弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人中島多門の上告趣意第一点について。
 所論第一は、憲法三一条違反をいうが、実質は外国為替及び外国貿易管理法七条
四項の解釈適用を争う単なる法令違反の主張を出でず、所論第二は、憲法三一条違
反をいうが、実質は原判決の適条の不備を非難する単なる訴訟法違反の主張を出で
ず、いずれも適法な上告理由に当らない。
 同第二点について。
 所論第一は、憲法一四条違反をいうが、犯人の処罰は特別予防及び一般予防の要
請に基づいて各犯罪者犯人毎に妥当な処置を講ずるのであるから、犯情のある面に
おいて他の犯人に類似した犯人であつても、これより重く処罰せられることのある
のは理の当然であり、これを目して憲法一四条に違反するということのできないこ
とは当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第四三五号同年一〇月六日大法廷判決、刑
集二巻一一号一二七五頁)とするところであるから、所論は理由がない。
 所論第三(第二は欠けている)は、事実誤認を前提として憲法一四条違反をいう
が、原判決に所論の事実誤認は存しないから、違憲の主張は前提を欠き、適法な上
告理由に当らない。
 所論第四は、憲法一四条違反をいうが、何人も外国為替管理令七条及び同一一条
(論旨に一〇条とあるは誤記と認める)所定の各要件を具備することにより、集中
義務の免除及び支払の制限、禁止の免除を受ける機会を与えられているから、違憲
の主張は前提を欠き、適法な上告理由に当らない。
 同第三点について。
 所論は、憲法三七条一項違反をいうが、同条の公平な裁判所の裁判とは、構成そ
の他において偏頗の惧なき裁判所の裁判をいうものであり、かかる裁判所の裁判で
ある以上個々の事件において、たまたまある犯人に対し犯情の一面において類似し
た他の犯人より重い処罰がなされても憲法三七条一項に違反するものでないことは、
当裁判所の判例(前掲大法廷判決及び昭和二二年(れ)第一七一号同二三年五月五
日大法廷判決、刑集二巻五号四四七頁)の趣旨に徴し明らかであり、右判例はいま
なおこれを変更する必要は認められないから、所論は理由がない。
 同第四点について。
 所論は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張であつて、いずれも適法な
上告理由に当らない。
 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三九年七月一七日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外

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