弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人千葉律之の上告趣意第一点について。
 論旨は、原判決は犯罪事実の特定を欠き判例に違反すると主張する。しかし論旨
が非難の対象としているのは原審相被告人A等に対する原判決の判示に他ならない
から、被告人Bについての上告理由としては不適法である。被告人Bに対する原判
示は犯罪事実の特定において欠けるところのないこと判文上明白である。(なお原
判決中所論指摘の部分は「原判示(甲)第一(一)乃至(二)の各贈賄をした外」
と明記されている。所論はこれが引用を誤り、誤つた引用を立論の根拠としている。)
 同第二点について。
 論旨は事実誤認の主張に帰し適法な上告理由とならない。
 同第三点について。
 論旨は単なる訴訟法違反の主張であつて適法な上告理由とならない。のみならず
所論のように訴因が不特定であるともいえない。(所論起訴状中の、「六月頃から
八月頃迄の間三回に現金九万円)とあるのは他の分とは別口のものであること、起
訴状の記載から当然わかることである。そしてその三回に亘る九万円は包括一罪と
しての起訴と認められる。なお記録を調べても第一審の公判手続においてこの点に
ついては何等被告人側から異議を迹べた形迩が認められない。)
 弁護人公文貞行の上告趣意第一点について。
 (論旨中A関係の部分については同人が上告取下をしたから判断を示さない。)
 論旨は単なる訴訟法違反の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。
 のみならず原判示の、被告人の犯罪事実は、起訴状記載の、昭和二六年六月頃以
降の六回に亘る現金合計三五万円収賄の事実にあたるものであること明白であり、
原判決がこれを包括一罪と認定したものであることもその法令適用に関する判示と
対照すれば明らかである。原判示は所論のように犯罪事実の特定に欠けるところは
ない。
 論旨はまた、本件上告に関する部分について原審が「一回一片の事実調べも行つ
ていない」というけれども、記録によれば、原審において検察官は、本件捜査にあ
たり原判決引用の被告人等の供述調書を作成した検事三名を贈収賄関係の事実につ
いて取調べの請求をなし、原審で右三名の検事が証人として取調べを受け、捜査の
経緯、被告人等の取調べ状況につき証言をしている。従つて所論は事実に副わない
主張である。
 同第二点について。
 論旨は事実誤認の主張に帰し刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。論旨の中に
原判決の引用している被告人等の検察官に対する供述調書の任意性の欠缺をいう部
分があるけれども、原審における前記証人尋問の結果に照してみれば、その任意性
を肯定することができる。
 なお記録を調べてみても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。
 よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
  昭和三二年四月九日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    河   村   又   介
            裁判官    島           保
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    高   橋       潔

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