弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     原決定を取り消す。
     長崎地方裁判所平戸支部が同庁昭和三九年(ケ)第一四号宅地建物競売
申立事件について昭和三九年一一月六日にした競売手続開始決定を取り消す。
     本件競売申立を却下する。
     本件異議申立費用および抗告費用は被抗告人の負担とする。
         理    由
 本件抗告の趣旨および理由は別紙記載のとおりである。
 抗告理由第一点について。
 所論は、要するに、本件競売手続開始決定の基本である本件抵当権の設定登記は
Aの印鑑を保管していたBが本件競売申立人と共に右印鑑を冒用してその手続をし
たもので無効であるというにある。
 しかし、右所論についてはこれに対する原決定の判断(原決定一一枚目表八行目
の証人A以下同一二枚目表三行目までの記載)と同一の理由により、これを採用す
ることはできないからこれをここに引用する。
 抗告理由第二点について。
 所論は、要するに、本件抵当権は被抗告人(本件競売申立人)ら六名の者が同人
ら以外の債権者らからの執行を防止するために設定したのであるからその目的を越
え被抗告人が独り抵当権の実行をなすことは権利の濫用であるというにある。
 よつて、案ずるに、本件不動産の登記簿謄本、当審での抗告人に対する審尋の結
果により真正に成立したものと認められる甲第六号証(C作成にかかるAの家、屋
敷売却についてと題する書面)、原審証人D、同A、同E、同F、同G、同H、同
Bおよび抗告人本人に対する各尋問調書(但し証人Bの尋問調書はその一部)、当
審での抗告人に対する審尋の結果を総合すると次の事実が認められる。
 <要旨>すなわち、Dは商売に失敗し、多数の債権者らに多額の債務を負担するに
至つたので、自己の動産一切および養母Aの承諾を受けた上同女所有の本件
不動産を債権者らのために投げ出すことにし、昭和三七年八月七日頃の夜債権者で
あるE、B、C、G、Hおよび被抗告人以上六名宛に右財産を以て債権者らに対す
る支払に充てて貰いたい旨記した書置を残し、これに本件不動産の権利証、A名義
の委任状および印鑑等を添えて家出した。そこで右六名の者は協議の結果他の債権
者からの強制執行を防ぐため右委任状、印鑑等を使用し、被抗告人のDに対する貸
金一一万円およびこれに対する利息の債権担保のため同年八月二二日本件不動産に
適法に抵当権設定登記を受けた。その後E、C、被抗告人らは、本件不動産につい
て被抗告人の抵当権が設定されていることを黙秘したまま、Dに対する債権の回収
策として抗告人に執拗に本件不動産の買受方を勧めた結果昭和四〇年四月三〇日A
の代理人である右三名が抗告人との間に本件不動産を代金一二〇万円で売り渡し、
代金支払時期について内金一〇万円を同年五月三日、残代金一一〇万円を昭和四一
年一二月末日まで所有権移転登記と引換えに支払う旨定めた売買契約を締結し、右
約定どおりAの代理人の一人であるEにおいて内金一〇万円の支払を受けた。とこ
ろが、被抗告人は抗告人に残代金の履行期到来前にその支払を迫り、残代金を準備
中であつた抗告人が履行期未到来を理由にこれを拒否したところ突如独断で本件競
売の申立に及んだことが認められる。右認定に副わない原審証人Bおよび被抗告人
に対する各尋問調書、当審での被抗告人に対する審尋の結果はいずれも措信できな
い。他に右認定を覆す証拠はない。
 以上の認定の事情のもとでは、被抗告人は一方においてDに対する債権の回収策
として本件不動産に抵当権を設定させておりながら、他方において同じくDに対す
る債権の回収策として、右抵当権設定のことを黙秘しつつ、自ら本件不動産の所有
者Aの代理人となり、抗告人との間に本件不動産の売買契約を締結し、しかも右売
買契約の存在を無視して右抵当権にもとづき本件競売の申立をすることは、本件不
動産の買主としての抗告人の期待を裏切るものであつて、著しく信義に反し権利の
濫用であるといわざるを得ない。
 よつて、これと異なる判断による原決定および本件競売手続開始決定を取り消
し、本件競売申立を却下することにし、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 関根小郷 裁判官 原田一隆 裁判官 高石博良)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛