弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原判決を次のとおり変更する。
(1)控訴人は,被控訴人Aに対し,2741万6556円,同B,同C,
同D及び同Eに対し,それぞれ685万4139円,及びこれらに対す
る平成13年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払
え。
(2)被控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを2分し,その1を控訴人の負担
とし,その余を被控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴の趣旨
(1)原判決を取り消す。
(2)被控訴人らの請求を棄却する。
(3)訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
2控訴の趣旨に対する答弁
(1)本件控訴を棄却する。
(2)控訴費用は控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1本件は,国が設置運営していたF病院(当時。現在の名称は「Gセンター」。
以下「控訴人病院」という。控訴人は国から控訴人病院の運営及び権利義務関
係等を引き継いだ独立行政法人である。)において,胸部大動脈瘤の診断を受
けたH(以下「H」という。)が,人工的な代用血管であるステントグラフトを
血管内に留置する井上式ステントグラフト内挿術(以下「本件手術」という。)
による治療を受けた際,左外腸骨動脈が破損して出血性ショックを起こし死亡
したことについて,Hの相続人である被控訴人らが,上記出血は本件手術を担
当したI医師(以下「I医師」という。)が左外腸骨動脈にステントグラフト
を留置するための器具であるダイレータ付シースを通過させようとした際に血
管壁を貫通して左外腸骨動脈を破損させたことによるものであり,I医師は,
①治療方法を選択するに際し,患者の安全性に配慮すべき注意義務があるのに,
これを怠り,成功率の乏しい臨床治験段階の危険な本件手術を選択した過失が
ある,②上記安全配慮義務があるのにこれを怠り,Hの胸部大動脈瘤が上行大
動脈にかかっていたため手術適応がないにもかかわらず本件手術を実施した過
失がある,③動脈内をシースを通過させる際に,その通過状況をX線透視のモ
ニター方法で凝視しつつ,無理な挿入を避け,手の感触で少しでも抵抗感,違
和感を感知したときはいったん挿入を中止し,当該部位の解剖学的,病理学的
諸要因を検討の上,さらに挿入した場合の安全性を確認できない限りはシース
等の挿入を中止する注意義務があったのに,これを怠り,以前の手術によって
Hの腹部に留置されていたY型ステントグラフト(以下「Y型グラフト」とい
う。)内にシースを挿入する際,その手前で大きな抵抗を感知したにもかかわ
らず,その挿入を強行して左外腸骨動脈を破損させた手技上の過失がある,④
I医師は,治験段階で試行的な治療法である本件手術を選択する以上,H及び
その家族に対し,<ア>試行的な治療行為であること,<イ>当該治療行為の有効
性とその合理的な根拠,<ウ>当該治療行為を採用する必要性とその合理的な根
拠,<エ>当該治療行為を採用した場合の危険性の具体的内容,<オ>上記危険性
がある場合,その危険性が具体化した場合における医師の対応措置の内容,<カ
>当該疾病に対し,従来採られている他の治療方法の内容,その効果の程度,他
の治療法と当該試行的治療行為との比較,<キ>当該医師及び医療機関における
当該治療行為の試行の程度,その際の結果・内容について説明を十分にしてそ
の同意を得る注意義務があるのに,これを怠り,上記の必要十分な説明を怠っ
た過失があるなどと主張して,債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償金
(被控訴人Aにおいて5130万円5000円,その余の被控訴人において各
1282万6250円)及びこれに対する支払済みまで民法所定の年5分の割
合による遅延損害金の支払を求めたところ,控訴人が,これを争った事案であ
る。
原審は,I医師らにおいて,上記①ないし③の注意義務違反は認められない
が,④について,I医師らは井上式ステントグラフト内挿術を実施する医師に
求められる注意義務に違反し,従来の経験を頼りにして力を入れて押せば通過
する可能性があると即断してステントグラフトを過度の力で押したためにHの
左外腸骨動脈壁を破損させるに至ったものと解されるなどとして,被控訴人ら
の請求を被控訴人Aにおいて4930万円7757円,その余の被控訴人にお
いて各1232万6939円及び上記遅延損害金の支払を求める限度でこれを
認容したため,控訴人はこれを不服として控訴したものである。
2前提となる事実,争点及びこれに対する当事者の主張は,当審における主張
の訂正を踏まえて以下のとおり補正し,かつ当審における補充主張を加えるほ
かは,原判決「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」1ないし3に記載の
とおりであるから,これを引用する。
(1)原判決4頁18行目の「単位」の次に「,1Fr=約1/3㎜」を加える。
(2)同4頁23行目の次に改行して,以下のとおり加える。
「既設Y型グラフト(実際は型(逆Y)に設置されている。)の両脚部λ
分は総腸骨動脈であり,同グラフトの左脚入口のすぐ末梢側(下側)で外
腸骨動脈と内腸骨動脈に分岐している(別紙図面のほぼ×部分。以下「本
件分岐部」という。),本件手術は,Hの左大腿動脈から外腸骨動脈,
総腸骨動脈・腹部大動脈(Y型グラフト)を経路として,より中枢側にあ
る胸部下行大動脈までシースを進め,その後にシース内を通して動脈瘤が
存在する箇所までステントグラフトを運搬する予定であった。」
(3)同5頁18行目の次に改行して,以下のとおり加える。
「ウ仮に血管壁を貫通しなかったとしても,シースの挿入によって血管壁
に亀裂を生じさせ,さらにステントグラフトの挿入を続行したことによ
り,血管破綻が決定的なものになった。」
(4)同9頁15行目から17行目までを「本件手術を中止し,③直ちに外科的
再建手術に切り替えるか,少なくともシース抜去の際は,一挙にシースを抜
去するのではなく,血管破綻が発見されても,直ちにシースを挿入方向に戻
して出血をシースの壁面で一次的にブロックし,直ちに血管破綻部位に止血
用のステントグラフトを留置して止血の応急措置ができるように,術中血管
造影検査で血管破綻の有無を確認しつつ,徐々にゆっくりとシースを抜去す
べき,」と改める。
(当審における補充主張)
(1)手術適応について
ア被控訴人ら
本件手術後に,本件手術で使用された24Frのシースよりも外径の細
い20Frのシースを,術前検査によるHの血管内径8.84㎜より太い
約9㎜の左外腸骨動脈に挿入したところ,同動脈が根部から完全に離断さ
れる血管損傷事故の例が報告されている(甲B22)。
粥腫形成を伴った高度な動脈硬化が総・内外腸骨動脈まで及んでいたH
において,経路血管の脆弱性は当然予見可能であったこと,左外腸骨動脈
の起始部の狭窄率は少なくとも17.3%もあったこと,術前検査では厳
密な血管内径は分からないこと,ステントグラフトを折り畳んだ際の太さ
はシースの内径を上回る可能性があることなどの事情を総合すれば,I医
師らが,血管内径とシース外径を単純に比較してHの本件手術への適応を
判断したのは誤りである。
イ控訴人
I医師らは,病院が採用している適応性の判断基準に従ってそれを判断
しており,誤りではない。上記報告例の一例をもって本件手術への適応性
判断が誤りというのは暴論である。
(2)逸失利益について
ア控訴人
Hの役員報酬の収入は大部分が利益配当であるから,逸失利益は労務の
対価部分に限定されるべきである。
Hは,J,K及びLの3社を経営していたところ,いずれも決算期は1
2月1日から翌年の11月30日までであり,Hの死亡当時を含めた直前
3期の決算のうち,黒字であったのは,わずかにLの平成11年12月1
日から平成12年11月30日(第10期),同年12月1日から平成1
3年11月30日(第11期)のみであり,全体としては収益が上がって
いない。Hの役員報酬は3期とも3社合計で年間1500万円を超えてお
り,従業員の平均年収(約185万円)や役員報酬(被控訴人Dの725
万円が最高額)と比較しても突出しており,大部分が利益配当であると考
えられるから,その労務対価部分は,賃金センサス産業計・企業規模計・
学歴計・年齢別男性平均賃金である年間約400万円を上回るものではな
い。
また,Hは,70歳以降は息子に事業を譲って世界一周旅行をすること
を予定していたのであるから,事業承継後に役員報酬を得たとしてもそれ
はすべて利益配当であるというべきであるから,70歳以降の逸失利益は
認められない。
さらに,Hは被控訴人Aと2人暮らしであり,被控訴人A自身にも48
0万円から660万円ほどの収入があったのであるから,30%の生活費
控除は低すぎる。
イ被控訴人ら
Hの役員報酬と上記3社の損益とは相関関係になく,Hの役員報酬は労
務の対価とみるべきである。また,経営者と従業員とでは労務の対価に1
0倍程度の格差があることはむしろ当然であるから,これらとの対比を理
由にHの役員報酬の大部分が利益配当であるとはいえない。
Hは会社のシステムがうまく成立したら息子に会社の経営を委ねると考
えていたにすぎず,後継者に会社経営を譲っても何らかの形でそれをサポ
ートすることはよくあることであるから,事業承継後の役員報酬がすべて
利益配当であるというのは暴論である。
被控訴人Aの収入は,Hの会社経営すなわち収入に依存していたのであ
るから,生活費控除は一家の支柱が死亡した場合として30%とするのが
相当である。
第3当裁判所の判断
当裁判所は,被控訴人らの本訴請求は,主文掲記の限度で理由があるものと
判断する。その理由は,以下のとおりである(当審における補充主張に対する
判断を含む。)。
1争点1(本件手術中における出血の原因)について
(1)本件手術の経過及びHの死亡等について
この点については,以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」
中の「第3当裁判所の判断」1(1)記載(14頁1行目から17頁5行目)
のとおりであるから,これを引用する。
ア原判決14頁2行目の「21,22号証」を「21,22,24号証,
M医師及びI医師の各証言」と,同頁末行から同15頁1行目にかけての
「血管内径がシースの外径よりも太いこと」を「血管内径は本件分岐部付
近で約8.84㎜ないし約9.64㎜であり(乙A15の8・9),シー
スの外径約8.7㎜(24Fr)よりも太いこと」とそれぞれ改める。
イ同16頁24行目の「血管破裂及びその位置を確認した。」を「血管破
損及びその位置を確認したところ,推定される破損部位は,本件分岐部よ
りやや末梢寄りの外腸骨動脈で,留置されていた腹部Y型ステントグラフ
トの左脚入口から少なくとも1㎝から3㎝程度離れた地点であった(原審
被告第2準備書面図3・4,乙B20号証の2)。この付近は,上記のとおり
左外腸骨動脈が本件分岐部に向けて約50度屈曲している部分であり,上
記の推定破損部位は末梢側から進行するとこの屈曲部分の中枢側(上側)
である。」と改める。
ウ同16頁25行目の「シ」を「サ」と,同17頁2行目の「ス」を「シ」
と,同4行目の「セ」を「ス」とそれぞれ改める。
エ同17頁5行目の次に改行して,以下のとおり加える。
「セ(血管壁等の状況)
(ア)ステントグラフト内挿術を実施する患者の多くは搬送経路の血
管に動脈硬化の症状を有しており,健常者と比較すると動脈壁が脆
弱化している可能性が高い。Hの大動脈も粥腫(動脈硬化の状態の
一つで,粥のようにどろどろしたものが血管壁に付着している状態
のこと)形成を伴った動脈硬化が高度で,総・内外腸骨動脈まで及
んでいた(甲A3)。
(イ)血管が石灰化している部分のすぐ横の血管壁は脆弱化しやすい。
Hにおいて推定される血管の破損部位には血管の石灰化はみられな
いが,それよりやや中枢寄りの本件分岐部付近にはそれがみられる。
血管の粥腫,屈曲,狭窄及び石灰化はシースやステントグラフトを
挿入する際の障害となり得るものであり,術前検査のCT画像では,
石灰化した硬い部分はX線を吸収して白く鮮明に写るが,粥腫は必
ずしもX線を十分吸収せず,造影剤の濃度が十分でないと粥腫部分
を血液と誤認し,実際の血管内径より大きくみてしまうことがある。
(ウ)血管の狭窄の形状は楕円であったり,三日月であったり,種々
の形状をしており,同一部位でも内径は方向により一定とはいえな
い。I医師らは,血管内径について1,2方向からデータを取るが,
すべての方向からデータを取っているわけではない。
(エ)動脈壁を破損すると大量の出血を生じるおそれがあり,その場
合には,生命の危険が生じることがある(証人I28頁)。
ソ(ダイレータ付シース及びステントグラフト)
(ア)本件手術に使用したダイレータ付シースは,細長い形状であり,
ダイレータの先端は細く尖っている(乙A16号証の3)が,材質
は比較的柔らかい。
また,本件手術に使用したステントグラフトは,蛇腹を持ち,平
織りポリエステル人工血管の外側に血管壁に固定するためにニッケ
ルチタンワイヤーのリングが数個取り付けられているものである。
長さは約192㎜,太さは細い部分(長さ約50㎜)が直径32㎜,
太い部分(長さ約142㎜)が直径38㎜であり,この側面に約2
0㎜の長さの2つの枝が付けられている(乙A14号証)。これを
シース内に挿入する際には細く折り畳むので,枝のある部分が太く
なりシースの外径より若干大きいが,この折り畳んだときの太さを
実際には計ることはできない。
(イ)I医師がステントグラフトを押しているとき,アシスタントの
医師が同時にガイドワイヤーを引いており,ガイドワイヤーやシー
スが挿入されると血管はまっすぐの方向に伸ばされ,屈曲が90度
程度ある場合でも30度くらいになる。シースの先端のダイレータ
はこれに沿って進み,シースが挿入されると,血管とシースの間は,
余り隙間のない密着した状態であることが多い。したがって,血管
が破損していても破損部位から血液が漏れないことが考えられる。
タ(I医師の説明)
I医師は,本件手術中にHの容態が急変したため,被控訴人Aらに対
し,腹部に人工血管を留置する治療をしていたが,なかなかうまく入
らず,操作中に瘤を破いてしまったようである旨説明したが,本件手
術後の夜に改めて,被控訴人A及び同Bに対し,血管が石のように固
くて管を無理に入れて裂けてしまった旨の説明をした(乙A7)。」
(2)出血の原因について
ア上記認定のとおり,破損部位は,外腸骨動脈の本件分岐部に近接した箇
所であり,I医師が術前検査で本件分岐部付近の血管内径の細い部分より
約0.14㎜細い外径を有するシースが同部付近で抵抗を感じ,これを強
く押さないと挿入できなかったこと,Hの大動脈はシース等の挿入の障害
となる粥腫形成を伴った動脈硬化が高度で外腸骨動脈まで及んでいたこと,
術前検査のCT画像では,造影剤の濃度が十分でないと粥腫部分を血液と
誤認し,実際の血管内径より大きくみてしまうことがあること,狭窄部分
の形状は楕円等種々であり,同一部位でも血管内径は一定とは限らないこ
とからすると,本件分岐部を含む推定破損部位付近では,外腸骨動脈の粥
腫形成等により,実際には術前検査の結果より血管内径が小さく,それに
対し,外径がシースより大きいステントグラフトはもとより,シース自体
の外径も適応を欠くものであったものと推認せざるを得ず,そのほかにシ
ース等の挿入の障害となる事由を認めるに足りる証拠はない。
しかして,I医師及びM医師は,シース及びステントグラフトを挿入す
る際,いずれもY型グラフトの脚入口からやや末梢寄りのところで抵抗を
感じ,ガイドワイヤーによって引っ張られて伸ばされた状態の血管に力を
かけてステントグラフト等を挿入しようとして失敗し,本件手術の中止決
定後は,血管との間が密着して隙間のないシースを,折り畳まれて外径が
それより大きいステントグラフトの入った状態で抜いたのであるから,こ
うした経過において,血管壁には挿入を試みるための下から上へ押す力,
その後抜くための上から下へ引く力が強く加えられたものということがで
きる。
加えて,Hの破損部位付近は,粥腫形成等により動脈壁が脆弱化してい
た可能性が高く,また上記場所付近は,ガイドワイヤーである程度まっす
ぐの方向に伸ばされていたとはいえ,元来屈曲していて負荷がかかりやす
い場所であったこと,これに本件手術後のI医師の上記説明をも踏まえる
と,上記各事情が重なって,シース又はステントグラフトの挿入あるいは
抜去の一連の手技において外腸骨動脈がその負荷に耐えられず,破裂して
破損したものと推認するのが相当である。
そして,上記破損が生じた時点については,具体的にこれを特定するこ
とは困難ではあるものの,シースを抜去するまで血圧の低下などの大量出
血を示す兆候はみられなかったこと,シースが推定破損部位に到達すると,
その外周が血管の内壁に密着して破損部位から血液が漏れない可能性が考
えられることからすると,少なくとも,I医師がシースの挿入に抵抗を感
じて強く押したころから,シースを抜去するまでの間に破損したものと推
認するのが合理的であるというべきである。
イこれに対し,被控訴人らは,ダイレータの先端が屈曲した外腸骨動脈の
血管壁を貫通した旨主張し,上記認定のとおり,ダイレータの先端が尖っ
ていることや,破損部位は,外腸骨動脈が本件分岐部に向けて屈曲してい
るその中枢側であることからすると,ダイレータの先端が屈曲した外腸骨
動脈の血管壁を貫通した可能性も一応考えられないではない。
しかしながら,ダイレータの先は比較的柔らかく,血管をまっすぐの方
向に伸ばしたガイドワイヤーに沿って進むこと,仮にダイレータの先端が
血管壁を貫通したとすると,挿入されたシースが血管壁に密着する前に出
血していた可能性が高いものと推認されるが,実際にはシースを抜去する
まで出血の兆候はみられないことなどの事情に照らすと,ダイレータの先
端が血管壁を貫通したと認めることはできないというべきである。なお,
Hの診療録(乙A8)中には,「人工血管をあげるときに左外腸骨動脈破
裂」という記載部分があるが,これをもってダイレータの先端が血管壁を
貫通したものと推認することもできないというべきである。
他方,控訴人は,I医師が最初に抵抗を感じた箇所は,本件分岐部であ
って,破損部位との間に隔たりがあるから,破損の原因は手技とは関係が
なく,動脈硬化により破損場所の血管の伸展性がなかったことが破損の原
因である旨主張し,I医師も,破損部位ではシースの抵抗をほとんど感じ
なかったと証言する(証人I35,37頁)。
しかしながら,上記認定のとおり,I医師はY型グラフトの脚入口から
やや末梢寄りの箇所で抵抗を感じ,本件分岐部付近にシースがあるものと
推測したのであって,抵抗を感じたという推定される破損部位が本件分岐
部から1㎝から3㎝程度の近接した箇所であることからすると,抵抗を感
じた部位が破損部位ではないと断言できるか否か疑問がある(I医師も,
ステントグラフトの挿入中に破損したとすれば,折り畳んで膨らんだ部分
が当たって破損させた可能性を否定していない(証人I38頁)。)上,
仮に抵抗を感じた箇所が本件分岐部であるとしても,破損部位との距離に
照らすと,抵抗を感じた箇所の血管壁にかかる負荷が破損部位に影響しな
いとは言い難いから,I医師の上記証言のみをもって,出血原因に関する
上記認定を左右するには足りないというべきである。
ウ以上を踏まえて,以下,I医師らに過失があったか否かについて判断す
る。
2争点2(治療方針選択の過失の有無)について
この点については,以下のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」
中の「第3当裁判所の判断」2記載(18頁1行目から19頁19行目まで)
のとおりであるから,これを引用する。
(1)原判決18頁12行目から13行目の「保険適用がなかった(乙A21,
22号証)ものであり」を「保険適用がなく,臨床治験の段階にあった(甲
B3,乙A21,22号証)ものであり」と改める。
(2)同18頁25行目から26行目にかけての「施行されていたことによれ
ば,」の次に「成功率の乏しい危険な手術とまでいうことはできず,」を加
える。
(3)同19頁15行目の「実施して事例」を「実施した事例」と改める。
3争点3(手術適応判断の過失の有無)について
(1)M医師らの手術適応の判断について
アM医師らの術前検査を前提とする本件手術の適応に関する判断基準等に
ついては,原判決「事実及び理由」中の「第3当裁判所の判断」4(1)ア
(ア)(21頁5行目から25行目)のとおりであるから,これを引用する。
イそして,M医師らが,Hの本件手術の適応について判断した内容につい
ては,原判決「事実及び理由」中の「第3当裁判所の判断」4(2)ア(2
7頁16行目から28頁21行目)記載のとおりであるから,これを引用
する。ただし,原判決27頁17行目の「乙A17」を「乙A15の8・
9,17」と改める。
ウ以上のとおり,搬送経路の血管の状態に関する術前検査の結果から,ス
テントグラフトの形状やサイズを決定するM医師は,造影CTによる複数
の要素を総合的に判断してHに本件手術の適応があると判断したものであ
り,I医師の判断も同様であって,その判断基準が不合理であると認める
に足りる証拠はないから,M医師らが,Hについて本件手術の適応がある
と判断したことに過失はないというべきである。
(2)反論について
上記に対する被控訴人らの反論及びこれに対する判断は,原判決「事実及
び理由」中の「第3当裁判所の判断」3(1)ないし(4)(19頁21行目か
ら20頁25行目)のとおりであるから,これを引用する。ただし,同20
頁25行目の「したがって」から同行目末尾までを削除した上,改行して以
下のとおり加える。
「(5)被控訴人らはまた,本件手術後,本件手術で使用されたシースよりも細
い20Frのシースを,術前検査によるHの血管内径8.84㎜より太
い約9㎜の左外腸骨動脈に挿入した事例において,同動脈が根部から完
全に離断される血管損傷事故が発生した旨報告されている(甲B22)
ことに加え,Hの経路血管の脆弱性が予見可能であったこと等の諸事情
を総合すれば,I医師らが,血管内径とシース外径を単純に比較してH
の本件手術への適応を判断したのは誤りである旨主張する。
しかしながら,上記のとおり,M医師らが手術適応を判断するにおい
ては,複数の要素を総合的に判断しているのであって,術前検査の結果
における血管内径とシース外径を単純に比較してHの本件手術への適応
を判断しているものではないから,上記報告例が存在するからといって,
Hの本件手術の適応に関するM医師らの上記判断が誤りであるというこ
とはできない。
したがって,被控訴人らの上記主張はいずれも採用できない。」
4争点4(手技上の過失の有無)について
(1)証拠(乙A21,22,24号証,M医師及びI医師の各証言),当該箇
所に掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア(Hの外科手術の適応等について)
胸部大動脈瘤の手術としては,本件手術のようなステントグラフト内挿
術のほかに,既に長期成績が出ていて確立された治療法である胸部外科手
術があり,Hはその適応があったが,HはI医師からの説明を受け,本件
手術を受けることに同意した(甲A5)。
なお,本件手術である井上式ステントグラフト内挿術は,臨床使用され
始めた平成6年から本件手術当時までに357例の手術が実施されており,
そのうち胸部大動脈瘤に関するものは117例であった。
イ(術前検査について)
血管の狭窄の形状は種々であり,CT画像においても血管の内径も粥腫
などによって実際より大きく見えてしまうことがあるなど,術前検査によ
っても,搬送経路の血管の内径に関して必ずしも正確に把握することがで
きるわけではないことは既に認定,判断したとおりであるが,そのほかに,
屈曲や石灰化の角度についても,見る角度やその人の見方によって誤差が
生じ,また,このような検査結果によって動脈壁の脆弱性の程度や場所を
正確に推測することはできない。
また,ステントグラフト内挿術を実施する患者の多くが搬送経路の血管
に動脈硬化の症状を有し,健常者と比較して搬送経路の動脈壁が脆弱化し
ている可能性が高いことも既に認定,判断したとおりであるが,動脈硬化
の進行と動脈壁の脆弱化の関係は不明であり,血管壁の弾力性は,部位毎
に強弱があり,動脈硬化が進んだ部位とそれほどではない部位が混在して
いる箇所において弾力性がどのように変化するのかも分かっておらず,動
脈壁の弾力性の低下傾向を,CT画像及び血管造影の検査からは判別する
ことはできない。
ウ(ステントグラフト内挿術を実施している医師の認識について)
この点については,原判決「事実及び理由」中の「第3当裁判所の判
断」4(1)ウ(24頁1行目から22行目)のとおりであるから,これを引
用する。
エ(M医師及びI医師の認識について)
この点については,原判決「事実及び理由」中の「第3当裁判所の判
断」4(1)エ(24頁24行目から25頁19行目)のとおりであるから,
これを引用する。但し,原判決25頁4行目の「井上式スタントグラフト
内挿術」を「井上式ステントグラフト内挿術」と改める。
オ(挿入に抵抗がある場合の対応等について)
シースやステントグラフトの挿入操作は,X線透視によるモニター画面
を見ながらこれを行う。その場合,ガイドワイヤーやステントグラフトの
金属部分は画面に写るが,ダイレータやシースはうっすらと写るのみで血
管自体は画面に写らない。
また,シース又はステントグラフトを挿入する際に抵抗がある場合のI
医師らの対応は以下のとおりである。
いったん押すのを中止して原因を推測する。その際には,術前の造影C
Tデータ,その場で見ているX線照射のモニター画面の両方を併せて考え
る。ただし,上記のとおりモニター画面には血管は写らず,血管の屈曲,
狭窄の場所及び程度を見ることはできないので,造影剤を流してシースと
血管の位置関係を確認することもある。しかし,何が原因で抵抗を感じて
いるのか不明の場合もある。
(2)既に認定した事実(ステントグラフト内挿術の内容,同手術を受ける患者
の動脈壁の状況,Hの術前検査の結果,同手術を行う医師の認識等)に加え,
上記認定事実を総合すれば,ステントグラフト内挿術は,本件手術当時,全
国的規模で相当数の症例において実績が積み重ねられていたとはいえ,臨床
治験の段階にとどまっていたもので,未だ完成された治療法として確立され
たものとはいえない試行的な手術方法であったものといわざるを得ない。他
方,これによる治療を受ける患者の多くはステントグラフトの搬送経路であ
る動脈壁が脆弱化している可能性が高く,動脈壁を破損した場合には大量の
出血を生じて極めて危険な状態に陥ることがあり得るのである。
しかして,ステントグラフトの搬送経路の血管について,狭窄の形状には
楕円など種々のものがあるにもかかわらず明確には判明せず,粥腫部分はC
T画像で明瞭でなく,これを血液部分と誤認して血管内径を大きく見てしま
うなど,術前検査による血管内径の数字がステントグラフトの通過範囲を正
確に反映しているとは限らず,また,血管の屈曲の角度や石灰化の範囲につ
いても,見る角度やCT画像の見方によって誤差が生じるものであるなど,
術前検査によるデータの結果にも限界があり,これらは一応の参考情報にと
どまるものといわざるを得ないものである。さらに,動脈壁の弾力性の程度
はこうした検査によって把握することはできない。
しかも,医師はX線照射のモニター画面を見ながら本件手術を実施すると
ころ,モニター画面において,ガイドワイヤーとうっすらと写るシースによ
り血管の概ねの位置は分かるものの,血管自体は写らないため,必ずしも血
管内部の正確な情報を伝えるとは限らない術前検査の結果と上記手術の経験
による自らの手の感触を頼りにシース及びステントグラフトを挿入せざるを
得ない。
以上のように,本件手術は当時試行的な手術方法であった一方,それを受
ける患者は動脈壁が脆弱化している可能性が高く,それを破損すると危険な
状態に陥る可能性があるにもかかわらず,井上式ステントグラフト内挿術を
実施する医師は,血管自体は写らないX線照射のモニター画面を見ながら,
必ずしも血管内部の正確な情報を伝えるとは限らない術前検査の結果と上記
手術の経験による自らの手の感触を頼りに,シース及びステントグラフトを
挿入するのであり,Hには外科手術の適応もあったことを併せて考慮すると,
I医師らは,例えば,シース等の挿入時にある程度の抵抗を感じたときは,
血管造影によって血管内を直ちに観察し,血管内の通過可能性について具体
的な情報を得られない場合には,外科手術への移行やシースやステントグラ
フトのサイズの再検討のためにそこで手技を中止するなど,可能な限り安全
性を確認しながら,血管を損傷しないように慎重に操作すべき注意義務を負
っていたものということができる。
ところが,上記1(1)で認定したとおり,I医師は,シース及びステントグ
ラフトを挿入する際,いずれもY型グラフトの脚入口からやや末梢寄りのと
ころで抵抗を感じたにもかかわらず,血管造影によって血管内を観察するな
どして抵抗の原因を調べることなく,必ずしも血管内部の正確な情報を伝え
るとは限らない術前検査の結果と経験による自らの手の感触のみを根拠に安
易に通過可能であると判断し,これらを挿入しようとしてHの外腸骨動脈を
破損したのであるから,I医師には過失があったというべきであり,引き続
きステントグラフトの挿入を続けたM医師にも同様の過失があったというべ
きである。
そして,I医師らが,上記のとおり抵抗の原因を調べていれば,Hの外腸
骨動脈破損を防ぐことはできたものと推認することができるから,I医師ら
の過失とHの死亡との間には相当因果関係があるというべきである。
なお,既に判断したとおり,シースを抜去する際に上記動脈を破損した可
能性もあるが,その場合においても,それ以前の上記挿入行為によって動脈
壁に負荷がかかったことが影響しているものと推認するのが相当であるから,
シースを抜去するまでの上記一連のシース及びステントグラフトの操作に過
失があり,これと相当因果関係があるものというべきである。
(3)以上に対し,控訴人は,シースと血管は密着しているから,血管造影を実
施しても,シースの先端部分までしか血管内部の状況を調べることができず,
抵抗の原因を把握することは困難である旨主張する。
しかしながら,I医師自身,抵抗がある場合,その原因を推測するに際し,
造影剤を流してシースと血管の位置関係を確認することがあることを自認し
ていることは上記のとおりであるから,控訴人の上記主張は採用できない。
もっとも,上記認定のとおり,それでも何が原因かわからない場合もあり得
るがその場合に安全性を確認できなければ,本件手術を中止するのが相当と
いうべきであるから,原因が判明しない可能性があることは,I医師らにお
ける上記注意義務を否定する理由にはならないというべきである。
控訴人はまた,本件手術において,血管にどの程度負荷がかかっているか
は,①X線透視モニター画面から推測される血管の走行とシース等の関係等,
②術前検査のデータにおける搬送経路の血管の屈曲,狭窄,石灰化の部位及
び程度,③術中に感じる抵抗の強さを総合して推測するほかなく,血管壁が
脆弱化している部分及び程度は術前検査によっても明らかにならないのであ
るから,当該抵抗部位がどの程度の負荷に耐えうるかは過去の手技における
経験に基づき判断するほかなく,I医師らはそうした判断を尽くした旨主張
する。
しかしながら,上記のとおり抵抗の原因を推測する方法として,さらに血
管造影による方法もあるのであり,また,本件手術当時の井上式ステントグ
ラフト内挿術の試行性に加え,血管壁を破損した場合の結果の重大性や,H
に外科手術の適応があったことを踏まえると,控訴人の上記主張は,I医師
らの経験に頼りすぎるもので,直ちには採用できないというべきである。
(4)以上によれば,本件手術当時,控訴人病院を経営していた国は,I医師ら
の過失によってHを死亡させたことによって損害賠償責任を負い,控訴人は
上記損害賠償債務を承継したものというべきである(独立行政法人国立病院
機構法附則5条1項)。なお,M医師は控訴人病院に勤務する医師ではない
が,I医師の依頼を受けて本件手術に立ち会った者であるから,控訴人病院
に勤務する医師に準ずる立場にあるものとして,M医師の行為についても,
国は損害賠償責任を負い,控訴人はこれを承継したものと解すべきである。
5争点6(損害)について
(1)逸失利益
ア証拠(甲A4,C1,2の1・2,3の1ないし3,4の1ないし3,
5の1ないし3,乙A7,被控訴人A本人)及び弁論の全趣旨によれば,
H(昭和7年12月27日生まれで死亡当時68歳)は死亡当時,住宅模
型の製造販売を業とするJ,K及びLの3社の代表取締役であり,死亡す
る前々年である平成11年には,給与収入(役員報酬)として1775万
円,年金収入として182万2630円を,平成12年には給与収入(役
員報酬)として1740万円,年金収入として182万6332円を得て
おり,本件手術を受けて亡くなった時期を含む平成12年12月1日から
平成13年11月30日までの決算期においても,K及びLから合計15
44万5250円の役員報酬を受けていたこと,上記3社はいずれも同族
会社であり,長男である被控訴人BはKの非常勤取締役,次男及び三男で
ある被控訴人C,同DはLの常勤取締役,被控訴人Aは両社の監査役であ
ったこと,被控訴人Aは,両社から平成11年には合計600万円,平成
12年には合計480万円の報酬を得ていたこと,上記3社の従業員はア
ルバイトの5,6名を含めて約70人であったこと,Jは,第9期(平成
10年12月1日∼平成11年11月30日)決算では1091万416
3円の営業損失,1115万7953円の経常損失を計上し,それ以降は
営業活動を行っていた形跡はみられないこと,Kは,第15期(平成10
年12月1日∼平成11年11月30日)決算では,1197万6339
円の営業損失を計上したが,51万1295円の経常利益を計上し,第1
6期(平成11年12月1日から平成12年11月30日)決算では69
9万6150円の営業損失,368万7706円の経常損失を,Hが亡く
なった第17期決算(平成12年12月1日から平成13年11月30
日)では1201万0929円の営業損失,1086万6655円の経常
損失をそれぞれ計上していたこと,Lは,第9期(平成10年12月1日
∼平成11年11月30日)決算では2067万2886円の営業損失,
1655万5906円の経常損失を計上していたが,第10期(平成11
年12月1日から平成12年11月30日)は,583万8091円の営
業利益,538万6323円の経常利益を計上しており,Hが亡くなった
第11期(平成12年12月1日から平成13年11月30日)でも,9
57万6765円の営業利益,1242万6040円の経常利益を計上し
ていたこと,Hは,死亡当時被控訴人A(昭和13年8月20日生まれで
H死亡当時63歳)と2人暮らしであり,70歳になったら息子に経営を
任せて日本一周や世界一周をしたいと考えていたことが認められる。
イ以上の認定事実を前提に判断する。
(ア)労働可能期間
Hが亡くなった平成13年簡易生命表によれば,68歳男性の平均余
命は15.56年であることが認められるから(当裁判所に顕著な事
実),Hは,本件手術によって亡くならなければ,少なくともその2分
の1を上回らない7年間は稼働して収入を得ることが可能であったとい
うべきである。
(イ)基礎収入
Hの役員報酬は会社の損益の状況にほとんど影響されていない上,少
人数の同族会社であることからすれば,そのうちの多くは労務の対価で
あるというべきであること,しかして,Hの死亡当時Lに限っては一応
利益を出しているが,それ自体はHのみによって生み出された利益とは
いえないこと,Hは死亡当時すでに68歳であり,70歳で息子に経営
を任せることを考えていたこと,賃金センサス平成13年企業規模計・
産業計・学歴計の65歳以上の男性の平均収入が年間409万4500
円であったこと(当裁判所に顕著な事実)を総合すれば,Hは死亡しな
ければ,少なくとも68歳から70歳までの2年間は,Hの労務の対価
分として平成11年と平成12年の役員報酬の平均である1757万5
000円の80%である各年1406万円,71歳から75歳までの5
年間は,上記各年409万4500円の収入を得ることができたにとど
まるものと認めるのが相当というべきである。
(ウ)生活費控除
Hは被控訴人Aと2人暮らしであり,被控訴人Aは,K及びLから平
成11年と平成12年の平均で年間540万円の役員報酬を得ており被
控訴人A自らの生活費に充てられるものと推認できること,他方,Hは
年間約180万円ほどの年金収入があり,これは自らの生活費に充てら
れるものと推認できることを総合すると,生活費控除は40%とするの
が相当である。
(エ)算定
以上を前提に,ライプニッツ方式により死亡時から2年間(係数1.
8594),その後5年間(同3.9269(5.7863−1.85
94))の中間利息を控除し,Hの逸失利益を算定すると,2533万
3113円(1円未満切捨て。以下同じ。)となる。
(計算式)
14,060,000×(1-0.4)×1.8594+4,094,500×(1-0.4)×3.9269
=25,333,113
(2)慰謝料2300万円
本件の諸事情を総合すると,Hの慰謝料としては2300万円を相当と認
める。
(3)葬儀費用150万円
控訴人病院医師の不法行為と相当因果関係のある葬儀費用としては150
万円を相当と認める。
(4)弁護士費用500万円
控訴人病院医師の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用としては50
0万円を相当と認める。
(5)以上によれば,Hは控訴人に対し,合計5483万3113円の損害賠償
請求権を取得したものであり,被控訴人Aは2分の1,被控訴人B,同C,
同D及び同Eは各8分の1の割合でこれを相続したから,被控訴人Aは27
41万6556円,被控訴人B,同C,同D及び同Eは各685万4139
円の損害賠償請求権を有することになる。
第4結論
以上によれば,被控訴人らの本訴請求は,被控訴人Aにおいて,不法行為に
基づく損害賠償金2741万6556円及びこれに対する本件手術の日である
平成13年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害
金,被控訴人B,同C,同D及び同Eにおいて,上記損害賠償金各685万4
139円及び上記同日から同割合による遅延損害金の各支払を求める限度で理
由があり,これと結論を一部異にする原判決は相当でない。
よって,主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所民事第1部
裁判長裁判官坂本慶一
裁判官山崎秀尚
裁判官山下美和子

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