たらないから,原告
の同被告に対する訴えが不適法であるとはいうことができない。被告Bの上記主張
は理由がない。
2 争点(2)(談合行為の有無)について
(1) 被告らは,原告が不法行為であると主張する本件各工事の指名競争入札に
係る談合行為は,その主体,時期,場所,合意内容等が何ら具体的に特定され
ていないから,原告の主張は,それ自体失当であると主張する。
しかし,談合行為は,秘密裏に行われることが多く,これが行われた場合に,
損害を被る側が損害の発生を直ちに認識することが困難であるという性質を有
するものであり,このような性質に鑑みれば,その特定の程度について,通常の
不法行為における場合と同様の詳細な特定を要求することは,原告に過度の負
担を強いることになり相当でない。その一方,指名業者等の間で談合の基本が
合意され,これに基づいてその後の個別入札が行われたといった談合行為の基
本的な事実関係について識別可能な程度に特定がされていれば,当該訴訟に
おける審判の対象を把握することが可能であり,被告の防御権の保障にも欠け
るところはないと解される。したがって,談合行為の内容について上記程度に特
定がされていれば,主張として必要最低限の要件を満たしているというべきであ
る。
本件においては,確かに,原告の主張する談合行為の内容は,談合行為を
行った当事者,その日時及び場所,談合行為の態様,これによって形成された
合意の内容等について,十分に特定されているとはいい難い部分がある。しか
し,被告職員等が,被告企業等に対し,0527工事の入札に係る入札予定価格
は1億0991万円で,その落札予定業者は川重・丸島JVであることを事前に漏
らしたこと,被告企業等が,0527工事の入札において,川重・丸島JVが1億0
800万円で入札し,その余の入札参加者はこれよりも高い価格で入札すること
を合意したこと,上記合意に基づいて,0527工事の入札が現実に行われたこと
といった談合行為の基本的な事実関係については,原告の主張によって識別す
ることが可能なのであるから,本件において問題とされるべき談合行為の内容
は,前記必要な程度に特定がされているというべきである。
したがって,被告らの上記主張は,採用することができない。
(2) 証拠(甲1ないし3,5ないし14,乙ア2ないし12,13の1ないし11,乙ア14,
15,16の1ないし6,乙ア17の1ないし8,乙ア18,19,20の1ないし6,乙ア
21の1ないし8,乙ア22の1ないし8,乙イ1,乙ウ1,乙エ1の1及び2,乙エ2
の1ないし3,乙エ3の1ないし3,乙エ4,乙オ1,乙カ2の1及び2,乙カ3ないし
5,6の1ないし5,証人D,証人E,証人F,証人G,証人H,証人I,証人J,証人
K,証人L,証人M,証人N)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認めら
れる。
ア 売買川放水路計画
帯広土木現業所は,平成2年ころ,帯広市内を流れる売買川の河川氾濫を
防止するため,売買川及び第2売買川に分流堰を設置し,両河川から札内川
へ通じる放水路を建設する計画(以下「売買川放水路計画」という。)を策定し
た。
売買川放水路計画は,平成15年度の完成が予定されていたところ,第2
売買川については平成11年度内に,売買川については平成12年度に入っ
てから,それぞれゲートの製作等に着手された。なお,売買川と第2売買川の
間の水路については,暫定通水を行うため,平成12年度中の完成が予定さ
れ,さらにその完成後には,同放水路地区の上流において国による農地の排
水工事が予定されていた。
このように売買川放水路計画は平成2年ころから計画されていたことに加
え,その概要等は,平成11年当時の新聞や業界紙等において掲載されてい
たことから,被告企業等の中には,これらの情報等を基に,売買川ゲート工場
製作等の工事に係る指名競争入札が実施されるであろうことを認識し,その
ころから指名に向けて営業活動等を行う企業もあった。
イ 第2売買川ゲート工場製作等の工事に係る指名競争入札の状況
帯広土木現業所は,平成12年3月23日,第2売買川ゲート工場製作等の
工事(以下「9261工事」という。)の指名競争入札を行った。
9261工事は,主に取水堰工事及び取水樋門工事から成り,その工事内
容や設計図書の体裁等において,0501工事とほぼ同様のものであった。92
61工事の入札には,被告企業等のうち,被告丸島アクアシステム,被告石川
島播磨,被告旭鉄工所,被告西田鉄工,酒井鉄工所も参加し,被告旭鉄工所
がこれを落札した。なお,9261工事の入札において,最低制限価格を下回
る価格で入札した指名業者はなかった。
ウ 本件各工事等に係る指名競争入札の経緯
(ア) 0501工事
帯広土木現業所は,0501工事について,平成12年3月21日に工事情
報を公表する予定であったが,手続的なミスにより公表が同年4月10日に
遅れ,同月12日に業界紙に掲載されることとなった。
0501工事の入札参加希望の受付期間は,上記公表日から同年4月2
4日までとされていたが,同工事の発注時期が同年5月18日に迫っていた
ことから,帯広土木現業所は,同年4月13日,指名選考委員会(所長,副
所長,管理部長,事業部長,企画調整室長及び工事契約課長の6名によっ
て構成される。以下の指名選考委員会においても同じ。)を開催し,0501
工事の指名業者を選定した。
また,特定共同企業体の資格審査手続について,帯広土木現業所は,
同月12日ころまでに特定共同企業体の結成の意向を示していた企業に対
し,口頭でその申請の有無を確認し,上記指名選考委員会においてその選
定を行った。そして,後日,選定された特定共同企業体から資格審査申請
書が提出されたが,その申請年月日は帯広土木現業所の職員によって後
から書き加えられた。なお,北海道における特定共同企業体の取扱いは,
共同企業体運用基準等によって,特定共同企業体を活用する場合の対象
工事は,概ね3億円以上の規模の工事等とする旨定められているが,帯広
土木現業所では,平成12年度において,特定共同企業体が指名競争入
札に参加した41件の工事のうち,3億円以上の工事は3件であった。
帯広土木現業所は,同月21日,上記指名選考委員会によって選定され
た指名業者に対し,0501工事の指名通知をし,同通知を受けた被告企業
等は,それぞれ帯広土木現業所に赴き,0501工事に係る公示用設計図
書等を閲覧,謄写するなどし,これらの資料に基づき,0501工事の入札
価格を独自に積算した。
帯広土木現業所長は,同年5月17日,0501工事の予定価格調書に,
同工事の予定価格及び最低制限価格を記入した。北海道においては,「低
入札価格調査制度及び最低制限価格制度の事務手続について」(平成6
年3月2日管理第1889号),「低入札価格調査制度及び最低制限価格制
度の事務の取扱いについて」(同第1890号)によって,入札手続について
最低制限価格制度が採られ,同価格は予定価格の3分の2から10分の
8.5の範囲内とされていた(以下「本件基準」という。)が,0501工事の最
低制限価格1億1965万円は,その予定価格1億4077万円と比較して本
件基準の範囲内の価格であった。
0501工事の入札は,帯広土木現業所副所長が執行して同月18日に
行われたが,指名業者の入札価格がいずれも最低制限価格を下回ったた
め,不調となり,その場で打ち切られた。その際,最低入札価格は川重・丸
島JVの1億0800万円であることが入札参加者に知らされたが,そのほか
の指名業者の入札価格や同工事の予定価格及び最低制限価格は公表さ
れなかった。
帯広土木現業所は,0501工事の入札価格がいずれも最低制限価格を
下回ったことについて事後に原因調査を行った結果,0501工事の公示用
設計図書の体裁からは,同工事が01工事と02工事の合冊工事であること
が分かりにくく,入札参加者の見積りに一部錯誤を与えたことなどが原因で
あると判断した。
帯広土木現業所において,平成12年度に指名競争入札に付された工
事は全659件あるが,0501工事の指名競争入札以外に,すべての指名
業者の入札価格が最低制限価格を下回り,入札不調となった事例はない。
なお,平成10年度ないし平成12年度における北海道内の各土木現業所
が発注した工事に係る指名競争入札について,すべての指名業者の入札
価格が最低制限価格を下回った事例として,平成10年度函館土木現業所
発注に係る八雲厚沢部線防雪工事(地特)(チェーン着脱場),平成12年
度同発注に係る七重浜停車場線交安工事(自歩道)(照明工),平成10年
度釧路土木現業所発注に係る補正知床公園羅臼線災害防除工事(海岸
町地区),平成12年度同発注に係る釧路環状線外単独交安(自歩道)工
事,同年度同発注に係る尾岱沼漁港改修工事その2,平成12年度札幌土
木現業所発注に係る砂川歌志内線改築(擁壁工)工事の6件がある。
(イ) 0527工事
0501工事の工期は,平成12年12月10日までと予定されていたとこ
ろ,帯広土木現業所は,0501工事の入札が前記のとおり不調となり,この
ままの形で再び入札を行えばその工期が約1か月延びて同年度内に同工
事を完成することができなくなると判断し,工期の短縮を図るため,同年5
月25日の指名選考委員会において,0501工事を0527工事,0546工
事及び01工事のうち汎用性のある電気設備工事(464万2000円相当
分)に据付工事を加えた工事(以下「0666工事」という。)として発注するこ
とを決定した。帯広土木現業所は,同日の指名選考委員会において,052
7工事の指名業者の選定を行ったが,0501工事の公示用設計図書に一
部錯誤を与える部分があったことや,0527工事は0501工事中の01工
事とほぼ同内容の工事であったことなどから,0527工事の工事情報を改
めて公開したり指名替えの手続等を行ったりすることなく,0501工事と同
一の指名業者を選定した。
帯広土木現業所は,同月31日,上記指名選考委員会によって選定され
た指名業者に対し,0527工事の指名通知をし,同通知を受けた被告企業
等は,それぞれ帯広土木現業所に赴き,0527工事に係る公示用設計図
書等を閲覧,謄写するなどし,これらの資料に基づき,0527工事の入札
価格を独自に積算した。
帯広土木現業所長は,同年6月20日,0527工事の予定価格調書に,
同工事の予定価格1億0991万円及び最低制限価格9342万円を記入し
た。同最低制限価格は,同予定価格と比較して本件基準の範囲内の価格
であった。
0527工事の入札は,帯広土木現業所副所長が執行して同月22日に
行われ,川重・丸島JVが同工事を落札し,請負代金額1億1340万円(うち
消費税額540万円)で受注した。0527工事の工期は,同年11月30日ま
でと定められたが,川重・丸島JVは,同月27日に同工事を完成させ,同月
30日に工事完成検査を受け,これを帯広土木現業所長に引き渡した。
(ウ) 0546工事
帯広土木現業所は,平成12年6月29日の指名選考委員会において,0
546工事の指名業者を選定し,同年7月11日,その指名業者に対し,同
工事の指名通知をした。
帯広土木現業所長は,同月25日,0546工事の予定価格調書に,同工
事の予定価格2620万円及び最低制限価格2227万円を記入した。同最
低制限価格は,同予定価格と比較して本件基準の範囲内の価格であっ
た。
0546工事の入札は,帯広土木現業所副所長が執行して同月27日に
行われ,被告西田鉄工が2600万円で同工事を落札し,請負代金額273
0万円(うち消費税額130万円)で受注した。0546工事の工期は,同年1
1月30日までと定められたが,被告西田鉄工は,同日に同工事を完成さ
せ,同年12月8日に工事完成検査を受け,これを帯広土木現業所長に引
き渡した。
(エ) 0666工事
帯広土木現業所は,平成12年10月26日の指名選考委員会において,
0666工事の指名業者(被告企業等のうち,被告川崎重工業,被告丸島ア
クアシステム,被告JFEエンジニアリング,酒井鉄工所,楢崎製作所も指名
された。)を選定し,同月30日,その指名業者に対し,同工事の指名通知
をした。
0666工事の入札は,帯広土木現業所副所長が執行して同年11月22
日に行われ,被告川崎重工業が5500万円で同工事を落札し,受注した
(なお,同工事の最低制限価格4636万円は,その予定価格5665万円と
比較して本件基準の範囲内の価格であった。)。
被告川崎重工業は,平成13年3月23日に0666工事を完成させ,同月
29日に工事完成検査を受けた。
(3) 上記認定事実及び前提となる事実を基に検討するに,すべての指名業者の入
札価格が最低制限価格を下回ることは異例のことであるのに,0501工事の指
名競争入札では,入札に参加した10社の被告企業等のすべてが最低制限価
格を下回る入札をしたばかりか,その約1か月後には,同じ指名業者で0527工
事の指名競争入札が行われ,同工事は0501工事から一部の工事を除いたも
のであるのに,入札に参加した被告企業等は0501工事とほぼ同額で入札し,
0501工事でも最低価格の入札をした川重・丸島JVが,これを落札したというの
であるから,① 0501工事の指名競争入札で被告企業等のすべての入札価格
が最低制限価格を下回ったのは,被告企業等が共通の誤った情報を有していた
からではないか,② 0501工事の指名競争入札でも0527工事の指名競争入
札でも,川重・丸島JVが最低価格の入札をしたのは,当初から同JVが受注する
ことが予定されていたからではないか,③ また,指名業者が変更されることなく
0527工事の指名競争入札が行われたのは,発注者側も被告企業等の目論見
に関与していたからではないかなどの疑いが生じ,ひいては,指名業者のみなら
ず北海道の担当職員らも関与した談合があったのではないかという疑いさえ生
じなくはない。
しかしながら,被告企業等の入札担当者らは,その証人尋問等(証人D,証人
E,証人F,証人G,証人H,証人I,証人J,証人K,証人L,証人Mの各証言及び
これらの者を含む被告企業等の入札担当者らの乙ア2ないし10,乙イ1,乙ウ
1,乙エ4,乙オ1の各陳述書における陳述記載)において,0501工事の入札
価格が最低制限価格を下回った理由について,受注意欲の強さから大幅な値
引きに踏み切った,同工事中の02工事ないし電気設備工事の一部を見落した,
設定単価や積算方法等を誤ったなどと供述し,0527工事の入札価格が0501
工事のそれとほぼ同額になった理由については,再度最低制限価格を下回るこ
とを回避するために値引率を極力抑えた,工事の見落しや違算,設定単価の誤
り等を是正して慎重に積算を行ったなどと供述し,いずれの工事についても,各
企業ごとに独自の見積りをして入札価格を決定したのであって,他企業や発注
者との談合はしていないと供述する。
これらの供述には,確かに,その裏付けとなる客観的な証拠がなく,また,上
記入札担当者らの供述には,積算金額や値引率の程度,見落とした工事の箇
所,見直しを行った積算方法や設定単価の内容等について,具体性を欠く部分
があること,被告企業等は,0501工事の開札時にすべての指名業者の入札価
格が最低制限価格を下回り,その最低入札価格が川重・丸島JVの1億0800
万円であったことを認識したにもかかわらず,0527工事の指名競争入札にお
いては,その価格を特段意識することなく,これよりも高い額(川重・丸島JVにつ
いてはこれと同額)を入札していること,0501工事とほぼ同内容の工事であっ
た9261工事においては,公示用設計図書の編綴状況等に起因する一部工事
の見落し等の事態は起こらず,最低制限価格を下回る価格で入札した指名業者
はなかったことを考えると,これらの供述を直ちに採用することには躊躇を覚え
るものである。しかしながら,本件においては,これらの供述を虚偽のものとして
排斥し得るだけの証拠がない。裏付けとなる客観的な証拠がなく,積算方法や
設定単価の内容等について具体性を欠く点も,競争入札のための積算の基準
や内容を公けにすることは,企業としてはできないことであることを考えると,や
むを得ないものといわざるを得ない。また,0527工事が0501工事から一部の
工事を除いたものであるのに,0501工事における川重・丸島JVの入札価格よ
り高額で入札したことも,入札指名業者として,2回も続けて最低制限価格を下
回る価格で入札をできない立場にあったことや,0501工事の予定価格や最低
制限価格等が知らされていない中で,被告企業等において川重・丸島JVの前
記入札価格を意識して0527工事の入札価格を決めることが必ずしも合理性が
あるともいえないことなどを考えると,格別に不自然であるともいえない。入札価
格が最低制限価格を下回ったことについての各被告企業等の説明は,それ自
体としては,格別に不自然,不合理なものとはいえず,ただ,同じ競争入札にお
いて10社もの専門企業の入札価格がいずれも最低制限価格を下回ったことが
不自然なのであるが,このようなことが,全くあり得ないことであるとはいえない
(北海道全体で見れば,平成10年度から平成12年度までの期間に各土木現業
所が発注した工事に係る指名競争入札について,すべての指名業者の入札価
格が最低制限価格を下回った事例が6件存在している。)。また,0501工事で
も0527工事でも,川重・丸島JVが最低価格の入札をしたのも,そのこと自体格
別に不自然なこととはいえないし,指名業者が変更されることなく0527工事の
指名競争入札が行われたことも,帯広土木現業所としては,売買川放水路計画
の下,売買川ゲート工場製作等の工事を平成12年度内に完成させる必要があ
ったことや,同土木現業所において0501工事の公示用設計図書に一部錯誤を
与えると判断した部分があったこと,0527工事は0501工事中の01工事とほ
ぼ同内容の工事であったことを考えると,不自然,不合理な措置であるとまでは
いえない。
そして,本件訴訟の一件記録中には,本件各工事の指名競争入札に関し,被
告らの間で官製談合が行われていたことを直接的に認める証拠は存在しないの
であり,それでもなお談合が存在したといい得るためには,その存在をうかがわ
せるに足りる各種の間接事実による多角的な観点からの推認を要するというべ
きである。しかるに,本件においては,本件各工事の指名競争入札における被
告企業等の入札状況が不自然であるというにとどまり,そのほかに,例えば,帯
広土木現業所の職員らと被告企業等の入札担当者らとの間に頻繁な接触があ
ったのか,落札できなかった被告企業等の談合によるメリットは何か,談合が行
われたのであれば,なぜ0501工事の指名競争入札においてすべての指名業
者の入札価格が最低制限価格を下回ったのかなどの事情は,何ら明らかにされ
ていないのであるから,このような証拠状況の下においては,談合行為の存在
を認め得るまでには至っていないといわざるを得ない。なお,北海道農政部が組
織的に官製談合を行っていたこととか,0501工事の指名競争入札における指
名業者の選定方法や特定共同企業体の資格審査手続に問題があったこととい
った事情は,仮にこのような事実が認められるとしても,これらによって,談合行
為の存在が直ちに認められることにはならないというべきである。
そうすると,本件において,原告主張の談合があったと認めることはできない
といわざるを得ない。
(4) よって,原告の本件請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由が
ないというべきである。
3 結論
以上によれば,原告の本件請求はいずれも理由がないからこれを棄却すること
とし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用し
て,主文のとおり判決する。
札幌地方裁判所民事第5部
裁判長裁判官    笠    井    勝    彦
裁判官    村    田    龍    平
裁判官    本    多    健    司

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛