弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人江原綱一、同懸樋正雄の上告理由一について。
 論旨は、原判決が実質的審査を経ないでなされた本件規則の認証を違法でないと
判断したのは、法令の解釈を誤つたものである、という。
 旧宗教法人が宗教法人法の規定による宗教法人となるために規則の認証申請をし
た場合において、所轄庁は、その受理した規則およびその添付書類の記載によつて、
当該申請にかかる事案が同法一四条一項各号に掲げる要件を備えているかどうかに
ついての審査をすれば足るのであつて、それ以上のいわゆる実質的審査権限を有す
るものでないことは、宗教法人法附則五項によつて準用される同法一四条の規定に
徴し明らかである。論旨は、叙上に反する独自の見解に立脚して原判決の違法をい
うに過ぎないものであつて、採るを得ない。
 同二について。
 論旨は、原審において上告人らが新らたに、違法事由として、規則案の公告は一
ヶ月間継続して行われなければならないのに、本件においては僅か一〇日間行われ
たに過ぎないのであるから、本件規則の認証は無効であると主張したのに、原判決
がこれに対し何等の判断をも加わえなかつたのは、理由不備の違法である、という。
 しかし、第一審判決が、本件規則案は認証申請の一ケ月前に公告をしていないか
らその認証は違法であるとの上告人らの主張に対し、本件規則案の公告は認証申請
の一ヶ月以上前の「五月一日から十日までの間」行われた事実を認めることができ、
右事実によると、宗教法人法一二条三項所定の公告がなされていたと認めることが
できる旨を判示しているが、右判示には、公告は認証申請の一ヶ月以上前に相当期
間行うをもつて足り、所論のごとく、一ヶ月間継続的になされることを要するもの
ではない旨の説示を含むものと解するのを相当とし、また、原判決が「控訴人(上
告人ら)は本件申請について適法な公告が行われなかつたから申請は無効であると
主張するが、この点についての当裁判所の事実認定及判断は原判決(第一審判決)
と同一であるからその理由を引用する。」と判示したのは、単に公告の場所に関す
る第一審判決の摘示理由を引用したにとどまらず、公告期間に関する第一審判決の
右摘示理由を引用したことは明らかであるから、右判示は、上告人らの前記主張を
排斥する趣旨に出たものと解すべきであつて、原判決には所論の違法はない。それ
故、論旨は、採用できない。
 同三について。
 論旨は、原判決がC寺の事務所以外の場所に掲示してなされた本件規則案の公告
をもつて適法であると判断したのは、法令の解釈を誤つたものである、と主張する。
 しかし、宗教法人法附則五項によつて準用される同法一二条二項は、「宗教法人
の公告は、新聞紙又は当該宗教法人の機関紙に掲載し、当該宗教法人の事務所の掲
示場に掲示し、その他当該宗教法人の信者その他の利害関係人に周知させるに適当
な方法でするものとする。」と規定して、所論のごとく、公告の場所を当該宗教法
人の事務所にのみ限定していないことは、明らかである。従つて、原判決(その引
用する第一審判決)の確定した事実認定の下において原審がC寺の事務所以外の場
所に掲示してなされた本件公告を適法と認めたことは、正当であつて、所論の違法
はない。論旨は、叙上に反する独自の見解に立脚して原判決の判断を批判するに過
ぎないものであつて、採るを得ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    五 鬼 上   堅   磐

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