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平成26年10月27日判決言渡
平成26年(行ケ)第10122号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成26年9月17日
判決
原告デンツプライインターナショナルインコーポレーテ
ッド
訴訟代理人弁理士小沢慶之輔
小塚勉
板岡智子
被告特許庁長官
指定代理人山田和彦
寺光幸子
堀内仁子
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を
30日と定める。
事実及び理由
第1原告の求めた裁判
特許庁が不服2013-16062号事件について平成25年12月24日にし
た審決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,商標登録出願に対する拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の取消
訴訟である。争点は,本願商標と引用商標との類否(商標法4条1項11号)であ
る。
1特許庁における手続の経緯
原告は,平成24年9月25日,下記本願商標につき商標登録出願(商願201
2-077317号)をしたが(甲2),平成25年5月24日付けで拒絶査定を
受けた(甲5)。
原告は,同年8月20日,拒絶査定に対する不服の審判請求をした(不服201
3-16062号,甲6)。
特許庁は,平成25年12月24日,「本件審判の請求は,成り立たない。」と
の審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,平成26年1月22日に
原告に送達された。

【本願商標】(甲2)
VIA(標準文字)
指定商品
第10類義歯修復物・歯列矯正用器具・歯科インプラントのデザインお
よび制作に使用される,手のひらサイズの口内スキャナー・タッ
チスクリーンモニターと一体化したカート・患者の上下の歯及び
軟組織の三次元画像を保存するソフトウェアから成るデジタル歯
科印象スキャンシステム,歯科用機械器具,医療用機械器具
2本件審決の理由の要点
【引用商標】(甲1)
①国際登録番号第1091789号
②国際登録出願日平成23年9月2日
③国内設定登録日平成24年4月27日
(優先権主張日平成23年3月23日・CH〔スイス〕)
④指定商品
第10類
脊髄手術用・上顎頭蓋顔面手術用及び胸部手術用の外科用の侵入のための器具,
人工材料からなる外科用及び医療用インプラント及び器具,すなわちねじ,ロッド
コネクター,椎間の開創器,椎体用の交換部品,椎間の融合用インプラント及び関
連する挿入器具(脊髄手術用・上顎頭蓋顔面手術用及び胸部手術用のもの),骨及
び組織の強化用の外科用器具,骨及び組織の固定用の外科用器具,固定用インプラ
ント
⑴引用商標の要部
引用商標に接する取引者,需要者は,構成中顕著に表された「VIA」の文字部
分をもって,自他商品の識別力を有する要部と認識し,これをとらえて取引に当た
る場合も,決して少なくないとみるのが相当である。
⑵本願商標と引用商標との類否
ア外観については,本願商標と引用商標とは,その全体の構成において相
違するとしても,本願商標の「VIA」の文字と,引用商標の構成中,要部と認め
られる「VIA」の文字部分とを対比すると,両商標は,共に普通に用いられる書
体で「VIA」と記載されている点において共通しており,外観において共通する
部分がある。
また,本願商標と引用商標とは,いずれも①「ブイアイエー」の称呼又は「ビア」
の称呼を生じ,②「・・経由で,・・によって」との観念を生じる。
したがって,本願商標と引用商標とは,外観において共通する部分があり,称呼
及び観念において同一といえるから,互いに相紛れるおそれのある類似の商標とい
わなければならない。
イそして,本願商標の指定商品は,引用商標の指定商品と同一又は類似の
商品を含むものである。
⑶結論
以上によれば,本願商標は,引用商標と類似の商標であって,かつ,引用商標の
指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから,商標法4条1項
11号に該当するものである。
第3原告主張の審決取消事由
1結合商標である引用商標の分離観察の可否
以下のとおり,本件審決が,引用商標の構成部分の一部である「VIA」の文字
部分を要部として抽出し,分離観察したことは,誤りである。
⑴結合商標の構成部分の一部を抽出し,この部分のみを他人の商標と比較し
て類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し,商品又は役務の出所
識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部
分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,
許されないというべきであり,結合商標の一部を抽出することが許されるのは,上
記のような例外的な場合に限られるべきである(最高裁昭和37年(オ)第953
号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁〔以下「昭和
38年最判」という。〕,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第
二小法廷判決・民集47巻7号5009頁〔以下「平成5年最判」という。〕,最
高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・集民228
号561頁〔以下「平成20年最判」という。〕)。
⑵ア本件審決は,引用商標の外観につき,「VIA」と「SOLUTION
S」の両文字は,異なる高さに置かれ,文字の大きさが異なり,かつ,左下方から
右上方へ向けた弓なりの曲線が両文字を分断するように伸びていることから,視覚
的に分離して看取されるものである旨の判断をしている。
イしかしながら,商標法4条1項11号の趣旨は,商品又は役務の出所混
同の防止であり,この点に鑑みると,商標の類否については,当該商品の一般的な
需要者の視線から判断すべきである。
そして,引用商標の構成中,「SOLUTIONS」の文字部分は,「VIA」
の文字部分と比較してやや小さめではあるものの,同文字部分のみが注目されると
断言できるほど極端に小さくはない。また,英語など欧州の言語においては,通常,
単語間にスペースを設けることから,上記両文字部分の間にスペースが存在するこ
とは,これらを一体として認識することを妨げるものではない。さらに,引用商標
全体の構成によれば,上記弓なりの曲線は,上記両文字部分を分断するというより
も,後記の楕円様の図形を貫く線の端が,上記両文字部分の間にかかっていると見
るのが自然である。
以上によれば,引用商標の構成中,「VIA」の文字部分と「SOLUTION
S」の文字部分(以下,併せて「両引用文字部分」ともいう。)とは,軽重の差な
く結合しており,その余の図形部分,すなわち,両引用文字部分の間に伸びる左下
方から右上方に伸びた弓なりの曲線と楕円様の図形とが重なり組み合わさった図形
(以下「引用図形」という。)と併せてまとまりよく一体を成しているといえ,こ
れに接した一般的な需要者は,全体を1つの商標として認識すると考えるのが自然
であり,「SOLUTIONS」の文字部分を捨象し,「VIA」の文字部分のみ
をもって取引の用に供することは,想定し難い。
⑶ア本件審決は,「SOLUTIONS」の文字につき,「専門の業者が顧
客の要望に応じてシステムの設計を行い,必要となるあらゆる要素(ハードウェア,
ソフトウェア等)を組み合わせて提供するもの」という意味で用いられる「ソリュ
ーション」の語の英語表記と理解されるところ,本願の指定商品分野においても,
例えば,「医療ソリューション」又は「メディカルソリューション」と称するシス
テム化された医療用の機械器具が各社から提供されていることからすれば,「SO
LUTIONS」の文字部分は,自他商品識別標識としての機能が極めて弱いか,
その機能を果たさないものとみるのが相当であり,分離観察が例外的に許される場
合に当たる旨の判断をしている。
イしかしながら,前記⑴において前述したとおり,分離観察が許されるの
はあくまでも例外的な場合に限られることから,昭和38年最判等が,結合商標の
一部を抽出することが許される例として挙げた「それ以外の部分(当該抽出に係る
部分)から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合」とは,
当該結合商標中,出所識別標識としての称呼,観念が生じないのは「それ以外の部
分」のみであることについて全く疑義がない場合に限られるべきといえる。
この点に関し,「VIA」の文字は,「・・経由で,・・によって」という意味
を有する英単語の前置詞「via」と文字つづりが同じであることから,「VIA」
の文字部分からも上記意味が生じるものと解され,「VIASOLUTIONS」
の文字部分は,「専門の業者が顧客の要望に応じてシステムの設計を行い,必要と
なるあらゆる要素(ハードウェア,ソフトウェア等)を組み合わせた提供方法によ
って」との観念を生じると判断するのが自然である。また,「ビアソリューション
ズ」という称呼も,冗長ではなく,一連に称呼し得るものといえる。
このように,「VIASOLUTIONS」の文字部分からも上記称呼,観念
が生じ,これが出所識別機能を有しないということもあり得るから,引用商標にお
いては,出所識別標識としての称呼,観念が生じないのは,「VIA」の文字部分
以外の部分,すなわち,「SOLUTIONS」の文字部分のみであることについ
ては,疑義がある。したがって,引用商標から「VIA」の文字部分を抽出するこ
とは許されないというべきである。
⑷本件審決は,両引用文字部分が常に一体不可分のものとしてのみ観察され
なければならない特段の事情を見出し得ない旨判断するが,「特段の事情」を要す
るのは,結合商標の一部を抽出する場合であり,一体不可分のものとして観察する
場合には,「特段の事情」を要しない。
⑸ア本件審決は,引用商標に接する取引者,需要者は,「VIA」の文字部
分を自他商品の識別力を有する要部と認識し,これをとらえて取引に当たる場合も
決して少なくないとみるのが相当である旨判断する。
イしかしながら,引用商標の指定商品の取引者や需要者は,医療関係者で
あり,英語に精通していると考えられ,引用商標に接すれば,「VIASOLU
TIONS」について,①「専門の業者が顧客の要望に応じてシステムの設計を行
い,必要となるあらゆる要素(ハードウェア,ソフトウェア等)を組み合わせた提
供方法によって」という観念を生じるものと認識するか,②少なくとも,英語の「V
IA」は,前置詞であり,通常,前置詞は名詞の前に置かれることから,「SOL
UTIONS」という語と組み合わせて何らかの観念を生じる旨を認識するものと
考えるのが自然である。また,医療関係者である取引者,需要者は,指定商品を購
入する際,その金額,性能等を比較検討し,相当の注意を払うものと見込まれるこ
とから,「VIA」の文字部分のみを引用商標の要部として認識し,これをとらえ
て取引に当たるとは考え難い。
2本願商標と引用商標との類否
以下のとおり,本件審決が,本願商標と引用商標とは,類似の商標である旨判断
したことは,誤りである。
⑴商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外
観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,
その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ,全体的に考察すべきものである
から(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・
民集22巻2号399頁〔以下「昭和43年最判」という。〕),本願商標と引用
商標との間に外観において共通する部分が存在することは,これらの商標が類似し
ていると判断する根拠となるものではない。
⑵前記1のとおり,「VIA」の文字部分を引用商標の要部と認定すること
はできない。
さらに,引用商標中,最も取引者や需要者の注意を引くのは引用図形であり,こ
れが引用商標の外観において最も重要な要素といえる。
以上によれば,本願商標と引用商標とは,それぞれの外観,観念,称呼によって
取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を異にし,非類似というべきである。
第4被告の反論
1結合商標である引用商標の分離観察の可否について
以下のとおり,本件審決が,引用商標の構成中,「VIA」の文字部分を要部と
して抽出し,分離観察したことに誤りはない。
⑴引用商標の構成中,「VIA」の文字部分は,「SOLUTIONS」の
文字部分に係る縦横の長さのおおむね2倍,面積の約4倍であり,しかも,上段中
央に肉太に表されている。他方,「SOLUTIONS」の文字部分は,「VIA」
の文字部分に近接することなく,一段右下方に表示されている上,緩やかに斜めの
弧を描いた弓なりの曲線により,より一層「VIA」の文字部分と分断されて看取
されるものとなっている。
⑵ア「solution(s)(ソリューション(ズ))」の語は,「専門
の業者が顧客の要望に応じてシステムの設計を行い,必要となるあらゆる要素(ハ
ードウェア,ソフトウェア等)を組み合わせて提供するもの(解決策)」程度の意
味で,一般に広く使用されており,引用商標の指定商品の分野に属する医療業務に
提供される商品等についても同様である。
このことから,引用商標の構成中,「SOLUTIONS」の文字部分は,これ
に接する取引者,需要者に,顧客が抱える問題や課題に対して「解決策,解決方法」
を提供する企業や業務であることを容易に認識させるにとどまり,商品や役務の出
所を表すものとして強い印象を与えるものとはいえない。したがって,上記文字部
分は,自他商品の識別標識としての機能が極めて弱いか,その機能を果たさないも
のということができる。
イ引用商標の構成中,「VIA」の文字部分については,①その構成文字
に相応して,「ブイアイエー」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
または,②英語の「via」との関係において,「ビア」の称呼及び「・・経由で,
・・によって」の観念を生じるものでもある。
上記①については,特定の観念を生じない「VIA」の文字と「SOLUTIO
NS」の文字とが一体となって,一般に親しまれたまとまりのある意味合いを理解
させるものになるとはいい難い。上記②についても,引用商標における「VIA」
の文字は,大きく顕著に表されており,この構成態様において,欧文字3文字から
なる「VIA」の大文字が,常に「・・によって」を意味するものとして理解され
るとは限らない。
以上によれば,「VIASOLUTIONS」の文字部分から,原告主張に係
る前記第3の1⑶イ記載の観念が直ちに想起されるとはいえない。
⑶ア引用商標の構成中,「VIA」の文字部分は,上段中央に顕著に表され
ており,視覚上,単独で,看者の注意を相当程度引き,より強く印象に残るものと
いうことができる。
そして,①引用商標の構成態様において,「VIA」の文字部分,「SOLUT
IONS」の文字部分及び引用図形とは,互いに,観念上,直ちにまとまりのある
意味合いを理解させるものではないこと,②「SOLUTIONS」の文字部分は,
引用商標の指定商品の分野において,出所を表すものとして強い印象を与えるもの
とはいえないことに照らすと,引用商標は,「VIA」の文字部分を分離して観察
することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているということ
はできない。
このことから,引用商標の構成中,両引用文字部分は,分離して観察することが
できる。
イそして,引用商標に接する取引者,需要者は,強く支配的な印象を与え
る「VIA」の文字部分から生ずる称呼及び観念をもって,商品の出所識別標識と
して取引するものと認めるのが相当であり,上記文字部分は,引用商標の要部とい
うべきである。
2本願商標と引用商標との類否について
本願商標と引用商標とは,全体の外観において異なるものの,本願商標と引用商
標の要部である「VIA」の文字部分とを比較すると,両者は,同一の文字から構
成されている。
したがって,本願商標と引用商標とは,外観において共通する部分があり,当該
部分,すなわち,「VIA」の文字部分から生じる称呼及び観念も同一であるから,
本願商標は,引用商標と類似の商標といえ,本件審決が同旨の判断をしたことに誤
りはない。
第5当裁判所の判断
1結合商標である引用商標の分離観察の可否について
⑴分離観察の可否について
商標法4条1項11号に係る商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の
商品又は役務に使用された場合に,当該商品又は役務の出所につき誤認混同を生ず
るおそれがあるか否かによって決すべきであるが,そのためには,両商標の外観,
観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合し,当該
商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきである(昭和43
年最判参照)。
この点に関し,図形や文字等の複数の構成部分を組み合わせた結合商標について
は,経験則上,各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると
思われるほど不可分的に結合しているものと認められない場合,取引の実際におい
て,一部の構成部分のみによって称呼,観念されることも少なくないといえる。こ
のことから,結合商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出
所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合,それ以外の部
分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などは,当該
構成部分を要部として抽出し,この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を
判断することができるものと思料する(昭和38年最判,平成5年最判,平成20
年最判参照)。
⑵引用商標について
ア外観について
(ア)a引用商標は,前記第2の2のとおりの外観であって,「VIA」の
文字,「SOLUTIONS」の文字及び引用図形を組み合わせた結合商標であり,
その構成中,引用図形のうち楕円様の図形の上方(以下「上段」という。)中央辺
りに,太いゴシック体で大きく「VIA」の文字が,上記楕円様の図形の左下方か
ら同図形を縦断して右上方へ伸びる弓なりの曲線を隔てて,上段右側に,「VIA」
の文字よりも低い位置において,同文字よりもかなり細く,かつ,小さいゴシック
体の「SOLUTIONS」の文字(「VIA」の文字に比べ,縦横の長さは約2
分の1,面積は約4分の1)が,それぞれ表わされている。
以上のとおり,「VIA」の文字部分と「SOLUTIONS」の文字部分とは,
大きさ及び字の太さが顕著に異なる上,その配置,とりわけ,前記弓なりの曲線に
よって隔てられていることから,一見して,まとまりのある一体のものという印象
は乏しい。
bまた,両引用文字部分と引用図形との位置関係についてみると,い
ずれの文字部分も楕円様の図形の外側にあり,上記のとおり弓なりの曲線によって
隔てられている。この配置に鑑みると,引用図形と各文字部分についても,一体の
ものという印象は認め難い。
c以上によれば,引用商標を構成する「VIA」の文字部分,「SO
LUTIONS」の文字部分及び引用図形は,外観上,常に一体不可分のものとし
て認識されるものとはいえず,分離して看取し得るものというべきである。
(イ)そして,前記のとおり,「VIA」の文字部分は,上段中央に太いゴ
シック体で大きく表わされているのに対し,「SOLUTIONS」の文字部分は,
「VIA」の文字部分よりも低い位置にあり,同文字部分に比して,線が細く,小さ
い。また,「VIA」の文字部分は,引用図形と比べると,全体的に色が濃く,線
も太い。
以上の点から,引用商標を構成する構成部分のうち,外観上,「VIA」の文字
部分が,単独で最も強く看者の注意を引くものと認められる。
イ(ア)各構成部分について
a「VIA」の文字部分からは,①その構成文字に相応した「ブイア
イエー」の称呼又は②当該構成文字と同一の英文字から成る英単語の「via」に
相応した「ビア」の称呼が生じるといえる。
そして,「VIA」の文字部分を,「ビア」と称呼する上記英単語と認識する場
合には,「・・経由で」又は「・・によって」との意味合いが生じるものと認めら
れる(乙1)。
なお,「コンサイスカタカナ語辞典第4版」(平成22年株式会社三省堂発行,
乙2)及び「大きな字のカタカナ新語辞典第2版」(平成21年株式会社学習研
究社発行,乙3)のいずれにも,「VIA」という単語を説明する項目は見られな
いことから,上記英単語は,我が国において日常使用する外来語として一般に定着
しているとまでは認められない。
b「SOLUTIONS」の文字部分からは,その構成文字に相応し
た「ソリューションズ」の称呼を生じ,その英単語の「SOLUTION」は,「問
題解決又はその方法」を意味する(乙4)。そして,①「現代用語の基礎知識」(平
成25年1月自由国民社発行,乙5)には,「ソリューション〔solution〕①解決
(法)。問題解決。(中略)新しい情報システムやビジネスモデルによる企業の問題
解決。」と記載されていること,②「標準パソコン用語事典最新2009~20
10年版」(平成21年株式会社秀和システム発行,乙6)には,「ソリューショ
ンsolution様々な問題解決の蓄積などから,考えられる問題点と,それに対す
る解決法をユーザーに提出し,実現すること。」と記載されていること,③複数の
企業が,自社の開発に係る医療関連のシステム等を紹介,宣伝する際,顧客の要望
等に係る課題の解決手段を提供するという趣旨で,「ソリューション」又は英単語
の「solution」を使用していること(乙7から乙9,乙16)が認められ,これら
の事実によれば,上記英単語は,外来語として我が国の日常生活にかなり浸透して
おり,「SOLUTIONS」は,同英単語の語尾に「S」の文字を付した複数形
を表すものとして,広く一般に認識されているものと認めることができる。
c引用図形については,称呼は生じず,また,それ自体としても,両
引用文字部分の両方又はいずれか一方と組み合わせても,特に何かを連想させるも
のとはいえない。
dなお,引用商標において,両引用文字部分及び引用図形を常に一体不
可分なものと認識しなければならないような称呼上の理由及び意味合い上の関連性
は見出せない。
(イ)出所識別力について
本願商標の指定商品は,主として歯科用の医療器具であり(甲2),外科用の医療
器具を主とする引用商標の指定商品(甲1)と同一又は類似の商品を含むものであ
るところ,前述したとおり,複数の企業が,自社の開発に係る医療関連のシステム
等を紹介,宣伝する際,顧客の要望等に係る課題の解決手段を提供するという趣旨
で「医療ソリューション」(乙7),「メディカルソリューション」(乙8),「S
olutions」(乙9),「血液管理ソリューション」(乙16)という用語を使って
いることに鑑みれば,「SOLUTIONS」の文字部分は,本願商標の指定商品
との関係においては,当該商品又はこれに関連する医療システム,医療機器を表し
たものにすぎないと理解され,出所識別力が弱いものといえる。
他方,「VIA」の文字部分に係る称呼及び意味合いは,前記のとおりであると
ころ,いずれも上記指定商品の形状,性質に関わるものではなく,また,日常生活
上使われることのない造語として印象的といえるから,上記文字部分は,「SOL
UTIONS」の文字部分よりも,上記指定商品との関係における出所識別力を有
するものということができる。
ウ小括
以上に鑑みると,引用商標に接する取引者,需要者は,両引用文字部分を常に一
体的に認識するだけでなく,外観上,単独で最も強く看者の注意を引き,かつ,両
引用文字部分のうちより強い出所識別力を有する「VIA」の文字部分をもって,
商品の出所識別標識としてとらえる場合もあるものと認められ,したがって,同文
字部分が,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を
与えるものと認められるから,同文字部分を引用商標の要部として抽出し,他人の
商標と比較して商標の類否を判断することができるというべきである。
エ称呼及び観念について
まず,引用商標を全体的に観察し,両引用文字部分を一連のものとしてみると,「
ブイアイエーソリューションズ」,「ビアソリューションズ」という2つの称呼が
生じる。そして,引用商標を2つの英単語の結合と認識する場合(「ビアソリュー
ションズ」と称呼する場合)には,「複数の問題解決又はその方法によって」とい
う観念を生じる。
また,引用商標では,「VIA」の文字部分が要部と解されることから,「ブイ
アイエー」,「ビア」という2つの称呼が生じるとともに,「・・経由で」又は「・
・によって」との観念が生じるものと認められる。
⑶原告の主張について
ア(ア)原告は,両引用文字部分につき,①「SOLUTIONS」の文字部
分は,「VIA」の文字部分のみが注目されると断言できるほど極端に小さくはな
い,②欧州の言語においては,通常,単語間にスペースを設けることから,両引用
文字部分の間にスペースが存在することは,これらを一体として認識することを妨
げるものではない,③引用商標全体の構成によれば,弓なりの曲線が両引用文字部
分を分断するというよりも,楕円様の図形を貫く線の端が,両引用文字部分の間に
かかっていると見るのが自然であるとして,両引用文字部分は,軽重の差なく結合
しており,引用図形と併せてまとまりよく一体を成しているといえ,これに接した
一般的な需要者は,全体を1つの商標として認識すると考えるのが自然である旨主
張する。
(イ)しかしながら,前述したとおり,両引用文字部分は,大きさ及び字の
太さが顕著に異なる上,間には弓なりの曲線があり,また,「SOLUTIONS」
の文字部分は,「VIA」の文字部分よりも低い位置にあることから,両引用文字
部分を常に一連のものとしてとらえることは,困難といえる。
また,両引用文字部分の上記相違及び配置に加え,上記弓なりの曲線は,「VI
A」の文字部分よりは細いものの,「SOLUTIONS」の文字部分よりは太く,
両引用文字部分の間を貫通しており,その上端及び下端は,それぞれ両引用文字部
分よりも右上方,左下方であることから,楕円様の図形を貫く線の端が両引用文字
部分の間にかかっているというよりも,上記曲線が両引用文字部分の間を分断して
いるという印象の方がはるかに強いものといえる。
そして,前記のとおり,両引用文字部分と引用図形については,一体のものとい
う印象は認め難い。
以上に鑑みると,原告の前記主張は採用できないというべきである。
イ(ア)原告は,両引用文字部分を一体不可分のものとして観察するために
「特段の事情」は不要であり,引用商標からは,両引用文字部分を一連のものとして
「ビアソリューションズ」の称呼及び「専門の業者が顧客の要望に応じてシステムの
設計を行い,必要となるあらゆる要素(ハードウェア,ソフトウェア等)を組み合
わせた提供方法によって」との観念を生じる旨主張する。
(イ)しかしながら,引用商標の両引用文字部分が,一連に称呼し観念され
る場合があるとしても,常に一体不可分のものとして認識されるわけではないこと
(すなわち,その要部のみが抽出される場合があること)は,前述したとおりであり,
原告の前記主張は,採用できない。
ウ(ア)原告は,引用商標の指定商品の取引者や需要者は,医療関係者であり,
英語に精通していると考えられることから,引用商標に接すれば,原告主張に係る
前記第3の1⑶イ記載の観念を生じる旨を認識するか,少なくとも,「VIA」の
文字部分を「SOLUTIONS」の文字部分と組み合わせて何らかの観念を生じ
る旨を認識するものと考えるのが自然である旨主張するが,両引用文字部分が常に
一体不可分のものと認識されるものではないことは前述したとおりであるから,同
主張は採用できない。
(イ)また,原告は,医療関係者である取引者,需要者は,相当の注意を払
って引用商標の指定商品を購入することから,「VIA」の文字部分のみを引用商
標の要部として認識し,これをとらえて取引に当たるとは考え難い旨主張する。
しかしながら,取引者,需要者において,指定商品購入の際,その品質,出所等
に細心の注意を払うとしても,本件の引用商標のように,視覚上分離して看取され
るものであり,称呼及び観念においても,常に全体が一体不可分のものとして認識
されるものとはいえない結合商標につき,外観上,他の構成部分と比べて出所識別
力が低く比較的印象の弱い構成部分まで含め,常にすべての構成部分を一体のもの
として認識するとは限らないから,上記主張は採用できない。
(4)小括
以上のとおり,本願商標と引用商標との類否判断に当たり,「VIA」の文字部
分を引用商標の要部として抽出し,分離観察した本件審決の判断に誤りはない。
2本願商標と引用商標との類否について
⑴ア本願商標(甲2)は,アルファベットの大文字「V」,「I」及び「A」
の3文字の標準文字から構成されており,「ブイアイエー」又は「ビア」の称呼を
生じ,「・・経由で」又は「・・によって」との観念を生じるものと認められる。
引用商標(甲1)は,ゴシック体の「VIA」の文字,ゴシック体の「SOLU
TIONS」の文字及び引用図形から成り,その両引用文字部分に相応した一連の
称呼及び観念が生じるだけでなく,その構成中,要部と認められる「VIA」の文
字部分から,「ブイアイエー」又は「ビア」の称呼を生じ,「・・経由で」又は「・
・によって」との観念を生じるものと認められる。
したがって,本願商標と引用商標とは,その全体の外観構成において相違するも
のの,本願商標と引用商標の要部である「VIA」の文字部分は,いずれも通常用
いられる書体によるアルファベットの大文字「V」,「I」及び「A」の3文字か
ら構成されており,したがって,本願商標と引用商標との間には,外観において共
通する部分がある。また,「ブイアイエー」又は「ビア」の称呼及び「・・経由で」
又は「・・によって」との観念を同一にするものである。
イ原告は,引用商標中,最も取引者や需要者の注意を引くのは引用図形で
あり,外観上重要な要素である旨主張する。
しかしながら,引用図形は前記1⑵で認定したとおりであり,外観上突出した印
象を与えるわけではなく,このような称呼及び観念の生じない引用図形の存在が,
本願商標と引用商標との類否の判断に大きく影響するものではないから,上記主張
は採用できない。
⑵以上によれば,本願商標と引用商標とは,同一又は類似の商品に用いられ
た場合には,商品の出所につき混同誤認を生ずるおそれがある類似の商標であると
認められ,同旨の認定をして,本願商標が商標法4条1項11号に該当するとした
本件審決の判断に,誤りはないというべきである。
第6結論
以上によれば,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判
決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
清水節
裁判官
新谷貴昭
裁判官
鈴木わかな

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