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平成29年2月20日判決言渡
平成28年(ネ)第10085号職務発明対価請求控訴事件(原審:東京地方裁
判所平成24年(ワ)第21035号)
口頭弁論終結日平成28年11月10日
判決
控訴人(一審原告)X
被控訴人(一審被告)株式会社リコー
(以下「被控訴人リコー」という。)
被控訴人(一審被告)リコーインダストリー株式会社
(以下「被控訴人リコーインダストリー」という。)
上記2名訴訟代理人弁護士竹田稔
同服部謙太朗
主文
1本件控訴をいずれも棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して,1億円及びこれに対する平成24
年8月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
第2事案の概要
本判決の略称は,特に断らない限り,原判決に従う。
1事案の要旨
本件は,日立工機株式会社(日立工機)等に勤務していた控訴人が,勤務期
間中に職務発明(本件各特許発明)を行い,同発明に係る特許を受ける権利を
同社に譲渡したところ,被控訴人らにおいて同社の相当対価支払義務を承継し
た旨主張して,被控訴人らに対し,平成16年法律第79号による改正前の特
許法35条(以下,同条について「特許法」という場合,特に断らない限り,
平成16年法律第79号による改正前の特許法をいう。)に基づき,相当対価
2億円及びうち1億円に対する訴状送達日の翌日(被控訴人リコーにつき平成
24年8月16日,被控訴人リコーインダストリーにつき同月21日)から,
うち1億円に対する平成27年4月27日付け「訴えの変更申立書」送達日の
翌日(平成27年5月1日)から,それぞれ支払済みまで民法所定の年5分の
割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
控訴人は,本件訴えを提起した時点では,日立工機も被告としていたが,平
成25年3月18日,同被告に対する訴えを取り下げた。また,当初,被告で
あったリコープリンティングシステムズ株式会社(リコープリンティングシス
テムズ)は,同年4月1日,被控訴人リコーインダストリーに吸収合併され,
同被控訴人が被告たる地位を承継した。
原審では,①被控訴人らによる日立工機の相当対価支払義務の承継の有無,
②本件特許発明3及び5の実施の有無,③相当対価の額の3点が争われ,原判
決は,①につき,被控訴人リコーによる承継を認め,②につき,本件特許発明
3の自社実施及び本件特許発明5の米国子会社による実施(ただし,カット紙
レーザプリンタのみ。)を認め,③については,本件特許2ないし4は基本特
許ではなく,本件特許5は独占の利益がないか,あるとしてもその程度は低い
との前提の下に相当対価の額を算定した結果,いずれも控訴人が支払を受けた
報奨金の額が相当対価の額を上回るとして,控訴人の請求を全部棄却したため,
これを不服として控訴人が控訴した。
控訴人は,当審において,その請求する相当対価の額を控訴の趣旨第2項記
載のとおり2億円から1億円に減縮した。
2前提事実及び争点
原判決の「事実及び理由」の第2の1及び2(2頁20行目から16頁2行
目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
第3争点に関する当事者の主張
下記1のとおり付加,訂正し,下記2のとおり当審における当事者の主張を
付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の第2の3(16頁3行目から3
9頁18行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。
1原判決の訂正
28頁25行目に「上記aないしe同様であるが」とあるのを,「上記aな
いしeと同様であるが」と改め,30頁22行目の「特許であるため,」の次
に「対価の対象となるものは,」を加える。
2当審における控訴人の主張
(1)本件特許発明3の実施について(争点(2)関係)
原判決は,同特許発明の請求項1についてのみ実施を認定しているが,請
求項2,同5及び同6も実施している。
(2)本件特許発明5の実施について(争点(2)関係)
ア原判決は,いずれもマルチビーム斜め走査を採用している連続紙レーザ
プリンタとカット紙レーザプリンタにおいて,連続紙レーザプリンタにつ
いてのみ同特許発明の実施を認めなかったが,カット紙レーザプリンタよ
りも印刷速度が高速である連続紙レーザプリンタの方が同特許発明の実施
を必要とするというべきであり,原判決の判断は不合理である。
イ原判決は,連続紙レーザプリンタに関し,IBM(米国IBMを指す。
以下同じ。)がマルチビーム方式の画像信号の処理に関する米国特許第4
978849号(乙66。以下「本件IBM特許」という。なお,乙67
は対応する日本特許出願の特許出願公告公報である。)を有していたこと
を根拠に,IBMは,本件特許5と同様にマルチビーム走査レーザ装置に
おける画素位置の修正に関する課題を解決するための特許権,すなわち本
件特許発明5に代替し得る特許権を有していたと認定するが,本件IBM
特許は本件特許発明5に代替し得るものではない。
ウ原判決は,「日立工機らがIBMに対し本件特許権5を実施許諾したと
の事実や,IBM製品において本件特許発明5が実施されている事実を認
めるに足りる証拠はない。」とするが,日立工機とIBMは,平成4年以
降,高速連続紙レーザプリンタの共同開発を行っており,平成5年8月に
は,日立工機がIBMに対し,従来の1ビーム走査からマルチビーム斜め
走査光学系を用いたレーザプリンタへの転換を提示し,平成6年には,I
BMからの要求で日立工機が本件特許5のマルチビーム斜め走査制御方式
を開示している(甲61の1)ことからすると,IBMがコントローラ部
分を製造していたとしても,その内容をなすマルチビーム斜め走査光学系
に係る制御の技術に関しては,日立工機がIBMに対し本件特許5を実質
的にライセンスしていたとみるのが合理的であり,IBMのプリンタ部門
がリコーグループに吸収された平成19年以降は,正に自社内で実施して
いたことになる。
エ以上によれば,連続紙レーザプリンタでも本件特許発明5を実施してい
るとみるのが相当である。
(3)相当対価の額について(争点(3)関係)
ア本件特許2ないし5に基づく光学系及びそれを用いたレーザプリンタは,
①社内外から表彰を受け,②グローバル企業(世界企業)に採用されて世
界中で販売され,③独自発明であるから,他社から特許抵触のクレームを
受けることはなく,類似製品もなく,④数年にわたり,日立工機らの全レ
ーザプリンタの約90%に採用された。
このような発明の相当対価が原判決認定の6万2563円であるはずが
なく,原判決の認定判断は不当である。
イ本件特許2ないし4について
(ア)本件特許2ないし4の位置付けについて
原判決は,「本件特許2ないし4に対する関係で公知技術となる本件
特許1は,マルチビーム斜め走査光学系に関する技術を開示しており,
本件特許2ないし4は,本件特許1等で開示されたマルチビーム斜め走
査光学系の技術を前提とした特許という位置付けになる」ことなどを前
提に,「本件特許2ないし4はマルチビーム斜め走査光学系における基
本特許ではなく,他の特許と比較して特に必要性が高いとはえいない。」
と結論付けるが,不合理な判断である。
すなわち,本件特許1は半導体レーザアレイに限定した特許であるの
に対し,本件特許2ないし4は,レーザ光を分岐する方式で,マルチビ
ームを高速に光変調する光学系を発明し,この発明した光学系において
もマルチビーム斜め走査が有効であることを発見したものである。した
がって,本件特許発明2ないし4は,マルチビーム高速光変調光学系の
発明とマルチビーム斜め走査が有効であるという発見とを結合させたも
のであり,レーザ光源からのレーザ光を分岐する方式によるマルチビー
ム斜め走査光学系の基本特許というべきものである。
また,本件特許2ないし4に基づくマルチビーム斜め走査光学系より
高速性,高解像度性において優位にあるものはない(他の技術は全て性
能面で劣っており,代替手段ではない。)。かかる事実を理解している
から,グローバル企業であるIBMやゼロックスが日立工機らの製品を
採用したのである。
(イ)本件特許2ないし4に係る相当対価の具体的算出について
a売上高について
被控訴人らが開示した売上高はY値(工場出荷価格)であり,Y値
には営業経費及び営業利益が含まれていない。顧客への販売価格(顧
客販売価格)はY値に営業経費及び営業利益などが加算されるものと
なることから,顧客販売価格がY値と異なるのは当然である。したが
って,値引きをして販売されることを考慮しても,被控訴人らが開示
した額の1.8倍をもって実際の売上高とするのが相当である。
b超過売上率について
超過売上率については,原判決が認定するとおり0.45とするの
が相当である(ただし,乙57に基づき,日立製作所などの実施可能
であった特許件数の年平均値を1086件とし,これに情報通信機械
器具製造業における保有特許に対する平均的な自社実施率〔24.7
%〕を考慮して,「これらの特許が全体として日立工機らのプリンタ
の売上げに相当程度貢献したものと認められる。」と認定している点
は争う。すなわち,上記件数は,一般オフィス用レーザプリンタの開
発に注力する日立製作所の出願分や,対象製品が採用していない分野
の特許を含んでいる。また,被控訴人らは,対象製品に採用されてい
る特許は全部把握しているはずであるのに,これらを一切開示してい
ない。よって,乙57は誤った集計であり,この集計を採用する原判
決は不衡平かつ不当というべきである。)。
c仮想実施料率について
発明協会発行の「実施料率(第5版)」(甲63)において,プリ
ンタについては5%が最頻値となっていること,本件特許2ないし4
は基本特許であり,キヤノン,IBM,ゼロックスなどの有力企業に
製品を納入できたのは,これらの特許の存在が大きいこと,当時,日
立工機らは●●●●●に対して●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●ことなどを
考慮すると,本件の仮想実施料率は5%とするのが相当である。
原判決は,被控訴人らが,キヤノン職務発明相当対価支払請求事件
の控訴審判決(知財高裁平成19年(ネ)第10021号・平成21
年2月26日判決。以下「キヤノン職務発明事件控訴審判決」とい
う。)において,レーザビームプリンタについて仮想実施料率が2.
4%と認定されていることを前提に,特許件数の比に応じて本件の仮
想実施料率を約0.31%と主張するのは基本的に合理的であるとす
る。しかし,前記判決で採用されている仮想実施料率は,ライセンス
料が低く抑えられる包括ライセンスに係るものであって,前提が異な
るというべきであるし,業務用と一般オフィス用とでは技術分野が異
なるから,一般オフィス用が大部分と思われる企業との間で特許件数
を比較しても無意味である。よって,被控訴人らの計算は採用できな
いというべきである。
なお,原判決は,控訴人が原審において,「感光体」,「現像剤(
トナー,キャリア)」及び「露光」に関しては外部から部品を購入し
たと主張した点につき,証拠がなく採用できないとしているが,かか
る事実は周知のことであり,現に証拠も存在する(甲64ないし70。
枝番号があるものは枝番号も含む。)。
d本件特許2ないし4の被控訴人製品における寄与度について
前記のとおり,本件特許2ないし4は基本特許であり,被控訴人製
品に実施された有意な特許はこれらの特許以外に存在しない(このこ
とは,被控訴人製品において,有意な特許に支給される実績補償金が
支給された例が,本件特許2ないし4以外に存在しないことからも明
らかである。)。
したがって,本件特許2ないし4の被控訴人製品における寄与度に
ついては,本件特許2の寄与度が100%,対象製品が本件特許2と
重なる本件特許3及び4の寄与度は50%とするのが相当である。
e発明者(控訴人)の貢献度について
次の開発経緯を考慮すれば,控訴人の貢献度が10%を下ることは
考えられない。
(a)控訴人は,基本特許である本件特許2ないし4を単独で発明した。
(b)控訴人は,これらの特許に基づく光学系を製品に採用できるまで,
ほぼ独力で実用化した。
(c)当時の日立工機のレーザプリンタは他社のLEDアレイプリンタ
に性能面で劣勢であり,日立工機もこれに追随しようと大規模な態
勢でLEDアレイプリンタを開発していたが障害を克服できず,結
局,性能の大幅な向上を目的として,控訴人が開発中の上記特許に
基づく光学系を大型顧客であるIBMに提案した。
(d)その後,控訴人は直ちに上記特許に基づくマルチビーム斜め走査
光学系を試作し,実証実験にも成功した。そして,この実証実験を
IBMに展示(デモ)することで受注につなげた。
faないしeを前提とした相当対価の額
以上に基づき本件特許2ないし4に係る相当対価の額を算出すると,
その総額は,次のとおり,3億4639万4216円となる(ただし,
小数点以下は全て四捨五入した。)。
(a)本件特許2
598億3615万4000円×1.8×0.45×0.05×
1×1×0.1=2億4233万6424円
(b)本件特許3
55億0275万円×1.8×0.45×0.05×0.5×1
×0.1=1114万3069円
(c)本件特許4
458億8381万4000円×1.8×0.45×0.05×
0.5×1×0.1=9291万4723円
(d)(a)ないし(c)の合計
3億4639万4216円
ウ本件特許5について
(ア)原判決は,米国特許である本件特許5(請求項1)は,日本における
対応特許と同様に,乙21発明との関係で進歩性を欠き無効とされるべ
き特許であるにとどまらず,第三者にとっても代替技術を利用すること
で当該特許を回避することが極めて容易であったと解されることから,
このような特許を承継した被控訴人らにおいては,何ら独占の利益(当
該特許の寄与度を考慮したもの)を取得できないか,取得し得たとして
もその程度は低く,寄与度はせいぜい0.1%であるとした。
しかし,日本における対応特許が拒絶されたのは,新技術の価値を説
明できなかったからであり,米国では登録が認められている以上,相違
点に係る構成に格別の技術的意義があると認められたと解することが合
理的である。
また,日立工機らの高速連続紙レーザプリンタは,グローバル企業で
あるIBMやゼロックスに販売され,世界の市場占有率50%以上を獲
得する成果を出したが,類似技術を採用した模倣製品はない。このこと
からも,他社が本件特許5の代替技術を保有していないとすることは合
理的である。
そして,本件特許1及び本件特許2ないし4のマルチビーム斜め走査
光学系の全てに本件特許5が採用されていること,他に有効な特許や代
替手段がないことからすれば,本件特許5の寄与度は100%とするの
が相当である。
(イ)共同発明者間における控訴人の貢献度についても,実質100%とす
るのが相当である。すなわち,本件特許2ないし4は控訴人の単独発明
であったのに,本件特許5だけ発明者が10人の連名(共同発明)とな
っているのは不自然である。これは,本件特許2ないし4は製品採用決
定前に特許出願したものであるのに対し,本件特許5は製品化決定後に
特許出願したものであることから,上長が新製品に関わる多くの開発者
を本件特許5の発明者として連名にし,控訴人も同意したという事情に
よる。特許出願報奨金,特許登録報奨金は既に連名者に均等配分されて
いるが,発明の相当対価は連名者間の単純な均等配分ではなく,真の発
明者である控訴人に支給されるべきである。
(ウ)以上に基づき,次の計算式に従って本件特許5に係る相当対価の額を
算出すると,その額は8347万9815円となる。
a計算式
相当対価の額=米国への製品売上高(工場出荷額×1.8)×超過
売上率0.45×仮想実施料率5%×関連発明間の
寄与率100%×共同発明者間における控訴人の寄
与割合100%×控訴人貢献度5%
bカット紙レーザプリンタ
相当対価の額=82億7960万円×1.8×0.45×0.05
×1×1×0.05
=1676万6190円
c連続紙レーザプリンタ
相当対価の額=329億4500万円×1.8×0.45×0.0
5×1×1×0.05
=6671万3625円
dbとcの合計
8347万9815円
エ既払分
日立工機らは,控訴人に対し,本件特許2ないし4の報奨金として合計
71万2160円,本件特許5の報奨金として合計1万6000円を支払
っている。
オイ及びウの相当対価の額の合計から,エの既払分の合計を差し引くと,
次のとおり,その額は4億2914万5871円となる。控訴人は,一部
請求としてこのうち1億円を請求する。
4億2987万4031円-71万2160円-1万6000円
=4億2914万5871円
3被控訴人らの反論
(1)本件特許発明3の実施について(争点(2)関係)
対象製品が同発明の請求項2,同5及び同6を実施しているかは不知。
もっとも,これらはいずれも請求項1の従属項であり,相当対価の算定に
ついては,請求項1で評価し尽くされている。したがって,原判決が請求項
1についてのみ判断しているとしても,そのことは結論に影響がない。
(2)本件特許発明5の実施について(争点(2)関係)
控訴人は,連続紙レーザプリンタでも本件特許5を実施していると主張す
るが,同事実についての立証はない。IBMは乙66や乙67に係る代替技
術(本件IBM特許)を有していた以上,本件特許5を実施しているとはい
えないし,甲61の1も記載内容や作成された時期からして同事実の証拠と
なるものではない。
(3)相当対価の額について(争点(3)関係)
ア本件特許2ないし4について
(ア)本件特許2ないし4の位置付けについて
控訴人の主張は争う。原判決の認定判断に誤りはない。
(イ)対象製品の売上高について
控訴人の主張は争う。Y値こそが被控訴人らにとっての実売価格であ
る。被控訴人らの顧客がエンドユーザーに販売した顧客販売価格につい
ては,被控訴人らに独占の利益が生じていない以上,控訴人の主張は失
当である。
(ウ)超過売上率について
原判決は控訴人が主張する0.45という数値を採用しているのであ
り,控訴人の主張は失当である。
(エ)仮想実施料率について
控訴人の主張は争う。本件特許発明2ないし4はいずれも代替技術を
有する改良発明にすぎないのであるから,これらの特許について仮想実
施料率を5%とする控訴人の主張が失当であることは明らかである。
(オ)本件特許2ないし4の被控訴人製品における寄与度について
控訴人の主張は争う。原判決は,日立製作所や被控訴人らが毎年保有
していた対象製品に実施可能な特許件数をそのまま用いるのではなく,
情報通信機械器具製造業における保有特許に対する平均的な自社実施率
(24.7%)を参照するなど合理的な補正を行っているのであり,原
判決の認定判断に誤りはない。
(カ)発明者(控訴人)の貢献度について
控訴人の主張は争う。原判決の認定判断に誤りはない。
イ本件特許5について
控訴人の主張は争う。原判決が認定するように,本件特許5は乙21発
明に基づき進歩性がないことが出願経過から明らかである。そうである以
上,独占の利益がないことも明らかであるから,代替技術の有無について
検討するまでもなく,控訴人の主張は失当である(なお,本件特許5の代
替技術としては,乙21発明等が存在する。)。
第4当裁判所の判断
当裁判所も,控訴人の請求は棄却すべきものと判断する。その理由は,下記
1のとおり付加,訂正し,下記2ないし4のとおり当審における当事者の主張
に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の第3の1ないし
3(39頁20行目から70頁26行目まで。ただし,62頁5行目から63
頁20行目までと66頁2行目から同12行目までを除く。)に記載のとおり
であるから,これを引用する。
1原判決の訂正
(1)50頁11行目に「本件特許発明2及び4」とあるのを,「本件特許発明
2及び4(ただし,請求項4及び同5を除く。)」と改める。
(2)52頁3行目「日本において」の前に「被控訴人らの調査によれば,」を
加える。
(3)55頁2行目「日立製作所」の前に「被控訴人らの調査によれば,」を加
える。
(4)同9行目「他方で,」の後に「同調査によれば,」を加える。
2本件特許発明3の実施について(争点(2)関係)
控訴人は,原判決が同特許発明の請求項1についてのみ実施を認定している
との前提の下に,請求項2,同5及び同6も実施している(ので原判決の認定
判断には誤りがある)旨主張する。これは,実施の範囲を不当に狭く認定した
ことにより,相当対価の額の算定に誤りが生じていることを指摘する趣旨であ
ると解される。
しかしながら,原判決は,本件特許発明3の実施の有無に関し,請求項1に
おける「矩形パターン」との文言が凸部のみを指すのか(凹部を除外するもの
か)否かを検討して,かかる文言は凹部を除外しないとの判断の下に被控訴人
製品では本件特許発明3が実施されているとの結論を導いているところ,かか
る争点は従属項である請求項2以下においても共通の争点であって,他に検討
を要する個別の争点がないことから,請求項1についてのみ検討及び判断して
いるにすぎず,他の請求項についての実施を殊更除外(否定)する趣旨でない
ことは明らかである。
また,相当対価の額の算定において,原判決が認定した本件特許3に係る被
控訴人製品の売上高は合計55億0275万円であり,その対象製品は4ビー
ム回折格子を用いたレーザプリンタ(LB16)であるところ,原判決添付の
別紙をみれば,いずれも請求項1のみならず,請求項2,同5及び同6の実施
も前提とされている(各該当欄に丸印が付されており,その実施の範囲は完全
に一致する。)ことが明らかであるから,原判決は,相当対価の額の算定に当
たり,請求項1以外の上記請求項についての実施も含めて上記売上高を認定し,
これを算定の基礎としているものと認められる。
したがって,本件特許発明3の実施を認定するに当たり,請求項1以外の上
記請求項の実施を殊更除外しているとは認められず,また,相当対価の額の算
定に当たっても,請求項1以外の上記請求項の実施を殊更除外しているものと
は認められない。
よって,本件特許3に係る相当対価の額の算定に当たっては,請求項1のみ
ならず,請求項2,同5及び同6の実施も実質的に評価されているというべき
であり,これに反する控訴人の主張は採用できない。
3本件特許発明5の実施について(争点(2)関係)
控訴人は,①カット紙レーザプリンタよりも印刷速度が高速である連続紙レ
ーザプリンタの方が本件特許発明5の実施を必要とするというべきであること,
②本件IBM特許は本件特許発明5に代替し得る技術ではないこと,③日立工
機とIBMは,平成4年以降,高速連続紙レーザプリンタの共同開発を行って
おり,平成5年8月には,日立工機がIBMに対し,従来の1ビーム走査から
マルチビーム斜め走査光学系を用いたレーザプリンタへの転換を提示し,平成
6年には,IBMからの要求で日立工機が本件特許5のマルチビーム斜め走査
制御方式を開示している(甲61の1)ことからすると,IBMがコントロー
ラ部分を製造していたとしても,その内容をなすマルチビーム斜め走査光学系
に係る制御の技術に関しては,日立工機がIBMに対し本件特許5を実質的に
ライセンスしていたとみるのが合理的であることから,(カット紙レーザプリ
ンタのみならず)連続紙レーザプリンタでも本件特許発明5を実施していると
みるのが相当である旨主張する。
しかしながら,かかる控訴人の主張は採用できない。
すなわち,少なくとも平成19年以前は,カット紙レーザプリンタは被控訴
人らの米国子会社(DPC)を通じて製品化し(その過程でコントローラも同
子会社が製造し),同子会社の自社製品として出荷されていたのに対し,連続
紙レーザプリンタはIBM製品として出荷され,コントローラもIBMが製造
しており,IBMはそのための技術も有していたというのであるから,両者の
間では事情が全く異なるのであり,被控訴人らが実質的には自社製品として製
造販売するカット紙レーザプリンタについては本件特許発明5を実施していた
としても,他社製品として供給される連続紙レーザプリンタについても当然に
同発明を実施していたということはできない。また,被控訴人リコーがIBM
の事業部を併合した同年以降も,IBMがそれまで自社の技術を用いてコント
ローラを製作していたのであれば,あえてそれを他の技術(構成)に置き換え
る必要はないというべきであるから,仮に本件特許発明5に置き換えられたと
主張するのであれば,それなりに具体的な根拠を示す必要がある。
したがって,連続紙レーザプリンタにおける本件特許発明5の実施を認定す
るためには,平成19年の前後を問わず,その実施を認めるに足りる具体的な
事実の主張立証が必要となるというべきところ,日立工機らがIBMに対して
本件特許発明5を実施許諾したとの事実や,IBM製品において本件特許発明
5が実施されている事実を認めるに足りる証拠がないことは,原判決が説示す
るとおりである。
この点,控訴人は上記①ないし③のとおり主張するが,単にカット紙レーザ
プリンタより連続紙レーザプリンタの方が本件特許発明5を実施する必要性が
あるとか,本件IBM特許は代替技術たり得ないなどと主張するだけでは不十
分というべきである(むしろ,日立工機らから製品の供給を受けながらもコン
トローラはあえてIBMが自作していたという事実は,本件IBM特許である
か否かにかかわらず,当時,IBMが相応の代替技術を有していたことを強く
推認させる。)。また,平成6年には,IBMからの要求で日立工機が本件特
許5のマルチビーム斜め走査制御方式を開示している(甲61の1)との点に
ついても,控訴人の実験ノート(甲61の1)に,「顧客要求内容」として,
「Dualbeamのコントロール方法を教えて欲しい」などとの記載があ
るというだけでは,当時,日立工機が本件特許発明5に係る制御技術をIBM
に開示し,これを同社にライセンスしたという事実を認めるには足りない。む
しろ,かかる顧客要求があったのは同年2月9日とされているところ,これは
控訴人が,本件特許5について社内で出願依頼したのとほぼ同時期であり(乙
70),実際に出願(国内出願)されたのはその4か月後の同年6月30日で
あること(甲6の1)を踏まえると,たとえ顧客であっても,出願前のそのよ
うな時期に,出願を予定している未公開の技術を他社に開示するとはにわかに
認め難いというべきである。そして,ほかに日立工機らがIBMに対して本件
特許発明5を実施許諾したとの事実を認めるに足りる的確な証拠はない。
よって,連続紙レーザプリンタでも本件特許発明5を実施しているとみるの
が相当であるとの控訴人の主張は,採用できないというべきである。
4相当対価の額について(争点(3)関係)
(1)まず,本件特許2ないし4について検討する。
ア本件特許2ないし4の位置付けに関し,控訴人は,本件特許1は半導体
レーザアレイに限定した特許であるのに対し,本件特許2ないし4は,レ
ーザ光を分岐する方式で,マルチビームを高速に光変調する光学系を発明
し,この発明した光学系においてもマルチビーム斜め走査が有効であるこ
とを発見したものであるから,本件特許発明2ないし4は,マルチビーム
高速光変調光学系の発明とマルチビーム斜め走査が有効であるという発見
とを結合させたものであり,レーザ光源からのレーザ光を分岐する方式に
よるマルチビーム斜め走査光学系の基本特許というべきものであると主張
する。
しかしながら,原判決が説示するとおり,そもそも,本件特許2ないし
4に対する関係で公知技術となる本件特許1は,マルチビーム斜め走査光
学系に関する技術を開示しており,本件特許2ないし4は,本件特許1等
で開示されたマルチビーム斜め走査光学系の技術を前提とした特許という
位置付けになるものであることは疑いようがない。このことは,控訴人自
身が,本件特許発明2ないし4に係る発明の経過において,レーザ光源か
らのレーザ光を分岐する方式の光学系においても,原因は異なるものの,
半導体レーザアレイの場合と同様に,結像した光スポット列の各光スポッ
ト間隔が光スポットの大きさの数十倍(典型的には30倍)程度に大きく
なることを発見し,この発見にマルチビーム斜め走査のアイデアを結合さ
せたこと,すなわち,上記各発明は本件特許発明1の技術を応用したもの
であることを認めていること(控訴理由書17,18頁)からも明らかで
ある。したがって,本件特許2ないし4が,新しい原理や発見に基づく最
初の特許という意味での基本特許に当たらないことは当然である。
また,原判決が認定するとおり,レーザプリンタにおいては,露光以外
にも様々な技術が不可欠であり,技術分野ごとに数多くの特許権が存在す
るほか,露光技術においても,LEDアレイ光学系とレーザ走査光学系が
あり,更に本件特許発明2ないし4が属する後者においても,複数ビーム
を発生させる方式については様々な方式(複数のレーザ光源を用いる方式
や一本のレーザビームを分離する方式)があり,同様に角度調整手段にお
いても様々な方式があって,各社が開発競争にしのぎを削ってきたことは
疑いようがない事実であるところ,本件特許発明2ないし4は,飽くまで
そのようにして開発された数ある方式の一つにすぎないというべきであり,
かかる認定判断を覆すに足りる的確な証拠はない。控訴人は,本件特許2
ないし4に基づくマルチビーム斜め走査光学系より,高速性,高解像度性
において優位にあるものはないとか,他の技術は全て性能面で劣っており,
代替手段ではないなどとも主張するが,本件特許2ないし4が実施されて
いない他社の競合製品が現に存在することは事実というべきであるし(そ
れは要するに代替技術が存するということを意味する。),他社製品にお
いて採用されている技術との間に作用効果の面で技術的に顕著な差異があ
ることを認めるに足りる証拠もない。日立工機の製品が一時期世界市場の
約半分を占めたことは事実であるが,それは,原判決が認定するとおり,
両面印刷機能の付加や高精細化,一層の高速化など様々な機能強化が図ら
れたことが要因である上に,高速化に関しても,光学系の技術だけでなく,
現像,定着等多くの技術が必要とされていることからすれば,必ずしも本
件特許2ないし4に係る技術のみがそれに貢献したということはできない。
したがって,本件特許2ないし4については,いずれも基本特許である
とはいえないのはもちろんのこと,それに準ずるような独占力の強い特許
であるということもできないというべきであり,これに反する控訴人の主
張は採用できない。
イ以上の前提の下に,本件特許2ないし4に係る具体的な相当対価の額に
ついて検討する。
(ア)売上高について
原判決が認定するとおり,本件特許2に係る被控訴人製品の売上高は
合計598億3615万4000円,本件特許3に係る被控訴人製品の
売上高は合計55億0275万円,本件特許4に係る被控訴人製品の売
上高は合計458億8381万4000円と認めるのが相当である。
これに対し,控訴人は,被控訴人らが開示した売上高はY値(工場出
荷価格)であり,Y値には営業経費及び営業利益が含まれていないから,
顧客販売価格がY値と異なるのは当然であるとして,被控訴人らが開示
した額の1.8倍をもって実際の売上高とするのが相当である旨主張す
るが,被控訴人らの開示に係る売上高を1.8倍すべき合理的根拠が見
当たらないことは原判決説示のとおりであり,かかる認定判断を覆すに
足りる的確な証拠はない。
したがって,控訴人の主張は採用できない。
(イ)超過売上率について
控訴人は原判決が認定した超過売上率(0.45)自体は争っておら
ず,当裁判所もかかる数値をもって本件の超過売上率と認めるのが相当
であると判断する(控訴人は,原判決が上記数値を採用した理由付けが
誤っていることについてるる主張するが,いずれにしても上記数値を争
わないのであるから,その主張は失当である。)。
(ウ)仮想実施料率について
仮想実施料率について,被控訴人らは,別件であるキヤノン職務発明
事件控訴審判決において,レーザビームプリンタについての仮想実施料
率が2.4%と認定されていること(同事実については,当事者間に争
いはない)を前提として,日立製作所,日立工機,日立プリンティング
ソリューションズ及びリコープリンティングシステムズ(以下,本項に
おいて「日立等」という。)においてプリンタ分野で1994年(平成
6年)から2006年(平成18年)において利用可能であった特許件
数の年平均値と,キヤノン株式会社において同じ時期に利用可能であっ
たプリンタ分野での特許件数の年平均値の比率をかけた約0.31%が
仮想実施料率として相当であると主張する。
この主張のうち,上記判決が,レーザビームプリンタの仮想実施料率
を2.4%と認定した点は,キヤノン株式会社において実際に行われた
実施料率に基づいて算出されたものであるから,取引の実態に即したも
のということができ,本件においてこれを参酌することに問題はないも
のというべきである(控訴人は,発明協会発行の「実施料率(第5版)」
〔甲63〕を根拠として,プリンタの実施料率の最頻値が5%であるか
ら,仮想実施料率は5%と認定すべきであると主張するが,控訴人が示
す数値は,プリンタに特化した実施料率ではなく,「事務用・サービス
用・民生用機械器具製造技術」及び「その他の機械・同部分品製造技術」
分野における実施料率なのであるから,直ちに参考になるものではない
というべきである。また,控訴人は,①本件特許2ないし4は基本特許
であるから価値が高いとか,②当時,日立工機らは,●●●●●に対し
て●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
●●●●●●●●●●●●などとも主張するが,①について,本件特許
2ないし4を基本特許とはいえないことは既に説示したとおりであるし,
②の点も,本件の仮想実施料を算定する上で,直ちに参考になる事情で
あるとはいえない。)。
これに対し,被控訴人らが,2.4%という実施料率に,日立等が利
用可能であった特許件数と,キヤノン株式会社において利用可能であっ
た特許件数の比を乗じている点は,相当とはいい難い。すなわち,被控
訴人らの計算は,包括実施許諾契約における実施料率は,包括実施許諾
の対象となる特許件数に単純に比例して増減するということを前提にし
たものであると考えられるが,少数の特許権の実施が問題になっている
場合はともかく,本件のように千件を超える特許権の実施が問題になっ
ている場合に,実施許諾の対象となっている特許権の数に単純に比例し
て実施料率が増減していることをうかがわせる証拠はないし,そのよう
な実態があるとも考え難い。むしろ,多数の特許権を対象とする包括実
施契約においては,そこに含まれる特許権の数のみを問題とするのでは
なく,それらを一体のものとして評価した上で,他の様々な要因をも総
合考慮して実施料率を算定するのが通常であり,その数値は,必ずしも
特許権の数に比例しないと考えるのが常識に合致するというべきである
(被控訴人らの論法に従ったとすると,仮に日立等とキヤノン株式会社
の利用可能特許件数の比率が逆であった場合,仮想実施料率は,2.4
%の約8倍である20%とならなければならないことになるが,このよ
うな結論を被控訴人らが認めるとは到底考えられない。)。
そして,本件においては,上記特許件数の差以外にキヤノン職務発明
事件控訴審判決で認められた実施料率を大きく下回ることについて合理
的理由があるというべき事情は見出し難いところ(少なくとも,この点
について,具体的主張立証があるとは認められない。),その他諸般の
事情を考慮すれば,本件における仮想実施料率は2.4%とするのが相
当である。
(エ)被控訴人製品における寄与度について
これについては,当裁判所も,本件特許2ないし4はマルチビーム斜
め走査光学系における基本特許ではなく,他の特許と比較して特に必要
性が高いとはいえないとの前提の下に,プリンタ分野において被控訴人
製品に使用可能な特許の件数及び被控訴人らを含む情報通信機械器具製
造業における保有特許に対する平均的な自社実施率を考慮した上で寄与
度を算定することは合理的であり,その寄与度は各0.5%と認めるの
が相当であると判断する。
これに対し,控訴人は,本件特許2ないし4が基本特許であり,被控
訴人製品に実施された有意な特許がほかに存在しないとの前提の下に,
本件特許2の寄与度は100%,本件特許3及び4の寄与度は50%と
するのが相当であるなどと主張するが,既に説示したとおり,前提が異
なる以上,採用できないというべきである。
(オ)本件特許発明2ないし4は,いずれも控訴人の単独発明であるから,
共同発明者間の寄与率は問題にならない。
(カ)発明者(控訴人)の貢献度について
発明者(控訴人)の貢献度については,原判決が説示するとおり,0.
05(5%)と認めるのが相当である。
これに対し,控訴人は,控訴人の貢献度が10%を下ることは考えら
れないとして種々の事情を主張するが,要するに,本件特許2ないし4
が基本特許であるとの前提の下に,控訴人の単独発明であることや,控
訴人がほぼ独力で実用化したことなどを主張するものであって,やはり
前提が異なる以上,採用できないというべきである。
(キ)以上に基づいて計算すると,本件特許2ないし4についての相当対価
の額は,以下のとおり,30万0300円となる。
a本件特許2に係る相当対価16万1557円
(計算式)
598億3615万4000円×0.45×0.024×0.00
5×1×0.05=16万1557円(小数点以下切り捨て。以下同
じ。)
b本件特許3に係る相当対価1万4857円
55億0275万円×0.45×0.024×0.005×1×0.
05=1万4857円
c本件特許4に係る相当対価12万3886円
458億8381万4000円×0.45×0.024×0.00
5×1×0.05=12万3886円
daないしcの合計30万0300円
ウ以上のとおり,本件特許2ないし4についての相当対価の額は30万0
300円と認めるのが相当であるところ,控訴人は,既に日立工機らから,
本件特許2ないし4の報奨金としてこれを上回る額(合計71万2160
円。外国特許分5万6000円を差し引くと65万6160円)の支払を
受けている。
したがって,控訴人は,本訴において,改めて本件特許2ないし4の相
当対価を請求することはできないというべきであり,この点において,原
判決の結論に誤りはない。
(2)次に,本件特許5について検討する。
原判決が認定するとおり,本件特許5については,日本においても対応特
許が出願されたものの,先行技術(乙21発明)の存在によって拒絶査定さ
れたものである。
この点,控訴人は,日本における対応特許が拒絶されたのは,新技術の価
値を説明できなかったからであり,米国では登録が認められている以上,相
違点に係る構成に格別の技術的意義があると認められたと解することが合理
的であると主張するが,日本において,拒絶査定に対する不服審判請求も不
成立となって確定している(甲6の2,4)ことからすれば,同主張は直ち
に採用することができない。
そして,原判決が説示するとおり,無効事由が存する特許であっても,直
ちに独占の利益が否定されるものではないが,本件のように,あらかじめ対
応特許が日本で拒絶査定されたにもかかわらず,外国では登録が認められた
というような事案では,第三者にとって代替技術を利用することにより当該
特許を回避することは容易であったと推認できるから,このような特許を承
継しても,会社には何ら独占の利益は生じないというべきである。
よって,本件特許5については,そもそも相当対価は発生していないとい
うべきであるし,仮に何らかの独占の利益が生じて,これに対する相当対価
が観念できるとしても,原判決の計算(ただし,仮想実施料率は前記のとお
り修正する。)が示すとおり,その額が本件特許5に関して控訴人が得た報
奨金の額(合計1万6000円)を超えることはないというべきである。
したがって,いずれにしても,控訴人は,本訴において,本件特許5の相
当対価を請求することはできないというべきであり,この点においても,原
判決の結論に誤りはない。
第5結論
以上によれば,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は結論において相当
であり,控訴人の本件控訴は理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官鶴岡稔彦
裁判官大西勝滋
裁判官寺田利彦

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