弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人山本哲子、同小林克信、同井上洋子、同土橋実の上告理由について
 一 本件は、平成五年一二月二七日に被上告人が風俗営業等の規制及び業務の適
正化等に関する法律(以下「法」という。)三条一項に基づいてしたぱちんこ屋の
営業許可が違法であるとして、当該ぱちんこ屋の近隣住民である上告人らが、その
取消しを求める事件である。
 行政事件訴訟法九条は、取消訴訟の原告適格について規定するが、同条にいう当
該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により
自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそ
れのある者をいうのであり、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的
利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の
個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、
かかる利益も右にいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害
され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告
適格を有するものというべきである。そして、当該行政法規が、不特定多数者の具
体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨
を含むか否かは、当該行政法規の趣旨・目的、当該行政法規が当該処分を通して保
護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである(最高裁平成
元年(行ツ)第一三○号同四年九月二二日第三小法廷判決・民集四六巻六号五七一
頁、最高裁平成六年(行ツ)第一八九号同九年一月二八日第三小法廷判決・民集五
一巻一号二五〇頁参照)。
 二 右の見地に立って、本件訴えについての上告人らの原告適格について検討す
る。
 法は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及
ぼす行為を防止するため、風俗営業及び風俗関連営業等について、営業時間、営業
区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制すると
ともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を
講ずることを目的とする(法一条)。右の目的規定から、法の風俗営業の許可に関
する規定が一般的公益の保護に加えて個々人の個別的利益をも保護すべきものとす
る趣旨を含むことを読み取ることは、困難である。
 また、風俗営業の許可の基準を定める法四条二項二号は、良好な風俗環境を保全
するため特にその設置を制限する必要があるものとして政令で定める基準に従い都
道府県の条例で定める地域内に営業所があるときは、風俗営業の許可をしてはなら
ないと規定している。右の規定は、具体的地域指定を条例に、その基準の決定を政
令にゆだねており、それらが公益に加えて個々人の個別的利益をも保護するものと
することを禁じているとまでは解されないものの、良好な風俗環境の保全という公
益的な見地から風俗営業の制限地域の指定を行うことを予定しているものと解され
るのであって、同号自体が当該営業制限地域の居住者個々人の個別的利益をも保護
することを目的としているものとは解し難い。
 ところで、右の法の委任を受けて規定された風俗営業等の規制及び業務の適正化
等に関する法律施行令(以下「施行令」という。)六条一号ロ及び二号は、特にそ
の周辺における良好な風俗環境を保全する必要がある特定の施設に着目して、当該
施設の周囲おおむね百メートルの区域内の地域を風俗営業の制限地域とすべきこと
を基準として定めている。この規定は、当該特定の施設の設置者の有する個別的利
益を特に保護しようとするものと解されるから、法四条二項二号を受けて右基準に
従って定められた風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(昭
和五九年東京都条例第一二八号)(以下「施行条例」という。)三条一項二号は、
同号所定の施設につき善良で静穏な環境の下で円滑に業務をするという利益をも保
護していると解すべきである(最高裁平成四年(行ツ)第一〇九号同六年九月二七
日第三小法廷判決・裁判集民事一七三号一一一頁参照)。これに対し、施行令六条
一号イの規定は、「住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少
ない地域」を風俗営業の制限地域とすべきことを基準として定めており、一定の広
がりのある地域の良好な風俗環境を一般的に保護しようとしていることが明らかで
あって、同号口のように特定の個別的利益の保護を図ることをうかがわせる文言は
見当たらない。このことに、前記のとおり法一条にも法四条二項二号自体にも個々
人の個別的利益の保護をうかがわせる文言がないこと、同号にいう「良好な風俗環
境」の中で生活する利益は専ら公益の面から保護することとしてもその性質にそぐ
わないとはいえないことを併せ考えれば、施行令六条一号イの規定は、専ら公益保
護の観点から基準を定めていると解するのが相当である。そうすると、右基準に従
って規定された施行条例三条一項一号は、同号所定の地域に居住する住民の個別的
利益を保護する趣旨を含まないものと解される。したがって、右地域に住居する者
は、風俗営業の許可の取消しを求める原告適格を有するとはいえない。
 これらのほかに、上告人らが本件風俗営業の許可の取消しを求める原告適格を有
すると解すべき根拠は見当たらない。
 三 以上によれば、本件訴えは不適法として却下すべきものであり、これと同旨
の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論
旨は、独自の見解に立って原判決を論難するものにすぎず、採用することができな
い。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    大   出   峻   郎
            裁判官    小   野   幹   雄
            裁判官    遠   藤   光   男
            裁判官    井   嶋   一   友
            裁判官    藤   井   正   雄

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