弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求める裁判
1控訴人
(一)原判決を取り消す。
(二)被控訴人は,東京都選挙管理委員会の委員長に対し53万2000円,
その他の各委員に対し各43万5000円の月額報酬を支給してはならな
い。
(三)訴訟費用は,第1,2審を通じ,被控訴人の負担とする。
2被控訴人
主文と同旨
第2事案の概要等
本件は,東京都の住民である控訴人が,東京都選挙管理委員会の委員長及びそ
の他の委員(以下「本件各委員」という。)に対し,東京都選挙管理委員の報酬
及び費用弁償条例(昭和22年東京都条例第53号。以下「本件報酬条例」とい
う。)に基づき,月額をもって定められた報酬が支給されていることは,委員会
の委員を含む非常勤の職員に対して,原則として勤務日数に応じて報酬を支給す
る旨を定めた地方自治法(以下「法」という。)203条の2第2項の規定に違
反し,違法であるなどと主張して,報酬の支給に係る権限を有する被控訴人に対
し,法242条の2第1項1号に基づき,各報酬の支給の差止めを求める事案で
ある。
原判決は,控訴人の請求をいずれも棄却したため,これに不服の控訴人が控訴
した。
1関係法令等の定め,前提事実,争点及び争点に対する当事者の主張の要点は,
次の2及び3のとおり,付け加えるほか,原判決「事実及び理由」中の「第2
事案の概要等」の「1」ないし「4」記載のとおりであるから,これを引用
する。
2控訴人が当審において追加又は敷衍した主張
本件各委員に対する月額報酬の支給は,地方自治の本旨からかけ離れ,また,
他の道府県の選挙管理委員や議員の報酬との比較から見ても,金額が高額に過
ぎ,明らかに違法であるから,その差止めが認められるべきである。
(1)選挙管理委員の職務内容は法定されており,委員に任命される者の資質に
着目し,その学識や経験を職務に生かして行政権を担うことが期待されてい
る。そして,選挙管理委員等の非常勤報酬は,その学識や経験を職務に生か
して貰うことに対する「謝金」としての性格を有するものである。
したがって,その勤務の質及び量に相応する報酬を支給する必要はあるが,
その職責の大きさ及び自治体の規模の大きさ等を強調し,勤務量の実情を度
外視した月額報酬制を採ることは,法203条の2第2項の趣旨を逸脱して
いる(大阪高裁平成22年4月27日判決・判例地方自治331号53頁以
下。以下「大阪高裁判決」という。)
(2)本件各委員の職務内容は,毎月2回の定例会への出席,選挙が行われる場
合の臨時会への出席,選挙啓発活動であり,委員長は,このほか,関連団体
への会合に出席することがあるが,選挙がなく,定例会しか開かれなかった
平成21年5月及び10月は,2回の会議出席のみが職務内容で,1日当た
り,委員長は26万6000円,各委員は21万7500円の報酬を得たこ
とになる。
(3)報酬の額の比較においては,本件各委員の報酬と国の非常勤委員等の報酬
限度額とを対比することが1つの基準となるが,前者が後者の3倍を超える
ような場合は,当不当を超え,裁量の範囲を超えて違法というべきである(大
阪高裁判決)。
本件各委員の報酬額を,国の非常勤委員等の報酬限度額である日額3万5
300円と比べると,委員長は7.54倍,各委員は6.16倍もの高額な
報酬が支給されたことになる。
また,平成21年4月から12月までの平均を見ても,都議会議員選挙及
び衆議院議員選挙が行われた年であるにもかかわらず,1か月当たり,委員
長で3.89日,各委員で3.11日から3.33日の出勤日数に止まり,
1日の報酬額を国の非常勤委員等の報酬限度額と比較すると,委員長で3.
77倍,各委員で3.08倍にもなる。
したがって,本件においては,本件各委員に対し,明らかに裁量の範囲を
逸脱した違法な報酬の支給があるといわざるを得ない。
(4)各都道府県について,都道府県議会議員の報酬額と選挙管理委員の報酬額
との比較を一覧にしたものが別表1である。
これによると,地方議会議員の報酬額に対する選挙管理委員の報酬比率は,
東京都が突出して42%と最高の数値を示しており,30%台が神奈川県,
愛知県,大阪府及び兵庫県であり,多くの地方公共団体は20%台であるが,
10%台も6県ある。
都議会議員の報酬に対する本件各委員の報酬の比率は,他の道府県議会議
員の報酬と当該道府県の委員の報酬の比率と比較しても著しく高率であり,
その額も高額であるというべきであり,この点でも,本件各委員に対する月
額報酬の支給は,地方自治の本旨を逸脱した違法がある。
3被控訴人
(1)控訴人の主張は,選挙管理委員の職務の内容,勤務の態様からして,本件
各委員等の報酬額が,他の地方公共団体のそれに比較して,突出して高いと
いうものである。
しかしながら,控訴人は,本件各委員の職務が月2回の定例会への出席に
尽きるとの前提に立った主張に終始しており,本件各委員の広範な職務内容,
負担する責任の重さ,定例会以外の多様な勤務等について,意図的に目を背
けるものといわざるを得ない。
この点につき,控訴人は,大阪高裁判決を引用して,同判決の説示する基
準を適用するが,事案を異にする大阪高裁判決が本件訴訟に当然に妥当する
ものでないことは明らかであって,これに基づく主張も失当である。
(2)控訴人は,全国の選挙管理委員等と都道府県議会議員の報酬比率と比較し
ても,東京都が突出して42%と最高の数値を示しており,著しく高率・高
額であり,この点でも,本件各委員に対する月額報酬の支給は,地方自治の
本旨を逸脱する違法があると主張する。
しかしながら,各地方公共団体は,その実情に応じて選挙管理委員の報酬
額を定めているのであって,東京都にあっては,都の実情に応じ適切に決定
している。各都道府県において,選挙管理委員の報酬額に差が生ずるとして
も,それぞれの都道府県の実情を反映して決定された結果であるから,単に
報酬額の多寡や議会議員の報酬との比率を論ずることは無意味である。
そして,本件各委員の職務の内容や勤務の態様,東京都の規模(面積・人
口・財政規模)といった都の実情を考慮要素として,どの程度の報酬額が適
切であるかについては,東京都議会の判断に委ねられているものであり,他
の道府県における報酬額との比較をもって,直ちに著しく高額であるとまで
断ずることはできない。
本件各委員は,会議への出席に止まらず,日野市,あきる野市,国分寺市,
島部,武蔵野市,葛飾区等の選挙管理委員会への訪問等の活動をしており,
また,その負担する責任も重い。東京都の面積・人口・財政規模を報酬決定
の一要素とすることは,何ら不当ではなく,控訴人の主張は失当である。
第3争点に対する判断
当裁判所も控訴人の請求は理由がないものと判断する。
その理由は,次のとおり付け加えるほか,原判決「事実及び理由」中の「第3
当裁判所の判断」記載のとおりであるからこれを引用する。
1控訴人が当審において追加又は敷衍した主張は,前記第2の2のとおりであ
るが,控訴人が,原審以来,枢要な論点として主張するところも踏まえて,改
めてこれを要約すると,以下のとおりということができる。
(一)法203条の2第2項ただし書(平成20年法律第69号による改正前
の法203条2項)の趣旨は,非常勤の委員に対する月額報酬制の採否を,
各地方自治体の実情に応じ,その判断に任せることにあるとしても,非常勤
委員の報酬について月額をもって定めることができるのは,その実情と実態
を精査したとき,(ア)常勤の職員と同様に月額等をもって定められた報酬
を支給することが合理的である場合,(イ)勤務日数の実態を把握すること
が困難であり,月額等をもって定められた報酬を支給する以外に方法がない
場合等の「特別な場合」に限られる(大阪高裁判決)。
(二)本件各委員に対する報酬は,その学識や経験を職務に生かしてもらうこ
とに対する謝金の性格を有するから,その職責の重大性等を過大視し,勤務
量等の実情を度外視して月額報酬を支給することは,法203条の2第2項
の趣旨に反して違法である。
本件各委員の職務の内容及び職務の実態に照らせば,本件各委員について
は,上記(ア)又は(イ)の特別な場合に当たらない。乙11から抽出した本件
各委員の職務の内容及び職務の実態の一覧表である別表2によれば,衆議院
議員選挙及び都議会議員選挙の行われたこの期間ですら,本件各委員の会議
への出席及びそれ以外の職務に従事した勤務日数は,1か月当たり,委員長
で3.89日,それ以外の委員で3.11日から3.33日に過ぎない。
(三)本件各委員の報酬額は,他の地方公共団体のそれに比較して突出して高
額である。
本件各委員の報酬額の決定が,地方議会に委ねられている条例制定権の裁
量の範囲を逸脱しているかどうかの基準の1つとして,日割により試算した
本件各委員の報酬額と,国家公務員における非常勤委員等の1日当たりの報
酬限度額3万5300円(一般職の職員の給与に関する法律22条1項)と
を比較するのが有益であり,これによれば,委員長で3.77倍,各委員で
3.08倍といずれも3倍を超えており,条例制定における裁量の範囲を逸
脱し,又は裁量権を濫用した違法があるというべきである。
また,別表1のとおり,都道府県議会議員の報酬に対する選挙管理委員の
報酬比率に係る他の道府県との比較も重要であるところ,本件各委員に対す
る月額報酬は,その比率も,報酬額自体も明らかに高きに過ぎ,本件報酬条
例は,法203条の2第2項の趣旨を逸脱する違法なものである。
2控訴人の主張(一)について
控訴人の主張は,法203条の2第2項のただし書は,上記1の(一)の(ア)
又は(イ)に例示したような特別な場合にのみ,条例により,非常勤職員に対し,
日額支給と異なる特別の定めをすることができるというものである。
しかしながら,改正前法203条2項のただし書の追加改正に係る国会審議
の経緯については,原判決書の13頁11行目から18頁20行目までに,ま
た,改正前法203条2項ただし書に関する行政解釈については,原判決書の
18頁21行目から19頁16行目までにそれぞれ認定されているとおりであ
るところ,改正時の国会審議及びその解釈に係る自治庁の回答並びに自治庁次
長通知のいずれにも,条例により特別の定めをする事情につき,控訴人主張の
(ア)又は(イ)に限定すべきことが示されていると認めることはできない。
むしろ,ただし書を加える修正案の趣旨説明(乙2の1/9頁から2/9頁,
乙4の2/21頁,3/21頁)及び自治庁の回答によれば,特別職である教
育委員会,選挙管理委員会,人事委員会,公安委員会等の委員等が改正前法2
03条2項のただし書の対象として例示的に説明されており,どのような非常
勤職員にどのような方法で報酬を支給するかについては,あくまでも地方自治
体が,職務内容及び勤務態様等を考慮して,具体的実情に応じ,自主的に判断
すべきものとされていたものと認めることができる。
また,条例により特別な定めをする場合につき,規定の文言上,格別の要件
や基準は定められておらず,法203条の2第2項本文の趣旨による制約を受
けることは当然のこととして,地方自治体は,職務内容及び勤務態様等を考慮
して,具体的実情に応じ,どのような場合に日額支給によらない特別の定めを
するかということ自体についても,自主的に判断することができるものと解す
ることができる。
また,控訴人は,上記のただし書の規定が制定された後の社会情勢等の変化
も考慮すべきである旨主張するが,上記の制定の経緯に加え,同規定において
は,非常勤の職員に対する報酬の支給につき,条例により特別の定めを設ける
ことができる要件や,その基準が示されていないほか,同規定の制定に係る国
会での審議の過程において,その適用を当分の間に限定する趣旨が示されてい
た事実もうかがわれないことからすれば,上記控訴人の主張は,採用すること
ができない。
3控訴人の主張(二)について
控訴人は,本件各委員の勤務の実態が,極端に少なく,その勤務の内容や勤
務の実態に照らし,(ア)常勤の職員と同様に月額等をもって定められた報酬
を支給することが合理的である場合及び(イ)勤務日数の実態を把握すること
が困難であり,月額等をもって定められた報酬を支給する以外に方法がない場
合のいずれの場合にも当たらないから,これに対する月額報酬の支給を定めた
本件報酬条例は,法203条の2第2項の趣旨に反し,違法であると主張する。
しかしながら,前記2に示したとおり,条例をもって特別の定めをすること
ができる場合は,上記の(ア)又は(イ)の場合に限られず,地方公共団体は,勤
務日数や執務時間,業務の繁忙等の業務実態のみでなく,各委員の業務内容,
業務の性質,権限の内容や性質,委員が負うこととなる職責,選出に伴い受け
ることとなる各種制限,各地方公共団体における財政規模や財政状況,適性を
備えた人材確保の必要性とそのための相当な報酬額など,各種の要素を勘案し
た上,自主的な判断の下に,条例で特別の定めをすることができるというべき
である。
確かに,本件各委員の平成21年4月から12月までの9か月間における勤
務の内容及び勤務の実態は,乙11の内容を一覧表にした別表2に記載のとお
りであり,勤務日数及び判明している勤務時間は,控訴人主張のとおり,かな
り少ないといえる。
しかしながら,選挙が実施された月の勤務日数は,比較的多くなっているほ
か,本件各委員の職務等,その具体的な事務,本件各委員の勤務態様は,原判
決書の20頁の26行目から27頁の15行目までに詳細に認定するとおりで
あり,これによれば,選挙管理委員会は,必ず設置しなければならない執行機
関であり,議会制民主主義の実現にとって極めて重要な選挙制度の運営,管理
及び執行をする機関として,その職責の重大性はいうまでもなく,また,選挙
の効力等の争訟について,準司法的機能を果たすべきことが期待されており,
その職務には,中立性,独立性及び公平性が要求され,本件各委員には,高潔
な人格と高い識見及び専門的知識とが要求されていることから,地方議会の選
挙により選出されるべきものとされ,ひとたび選出された場合には,各種兼職
の禁止に服し,守秘義務を課されるなどの諸制約を受けることになるなど,そ
の職責や人選が一般職の職員とは全く異なるものとなっている。
また,具体的な職務について見ても,本件各委員は,定例会及び臨時会への
出席以外に,選挙に係る告示,投票日における対応,開票後の当選人の決定ま
での待機と選挙会への出席,当選人への当選証書の交付などの本来の選挙管理
業務のほか,区市町村の指導,助言,意見交換,各種会合への出席,選挙執行
計画の説明,選挙の啓蒙活動,区市町村の視察など広範な活動を行っている。
以上の諸点に鑑みれば,当該職務の内容,性質,勤務態様及び地方公共団体
の実情に照らし,本件各委員については,勤務日数や,勤務時間のみに応じて
報酬を定める法203条の2第2項本文の日額報酬によることは必ずしも相当
ではないとして,東京都議会が本件報酬条例を定めたことは,条例制定におけ
る裁量の範囲を逸脱し,又は裁量権を濫用したものとは認められない。
控訴人のこの点に関する主張も採用できない。
4控訴人の主張(三)について
控訴人の主張は,本件各委員の報酬額が高額に過ぎるとするものである。
法2条14項や,地方財政法4条1項の規定の趣旨をも併せ考えると,非常
勤の職員に対し月額報酬を支給する条例の定めが当該地方議会の裁量の範囲を
逸脱し,又は裁量権を濫用したものと認められるか否かの判断においては,報
酬の多寡(相当性)は,検討すべき重要な要素であるといえる。
本件各委員については,平成22年3月まで,委員長につき月額53万20
00円,その他の委員につき月額43万5000円の報酬が支給されてきたこ
と(平成22年4月1日以降は,委員長につき53万円,その他の委員につき
43万3000円と改訂された。)及び原判決別表2のとおり,その報酬額は,
全国で一番高額であることは,当事者間に争いがない。
しかしながら,原判決説示のとおり,本件各委員に支給される本件報酬の額
については,東京都特別職報酬等審議会が消費者物価(東京都区部)等を考慮
した上で答申したところにより決定された特別職の報酬の額の改定率を参考に
して定められており,改定率の相当性,ひいては報酬額の相当性については,
審議会の諮問意見により,間接的ながら担保されているということができる。
そして,同じ非常勤である都議会議員の報酬と対比しても,本件各委員の報酬
が不相当に高額であると断ずることができないことは,原判決説示のとおりで
ある。
控訴人は,他の道府県における委員の報酬額との対比や,他の道府県におけ
る地方議会議員の報酬額と委員の報酬額との比率に基づいて,本件各委員の報
酬が極めて高額であり,本件報酬条例は,報酬額の点からみても,裁量の範囲
を逸脱していると主張する。
しかしながら,各地方公共団体は,その実情に応じて選挙管理委員の報酬額
を定めているのであって,弁論の全趣旨によれば,東京都にあっては,都の実
情として,管轄すべき地区が多く,面積が広いこと,人口が極めて多く,選挙
人及び被選挙人数が多数に上ること,選挙の実施に際しては,投票箇所や集計
箇所が多数生じ,統括すべき事務の内容や,指揮すべき補助職員数も多数に上
り,全体としての運営が複雑化,多忙化する中で,これを迅速,適正に実施す
る職責は極めて大きなものであること,日常的な啓蒙活動についても,同様で
ある等諸般の事情を考慮し,その財政事情をも勘案して,前記のように人格高
潔で適性のある委員に対する報酬としての相当性をも斟酌し,月額報酬が決定
されたものと推認されるから,地方公共団体における実情の差異を捨象して,
単に,報酬額の多寡や議会議員の報酬との比率を論ずることは,必ずしも相当
とは思われない。
そして,本件各委員の職務の内容や勤務の態様,東京都の規模(面積・人口
・仕事量・財政規模)といった都の実情を考慮要素として,どの程度の報酬額
が適切であるかについても,都議会の判断に委ねられているものと認められる
から,他の道府県の報酬の額との比較をもって,本件各委員の報酬額が直ちに
著しく高額であるとまでいうことはできない。
この点につき,控訴人は,国家公務員における非常勤委員等の日額報酬限度
額3万5300円との対比において,委員長で3.77倍,各委員で3.08
と,いずれも3倍以上となっており,本件報酬条例は,条例制定における裁量
の範囲を逸脱し,又は裁量権を濫用した違法なものであると主張する。
そして,控訴人は,その前提として,非常勤の行政委員会の委員につき,勤
務の質及び量に相応する報酬を支給する必要性はあるものの,その職責の重大
さを強調して,勤務量等の実情を度外視して月額報酬制を採ることを法が許容
しているものとは解されないとする立場に立って,本件各委員の勤務実日数を
前提とすると,それ以外にも実質的に勤務を要することがあり得るとしても,
現在の報酬は,もはや当該委員の勤務量に対応した反対給付と評価することは
できず,法203条の2第2項本文の日額報酬制の原則に矛盾して著しく妥当
性を欠く状態になっているから,本件報酬条例中の本件規定は,現時点では,
法203条の2第2項ただし書で許された裁量の範囲を逸脱して違法であり,
無効というべきである(大阪高裁判決参照)と主張し,その違法判断の基準とし
て,国家公務員における非常勤委員等の報酬限度額との対比を重視する。
しかしながら,前示のとおり,本件各委員の職務の内容,性質,勤務態様及
び地方公共団体の実情に照らし,法203条の2第2項本文の日額報酬による
ことは必ずしも相当ではないとして,東京都議会が勤務態様のみならず,本件
各委員の職務の内容,選挙管理委員会の担うべき役割,その職責の重大さをも
考慮して,その報酬額を決定したことは,地方議会に与えられた条例制定権の
裁量の範囲を逸脱し,又は裁量権を濫用するものではないと解される。
さらに,控訴人が違法性判断の基準とする国家公務員における非常勤委員等
の報酬限度額との対比は,本件各委員の報酬の相当性を判断する上で,1つの
有力な目安であることは否定できないものの,これが絶対的な判断基準として
の意味を有するとか,何倍までが法により許容される範囲であるとは断じがた
く,前示のとおり,本件各委員の勤務実態のほか,本件各委員の職務の内容や,
東京都の規模(面積・人口・仕事量・財政規模)といった具体的実情を考慮要
素として,どの程度の報酬額が適切であるかについても,原則として,都議会
の判断に委ねられているものであると認められるから,単に,月額報酬を平均
勤務日数で単純に除した報酬額と,上記国家公務員における非常勤委員等の報
酬限度額との比較や,議員報酬との比較,他の道府県との報酬額の比較をもっ
て,本件各委員の報酬額が著しく高額であるとか,本件報酬条例が,議会に与
えられた裁量の範囲を逸脱し,又は裁量権を濫用した違法があるということは
できない。
第4結語
よって,これと同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを
棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法67条1項本文,61条を適用
して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第11民事部
裁判長裁判官岡久幸治
裁判官三代川俊一郎
裁判官小野洋一は,転補のため,署名,押印することができない。
裁判長裁判官岡久幸治
(原裁判等の表示)
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
被告は,東京都選挙管理委員会の委員長に対し53万2000円,その他の
各委員に対し各43万5000円の月額報酬をいずれも支給してはならない
(なお,第2の1(2)アに述べるように,上記の金額は,平成22年4月1日に
改定されている。)。
第2事案の概要等
本件は,東京都の住民である原告が,東京都選挙管理委員会の委員長及びそ
の他の委員に対して東京都選挙管理委員の報酬及び費用弁償条例(昭和22年
東京都条例第53号。以下「本件報酬条例」という。)に基づき月額をもって
定められた報酬が支給されていることは,委員会の委員を含む非常勤の職員に
対して原則として勤務日数に応じて報酬を支給する旨を定めた地方自治法(以
下「法」という。)203条の2第2項の規定に違反し,違法であるなどと主
張し,上記の報酬の支給に係る権限を有する被告に対し,法242条の2第1
項1号の規定に基づき,上記の報酬の支給の差止めを求めた事案である。
1関係法令等の定め
(1)選挙管理委員の報酬等に関する法の定め
ア法203条の2第1項は,普通地方公共団体は,その委員会の委員,非
常勤の監査委員その他の委員,自治紛争処理委員,審査会,審議会及び調
査会等の委員その他の構成員,専門委員,投票管理者,開票管理者,選挙
長,投票立会人,開票立会人及び選挙立会人その他普通地方公共団体の非
常勤の職員(短時間勤務職員を除く。)に対し,報酬を支給しなければな
らない旨を定めている。
イ法203条の2第2項は,前記アの職員に対する報酬は,その勤務日数
に応じてこれを支給するが(本文),条例で特別の定めをした場合は,こ
の限りでない(ただし書)旨を定めている。
ウ法203条の2第4項は,報酬等の額及びその支給方法は,条例でこれ
を定めなければならない旨を定めている。
(2)本件報酬条例
ア本件報酬条例2条本文及び別表(以下「本件報酬額規定」という。)は,
東京都選挙管理委員の報酬額を,次のとおり定めている。
委員長53万0000円(月額)
その他の委員43万3000円(月額)
なお,平成22年東京都条例第26号(同年4月1日施行)による改正
前は,委員長につき53万2000円(月額),その他の委員につき43
万5000円(月額)とされていた。
イ本件報酬条例3条は,東京都選挙管理委員の報酬は翌月これを支給する
が(本文),退職,失職又は死亡した場合はこの限りではない(ただし書)
旨を定めている。
ウ本件報酬条例4条1項は,東京都選挙管理委員の報酬は,就職した日か
ら,退職し,又は失職したときはその日まで,死亡したときはその月の末
日まで支給する旨を,同条2項は,就職した日及び退職し,又は失職した
日の属する月の報酬額は,月の初日から支給するとき以外のとき,又は月
の末日まで支給するとき以外のときは,当該月の現日数を基礎として日割
りによって計算した額とする旨を定めている。
2前提事実(争いのない事実,各項末尾に掲記の証拠及び弁論の全趣旨により
容易に認められる事実並びに当裁判所に顕著な事実)
(1)当事者等
ア原告は,東京都の住民である。
イ被告は,東京都の執行機関であり,東京都選挙管理委員に対して報酬を
支給する権限を有している。
(2)報酬の支給等
東京都の特別職の非常勤の職員である東京都選挙管理委員4名(以下,時
期を問わず「本件各委員」という。)は,本件報酬条例に基づき,それぞれ
月額をもって定められた報酬の支給を受けている(以下,本件報酬条例に基づ
き本件各委員が支給を受ける報酬を「本件報酬」という。)。
(3)住民監査請求及び本件訴えの提起
ア原告は,平成21年3月23日,東京都監査委員に対し,法242条1
項に基づき,被告が本件各委員に対して本件報酬を支給しているのは違法
であるなどとして住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)をした。
(甲1)
イ東京都監査委員は,平成21年4月23日付けで,本件報酬条例で選挙
管理委員の報酬額を月額での一定金額に定めることは法242条1項に定
める財務会計上の行為のいずれにも該当しないので,本件監査請求は不適
法であるとして,法242条4項に定める監査を実施しない旨の通知をし,
原告は,同月24日,これを受領した。(甲2)
ウ原告は,前記イの監査の結果を不服として,平成21年5月8日,本件
訴えを提起した。
3争点
本件各委員に対して月額をもって定められた報酬を支給する旨の本件報酬額
規定が法203の2第2項等に反し無効なものであり,本件各委員に対して本
件報酬額規定に基づき本件報酬を支給することが違法であるか否かである(な
お,本件において,被告が本件各委員に対して本件報酬を支給する権限を有す
ることは当事者間に争いがないところ,原告は,このことを前提に,法242
条1項にいう「公金の支出」に当たる上記の支給に係る被告の行為を対象とし
て本件監査請求をしたのに対し,東京都監査委員は,本件監査請求が東京都議
会による本件報酬額規定の制定を対象とするものと解した上で,これを不適法
として却下したものであって,その判断には前提において誤りがあり,本件に
おいては適法に住民監査請求がされているというべきである。)。
4争点に対する当事者の主張の要点
(1)原告の主張の要点
ア法203条の2第2項ただし書の趣旨等について
法203条の2第2項本文は,普通地方公共団体の委員会の委員等の非
常勤の職員の報酬は,その勤務日数に応じて支給することを原則としてい
る。同項ただし書は,上記の点について条例で特別の定めをすることがで
きるとし,その趣旨が各地方公共団体の自主性を尊重し,実情に応じてそ
の判断に任せることにあるとしても,議会が自由に選挙管理委員の報酬に
ついて月額をもって定めることができるものではなく,実情と実態を精査
の上,常勤の職員と同様に月額等をもって定められた報酬を支給すること
が合理的である場合や勤務日数の実態を把握することが困難であり月額等
をもって定められた報酬を支給する以外に方法がない場合等の特別な場合
に限って,例外的に,月額等をもって定められた報酬を支給することを可
能としたものにすぎない。このように解すべきことは,法2条14項が地
方公共団体が事務処理に当たり「最少の経費で最大の効果を挙げるように
しなければならない」と規定し,地方財政法4条1項が「地方公共団体の
経費は,その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて,これを
支出してはならない」と規定していることからも明らかである。
選挙管理委員の職務内容は法定されており,同委員に任命される者の資
質に着目し,これをいかして行政権を担うことが期待されるものの,その
勤務は非常勤で行うことができ,同委員に対する報酬は,その学識や経験
を職務にいかしてもらうことに対する謝金の性格を有するものであるから,
その職責の重大性を強調して,勤務量等の実情を度外視して,月額をもっ
て定められた報酬を支給することは,法203条の2第2項の趣旨に反し
て違法であるといわざるを得ない。そして,同項が追加された当時では,
選挙違反等が横行するなど,選挙管理委員の仕事量が多く,特に,委員長
については常勤に近い仕事量であったために,月額をもって報酬を定める
ことが許容されたとしても,選挙制度が安定した現時点では,月額をもっ
て報酬を定めることは違法であるといわざるを得ない。
イ本件各委員の職務等について
(ア)本件各委員の勤務の状況については,東京都選挙管理委員会の定例
会が月に約2回であり,平成21年度には東京都議会議員選挙及び衆議
院議員選挙が実施されたため,臨時会が7月に3回,8月に2回開催さ
れているにすぎず,定例会における審議の時間は,ほとんどが30分程
度であり,定例会の議題をみても,選挙の執行事務に関係するものが大
部分を占めており,事前に調査や検討をする必要のないものばかりであ
る。定例会以外の職務といっても,東京都内の自治体の選挙管理委員会
への訪問,視察,広報活動等といった程度のものであり,判断を伴うよ
うな実質的なものではない。特に,平成21年5月と10月には,定例
会以外の職務はなく,会議の開催時間も5月が64分,10月が84分
にすぎず,平成20年8月には,定例会が1回開催されただけで,その
開催時間も40分にすぎない。このような本件各委員の勤務の状況をみ
れば,月額等をもって定められた報酬を支給することが合理的である場
合や勤務日数の実態を把握することが困難であり月額等をもって定めら
れた報酬を支給する以外に方法がない場合等の特別な場合に該当しない
ことは明らかであり,月額をもって定められた報酬を支給する旨の本件
報酬額規定が法203条の2第2項の趣旨を逸脱していることは明らか
である。
(イ)東京都選挙管理委員会の選挙管理事務については,そのほとんどが
同委員会の事務局の事務職員が行うものであり,本件各委員が独自に行
う決定も事務的な作業にすぎない。また,本件各委員は,東京都選挙管
理委員会の事務局の職員の任命権者であるといっても,同委員会がその
事務局の職員の採用を行っているわけではなく,東京都の知事部局が採
用した職員を総務局人事部の指図により同委員会の事務局の職員として
採用しているにすぎない。同委員会が知事部局から独立した機関である
のは,選挙の執行の公正性,中立性を担保するためであり,その責任の
軽重によるものではない。さらに,同委員会の準司法的機能や訴訟にお
ける被告としての対応といっても,同委員会が組織として対応するもの
にすぎない。そして,本件各委員は,東京都議会の多数の議員を要する
会派の議員経験者と警察官経験者から選出されるにすぎず,本件各委員
の身分的制約も常識的なものにすぎない。このように,被告が主張する
本件各委員の職務の独立性,職責の重要性等については,本件各委員に
月額をもって定められた報酬を支給する根拠にはならない。
ウ本件報酬の額について
本件報酬の額(なお,この項において,本件報酬の額については,平成
22年東京条例第26号による改正前の本件報酬条例2条本文及び別表の
金額を前提とする。)について,選挙管理委員の報酬について月額をもっ
て定めている東京都内の特別区の報酬の額と比較してみても,委員長にお
いては,最高額の千代田区が31万5000円,最低額の葛飾区が27万
9000円であり,東京都内の市では,最高額の府中市が9万4000円,
最低額の福生市と稲城市が5万8000円であるなど,報酬の額が異なる。
さらに,他の道府県の選挙管理委員の報酬の額と比較してみても,全国平
均(委員長につき22万4843円,その他の委員につき19万3345
円)とは,委員長で2.37倍,その他の委員で2.25倍,最低額の鳥
取県(委員長につき14万8000円,その他の委員につき11万800
0円)とは,委員長で3.59倍,その他の委員で3.69倍であり,突
出して高額である。選挙は,民主主義の根幹をなすものであり,地方公共
団体の選挙管理委員の職務については法律で定められており,各地方公共
団体によって大きな違いはなく,ましてや都道府県レベルでは大きく異な
ることはない。そして,平成21年5月及び10月における本件各委員の
勤務日は各2日であり,1日当たりの報酬の額は,委員長につき26万6
000円,その他の委員につき21万7500円となり,国の非常勤の職
員の当時の報酬限度額(日額3万5300円)と比較して,委員長で7.
54倍,それ以外の委員で6.16倍となり,平成21年4月から同年1
2月までの間における本件各委員の出勤日数は平均4日以内であり,1日
当たりの報酬の額は,上記の国の報酬限度額と比較して,委員長で3.7
7倍,その他の委員で3.08となる。本件報酬の額に係る東京都議会の
判断は,その裁量権の範囲を逸脱し,これを濫用したものであり,法2条
14項及び地方財政法4条1項にも違反し,違法である。
被告は,本件報酬の額については,東京都特別職報酬等審議会の答申を
受けて決定された特別職の報酬の額を参考に決定されていると主張するも
のの,同審議会の答申は,特別職の報酬等を生活給の面から社会情勢に合
わせるためのものにすぎず,本件報酬の額の決定に当たって参考にならな
いだけでなく,根本的に異なるものである。
エ以上のとおり,本件報酬額規定は,東京都議会の裁量権の範囲を逸脱し,
これを濫用したものであるから,法203条の2第2項ただし書等に反し
無効であり,本件各委員に対して本件報酬額規定に基づき本件報酬を支給
することは違法である。
(2)被告の主張の要点
ア法203条の2第2項ただし書の趣旨等について
法203条の2第2項ただし書は,昭和31年の法の一部改正において
追加された規定である。同項ただし書の条例で「特別の定め」をすること
ができる場合については,法上明文の規定はなく,昭和31年の改正当時
の国会の審議の経過等からすると,同項ただし書に基づき条例で「特別の
定め」をする対象として議論されていたのは,選挙管理委員会を始めとす
る執行機関である委員会の委員であり,そして,どのような場合に条例で
月額をもって報酬を定めて支給し得ると想定しているかについては,勤務
日数は判断の一要素とはされているものの,それに限定する趣旨は全く読
み取れないのであり,同項ただし書の趣旨としては,各地方公共団体の自
主性を尊重し,実情に応じてその判断に任せるとしているものである。
当時の自治庁次長が各都道府県知事あてに発した「地方自治法の一部を
改正する法律及び地方自治法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律
の整理に関する法律の施行に関する件(通知)」と題する自治庁次長通知
(昭和31年8月18日自乙行発第24号。以下「自治庁次長通知」とい
う。)によると,「本改正は,非常勤職員に対する報酬が,勤務に対する
反対給付たる性格を有することにかんがみ,当該報酬の額は具体的な勤務
量すなわち勤務日数に応じて支給されるべき旨の原則を明にしたものであ
ること。ただし,非常勤職員の勤務の態様は多岐にわたっているので,特
別の事情のあるものについては,右原則の例外を定めることができるもの
であること。」とされている。当時の自治庁公務員課長が横浜市総務局長
あてに回答した「法律解釈の疑義について」(昭和31年7月31日自丁
公発第109号。以下「自治庁回答」という。)によると,非常勤職員の
報酬を日額とするか,月額とするかの基準について,横浜市総務局長が「日
額とすべきか,月額とすべきかの判断の具体的基準を御指示願いたい」と
照会したのに対し,自治庁公務員課長が「報酬を日額をもって定めるか月
額をもって定めるかは,その者の職務内容及び勤務態様等を考慮して具体
的実情に応じ自主的に判断すべきものである」と回答している。このよう
に,自治庁は,非常勤の職員の勤務の態様は多岐にわたっているので,日
額とすべきか月額とすべきかの判断は,勤務態様のみならず,その他の要
素も考慮して,具体的実情に応じて地方公共団体において自主的に判断す
べきものとしている。
イ本件各委員の職務等について
(ア)東京都選挙管理委員会について
a法180条の5の規定により執行機関として普通地方公共団体に置
かなければならない選挙管理委員会は,条例,予算その他の議会の議
決に基づく事務及び法令,規則その他の規程に基づく事務を,自らの
判断と責任において,誠実に管理し,執行する義務を負い(法138
条の2),また,法律の定めるところにより,法令又は普通地方公共
団体の条例若しくは規則に反しない限りにおいて,その権限に属する
事務に関し,規則その他の規程を定めることができる(法138条の
4第2項)など,法令の範囲内で一定の責任と裁量を有している。
b東京都選挙管理委員会は,公職選挙法,法及び政治資金規正法など
の法令の定めに従って,①選挙管理事務,②選挙公営制度の運営,③
政治資金規正法に基づく事務,④選挙啓発事務,⑤選挙争訟事務,⑥
区市町村選挙管理委員会に対する助言と支援等の選挙に関する事務及
びこれに関係のある事務について管理運営を行っている。
(イ)本件各委員について
a選挙管理委員は,法180条の5の規定により普通地方公共団体に
置かなければならない執行機関である選挙管理委員会の委員であり,
また,地方公務員法3条3項の規定により特別職と位置付けられると
ともに,心身の故障のために職務の執行に堪えないと認めるとき,委
員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める
とき以外はその意に反して罷免されることがない(法184条の2)
など,職務の独立性が保障されている。
b本件各委員は,①事務局の運営の責任者で任命権者であること,②
選挙執行等の所管する事務の決定権者であること,③審査庁としての
準司法的機能を担うこと,④選挙に関する訴訟の被告になること,⑤
そのような職の重要性から,その選出方法に特殊性があり,その職に
とどまる限り,身分的制約もあること(法180条の5第6項,18
2条7項,公職選挙法136条の1及び2)など,行政の一部を担う
執行機関の委員として多様な権限を有し,その責任は,知事と異なら
ないほど極めて重大で,委員の身分的制約とともに任期中不断に負っ
ているものであり,その職務は,単に定例会等の勤務日に労働力を提
供すれば足りるという性質のものではなく,法138条の4に基づき
執行機関に設置される附属機関である審査会や審議会等の委員その他
の非常勤職員とは明らかに異なる職務内容,責任等を有するものであ
る。
なお,原告は,選挙管理事務等のほとんどが選挙管理委員会事務局
の職員が行うものであると主張する。しかしながら,すべての選挙管
理事務等は,常に本件各委員の指揮命令に基づき行われ,本件各委員
は,業務の遂行に係る判断や決定等を行い,その判断や決定等に対し
て全責任を負うため,その責務は重大である。
(ウ)本件各委員の職務状況等
平成21年4月から同年11月までの間,東京都選挙管理委員会は,
定例委員会17回及び臨時委員会5回の合計22回開催され,本件各委
員は,選挙の執行計画の策定,適正な選挙の執行に向けての指導,助言,
訴訟への対応方針,条例の制定の依頼,事務局の年間執行計画,予算案
の策定など,極めて多岐にわたる決定を行うとともに,随時,事務局か
ら報告を受け,その内容を検討することにより,運営責任者としての責
務を果たしている。また,平成21年度においては,東京都議会議員選
挙,衆議院議員選挙が執行され,選挙時においては,本件各委員は,投
開票日当日における対応のほか,告示日における立候補届受理,不在者
投票施設の視察,街頭巡回啓発等の活動を行っており,これらの活動以
外にも,告示日から開票後の選挙会における当選人の決定まで,緊急時
に備えて待機する必要がある。さらに,本件各委員は,東京都の特別区
や市の選挙執行の都度,それらの選挙管理委員会に訪問しており,平成
21年4月から同年11月までの間には5回訪問をしているところ,そ
の際には,同委員会の委員と意見交換を行うとともに,必要に応じて指
導,助言をしている。そして,予定されている委員会や会合のほか,突
発的事項が生じた場合には,事務局が本件各委員に連絡を取り,指示を
仰ぐことがあるものの,本件各委員は,そのような場合に備えて,常に
連絡がとれるよう備えている必要がある。
ウ本件報酬の額について
法203条の2第4項は,報酬等の額及びその支給方法は,条例でこれ
を定めなければならない旨を定めているところ,その趣旨は,前記アの法
203条の2第2項ただし書の趣旨と同様に,各地方公共団体の自主性を
尊重し,具体的実情に応じてその判断に任せることにあるから,本件報酬
の額の決定については,第一次的には当該地方公共団体の議会の裁量的判
断にゆだねられており,議会の判断がその裁量権の範囲を逸脱し,又はこ
れを濫用していると認められない限り,違法の問題は生じないというべき
である。前記イの本件各委員の職務等に照らし,本件報酬の額については,
幅広い分野の有識者で構成される東京都特別職報酬等審議会の答申を受け
て決定された特別職(東京都議会議長,副議長,委員長,副委員長,議員,
知事,副知事)の報酬の額を参考に決定されている。同審議会においては,
社会経済情勢等について広範な角度から慎重に審議されて,東京都の実情
を勘案して検討されているのであり,東京都議会は,上記の審議会の答申
に基づく特別職の報酬の額を参考として,本件報酬の額(おおむね委員長
につき東京都議会議員の2分の1,その他の委員につき更にその5分の4)
を決定しているのであり,その報酬の額についても,東京都の実情を反映
したものであり,東京都議会がその裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫
用したものとはいえない。
なお,東京都内の市区町村の選挙管理委員の報酬の額が異なり,また,
本件報酬の額が他の道府県の選挙管理委員の報酬の額と比較して高額であ
るからといって,そのことは,法の趣旨や自治庁の見解のとおり,各地方
公共団体が具体的実情に応じて自主的に判断しているからにほかならず,
そのような比較をもって,本件報酬の額が違法であるということができな
い。
エ以上のとおり,東京都は,本件各委員の職務の内容,重要性,責任の重
さなどを総合的に勘案して,法203の2第2項ただし書に基づき,本件
報酬条例を制定し,本件各委員に月額をもって定めた報酬を支給する旨の
本件報酬額規定を定めたものである。このことは,立法機関が,法203
条の2第2項ただし書を設けた当時,条例で特別な定めをする対象として
選挙管理委員会を始めとした執行機関たる委員会の委員を想定し,最終的
には地方公共団体の自主的判断に任せることとしたこと,当時の自治庁も
地方公共団体が実情に応じて自主的に判断すべきであるとしていることか
らすれば,立法の趣旨や自治庁の解釈に沿ったものである。したがって,
本件報酬額規定は,法203条の2第2項に反せず,本件各委員に対して
本件報酬額規定に基づき本件報酬を支給することは適法である。
第3当裁判所の判断
1法203条の2第2項の制定に係る事情等について
法203の2第2項(平成20年法律第69号による改正前の地方自治法(以
下「改正前法」という。)203条2項)は,地方自治法の一部を改正する法
律(昭和31年法律第147号。同年9月1日施行)により新たに追加された
規定であり,証拠(乙2~8)及び弁論の全趣旨によれば,その規定の追加に
係る第24回国会における審議の経過等については,以下のとおりである。
(1)衆議院地方行政委員会(昭和31年5月15日)(乙2)
ア地方自治法の一部を改正する法律案(以下「本件改正法案」という。)
等について,改正前法203条1項の次に加えられる規定(同条2項。現
在の法203条の2第2項本文に対応。)に,「但し,条例で特別の定を
した場合は,この限りでない。」旨のただし書を加えるとの修正案(以下
「本件修正案」という。)が提出された。
イ本件修正案の提出者の一人である鈴木直人委員は,本件修正案について,
改正前法203条1項に規定する非常勤の職員に対する報酬の支給につい
て,今までは,日給であるとか勤務日数に応じて支給するというような区
別はなかったところ,政府案によると,すべてが勤務日数に応じてこれを
支給するというように改められたが,非常勤の職員のうちには,例えば,
教育委員会の委員,選挙管理委員会の委員,人事委員会の委員,公安委員
会の委員,地方労働委員会の委員,農業委員会の委員というような,主と
して執行機関に属している委員会の委員がおり,これらの非常勤の委員は,
主として特別職に属する者であるため,特に地方公共団体において条例を
もって勤務日数に応じて支給する方法と別の方法をもってこれらの報酬を
支給する方法を定めた場合においては,条例によるものとするただし書を
加えるのが適当と考えると説明した。
ウ北山愛郎委員は,日当制は一応原則として認めるが,従来のような月割
り又は年額で報酬を決めるというような制度も条例で決めた場合にはそれ
でやるという趣旨であるとすると,条項を提案した政府の考え方に多少食
い違いができてくるのではないか,すなわち,非常勤職員の制度の改正に
より財政経費が相当額節減されることが期待されているようであるが,従
来の方式でもよいということになれば,経費の増減に食い違いを生じてく
るのではないかという旨の質問をした。
これに対し,鈴木直人委員は,実際に各府県市町村の委員の報酬を調べ
たが,日勤制にしても,あるいは月幾らというように報酬を定めても,総
額に差異は起こらないだろうと考えており,現実の場合においては,日勤
制にしたから今までの月報酬をずっと下げるというようなことは極めて少
ないため,日勤にしてもそれほど経費の節約にはならないのではないかと
いう見通しを持っているなどと答弁した。
また,鈴木俊一政府委員(自治庁次長)は,政府としても,上記の修正
については,条例で特別の定めをした場合に初めてものが動いてくるわけ
であり,それも,定め方の内容によっては,全然動かないということもあ
ろうかと思われ,勤務日数単位の報酬を月単位の報酬にしても,その額の
いかんによっては全然経費の上では動かないということもあり得るなどと
答弁した。
エ中井德次郎委員は,公安委員会,選挙管理委員会,人事委員会などから,
委員会の日当制ということは困るという陳情を方々から受けたが,非常勤
の職員全部について,条例で自由に定められるとすると範囲が広くなりす
ぎるのではないか,いわゆる行政委員会だけについては,条例で日当制は
困るというようなことにする修正が行われると考えていたが,その審議経
過等を知りたい旨の質問がされた。
これに対し,鈴木俊一政府委員は,行政委員会の委員だけにこれを限定
するという方法も検討したが,改正案の180条の5に列記された多くの
行政委員会全部にこれを適用するということを法制的に明記するのも乱に
すぎると考えたこと,そうかといって,公安委員会,選挙管理委員会及び
人事委員会だけに限るということも実情に沿わないということも考えられ
たこと,元来こういうことは自治体自身が決定すべきものであり,条例で
特別の定めをした場合,いわゆる自主性を尊重して,地方公共団体の自主
的判断に任せることが,終局的に一番よかろうということで,結論が出た
ことなどを答弁した。
オ門司亮委員は,例えば,選挙管理委員会だけをみても,400以上ある
全国の各市で日給制を採っているのは4市のみであり,府県はもとより,
他の市は全部日給制を採っていないから,結局ただし書が物を言って,従
来と何ら変わりのないものができ上がると思われ,そうであれば,そもそ
も改正前法203条3項で「報酬及び費用弁償の額並びにその支給方法は,
条例でこれを定めなければならない」と書いてあるので足りるのではない
かという旨の質問をした。
これに対し,太田正孝国務大臣は,国家公務員の給与関係と地方公務員
の給与関係はなるべく同じようにしたいところ,国家公務員の非常勤に対
する定めは日当制であるから,これにならうべき一方,各種の自治体にお
いてそうしない方がいいという考えの場合に対し,ただし書が加えられた
と思う旨を答弁した。
これを受けて,門司亮委員は,非常勤の委員会だからといって,各々そ
の職責とその事務内容というものによって,当然差があってしかるべきと
思われること,仕事の内容と事務量によって常識的に定めるべきで,何で
も一律に行おうとするところに無理が出てくること,本件修正案のような
ただし書を入れるなら改正前法の方がまだ明確であることなどを述べた
上,地方の自治体で選挙をする場合,殊に選挙管理委員会等は,ほとんど
出ていなければならず,地方の自治体で実際に選挙の啓蒙等を諮っていく
際には,非常に大きな努力をしており,また,努力してもらわなければな
らないのであって,その事務内容を考えることなく国家公務員と同じだと
いうなら,大臣は地方自治の実情を知らないと思うことなどを述べた。
(2)衆議院本会議(昭和31年5月16日)(乙3)
本件改正法案が議題とされ,大矢省三地方行政委員会委員長は,本件改正
法案について,昭和31年3月15日に地方行政委員会に付託されたところ,
同年4月27日に関係地方6団体の代表者等を参考人として招致しその意見
を聴取したこと,人事委員会及び選挙管理委員会の全国連合会を代表する参
考人が,これら委員会の委員の報酬をいわゆる日当制にすることは,その職
務の性格及び勤務の実情に照らして適当でないから修正されたいという強い
要望を述べたことなどを説明した上で,本件修正案について説明をし,上記
委員会における採決の結果,本件修正案が満場一致可決され,修正部分を除
く原案は賛成多数をもって可決されたため,本件改正法案は修正議決すべき
ものと決したとの報告をした。
本件改正法案は,賛成多数で上記の委員長報告のとおり決した。
(3)参議院地方行政委員会(昭和31年5月21日及び29日)(乙4,5)
ア昭和31年5月21日の会議において,鈴木直人衆議院議員は,本件改
正法案に対して衆議院において行われた修正の要旨について,非常勤職員
に対する報酬を日割計算とするという原則は堅持するが,勤務の実情等特
別の事情がある場合においては,特に条例をもって規定することにより勤
務日数によらないで月額又は年額によって報酬を支給することとできるも
のとしたといった説明をした。
森下政一委員は,本件修正案について,その勤務の実情等特別の事情が
ある場合というのはどういう場合を予想しているのかを質問した。
これに対し,鈴木直人衆議院議員は,それぞれの地方公共団体が自主的
な判断を下して,条例を作った場合においては,その条例は法律の違反と
はならないというような例外を設けたこと,その具体的な面としては,非
常勤の職員の中に,選挙管理委員会の委員,人事委員会の委員,公安委員
会の委員あるいは教育委員会の委員などの特殊的な執行機関たる委員会の
委員があるが,それらの委員会の現状を見ると,選挙管理委員会において
は,性格も相当違うし,勤務状態も,委員長その他ほとんど毎日出て事務
をしているというところもあること,各地方団体の実情に即して,地方団
体自身が月給制でやった方がよいとか,あるいは日当的な手当をやるにし
ても,その日その日に支給せず,月に合計して計算して日給制にするとい
うようなことをやっているところもあり,それぞれ地方公共団体の自主的
なやり方に任せていくことが現実に即した地方団体の運営であろうと考え
たことなどを答弁した。
イ昭和31年5月29日の会議において,加瀬完委員は,本件修正案につ
いて,行政委員会は地方行政に対して有益な働きをしており,それを議会
の議員などと非常な段階を付けることは,地方における民主主義の発展に
大きな阻害になると思われること,なぜ原案を削除できなかったのか,削
除できないなら,特殊な財政団体に限って,特例によって日割計算でもい
いというような形として,原則として行政委員会が十二分に働けるような
措置を講じなかったのかなどという質問をした。
これに対し,鈴木直人衆議院議員は,議員及び執行機関たる行政委員会
の委員を除くという言葉で表す方法も考えられたが,選挙管理委員会,人
事委員会,教育委員会あるいは公安委員会などの相当活動している委員会
以外の執行機関たる行政委員会についてまでも日給制を除くというように
法律で決めてしまうと,現状,日給制の行政委員会関係の委員がかなりあ
ることからして問題があること,他方,選挙管理委員会や人事委員会等の
二,三の委員会名だけを列挙することも他の委員会との関係上できないこ
と,結論的にはやはり条例によってそれぞれの府県市町村が従来の慣習等
に基づいてやることが時宜に適したことであること,本件修正案のような
ただし書を規定すれば現在実施されている条例がそのまま生きていくとい
う解釈の下に,特別な措置をしなくとも現状が進んでいく結果になると考
えられ,条例によって特別の規定をした場合にはこの限りでないという規
定が現実に即した摩擦の少ない方法であろうと考えられ,かつ,自治体の
自主性を尊重するものであることなどから,結論に至った旨を答弁した。
(4)参議院本会議(昭和31年6月3日)(乙6)
衆議院において修正議決された本件改正法案が議題とされ,伊能芳雄地方
行政委員会委員は,地方行政委員会での審査の経過及び結果の報告をした。
上記の修正に係る本件改正法案は,賛成多数で決した。
(5)いわゆる行政解釈について
ア前記(4)のように改正前法203条2項の規定が追加された後,非常勤職
員の報酬を日額とするか月額とするかの基準について,横浜市総務局長が
「日額とすべきか,月額とすべきかの判断の具体的基準を御指示願いたい」
と照会したのに対し,当時の自治庁公務員課長は,横浜市総務局長あての
自治庁回答(昭和31年7月31日自丁公発第109号。乙8)をもって,
「報酬を日額をもって定めるか月額をもって定めるかは,その者の職務内
容及び勤務態様等を考慮して具体的実情に応じ自主的に判断すべきもので
ある」と回答した。
イ当時の自治庁次長が各都道府県知事あてに発した自治庁次長通知(昭和
31年8月18日自乙行発第24号。乙7)では,「第四給与その他の
給付に関する事項」中で,改正前法203条2項の規定において,地方公
共団体の非常勤の職員で議会の議員以外の者に対する報酬は,その勤務日
数に応じてこれを支給することを原則とし,特に条例をもって例外を規定
することは差し支えないものとされたことについて,「本改正は,非常勤
職員に対する報酬が,勤務に対する反対給付たる性格を有することにかん
がみ,当該報酬の額は具体的な勤務量すなわち勤務日数に応じて支給され
るべき旨の原則を明にしたものであること。ただし,非常勤職員の勤務の
態様は多岐にわたっているので,特別の事情のあるものについては,右原
則の例外を定めることができるものであること。したがって,本改正を機
会に非常勤職員等の従来の給与上の取扱について再検討を行うようにされ
たいこと。」とされている。
2本件報酬額規定に係る事情等について
(1)本件報酬額規定の制定の経緯等(乙1,12,弁論の全趣旨)
東京都は,昭和22年7月1日,東京都選挙管理委員の報酬等について,
本件報酬条例(昭和22年東京都条例第53号)を制定し,報酬の額として,
委員長につき月額3000円,その他の委員につき月額2000円と定めた。
それ以降,東京都は,経済情勢等にかんがみて報酬の額の改定をし,近年に
おいては,東京都の特別職の報酬の額の改定率を参考にしながら,翌年度の
報酬の額を定めており,平成22年東京都条例第26号により,同年4月1
日以降,報酬の月額は,委員長につき53万2000円から53万円に,そ
の他の委員につき43万5000円から43万3000円に,それぞれ引き
下げられた。
(2)東京都特別職報酬等審議会(乙9,10,13,14の1~3)
ア東京都においては,東京都特別職報酬等審議会条例(昭和39年東京都
条例第129号。乙9)に基づき,東京都議会議員の議員報酬の額並びに
知事及び副知事の給料の額(以下「報酬等の額」という。)について知事
からの意見の求めに応じ審議するため,知事の附属機関として,東京都特
別職報酬等審議会が設置されており(同条例1条),知事は,報酬等の額
に関する条例を東京都議会に提出しようとするときは,あらかじめ当該報
酬等の額について審議会の意見を聞くものとされている(同条例2条)。
イ東京都特別職報酬等審議会は,報酬等の額を検討するに当たって,主要
な指標として消費者物価(東京都区部),一般職の俸給(給料)月額(国
及び都),指定職の俸給(給料)月額(国及び都)等を考慮しているとこ
ろ,平成19年度ないし平成21年度の答申における改定額については,
以下のとおりである。
(改定額)
平成19年度平成20年度平成21年度
議長129万2000円129万2000円128万6000円
副議長116万5000円116万5000円116万0000円
議員103万7000円103万7000円103万3000円
知事155万1000円153万1000円151万1000円
副知事126万5000円124万9000円123万3000円
ウ東京都内の区市町村の選挙管理委員の報酬の額(平成22年2月現在)
については,別表1記載のとおりであり(乙15),各道府県の選挙管理
委員の報酬の額(平成21年4月現在。青森県の調査に係るもの。)につ
いては,別表2記載のとおりである(甲11)。
3本件各委員の職務等について
(1)選挙管理委員会に係る法等の定め
ア設置及び組織(法180条の5第1項2号,181条)
選挙管理委員会は,執行機関として普通地方公共団体に置かなければな
らない委員会であり,4人の選挙管理委員をもって組織される。
イ委員の選挙(法182条)
選挙管理委員は,選挙権を有する者で,人格が高潔で,政治及び選挙に
関し公正な識見を有するもののうちから,普通地方公共団体の議会におい
てこれを選挙し(1項),法律の定めるところにより行われる選挙,投票
又は国民審査に関する罪を犯し刑に処せられた者は,委員となることはで
きず(4項),2人が同時に同一の政党その他の政治団体に属する者とな
ることとなってはらならず(5項),地方公共団体の議会の議員及び長と
兼ねることはできない(7項)。
ウ任期(法183条)
選挙管理委員の任期は,4年とし,後任者が就任する時まで在任し(1
項),選挙管理委員は,その選挙に関し法118条5項の規定による裁決
又は判決が確定するまでは,その職を失わない(4項)。
エ失職(法184条)
選挙管理委員は,選挙権を有しなくなったとき,法180条の5第6項
の規定に該当するとき又は法182条4項に規定する者に該当するとき
は,その職を失い,その選挙権の有無又は法180条の5第6項の規定に
該当するかどうかは,選挙管理委員が公職選挙法11条若しくは同法25
2条又は政治資金規正法28条の規定に該当するため選挙権を有しない場
合を除くほか,選挙管理委員会がこれを決定する(1項)。
オ罷免(法184条の2)
普通地方公共団体の議会は,選挙管理委員が心身の故障のため職務の遂
行に堪えないと認めるとき,又は選挙管理委員に職務上の義務違反その他
選挙管理委員たるに適しない非行があると認めるときは,議決によりこれ
を罷免することができ,この場合においては,議会の常任委員会又は特別
委員会において公聴会を開かなければならない(1項)。選挙管理委員は,
上記による場合を除くほか,その意に反して罷免されることがない(2項)。
カ退職(法185条)
選挙管理委員会の委員長が退職しようとするときは,当該選挙管理委員
会の承認を得なければならず(1項),委員が退職しようとするときは,
委員長の承認を得なければならない(2項)。
キ秘密を守る義務(法185条の2)
選挙管理委員は,職務上知り得た秘密を漏らしてはならず,その職を退
いた後も,同様とする。
ク事務(法186条)
選挙管理委員会は,法律又はこれに基づく政令の定めるところにより,
当該普通地方公共団体が処理する選挙に関する事務及びこれに関係のある
事務を管理する。
ケ委員長(法187条)
(ア)選挙管理委員会は,委員の中から委員長を選挙しなければならない
(1項)。
(イ)委員長は,委員会に関する事務を処理し,委員会を代表する(2項)。
(ウ)委員長に事故があるとき,又は委員長が欠けたときは,委員長の指
定する委員がその職務を代理する(3項)。
コ招集(法188条)
選挙管理委員会は,委員長がこれを招集する。委員から委員会の招集の
請求があるときは,委員長は,これを招集しなければならない。
サ会議(法189条)
(ア)選挙管理委員会は,3人以上の委員が出席しなければ,会議を開く
ことができない(1項)。
(イ)委員長及び委員は,自己若しくは父母,祖父母,配偶者,子,孫若
しくは兄弟姉妹の一身上に関する事件又は自己若しくはこれらの者の
従事する業務に直接の利害関係のある事件については,その議事に参与
することができない。ただし,委員会の同意を得たときは,会議に出席
し,発言することができる(2項)。
(ウ)前記(イ)により委員の数が減少して前記(ア)の数に達しないとき
は,委員長は,補充員でその事件に関係のないものをもって法182条
3項の順序により,臨時にこれに充てなければならない。委員の事故に
より委員の数が前記(ア)の数に達しないときも,また,同様とする(3
項)。
シ表決(法190条)
選挙管理委員会の議事は,出席委員の過半数をもってこれを決する。可
否同数のときは,委員長の決するところによる。
ス書記長,書記その他の職員(法191条)
(ア)都道府県及び市の選挙管理委員会に書記長,書記その他の職員を置
き,町村の選挙管理委員会に書記その他の職員を置く(1項)。
(イ)書記長,書記その他の常勤の職員の定数は,条例でこれを定める。
ただし,臨時の職については,この限りでない(2項)。
(ウ)書記長は委員長の命を受け,書記その他の職員又は法180条の3
の規定による職員は上司の指揮を受け,それぞれ委員会に関する事務に
従事する(3項)。
セ訴訟の取扱い(法192条)
選挙管理委員会の処分又は裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴
訟については,選挙管理委員会が当該普通地方公共団体を代表する。
ソ兼職の禁止等
(ア)選挙管理委員は,衆議院議員又は参議院議員と兼ねることができな
い(法193条,141条1項)。
(イ)選挙管理委員は,検察官,警察官若しくは収税官吏又は普通地方公
共団体における公安委員会の委員と兼ねることができない(法193条,
166条1項)。
(ウ)普通地方公共団体の委員会の委員又は委員は,当該普通地方公共団
体に対しその職務に関し請負をする者及びその支配人又は主として同一
の行為をする法人(当該普通地方公共団体が資本金,基本金その他これ
らに準ずるものの2分の1以上を出資している法人を除く。)の無限責
任社員,取締役,執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者,
支配人及び清算人たることができない(法180条の5第6項,地方自
治法施行令133条)。
法律に特別の定めがあるものを除くほか,普通地方公共団体の委員会
の委員又は委員が上記に該当するときは,その職を失い,上記に該当す
るかどうかは,その選任権者がこれを決定しなければならない(法18
0条の5第7項)。
(エ)選挙管理委員会の委員長は,その権限に属する事務の一部をその補
助機関である職員に委任し,又はこれに臨時に代理させることができ,
その補助機関である職員を指揮監督する(法193条,153条1項,
154条)。
(オ)法及びこれに基づく政令に規定するものを除く外,選挙管理委員会
に関し必要な事項は,委員会がこれを定める(法194条)。
(2)東京都選挙管理委員会の事務について(弁論の全趣旨)
ア東京都選挙管理委員会は,①東京都議会議員選挙及び東京都知事選挙の
管理,衆議院(小選挙区選出)議員選挙及び参議院(東京都選出)議員選
挙の管理(公職選挙法5条),②衆議院(比例代表選出)議員選挙及び参
議院(比例代表選出)議員選挙における東京都選挙区分の執行管理(同法
75条等),③最高裁判所裁判官国民審査に関する事務の執行(最高裁判
所裁判官国民審査法10条等),④東京都議会の解散の請求,東京都議会
議員及び東京都知事の解職の請求等の直接請求に係る事務(法74条以下)
等を行っている。
イ東京都選挙管理委員会は,公職選挙法及び条例に基づき,公職の候補者
の選挙運動の費用の公費負担等の選挙公営制度の運営を行っている。
ウ東京都選挙管理委員会は,政治資金規正法に基づき,政治団体の届出に
関する事務,政治団体の収支報告書の提出の受付,要旨の公表,保存及び
閲覧に関する事務等を行っている。
エ東京都選挙管理委員会は,公職選挙法6条1項等に基づき,常にあらゆ
る機会を通じて選挙人の政治常識の向上に努めるとともに,選挙に際して
の投票の方法,選挙違反その他選挙に関し必要と認める事項の選挙人への
周知等を行っている。
オ東京都選挙管理委員会は,東京都議会議員選挙及び東京都知事選挙にお
ける選挙の効力及び当選の効力に関する異議の申出に対する決定(公職選
挙法202条1項,206条1項),東京都内の区市町村の選挙における
異議の申出に係る各区市町村選挙管理委員会がした決定についての審査の
申立てに対する裁決(同法202条2項,206条2項),同決定及び裁
決等に対する訴訟における被告としての対応(同法203条,207条),
衆議院議員又は参議院議員(いずれも比例代表選出を除く。)の選挙の効
力及び当選の効力に関する訴訟の提起があった場合における被告としての
対応(同法204条,208条)等をしている。
カ東京都選挙管理委員会は,東京都内の区市町村選挙管理委員会に対し,
必要な助言及び支援をしている。
(3)本件各委員の勤務の態様について
証拠(甲1,3~7(枝番を含む。),乙11)及び弁論の全趣旨によれ
ば,以下の事実が認められる。
ア定例会及び臨時会の開催
(ア)平成19年4月から平成21年12月までの間における東京都選挙
管理委員会の定例会及び臨時会の開催実績については,別表3-1ない
し3-3のとおりである。なお,平成21年には東京都議会議員選挙(7
月12日)及び衆議院議員選挙(8月30日)が執行された。
(イ)平成21年の定例会及び臨時会においては,年間計画,東京都選挙
管理委員会に関連する規程の制定及び改正,選挙の執行計画,選挙無効
請求事件に対する方針,予算,公職選挙法等の改正要望事項等に係る議
案について,事務局からの報告,審議や決定がされた。
イ定例会及び臨時会以外の活動
(ア)本件各委員は,平成21年に執行された東京都議会議員選挙及び衆
議院議員選挙において,投開票日当日における対応のほか,告示日にお
ける立候補の届出等に関する事務,不在者投票施設の視察,街頭巡回啓
発等の活動を行っており,また,告示日から開票後の選挙会における当
選人の決定までの間は,緊急時に備えて待機し,主として委員長におい
て各種の事態への対応をしていた。
(イ)本件各委員は,平成21年4月には,連携の強化を目的としての総
務大臣及び明るい選挙推進協会への訪問(委員長及び委員1名),日野
市長選挙及び日野市議会議員補欠選挙における指導及び助言のための日
野市選挙管理委員会への訪問及び意見交換等(委員1名),東京都・区
市町村選挙管理委員会委員長会議における東京都議会議員選挙の執行計
画についての説明等(委員長),東京都明るい選挙推進協議会への出席
(委員1名),毎年開催される特別区選挙管理委員会連合会総会や東京
都市選挙管理委員会連合会への出席(委員長),同年5月には,都道府
県選挙管理委員会連合会関東甲信越静支会への出席(全委員),同年6
月には,あきる野市選挙管理委員会への訪問,意見交換及び期日前投票
所の視察等(委員2名),国分寺市選挙管理委員会への訪問及び期日前
投票所の視察等(委員長),同年7月には,不在者投票施設の視察(全
委員),島部選挙区の当選人への当選証書の付与(委員長),東京都・
区市町村選挙管理委員会委員長会議における衆議院議員選挙の執行計画
についての説明等(委員長),同年9月には,衆議院(比例代表選出)
議員選挙分会及び国民審査分会の開催に関する事務(委員長),衆議院
(小選挙区選出)議員選挙の当選人への当選証書の付与(委員長),武
蔵野市選挙管理委員会への訪問及び意見交換等(委員長,委員2名),
同年11月には,葛飾区選挙管理委員会への訪問,意見交換及び期日前
投票所の視察等(全委員),明るい選挙推進大会への出席等(全委員),
明るい選挙ポスター展表彰式への出席等(全委員)等といった活動を行
った。
4争点に対する判断
(1)法203条の2第2項は,普通地方公共団体の短時間勤務職員を除く非常
勤の職員に対する報酬について,その本文において,その勤務日数に応じて
これを支給すると規定する一方,そのただし書において,条例で特別の定め
をした場合はこの限りではないと規定し,月額等をもって定めることを許容
している。
上記の本文の規定は,当該職員の非常勤という地位に照らし,これに対す
る報酬はいわゆる生活給としての要素を含まない性格のものであること等を
反映するものであると解される。そして,上記のただし書の規定については,
昭和31年にされた同規定(その前身である改正前法203条2項)の制定
に係る事情等につき前記1に述べたように,本件改正法案の当初の案におい
ては上記の非常勤の職員に対する報酬を一律にその勤務日数に応じて支給す
るものとされていたのに対し,衆議院において,上記の非常勤の職員には各
種のものがあり,その従事する職務やこれを受けてのそれぞれの勤務の態様
等は様々で,これらの職員に対する報酬を一律にその勤務日数に応じて支給
するものとすることには問題があり,特に,選挙管理委員については,かね
て全国の地方公共団体のほとんどにおいて月額をもってその報酬が定められ
ていたことを踏まえつつ,その職務の内容や勤務の態様等に照らし,上記の
ような取扱いをすることが具体的実情に沿わないこととなるおそれがあると
の懸念が示されたことを受けて,地方公共団体の議会の判断により非常勤の
職員に対する報酬を月額等をもって定めることを許容することを趣旨とする
上記のただし書の規定を加える旨の本件修正案が提出され,両議院での審議
の結果,これが可決されたものである。
原告は,非常勤の職員に対する報酬につき月額等をもって定めることが許
されるのは,常勤の職員と同様に月額等をもって定められた報酬を支給する
ことが合理的である場合や勤務日数の実態を把握することが困難であり月額
等をもって定められた報酬を支給する以外に方法がない場合等の特別な場合
に限られる旨主張するとともに,上記のただし書の規定が制定された後の社
会情勢等の変化も考慮すべきである旨主張するが,既に述べたような上記の
ただし書の規定の制定の経緯に加え,同規定においては,非常勤の職員に対
する報酬の支給につきその勤務日数に応じてする方法以外の方法によること
ができる基準が示されていないこと,同規定の制定に際しての国会での審議
において,その適用がある場合を一定のものに限ることや当分の間の取扱い
として定めることが前提とされていたとはうかがわれないこと等からすれば,
上記のただし書の規定の適用される場合等に関する上記の原告の主張は採用
し難いものというべきであり,このことは,昭和31年の法改正に関する自
治庁次長通知や自治庁回答を参照しても,左右されるものではない。
もっとも,非常勤の職員の報酬の上記のような基本的な性格,法2条14
項が,地方公共団体はその事務を処理するに当たっては最少の経費で最大の
効果を挙げるようにしなければならないと定め,地方財政法4条1項が,地
方公共団体の経費はその目的を達成するための必要かつ最少の限度を超えて
これを支出してはならないと定めていること等を考慮すると,当該非常勤の
職員の職務の内容及び勤務の態様並びに当該地方公共団体における財政に係
る個別的な事情等に照らし,報酬を月額をもって支給することについて,当
該地方公共団体の議会の判断につき裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用
したものと認めるべき場合もあり得るものと解され,その際には,例えば,
月額をもって支給するものと定められた報酬の額のいかんも検討すべき対象
に含まれるものと解するのが相当である。
(2)前記3のとおり,東京都選挙管理委員会は,我が国における選挙の制度の
重要性等を受けて,東京都に置かなければならないとされる執行機関で(法
180条の5第1項2号),東京都が処理する選挙に関する事務及びこれに
関係のある事務の管理及び執行をするものであり,具体的には,①東京都議
会議員選挙及び東京都知事選挙の管理,衆議院(小選挙区選出)議員選挙及
び参議院(東京都選出)議員選挙の管理,②衆議院(比例代表選出)議員選
挙及び参議院(比例代表選出)議員選挙における東京都選挙区分の執行管理,
③最高裁判所裁判官国民審査に関する事務の執行,④東京都議会の解散の請
求,東京都議会議員及び東京都知事の解職の請求等の直接請求に係る事務,
⑤選挙公営制度の運営に係る事務,⑥政治団体の届出やその収支報告書の提
出の受付,要旨の公表,保存及び閲覧に関する事務,⑦選挙に関する啓発,
周知等を行っているほか,⑧選挙の効力や当選の効力に係る争訟については,
準司法的機能等を果たすものとされている。
このように,東京都選挙管理委員会が管理及び執行すべきものとされてい
る事務は,相当程度に広範であり,かつ,専門性が高いものということがで
きる。そして,前記3に認定したとおり,本件各委員は,定例会及び臨時会
に出席し,東京都選挙管理委員会が処理すべき事務について議事への参与や
表決等をするだけでなく,選挙の執行の時期には必要な対応が求められ,そ
の時期以外にも,選挙に関する啓発,周知等の継続的に遂行する必要がある
職務があるほか,委員長を中心として,関係機関等との連携強化,東京都内
の市区町村選挙管理委員会に対する助言等を行っている上,上記の直接請求
に関する事務や争訟に係る対応のように,いったんそのような事情が生じれ
ばその際の個別の事由に応じ迅速かつ適正にその遂行に当たる必要がある
職務もあるのであって,その内容においてもその性質等においても多様なそ
れらの職務を受けて,そのときどきにおける勤務の態様等も異なるものとい
うことができ,上記のような東京都選挙管理委員会の事務の管理及び執行に
ついて最終的な責任を負うものである。このような本件各委員の職務の内容
や勤務の態様等を考慮すると,本件各委員に対する報酬について,単に会議
に出席するなどした日数に応じて支給するといった方法によることが常に
必ず具体的実情に沿うものとまでは断じ難く,上記の日数によって一律には
評価し尽くせない事由もあるとして,東京都議会において,月額をもって定
めた報酬を支給するものとしたとしても,そのような判断をもって裁量権の
範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものであるとまでは直ちには認め難い。
(3)さらに,前記2に認定したとおり,本件各委員に支給される本件報酬の
額については,東京都特別職報酬等審議会が消費者物価(東京都区部)等
を考慮した上で答申したところにより決定された特別職の報酬の額の改定
率を参考にして定められているのであり,本件各委員の職務の内容や勤務の
態様,東京都の規模のほか,平成22年4月1日以降の本件報酬の額が,委
員長につき53万円,その他の委員につき43万3000円であり,上記の
審議会の答申における平成21年度の東京都議会議員の報酬の額である1
か月当たり103万3000円と比較して,委員長がその約2分の1,その
他の委員が更にその約5分の4程度であることを勘案すると,本件報酬の額
が著しく高額なものであるとまではいい難い。
(4)以上に述べたところによれば,本件報酬額規定を定めた東京都議会の判
断については,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものとまで
は断じ難いというべきである。
原告は,選挙管理委員会の事務についてはそのほとんどが事務局の職員が
行うものであり,本件各委員の勤務の状況についても月に1,2回の定例会
に短時間出席するだけのときがあるのであるにもかかわらず,本件報酬の額
は,東京都内の区市町村の選挙管理委員又は他の道府県の選挙管理委員の報
酬の額や国の非常勤職員の報酬の額と比較して突出して高いのであって,東
京都議会の裁量権の範囲を逸脱し,これを濫用したものであり,法2条14
項及び地方財政法4条1項にも違反すると主張する。
しかしながら,先に述べた関係法令に照らし,選挙管理委員会が管理及び
執行をする事務は,選挙管理委員がその職務の遂行として処理するものであ
り,事務局の職員は,選挙管理委員会の委員長及びその他の委員を補助する
立場にある者として委員長の指揮監督の下にそのような内容及び性格の職
務に従事しているものというべきである。また,本件各委員の職務に係る具
体的実情に応じ,どの程度の報酬の額が適切であるかについては,東京都議
会の判断にゆだねられているのであって,規模その他の事情において大きな
相違があるものと推認される東京都内の区市町村の選挙管理委員又は他の
道府県の選挙管理委員の報酬の額や,国の非常勤の職員の報酬の額との比較
をもって,直ちに著しく高額であるとまで断ずることはできない。
第3結論
以上のとおり,原告の請求は,いずれも理由がないから棄却し,訴訟費用の
負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のと
おり判決する。
東京地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官八木一洋
裁判官田中一彦
裁判官高橋信慶

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