弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用及び補助参加によって生じた費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告が,財団法人艮陵医学振興会と国立大学法人東北大学に対して,連帯し
て120万円を米沢市に支払えとの請求をすることを怠ることは違法であるこ
とを確認する。
2被告は,財団法人艮陵医学振興会と国立大学法人東北大学に対して,連帯し
て120万円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の
割合による金員を米沢市に支払うように請求せよ。
第2事案の概要等
1事案の要旨
本件は,被告が平成15年3月11日に米沢市立病院長の名義で被告補助参
加人財団法人艮陵医学振興会(以下「財団」という)に対して120万円を。
寄付したことについて,実質的には国に対する寄付であり,また,寄付金の使
途が必ずしも明確になっておらず,寄付目的の達成度が検証されないため,地
方財政再建促進特別措置法(平成14年7月31日法律第98号による改正前
のもの。以下「措置法」という)24条2項及び地方財政法4条1項に違反。
しており,米沢市が,財団及び被告補助参加人国立大学法人東北大学に対し,
不当利得返還請求権又は不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているにもか
かわらず,被告がその行使を怠っているとして,地方自治法242条の2第1
項3号に基づき,当該怠る事実が違法であることの確認を求めるとともに,同
項4号に基づき,当該怠る事実の相手方である被告補助参加人らに対して不当
利得の返還又は損害賠償を請求することを被告に求めた住民訴訟である。
2関係法令の定め
措置法24条2項は,地方公共団体が,その施設を国に移管しようとする
場合その他やむを得ないと認められる政令で定める場合における国と当該地
方公共団体との協議に基づいて支出するもので,あらかじめ総務大臣に協議
し,その同意を得たものを除き,当分の間,国に対し,寄付金,法律又は政
令の規定に基づかない負担金その他これらに類するもの(これに相当する物
品等を含む)を支出してはならない旨規定している。。
地方財政法4条1項は,地方公共団体の経費は,その目的を達成するため
の必要,かつ,最少の限度をこえて,これを支出してはならない旨規定して
いる。
3前提事実(証拠等の摘示のない事実は当事者間に争いがない)。
原告は,米沢市の住民である。
被告は,米沢市長であり,米沢市が営む米沢市立病院の病院事業管理者の
職務権限を有する者である。
,,,,米沢市は平成15年3月11日財団に対し米沢市立病院長の名義で
120万円(以下「本件寄付金」という)を寄付した(以下「本件寄付」。
という。。)
原告は,平成15年10月22日,米沢市監査委員に対し,地方自治法2
42条1項に基づき,本件寄付が措置法24条1項及び地方財政法4条1項
に違反する違法な支出であるとして,監査請求を行い,米沢市が被った損害
を補填するために必要な措置を講ずべきことを請求した。
米沢市監査委員は,平成15年12月17日,被告に対し,地方自治法2
42条4項に基づき,本件寄付が措置法24条2項に違反することから,米
沢市が被った120万円の損害について補填する措置を講ずることを勧告
し,その措置期限を平成16年3月31日と定めた。
被告は,前記3月31日までに,米沢市監査委員の前記勧告に基づく措置
を講じなかった。
平成16年4月1日,国立大学法人法に基づき,東北大学を設置すること
を目的として,被告補助参加人国立大学法人東北大学が設立され,国が有す
る権利及び義務のうち,同法人が行う業務に関するものを承継した。
4争点
本件寄付は,措置法24条2項に違反するか。
措置法24条2項に違反する寄付が私法上無効になるか。
財団に利得があるか。
措置法24条2項に違反する寄付が不法行為法上も違法となるか。
本件寄付について国と財団との間で共謀があったか。
本件寄付は地方財政法4条1項に違反するか。
地方財政法4条1項に違反する寄付が私法上無効になるか。
地方財政法4条1項に違反する寄付が不法行為法上も違法となるか。
5当事者の主張
争点について
ア原告の主張
措置法24条2項の立法趣旨が,従来地方財政法4条の5において,国
による地方公共団体からの強制的な寄付の徴収を禁止していたが,地方公
共団体の任意自発的な寄付を規制していなかったため,国等が優越的な地
位を背景として地方公共団体に負担を転嫁し,また地方公共団体において
も施設等誘致のため国等に対して寄付をすることが頻発したため,これを
放置すると国等と地方公共団体との間の経費負担区分を乱し,地方財政が
脆弱化するおそれがあることから,あえて地方自治法の原則を修正し,地
方公共団体の国等に対する自発的寄付又は任意負担をも原則として禁止す
ることにより財政の健全化を図る一方,寄付等を一律に禁止することによ
る公益上又は社会通念上の不合理を回避するため,一定の場合には事前に
総務大臣の同意を得た上で寄付等をできるとしたものであることに鑑みれ
,,ば地方公共団体が寄付金等を支出する相手方が形式的には国等ではなく
何らかの経由組織を通じて間接的に支出する場合であっても,その経由組
織の実質等に照らし,実質的に見て国等に対して直接支出する場合と同一
であって,ひっきょう法の禁止を潜脱するための手段にすぎないと認めら
れる場合も同項に抵触するというべきである。
財団の組織の実態は,あたかも東北大学医学部が薄いコートをまとって
いるがごときであり,その事業内容は寄付者から助成先である東北大学医
学部への送金手続きの代行にすぎないこと,被告が寄付目的を指定すると
ともに,寄付先を東北大学大学院医学系研究科神経科学講座神経外科学分
野に指定して寄付を行っていること,被告は,従前東北大学大学院医学系
研究科神経科学講座神経外科学分野に寄付していたが,東北大学大学院医
学系研究科神経科学講座神経外科学分野の要請により,寄付の宛て先を財
団に変えただけであり,財団は公立病院からの寄付に関する限り,措置法
24条2項を潜脱するためのトンネル機関として使われていたこと,本件
寄付金が,国の機関としての東北大学大学院医学系研究科神経科学講座神
経外科学分野の研究及び活動に直接支出されていたか,または少なくとも
国の機関としての研究及び活動と明確に区別できない研究及び活動に支出
されたことなどから,財団に対する支出は,国の機関である東北大学大学
院医学系研究科神経科学講座神経外科学分野に対して直接支出する場合と
同一と認められるべきことは明らかである。
仮に,本件寄付が医局に対するものであったとしても,医局は,人的側
面,組織的側面,活動内容及び活動資金等からして,東北大学大学院医学
系研究科の各分野及び東北大学病院の各診療科と実質的に同一であって,
本件寄付は米沢市から東北大学大学院医学系研究科神経科学講座神経外科
学分野に対する寄付と異ならない。
よって,本件寄付は,措置法24条2項に違反する。
イ被告の主張
米沢市は,医局ではなく,財団に対して,本件寄付を行った。
財団は,国とは別個の法人であり,前記医局へのトンネルの役割を担っ
ているものではなく,前記医局も国の機関ではないのであるから,本件寄
付は措置法24条2項に違反しない。
ウ被告補助参加人らの主張
財団には,会長,理事長,理事,評議員,監事の役員がおり,理事15
名中3分の1が東北大学医学部教授であるが,ほかは企業役員,宮城県福
祉部長及び仙台市健康福祉局長等の学外者である。財団は,設立の目的を
達成するため,県内医師,看護師その他の医療関係技術者の研修,医学情
報の県内医療関係者への提供,医学の教育研究に対する助成等の事業を行
い,毎年監査委員の監査を受け,2年に1度宮城県の行政監査を受け,ま
た,宮城県知事から所得税法施行令217条1項3号ロ及び法人税法施行
令77条1項3号ロに基づき特定公益増進法人の認定を受けており,措置
法の規定を潜脱するためのトンネル機関ではない。
本件寄付金は,被告から財団に寄付され,財団所定の適正な手続を経て
「より安全な脳神経外科手術の研究」を目的とする研究者グループに交付
されており,本件寄付は,財団に対する寄付であり,しからずとも前記研
究者グループに対する寄付である。また,措置法24条2項が禁止する寄
付は,国の負担すべき経費を負担するものに限られるところ,国立大学の
研究者の研究費は「国の教育施設及び研究施設に要する経費(地方財,」
政法12条2項6号)である校費を除き,国が本来負担すべき経費ではな
いので,校費以外の研究費に対する寄付には措置法24条2項が適用され
ない。よって,本件寄付は,措置法24条2項に違反しない。
東北大学大学院医学系研究科神経外科学分野等の各分野(講座)は,国
立大学設置法上の1組織であるから,各分野(講座)は国の機関である。
また,東北大学病院の各診療科も国の1組織であるから国の機関である。
しかし「医局」は,これらの教授を中心とした研究分野(講座)と同病,
院の各診療科に所属する医師に各診療科の同窓生や同一診療領域の医師な
どが加わった医師の任意の集団であるから国の組織である前記各分野講,(
座)あるいは前記各診療科とは明らかに別個の存在である。
争点について
ア原告の主張
措置法24条2項は,競争入札に関する地方自治法の規定に反する場合
の地方公共団体と私人との契約関係のように政策的に地方公共団体に対し
てのみ義務が課せられているのと異なり,寄付を行う地方公共団体のみな
らず,寄付を受ける国等に対しても寄付の受領を禁止するものである。ま
,,,た入札の場合などには仮に契約関係そのものが無効になると解すると
取引の安全を害し,地方公共団体の契約締結に様々な障害をもたらすこと
になるが,本件寄付については,地方公共団体と国等という行政組織間の
特殊な寄付に関する問題であり,これを無効としても取引の安全を害する
こともなく,その後の寄付行為に影響することもない。このようなことか
,。らすれば措置法違反の本件寄付は私法上も無効になると解すべきである
イ被告の主張
仮に,本件寄付が措置法24条2項に違反するとしても,本件寄付が直
ちに無効とはならない。すなわち,同項は,憲法上保障された地方自治体
の自主財政権を侵害するという問題点を有しており,自主財政権を侵害し
ないよう法律として廃止すべきとの見解もある。同項を強行法規と解し,
これに反する寄付等を一律に無効とするのは行き過ぎであり,措置法は強
行法規ではないと解すべきである。
また,本件寄付は,米沢市において,同市を含む東北地方の医学及び医
療の進歩に貢献するという公益上の目的でなされたものであり,公序良俗
に反するものでもない。
ウ被告補助参加人らの主張
仮に,本件寄付が措置法24条2項に違反するとしても,同項は,地方
財政法4条の5とともに,国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の財
政秩序を定めたものであるから,これらの法条に違反した寄付も,その政
治的責任は別として,私法上有効に成立する。
争点について
ア原告の主張
本件寄付金は,財団から国の機関である医局に交付されたが,その意味
で第1次的には財団が,第2次的には国の機関である医局が悪意の受益者
,。として受領したのであり財団及び国は連帯して米沢市に返還義務を負う
イ被告の主張
財団から医局に本件寄付金が交付された時点で財団の利得はなくなる。
争点について
ア原告の主張
東北大学医学部脳神経外科医局長Aは,平成13年10月11日付けの
文書で,米沢市に対し,寄付の趣旨が「脳神経外科講座への研究助成に変
わりはない」旨明言して,寄付金の送付先を医局から財団に変更するよう
に依頼していたから,国の機関である医局は,本件寄付が措置法24条2
項に違反することを認識し,少なくとも認識しうべきであった。
財団は,米沢市から国の機関である医局へ寄付を行うためのトンネルの
役割を果たしていたのであるから,その違法性を認識し,若しくは認識し
うべきであった。
イ被告の主張
財団も医局も,国の機関ではない。したがって,財団は,国への寄付金
ではないとの認識で本件寄付金を受け取っており,措置法違反について故
意又は重過失は認められない。
争点について
ア原告の主張
財団と医局は,意を通じて,本件寄付が措置法及び地方財政法に違反し
ていることを知りながら,財団がトンネルとなって米沢市から本件寄付金
を受け取って医局に交付しており,米沢市をして本件寄付をさせたことが
米沢市に対する共同不法行為となるのであるから,財団及び国は,米沢市
に対して120万円の損害賠償義務を負う。
イ被告の主張
争う。
争点について
ア原告の主張
本件寄付金を受け取った国の機関である医局は,本件寄付の目的が研究
助成であるのに,その使途を必ずしも明確にせず,極めて不透明な実態に
あり,寄付目的の達成度が何ら検証されない形となっている。そのような
実態下でなした本件寄付は,地方財政法4条1項に違反する。
イ被告の主張
具体的な公金の支出が当該事務の目的,効果と関連せず,又は社会通念
に照らして目的,効果と著しく均衡を欠き,予算執行に関する裁量を逸脱
したと認められるときに,当該公金の支出が地方財政法4条1項に違反し
て違法になる。
本件寄付は,米沢市から財団に対し,後日東北大学医学部脳神経外科の
医局への研究助成金となり,米沢市を含む東北地方の医学及び医療の進歩
のために貢献するとの目的でなされ,本件寄付金はかかる目的のために使
用されている。本件寄付金の支出には,裁量権の逸脱はなく,本件寄付は
地方財政法4条1項に違反するものではない。
ウ被告補助参加人らの主張
財団は,内規により,研究責任者に対し,研究終了後,研究成果報告書
を提出させることにより寄付目的の達成度を検証している。
争点について
ア原告の主張
地方財政法28条の2に違反する支出が違法とされたいわゆるミニパト
カー寄付事件に関する最高裁判例(最高裁平成8年4月26日判決)から
しても,本件寄付は無効である。
イ被告の主張
争う。
争点について
ア原告の主張
地方財政法28条の2に違反する支出が違法とされたいわゆるミニパト
カー寄付事件に関する最高裁判例(最高裁平成8年4月26日判決)から
しても,本件寄付は不法行為法上も違法である。
財団及び国の機関である医局は,本件寄付金を正当に使ったか否かを米
沢市に対して検証させるための報告を一切しておらず,本件寄付が地方財
,。政法4条1項に違反することを認識していたか又は認識すべきであった
イ被告の主張
争う。
第3当裁判所の判断
1争点について
前提事実,証拠(甲1ないし7,乙3,4の1ないし4の5,5の1ない
し5の3,丙1,2の1,2の2,3ないし7,8の1,8の2,9ないし
48,丁1,2,3の1ないし3の7,4ないし35,証人A,証人B,証
人C,証人D)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア財団は,東北大学医学部卒業生の同窓会である艮陵同窓会が行った東北
大学医学部百十周年記念事業の一環として「地域医療の充実並びに医学,
の振興に必要な教育研究に援助を行い,もって県民の医学的知識の普及を
図り,地域社会の医療と健康増進の向上に寄与すること」を目的として,
宮城県知事の許可を得て昭和55年9月9日に設立された財団法人であ
る。財団には,会長1名,13ないし18人の理事(理事長及び副理事長
各1名を含む,30ないし40人の評議員並びに3人の監事を置くこ。)
ととされ,平成14年度(平成14年4月1日から平成15年3月31日
まで)は,会長には東北大学大学院医学系研究科長が,理事長には東北大
,,,学名誉教授が副理事長には宮城県病院事業管理者がその余の理事には
東北大学大学院医学系研究科教授5名,東北大学病院長,東北大学加齢医
学研究所長,宮城県保健福祉部長,株式会社七十七銀行代表取締役会長,
仙台市健康福祉局長,財団法人広南会理事長,仙台市医師会長,東北電力
株式会社社長,宮城県医師会長及び財団法人宮城県成人病予防協会長が,
監事には東北大学医学系研究科教授,東北労災病院名誉院長及び宮城県医
師会副会長が就任しており,理事の半数及び監事の過半数が東北大学大学
院医学系研究科に所属していない者であった。理事会は,毎年3月及び5
月に開催され,3月には事業計画及び予算案の審議が行われ,5月には事
業報告及び決算の審議が行われていた。財団の主な事業は,地域医療振興
事業の助成,医学国際交流の助成,医学研究の助成及び医学教育の助成な
どであるが,平成14年度における財団の収入の8割以上が研究寄付金で
あり,その支出の8割以上が指定研究助成金であった。財団は,所得税法
施行令217条1項3号ロ及び法人税法施行令77条1項3号ロに基づ
き,宮城県知事から認定を受けて特定公益増進法人となっており,財団に
対する寄付金について寄付金控除及び損金算入が認められていた。前記認
定を受けるに当たっては,当該法人の主たる目的である業務に関し,その
運営組織及び経理が適正であると認められること,相当と認められる業績
が持続できること,受け入れた寄付金によりその役員又は使用人が特別の
利益を受けないことその他適正な運営がされているものであることがその
要件になっていた(乙4の3,丙1,7,8の1,8の2,9ないし1。
2,丁4ないし9,22,33)
財団は,目的が指定された寄付の申込みがあった場合,寄付の目的を確
認した上で,理事長から受入れの決裁を得て,申込者に対して寄付を受け
入れる旨通知し,寄付金が財団の銀行口座に振り込まれると,指定研究助
成審査会における審議を経て交付先を決定して,交付先に対して指定研究
助成金を交付するので指定研究助成金交付申請書を財団に提出するように
通知し,前記申請書が提出された後,財団の手数料及び振込手数料を控除
して,前記申請書に記載された銀行口座に指定研究助成金を振り込み,同
助成金を受領した者に対し,財団作成の領収書及び免税証明書とともにお
礼状を申込者へ送付させ,研究終了後などに指定研究助成金成果報告書を
財団へ提出させていた。臨床系の研究に使われる指定研究助成金が財団か
ら送金される場合,医局が管理する銀行口座に指定研究助成金が振り込ま
れ,医局が財団作成の領収書及び免税証明書とともにお礼状を申込者に送
付し,指定研究助成金成果報告書を財団へ提出していた。寄付金が財団の
銀行口座に振り込まれた後,指定研究助成審査会の審議を経る前に指定研
究助成金を受領することが予想された者から申込者に対して財団作成の領
収書等が送付されることもあった(丙7・39頁,丁3の4,3の5,。
4,証人C35頁)
イ東北大学は,平成15年当時,国立学校設置法に基づき設置された国立
大学であり,同大学に置かれた大学院には,東北大学大学院医学系研究科
が設置され,同研究科には教育研究組織として講座が設けられ,講座は分
野に分かれていた。同大学には,医学部及び歯学部共用の教育研究施設と
して附属病院である東北大学病院が設置され,同病院には診療組織として
7部門42科の診療科があった(甲7・2頁,丙19,37)。
東北大学大学院医学系研究科には,教員として教授,助教授,講師及び
,,,,,助手がおり東北大学病院の診療科には診療科長副科長病院助教授
病院講師,病院助手,医員及び研修医がおり,このうち医員及び研修医は
非常勤であった。前記研究科の臨床系講座と東北大学病院の診療科が一体
となって教育,研究及び診療を遂行するため,通常臨床系講座の教授が診
,,療科長を兼ね臨床系講座に所属する教官も診療科の構成員となっており
医師免許を有する大学院生も診療に参加することがあり,前記研究科の臨
床系講座と東北大学病院の診療科の人的構成はほとんど重複していた甲。(
7・2頁,丙19,37)
東北大学においても,他の大学の医学部又は大学院医学系研究科と同様
に,東北大学大学院医学系研究科の臨床系講座及び東北大学病院の診療科
に対応して,医局と呼ばれる医師の任意の集団が存在していた。医局の構
成員は,前記臨床系講座に所属し医師免許を有する教員,大学院生及び研
究生のほか,前記臨床系講座又は前記診療科に籍はないが同一の診療領域
を担う医師であった。医局は,医局の構成員たる医師に対し,教育及び指
導を行い,医学研究を援助し,就職先として地域の医療機関を紹介するな
どの活動を行っている(甲7・2頁,丙19,37)。
ウ東北大学大学院医学系研究科の臨床系講座の中に神経科学講座神経外科
学分野(以下「本件分野」という)があり,東北大学病院の診療科の中。
に脳神経外科(以下「本件診療科」という)があり,本件分野の教授が。
本件診療科の科長になっていた。本件分野及び本件診療科においても,こ
れに対応した医局(以下「本件医局」という)が存在し,本件分野の教。
授が本件医局の長となり,本件分野に所属する助教授,講師,助手,大学
院生及び大学院研究生,本件診療科で勤務している医師並びに本件分野又
は本件診療科に在籍したことがある医師で脳神経外科専門医の資格及び博
士号の学位を取得していない者が本件医局の構成員となっており,本件医
局の構成員の多くは東北大学に在籍する者であったが,東北大学に在籍す
ることなく東北大学病院以外の病院に雇用されている医師も存在した。本
件医局は,その構成員に対し,博士号の学位及び脳神経外科専門医の資格
,,を取得させるための指導を行い収入を得させて生活を保障するとともに
数多くの症例を経験させるために就職先となる病院を紹介し,試薬の購入
費用など臨床研究のために必要な資金,医学論文の作成に必要な資金及び
学会に参加するために必要な旅費を支給し,大学院研究生となっている構
成員に対して国に支払う授業料を負担していた。本件医局の構成員が臨床
研究を行う場合,東北大学病院の施設を利用することは難しく,同病院以
。(,,外の施設を利用することが多かった証人A1回目4頁同2回目2頁
証人B7頁,10頁,14頁)
本件医局の構成員である者と本件医局の構成員であった者により実生会
と呼ばれる同窓会が組織されており,実生会の代表には本件分野の教授が
就任し,実生会の庶務は本件分野の助教授が担当していた(証人A2回。
目1頁,証人B3頁)
エ本件医局が受領した寄付金は,平成13年当時「東北大学脳神経外科,
研究後援会実生会代表E」名義の銀行口座に振り込まれていた。前記銀行
口座に振り込まれた金員は,本件医局がその構成員に対して臨床研究のた
めに必要な資金,医学論文の作成に必要な資金及び学会に参加するために
必要な旅費を支給し,大学院研究生となっている構成員に対して国に支払
う授業料を負担するために使われていた。前記銀行口座への入金及び前記
銀行口座からの払戻しなどの事務は,本件医局に雇用されていた秘書が主
に担当していた。本件医局に対する寄付の申込みを受け付けていたのも前
記秘書であった。前記銀行口座の名義人になっていたEは,本件医局に所
属していた医師であったが,平成11年ころに死亡していた(証人A1。
回目2頁,7頁,同2回目3頁)
平成13年当時,本件医局の医局長であったAは,既に死亡したEが名
義人となっている銀行口座に本件医局に対する寄付金が振り込まれるのは
不自然であり,また任意の団体である本件医局に対して直接寄付が行われ
るのでは金銭の流れが不明確になるので,金銭の流れを明確にするために
寄付金の受領方法を変更することにした。Aは,当初,奨学寄付金として
国へ寄付してもらうことも考えたが,国が公立病院から奨学寄付金を受領
することができないと聞き,財団へ目的を指定して寄付してもらって,本
件医局が財団に対して指定研究助成金の交付を申請して同助成金を受領す
ることとし,平成13年10月11日付けで,本件医局に寄付の申込みを
,,していた病院に対し今後は寄付金を前記銀行口座に振り込むのではなく
財団に寄付をするように要請する文書(以下「本件要請文書」という)。
を送付した。本件要請文書には「財団法人艮陵医学振興会』へお振り,『
込み頂きました研究助成金は,後日,脳神経外科の指定口座に振り込まれ
ますので,脳神経外科講座への研究助成金となることに変はございませ
ん「このような方法に致しますと,別紙『寄付金に対する税の軽減に。」
ついて』に記載されておりますように,税の軽減がございます」と記載。
され,財団が作成した「寄付金に対する税の軽減について」と題する書面
の写し及び宮城県知事が作成した「所得税法施行令第217条第1項第2
号から第4号まで及び法人税法施行令第77条第1項第2号から第4号ま
でに掲げる特定公益増進法人であることの証明書」の写しが添付されてい
た(乙4の1ないし4の4,証人A1回目2頁,同2回目2頁,5頁)。
財団が臨床系の研究に使われる指定研究助成金を交付する場合,医局の
代表者が開設した銀行口座に指定研究助成金が振り込まれていたことか
ら,本件医局においても,財団が交付する指定研究助成金は「脳卒中の,
治療代表F」名義の銀行口座に振り込まれることとなった。Fは,平
成13年当時,本件分野の教授であった。前記代表F名義の銀行口座に振
り込まれた金員は,本件医局の構成員が行う研究に使用されており,その
構成員の中には東北大学病院以外の病院に勤務する者もいたため,本件診
療科ないし本件分野に所属する医師が行う研究のみならず東北大学に所属
していない医師が行う研究にも使用されていた。どの研究にいくら分配す
るかは本件医局の長である教授がその研究内容などを勘案して決定してお
り,前記代表F名義の銀行口座の銀行印などは本件医局により雇用されて
いる秘書の使用する机に保管されていた(証人A1回目10頁,同2回。
目22頁,証人B27頁,証人C16頁)
オ米沢市は,少なくとも平成8年度から平成13年度まで,東北大学脳神
経外科研究後援会実生会代表E名義の銀行口座に研究助成金として毎年1
20万円を振り込んでいた(甲6・13頁,証人D9頁)。
平成13年10月11日,Aから米沢市立病院長宛てに,本件要請文書
が送付された。米沢市は,これに応じて,平成14年3月までに,財団に
対して寄付の目的を脳神経外科治療への研究助成と指定して120万円を
寄付した(甲6・17頁,乙4の1ないし4の4)。
カ米沢市は,平成15年3月10日,財団に対し,米沢市立病院長の名義
で,本件寄付を申し込み,同月11日,寄付の目的を脳神経外科分野の研
究助成と指定して本件寄付を行った。同市の担当者は,本件寄付金が本件
医局に対する研究助成に使用されると認識していた。本件寄付が行われた
のは,財団の設立目的に照らして,財団の活動を支援することにより,医
療技術及び地域医療の向上に貢献できるとともに,本件寄付金が本件医局
の研究に活用されることにより,最新の医療技術が米沢市立病院の医師に
も速やかに伝達されて同院の医療技術を向上させることができると判断さ
れたからであった(甲1・7頁,3,乙3,丁3の1)。
本件医局の構成員であったBは,平成15年3月19日付けで,米沢市
立病院長宛てに本件寄付に対する礼状を作成し,同月25日に,財団が同
月14日付けで作成した本件寄付金の領収書及び本件寄付金について寄付
金控除又は損金算入が認められる旨記載された文書とともに米沢市立病院
に送付した(甲4,乙5の1ないし5の3)。
財団は,平成15年3月31日,本件寄付金について,脳卒中治療の研
究のための助成金として受け入れることを承認した。財団の研究助成審査
委員会は,同日,同年1月から3月までの間に脳卒中治療の研究のために
寄付された寄付金と本件寄付金との合計370万円のうち,財団の手数料
を控除した後の金額344万1000円について,本件医局に助成するこ
とを決定した。前記寄付金の中には民間病院から寄付されたものが含まれ
ていた(丁3の2,3の3,証人C41頁)。
本件医局の医局長であったBは,平成15年3月31日,財団に対し,
。「」,指定研究助成金交付申請書を提出した前記申請書の研究課題欄には
「より安全な脳神経外科手術の研究」と記載されていたが,これは本件医
局の構成員が行う研究をすべて包含するものであり,前記申請書が財団に
提出された時点では,財団から交付された指定研究助成金をだれがいかな
る研究に使用するかは決まっていなかった。また,前記申請書の「研究計
画」欄には「術前に術野の機能をMRA,MRS,MEG,PETその,
他の機能画像に得,また位置情報を統合することにより,術後の機能障害
の少ない,より安全な脳神経外科手術が可能になると考えられる。こうし
た機能解剖統合手術支援システムの構築を目指す」と記載されていると。
ころ,MEGと言われる器械は,広南病院に設置されているものであり,
前記申請書が財団に提出された時点では,財団から交付された指定研究助
成金を使用して行う研究が東北大学の施設を利用して行われるか否かも決
。(,,,,まっていなかった丁3の5証人A2回目14頁22頁B26頁
30頁)
財団は,平成15年4月10日,344万1000円から振込手数料3
15円を控除した後の344万0685円を「脳卒中の治療代表F」
名義の銀行口座に振込送金した(丁3の7)。
キ平成15年4月10日に財団から交付された指定研究助成金344万1
000円のうち12万4585円は,平成16年3月31日までに,手術
を記録するためのデジタルビデオカメラ及びその解析ソフトを購入するた
めに使用された(丁1)。
本件分野の教授であるGが,平成16年4月5日,財団に対し,前記指
定研究助成金344万1000円のうち12万4585円をデジタルビデ
オカメラ及びその解析ソフトを購入するために使用し,その残額331万
6415円を紫色半導体レーザー装置一式及び蛍光色素を購入するために
使用する予定であり,脳腫瘍の中で神経膠腫は脳内で周囲に浸潤しながら
発生し,その摘出は肉眼的境界が不明瞭なため困難を伴うが,蛍光色素に
より神経膠腫を標識して摘出する方法は肉眼的観察では困難であった腫瘍
境界を明らかにし,腫瘍摘出をより安全確実にし,手術成績の向上につな
がると考える旨報告した。紫色半導体レーザー装置一式の見積価格は35
0万円であった(丁1)。
財団から交付された前記指定研究助成金344万1000円のうち33
1万6415円は,平成15年7月15日に財団から交付された指定研究
助成金223万2000円とともに,蛍光色素である5−アミノレブリン
酸,コンピューター及び紫色半導体レーザー装置一式などを購入するため
に使用され,東北大学病院の倫理委員会から承認を得て,平成17年3月
以降,30人の神経膠腫患者に対し,5−アミノレブリン酸及び紫色半導
体レーザー装置を用いた術中蛍光診断が施行された。前記装置は,患者の
治療のために使用する装置ではなく,その使用者も,東北大学大学院医学
系研究科又は東北大学病院に所属する医師に限定されてはいなかった丁。(
2,証人B29頁)
Gが,平成18年2月10日,財団に対し,平成15年4月10日及び
同年7月15日に財団から交付された指定研究助成金の使途について,蛍
光色素である5−アミノレブリン酸,コンピューター及び紫色半導体レー
ザー装置一式の購入などに使用して,神経膠腫患者に対し,術中蛍光診断
を施行し,平成17年9月10日に盛岡市で開催された第40回日本脳神
経外科学会東北支部会及び平成18年2月4日に神戸市で開催された第2
回日本脳神経外科光力学研究会においてその成果を発表した旨報告した。
(丁2)
措置法24条2項は,従来から地方財政法4条の5が国の地方公共団体に
対する寄付金等の強制的徴収を禁止したものの,地方公共団体から国に対す
る自発的な寄付及び経費の任意的な負担を規制していなかったため,国が優
越的な地位を背景にして本来自己が負担すべき経費につき自発的な寄付とい
,,う名目で地方公共団体に対して負担を転嫁したり地方公共団体においても
国の機関及び施設等を誘致するために国の負担すべき経費を自ら進んで負担
することが行われ,これ放置すれば,国と地方公共団体との間の経費負担区
分を乱して地方財政の健全化を妨げるので,このような地方公共団体の国に
対する自発的寄付又は任意的な負担をも原則として禁止する一方,寄付等を
一律に禁止することにより公益上又は社会通念上不合理な結果に陥ることが
ないように一定の場合には総務大臣の承認を得て寄付等をすることができる
としたものである。とすれば,措置法24条2項本文は,同項但書に該当す
る場合を除き,地方公共団体が国に対して寄付をする場合だけではなく,地
方公共団体が直接国に対して寄付をせず,何らかの経由組織を通じて間接的
に寄付金等を支出していても,その経由組織の実態等に照らし実質的にみて
国に直接支出するのと同一で,法の禁止を潜脱していると認められる場合に
も適用されるものと解すべきである。
本件医局の医局長が米沢市立病院宛てに送付した本件要請文書には,財団
に対する寄付金が後に本件医局の指定する銀行口座に振り込まれる旨記載さ
れ,米沢市の担当者も本件寄付金が本件医局に対する助成金に使用されると
認識し,財団が本件寄付金の助成先を本件医局に決定する前に本件医局の構
成員から米沢市立病院に本件寄付の礼状が送付されたことからすれば,本件
寄付は,当初から本件医局に対して本件寄付金が送付されることを意図して
行われたものと認められる。
しかしながら,本件寄付金は,財団に寄付された後,財団が手数料等を控
除して「脳卒中の治療代表F」名義の銀行口座に振り込まれたものであ
り,同銀行口座の銀行印等は本件医局で雇用されている秘書が管理していて
同銀行口座は国ではなく本件医局に帰属すると解されるところ,財団は医学
の振興に必要な教育研究に援助を行うことを目的として設立され,その理事
及び監事の半数以上は東北大学大学院医学系研究科に所属しておらず,毎年
理事会が開催され財団の予算等が審議され,宮城県知事から特定公益増進法
人に指定されており,その法人格が形骸化していたり,法律の適用を回避す
るために濫用されているとはいえず,財団をトンネル機関と解することはで
きないこと,本件医局は医師の任意の集団であって,その構成員は国の機関
たる本件分野又は本件診療科に籍を置く者に限られず,その活動内容には,
構成員に対し,就職先を紹介したり,医学論文作成費用を援助したり,東北
大学病院以外の病院の施設を利用した臨床研究に要する費用を援助すること
などが含まれており,本件医局の構成員及び活動内容等について,本件医局
と本件分野及び本件診療科とは一致しない部分があり,本件医局と本件分野
及び本件診療科を同一のものとは解されないことに鑑みれば,本件寄付金が
国の機関たる東北大学に対して支出されたものと同一視することはできな
い。
財団は,東北大学医学部の同窓会が行った東北大学医学部百十周年記念事
業の一環として設立された公益法人であり,本件医局も,その構成員に対し
て就職先をあっせんしたり,医学研究を援助したりする団体であって,措置
法24条2項違反の疑いを回避するために設立されたものとはいえないこ
と,財団が医局に交付している指定研究助成金の原資には公立病院以外の病
院からの寄付金も含まれており,指定研究助成金の制度が措置法24条2項
違反の疑いを回避するために設けられたものであるとはいえないこと,本件
医局が指定研究助成金の制度を利用するようになった動機は,本件医局が寄
付金を受領するために利用していた銀行口座が死者の名義になっていたこと
をふまえて,金銭の流れを明確にすることにあり,専ら措置法24条2項の
適用を回避するために本件医局が財団から指定研究助成金を受領したとは認
められないことに鑑みれば,米沢市,財団及び本件医局について,法の禁止
を潜脱する意図があったとはいえない。
また,本件医局が受領した寄付金は,大学院研究生が国に支払う授業料を
援助したり,東北大学病院以外の病院において実施される臨床研究に必要な
,,資金を援助するためにも使用されていたことがありこれが東北大学の設置
維持及び運営に要する経費とはいえないこと,本件医局の構成員が行う研究
,,は東北大学病院以外の病院で実施されることも多く本件寄付金についても
財団から本件医局に指定研究助成金として送金された時点では,だれに分配
され,東北大学の施設を利用して行われる研究に使用されるか否かも決まっ
ていなかったことに鑑みれば,本件寄付金が財団に寄付された後に本件医局
に交付されたからといって,直ちに,本件寄付をした米沢市が国の教育施設
たる東北大学の維持及び運営に要する経費を負担し,国と地方公共団体との
間の経費負担区分を乱したと解することはできないというべきである。
,,,以上の諸事情に照らせば本件寄付が直接国に支出されたわけではなく
また,実質的にみて地方公共団体が国に直接支出するのと同一で,法の禁止
を潜脱しているものとは認められないから,本件寄付に措置法24条2項本
文を適用することはできず,この点に関する原告の主張には理由がない。
2争点について
地方公共団体の経費の支出は,その目的を達成するための必要,かつ,最
少の限度をこえてはならないが(地方財政法4条1項,予算の執行に当た)
り,当該事務の目的に沿って最大の効果を上げるために何をもって必要,か
つ,最少の限度というべきかは,当該支出に係る事務の内容及び支出金額の
みならず,予算執行時における当該地方公共団体の財務状況,当該地域の経
済状況並びに住民の消費及び生活の水準など諸般の事情を総合考慮して決定
されるべきものであるから,第1次的には当該地方公共団体の財政に通暁し
た予算執行機関の合理的な裁量判断に委ねられているといわざるをえない。
したがって,具体的な公金の支出が地方財政法4条1項に違反して違法とな
るのは,予算執行機関が,その裁量権を逸脱又は濫用して,当該支出が当該
事務の目的と関連せず,又は社会通念に照らして目的及び効果との均衡を著
しく欠く場合に限られるというべきである。
本件においては,前記1のとおり,本件寄付は,本件医局の行う研究を
支援するために実施され,本件寄付金は,財団に寄付された後,本件医局に
送金されて,紫色半導体レーザー装置一式及び蛍光色素を購入するために使
用され,前記装置一式及び蛍光色素を用いた術中蛍光診断が30人の患者に
施行されて,その成果が学会にも報告されているところ,本件医局の行う医
学研究を金銭的に支援し,その研究が進展すれば,その研究成果が医学雑誌
への論文の掲載並びに学会及び研究会での発表等によって医療機関及び医師
に伝達される中で,米沢市立病院にも伝達されて同病院における医療技術の
向上に資することになると解される。したがって,本件寄付は,同病院にお
ける病院事業に関連しないものとは認められない。
また,前記1のとおり,本件医局が本件寄付金を利用した臨床研究に当
たり,見積価格350万円の装置を購入したことからして,本件医局の行う
医学研究には非常に高額の機器を購入する必要が生じるなど多額の費用を要
することがうかがわれるのであるから,本件寄付金の額が社会通念に照らし
て目的及び効果との均衡を著しく欠くとまでは認められない。
この点,原告は,本件医局は,受領した寄付金の使途を必ずしも明確にせ
ず,寄付目的の達成度が何ら検証されない旨主張する。
しかしながら,前記1のとおり,財団は,指定研究助成金の受領者に対
し,指定研究助成金成果報告書の提出を求めており,平成15年4月10日
及び同年7月15日に財団から本件医局に対して交付された指定研究助成金
の使途についても,平成16年4月5日及び平成18年2月10日の2回に
わたって指定研究助成金成果報告書が提出され,同報告書には指定研究助成
金を利用して購入した機器の内容及びその機器を利用して実施された医学研
究の内容などが記載されているところであり,本件医局の受領した指定研究
助成金の使途が不透明になっているとはいいがたいのであるから,原告の前
記主張は理由がない。
したがって,本件寄付は,地方財政法4条1項に違反するとはいえない。
第4結論
以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,本訴請求はいず
れも理由がないから棄却することとし,訴訟費用及び補助参加によって生じた
費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,同法66条を適
用して,主文のとおり判決する。
山形地方裁判所民事部
裁判長裁判官片瀬敏寿
裁判官鈴木和典
裁判官田中良武

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