弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を次のとおり変更する。
     原判決別紙目録記載の山林地上に伐採せられている杉及び檜が被控訴人
の所有であることを確認する。
     被控訴人その余の請求を棄却する。
     訴訟費用は第一、二審を通し、これを五分し、その四を控訴人の負担と
し、その一を被控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、
二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め被控訴代理人は、控訴棄却の判
決を求め、尚本訴請求の趣旨を原判決主文第一項の所有権確認の点に減縮すると述
べた。
 当事者双方の事実上の主張は、
 (一) 控訴代理人は訴外Aが控訴人より受領した前渡金で買入れた山林立木が
控訴人の所有となる理由は、同訴外人は控訴人より前渡金を受領しながら、これに
よつて買入れた木材を約定とおり、控訴人に引渡さないため昭和二十六年一月二十
六日の特約においては、右訴外人との木材売買契約による控訴人の権利を保全する
ため、前渡金により買入れた立木は、売渡担保としてその所有権が当然控訴人に帰
する旨を定めたからであるとその主張を補述し、
 (二) 被控訴代理人は、本件係争物件については、被控訴人より控訴人を相手
として、その伐採禁止等の仮処分命令を高知地方裁判所より得て、執行中のもので
ある。そうして控訴人は右仮処分命令に対し異議の申立をなし、目下訴訟繋属中で
あるが本件山林の所有者たる訴外Bとの間に係争残存立木を昭和二十七年十二月末
日までに伐採搬出する約定であつたので、被控訴人はやむを得ず同年同月二十五日
右立木に対して為していた仮処分の解放を高知地方裁判所に申請し、同裁判所より
その解放(立木の点についてのみ)を受けて、右立木を伐採処分したのであるか
ら、右立木に関する本訴請求は目的物が消滅した結果になるから、その点に関する
訴を取下げる。
 尚これより先伐採せる杉檜はその侭本案訴訟の確定まで放置するにおいては、著
しい価額の減少を生ずる虞れがあるので、被控訴人の申立により執行裁判所はこれ
を競売して、その売得金は供託している。
 従つて、被控訴人は前記のように、その請求の趣旨を所有権確認の点にのみ減縮
したと述べ、
 (三) 控訴代理人は控訴人の右(二)の主張中残存立木に関する点について、
仮処分を解放するに至つたその理由の点は否認するがその他はすべてこれを認め
る。
 但し、立木に関する点の訴の一部取下には同意しないが本訴請求を所有権確認の
点に減縮することについては異議がない。本件係争物件はすべて、処分せられて存
在しないのであるから、被控訴人の請求はすべて理由がないから棄却せらるべきで
あると述べた。
 以上の外は、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。
 証拠として、
 被控訴代理人は、甲第一号ないし第三号証、第四号証の一、二、第五号ないし第
九号証、第十号証の一ないし四を提出し、原審における証人A(第一、二回)、
B、Cの各証言及び被控訴本人訊問の結果を援用し、乙第一号ないし第五号証は不
知、その他の同号各証は成立を認めると述べ、
 控訴代理人は、乙第一号ないし第八号証、第九、十号証の各一、二を提出し、原
審証人D、E、F、G、H、A(第一回)、当審証人I、J、Hの各証言及び原審
における控訴会社代表者Kの訊問の結果を援用し、甲第二、三号証、第六号第九号
証は不知、その他の同号各証はその成立を認め同第一号証を援用すると述べた。
         理    由
 原判決別紙目録記載の山林地上の立木がもと訴外Bの所有であつて、同人から訴
外Aが昭和二十六年一月二十六日これを代金十三万七千円で買受けたことは、当事
者間に争がない。
 成立に争のない甲第四号証の一、二、第五号証、第十号証の一ないし四、原審に
おける証人A(第一、二回)、B、Cの各証言、並びに被控訴本人訊問の結果及び
右証人Aの証言により成立を認める甲第二号証を綜合すると、被控訴人は同年二月
十日訴外Aより同人が訴外Bより買受けた前記立木(樹令三十年以上の杉、檜でそ
の合計見込数量は約七百石である)を代金十四万五千円で買受け、その明認方法と
して、同月中旬頃右立木の無断伐採を禁ずる旨と原告の氏名を記載した立札を右山
林の頂上及び中腹の人目のつきやすいところに立てて、被控訴人が所有者である旨
を公示して、第三者に対する対抗要件を講じたことが認定せられる。
 この認定に反する、乙第六号より第八号証、第九、十号証の各一、二(いずれも
証人等の訊問調書)原審における証人F、Gの各証言並びに控訴会社代表者Kの供
述及び当審証人Iの証言は、措信できないし、その他に右認定を覆えすに足る証拠
はない。
 控訴人は右立木は訴外Aとの特約により同訴外人が前渡金をもつて買受けたもの
であるから、その買受と同時にその所有権は控訴人に帰属する旨主張するが仮りに
その主張どおりの特約があつたとしても右立木の所有権は、訴外Bから旦訴外Aに
移転し、右Aと控訴人との間においては特別の意思表示なくして、その所有権が控
訴人に移転する趣旨の特約であることは、控訴人の主張自体に徴し明かである。然
らばこの場合控訴人の所有権の取得を第三者に対抗するには明認方法を講ずること
を要する。そうして、控訴人はその明認方法として、昭和二十六年三月六日所有権
を明かにする立札を、右山林に立てたと主張するが、これは前記認定の被控訴人の
立札の後であること明かであるから、これをもつて第三者たる被控訴人に対抗でき
ないこと謂うまでもない。控訴人の右主張は全く理由がない。
 控訴人が同年四月過ぎ頃に右立木を伐採し初めたところ、被控訴人よりその伐採
及び搬出禁止の仮処分を受けたので、約四割が立木の侭となり残り六割が伐採され
たまま同地上に置かれてあつたこと。その後右伐採された杉、檜はそのまま放置す
ると価額が著しく減少する虞れがあるとして、被控訴人の申立により執行裁判所に
おいて、これを競売に付し、その売得金が供託されたこと。更にその後の昭和二十
七年十二月二十五日右残存立木に対する仮処分の解放を受けて、それを伐採し売却
したことはいずれも当事者間に争がない。
 そうすると被控訴人の残存立木に関する所有権確認の点は(もつとも、この訴は
当審において、被控訴人は取下の意思を表示したが控訴人が同意しないため取下の
効力が発生しない)目的物が無くなつたから訴の利益がないので、これを棄却す
る。
 <要旨>控訴人は前記換価処分をされた伐採木材に対しても、その存在がなくなつ
たから、確認の利益がない旨主張するが、被控訴人の仮処分の目的はその目
的物たる立木の所有権を保全するにあるものと解せられる。被控訴人は右立木その
ものに特別な価値を認めてこれが保全を図るのではなく、その財産的価値の保存を
目的としていることは、口頭弁論の全趣旨に徴し明かである。するとその目的物の
価値が著しく減損する虞れがあるときは、これを処分して、その目的物に代る代金
を供託して置くことは、結局その所有権の保全の目的にかなうものである。従つて
このことを理由として、これが換価の申立をし、その決定があつたものと認められ
る。このように目的物と同一視すべき供託金が存在する以上、上訴審において目的
物の所有権の存否を争う本案について、判決をするときは、右換価の事実を全然斟
酌しないで請求の当否を判断すべきものである。しからば控訴人の右主張は理由が
ない。
 結局被控訴人の本訴請求(減縮された部分)は右伐採木材がその所有に属するこ
との確認を求める部分は、相当として認容せられるが、その余の部分は失当である
から、これを棄却する。
 右認定に反する原判決は一部失当であるから、民事訴訟法第三百八十六条第九十
六条第九十二条に従つて、主文のとおり判決する。
 (裁判長判事 石丸友二郎 判事 萩原敏一 判事 呉屋愛永)

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