主 文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 主位的請求
被告が平成14年8月6日にした瀬戸塩草土地区画整理組合の設立認可が無効であ
ることを確認する。
2 予備的請求
被告が平成14年8月6日にした瀬戸塩草土地区画整理組合の設立認可を取り消
す。
第2 事案の概要
本件は,原告所有地を包含する地域を施行地区として土地区画整理事業を計画し
ている土地区画整理組合の設立を被告が認可したことから,原告が,当該認可につ
いて,主位的に無効確認を,予備的に取消しを求めた抗告訴訟である。
1 前提となる事実
(1)当事者
ア 原告は別紙物件目録記載の各土地(以下「本件各土地」という。)を所有して
いる。
イ 被告は,土地区画整理法(以下「法」という。)14条1項に基づき土地区画
整理組合の設立認可権限を有している。
(2)瀬戸塩草土地区画整理事業の沿革と土地区画整理組合の設立認可
ア 愛知県は,平成11年1月20日,都市計画法18条1項,20条1項に基づ
き,愛知県告示第27号をもって,瀬戸都市計画瀬戸塩草土地区画整理事業(以下
「本件事業」といい,その計画を「本件事業計画」という。)を決定,告示した
(乙3の1,3の2の1及び2)。
イ 被告は,平成14年8月6日,法14条1項に基づき,本件事業を施行する土
地区画整理組合として瀬戸塩草土地区画整理組合(以下「本件組合」という。)の
設立を認可し(以下「本件認可」という。),これにより,本件事業については,
本件組合が都市計画事業として施行することとなった(法3条の5第1項,14条
4項,都市計画法59条4項)。
これを受けて,本件組合は,同年9月1日,設立総会を開催し,役員の選任,諸
規程の制定などを行った(甲4)。
(3)本件事業の概要(乙15)
ア 本件事業は,愛知県瀬戸市の中心市街地より南東約2.3キロメートルに位置
する同市塩草町のうち,都市計画道路瀬戸環状東部線(以下「瀬戸環状東部線」と
いう。)の整備等,広域的な都市基盤の整備が予定される面積約43.3ヘクター
ルの地区を施行地区(以下「本件施行地区」という。)とするもので,同地区が広
域的な都市基盤整備の要請である東海環状自動車道,瀬戸環状東部線等の幹線道路
網整備の影響を受け,平成10年度に市街化区域に編入されたことにより開発ポテ
ンシャルが今後上昇する地区と位置付けられることから,予想される無秩序な市街
化形成を防止し,かつ既設の工場立地及び幹線道路沿道の土地利用を考慮した計画
的な街づくりを推進すべく,安全でゆとりのある都市基盤の整備を行うことを目的
としている。
イ 本件施行地区は,本件事業の施行前においては,①公共用地である国有地(道
路)52.16平方メートル(0.01パーセント),②公共用地である地方公共
団体所有地(道路,水路)1万9629.72平方メートル(4.54パーセン
ト),③宅地(定義につき法2条6項参照。以下同じ。なお,本来の意味の宅地を
いうときは,別紙物件目録を除いて「住宅地」という。)である市有地(集会所用
地)466.00平方メートル(0.11パーセント),④宅地である民有地40
万9841.32平方メートル(94.65パーセント),⑤測量増3010.8
0平方メートル(0.70パーセント)から成っている。
他方,施行後においては,①公共用地である国有地(道路)3万4786.50
平方メートル(8.03パーセント),②公共用地である地方公共団体所有地(道
路,公園,緑地,水路)12万6861.25平方メートル(29.30パーセン
ト),③宅地21万8152.25平方メートル(50.38パーセント),④保
留地5万3200.00平方メートル(12.29パーセント)から成ることが予
定されており,国有道路の大半である3万4550平方メートル(7.98パーセ
ント)は,瀬戸環状東部線の敷地予定地である。
その結果,本件事業計画においては,新たな公共用地を創出するための公共減歩
率が全体で34.33パーセント,これに保留地を創出するための減歩率を加えた
公共保留地合算減歩率は,全体で47.20パーセントとされている。
ウ 本件事業の施行期間は,本件組合の設立認可の公告日である平成14年8月6
日から平成21年3月31日までの7か年度とされ,保留地の売却は,平成18年
度から平成20年度の3か年度で行う予定とされている。
エ 本件事業計画の資金計画(以下「本件資金計画」という。)における収入は,
①保留地処分金42億5600万円(1平方メートル当たり8万円に保留地予定地
積5万3200平方メートルを乗じたもの),②公共施設(瀬戸環状東部線)管理
者負担金17億3260万円,③市助成金23億6790万円,④寄付金その他5
0万円の合計83億5700万円とされている。
他方,支出は,①工事費74億6170万円,②損失補償費7800万円,③借
入金利子3億7730万円,④事務費4億4000万円の合計83億5700万円
とされている。
(4)瀬戸環状東部線の策定,変更(甲8,9,乙1の1,1の2の1及び2,2の
1,2の2の1及び2,弁論の全趣旨)
平成10年8月7日愛知県告示第594号により,瀬戸市広之田町を起点とし,
同市鐘場町を経由して,同市南山口町を終点とする延長約9170メートル,幅員
25メートルの地表式4車線道路として瀬戸環状東部線を設ける内容に,瀬戸都市
計画道路6路線の都市計画が変更され,うち塩草町内の約390メートル部分は幅
員30メートルの掘割式道路,残りの約8780メートル部分も幅員25メートル
ないし30メートルで,東海環状自動車道と立体交差し,幹線街路とも6か所で平
面交差するものとされた。
その後,平成12年11月28日愛知県告示第930号により,瀬戸都市計画道
路40路線の都市計画の変更と1路線の追加がされ,その結果,瀬戸環状東部線の
上記約8780メートル部分につき,愛知環状鉄道と,自動車専用道路に1か所と
で立体交差し,幹線街路との交差6か所のうち,塩塚線とは立体交差することとさ
れた。
なお,瀬戸環状東部線のうち約805メートルが本件施行地区に含まれている。
(5) 原告と本件組合との関係(甲6の1ないし3,乙22の1及び2)
本件各土地は,本件施行地区に含まれることから,原告は本件組合の組合員とさ
れている(法25条1項)。
2 本件における争点とこれに関する当事者の主張
(1)本件事業内容の適法性の有無
(原告の主張)
ア 幹線道路の新設目的に係る違法性
一般に,土地区画整理事業は「健全な市街地の造成を図」ることを目的とし(法
1条),本件組合の定款1条にもその旨定められているところ,本件事業計画に
は,施行対象面積の7.98パーセントに及ぶ瀬戸環状東部線の新設に係る部分が
含まれており,生活道路ではない幹線道路である同線の新設は,騒音・排気ガスの
公害,地域の分断等の居住環境破壊が必至であって,「健全な市街地の造成」のた
めにはむしろマイナスである。
こうした幹線道路の新設は,本来,土地区画整理事業とは別個の道路新設事業と
して行われるべきものであり,このような幹線道路の設置の目的を,良好な市街地
造成の目的に潜り込ませることにより,公共施設管理者は,約24億1850万円
(1平方メートル当たり7万円に用地面積3万4550平方メートルを乗じたも
の)の買収金額を負担しなければならないのに,本件事業計画においては,17億
3260万円の同負担金で瀬戸環状東部線を新設する目的を達成することができ,
その差額約7億円について,組合員とされた土地所有者らの負担が重くなる。
被告は,事業計画が公共施設に関する都市計画に適合して定められなければなら
ないこと,土地区画整理事業は,健全な市街地の造成だけでなく,公共施設の整備
改善,宅地の利用増進及び公共の福祉の増進も目的としているところ,宅地の利用
の増進のためには,道路・公園・広場等の公共施設の整備改善が不可欠であり,瀬
戸環状東部線の新設によって公共施設が整備改善され,土地の利用価値が増進され
る旨主張するが,土地区画整理事業の直接的な目的は健全な市街地の造成であり,
これによって実現されるべき最終的な目的が「公共の福祉」であって,両者を並列
的に理解すべきものではない。また,事業計画が都市計画に適合しなければならな
いというのは,都市計画の内容と矛盾する事業計画は認められないということを意
味するにとどまり,
瀬戸環状東部線の新設が都市計画によって定められていても,実際の幹線道路が公
共施設に当たるかは別問題である。都市計画によって瀬戸環状東部線の設置が決定
されているからといって,その事業を土地区画整理事業によって行うことが義務付
けられているというものではない。しかも,本件事業によって,原告所有地の利用
価値の増進がどの程度見込まれるか,そしてそれには根拠があるか等が一切明らか
にされていない。
以上のとおり,幹線道路の設置を重要な一部とする本件事業は,全体として法の
目的に反する違法なものであり,「事業計画の内容が法令に違反していること」
(法21条1項2号)に該当する。
イ 別紙図面1の斜線部分(以下「南東地域」という。)を施行地区に含める必要
性の欠如
本件施行地区のうち南東地域は,他の塩草地区と異なり既に住宅地化が進み,原
野状態の未利用地は存在しないし,排水路や上水道も整備済みである。原野や畑と
なっている土地の大部分も,瀬戸環状東部線の予定地であり,その余の土地はほと
んどが住宅地である。私有地が道路とされている部分も若干存在するが,別途寄付
採納する等の手続を行えばあえて土地区画整理事業を行う必要はなく,南東地域の
うち特に瀬戸環状東部線以南の地域においては,現況道路をそのまま道路とするこ
とが予定されていることからも,土地区画整理による市街化の必要性が乏しいこと
が明らかである。
土地区画整理の目的にいう「健全な市街地の造成」とは,施行前には見られなか
った健全な市街地が実現しなくてはならないことを意味し,既に健全な市街地であ
るところに土地区画整理事業を行うことはできないところ,南東地域について今後
さらに整備の必要性があるとしても,個別の施策において実施されるべきものであ
り,塩草地区の他の地域と同様に土地区画整理事業の手法を採るべき理由はない
し,市街地化が相当進展した南東地域の土地所有者に対して,他の区域の土地所有
者と同等の減歩等の負担を求める不公平性は明らかである。
そして,本件施行地区の外れに位置する南東地域を除外して土地区画整理事業を
行うことは十分に可能であるにもかかわらず,同地域を本件施行地区に含めること
は,法21条1項2号の事由に該当するから,本件認可は,全体として違法であ
る。
ウ 瀬戸環状東部線敷地予定地に係る正当な補償の不存在
本件事業計画によれば,公共保留地合算減歩率は47.20パーセントとされて
いるから,本件各土地の地積合計1万7329.06平方メートルのうち817
9.32平方メートルが減歩される計算になるところ,この面積は,ほぼ別紙図面
2の太線内にある原告所有地にして瀬戸環状東部線の敷地予定地(以下「本件敷地
予定地」という。)の面積に相当する。この用地の価格は1平方メートル当たり1
0万円を下ることがないところ,道路用地として買収されるならば,その補償費約
8億1793万円が原告に支払われるのに対し,土地区画整理事業に伴う減歩分と
して上記の用地を拠出させられることになれば,原告に対する補償は全くなく,実
に8億円を超える損失を被る結果となる。
そして,本件各土地に対する減歩率が被告の主張するように適正に決定される保
障は全くない。確かに個別具体的な問題は,土地区画整理事業の中で利害調整が行
われるとしても,本件のように,本件組合の設立認可時から原告の被るであろう損
害が明白な事案においては,これを看過した本件認可は違法の瑕疵を帯びる。
仮に本件敷地予定地を本件事業の対象とすることが「公共のため」であったとし
ても,これを公共のために用いるに必要な正当な補償が受けられなければ,憲法に
保障された財産権を侵害することになるから,本件認可は,憲法29条1項,98
条1項に違反するものとして効力を有しないし,本件事業計画が法令に反すること
(法21条1項2号)にも該当するので,取消しを免れない。
(被告の主張)
ア 本件事業目的の適法性
原告の主張アのうち,本件事業計画には,本件施行地区面積の7.98パーセン
トに当たる瀬戸環状東部線の新設に係る部分が含まれていること及び本件資金計画
における収入のうち,瀬戸環状東部線に係る公共施設管理者負担金として17億3
260万円を計上していることはいずれも認めるが,その余は争う。
瀬戸環状東部線は,本件事業によって新設されるのではなく,同事業における公
共減歩によりこれに供用される土地を創出し,その土地が法105条3項により道
路管理者に帰属するだけであって,その新設工事は道路管理者である愛知県が行う
ものである。本件施行地区においては,平成10年8月7日愛知県告示第594号
により,公共施設である瀬戸環状東部線を新設する内容の都市計画が決定されてい
る(平成12年11月28日愛知県告示第930号により変更)ところ,法16条
1項の準用する法6条10項は,「事業計画は,公共施設……に関する都市計画が
定められている場合においては,その都市計画に適合して定めなければならな
い。」と規定しているから,本件事業計画においては,上位計画である瀬戸東部環
状線に関する都市計画に
適合するよう,同幹線街路に関する事項が定められたものである。
また,土地区画整理事業は,健全な市街地の造成だけでなく,公共施設の整備改
善,宅地の利用増進及び公共の福祉の増進をも目的とするところ,この宅地の利用
増進とは,個々の土地のそれではなく,施行地区内の土地を全体的に評価した場合
の利用価値の増進をいう。そのためには,道路・公園・広場等の公共施設の整備改
善が不可欠であって,「公共施設」に含まれる幹線街路である瀬戸環状東部線の新
設は,まさにこの目的に資するものであるし,公共施設管理者の負担金を定めた法
120条1項の規定からも,幹線街路の用に供する土地の創出を主たる目的とする
土地区画整理事業を施行することができることは明白である。
この場合,公共施設管理者に負担を求めることができる金額は,当該公共施設の
用に供する土地の取得に要すべき費用の額の範囲内とされているところ,瀬戸環状
東部線の用地の買収単価は,平均して1平方メートル当たり5万円を超えるもので
はないから,本件資金計画における公共施設管理者負担金17億3260万円は,
瀬戸環状東部線用地の取得に係る費用(用地費,補償費及び事務費)の全額に相当
し,原告が主張するように,公共施設管理者が約7億円の負担を免れることになる
わけではない。そもそも,幹線街路の新設を買収方式によるか換地方式によるか
は,土地区画整理事業の施行者及び公共施設管理者の裁量に委ねられているとこ
ろ,買収方式によれば,幹線街路の整備によって地域の人々が受ける利益の程度を
公平にすることは困難で
あるのに対して,換地方式の土地区画整理事業によれば,幹線街路の整備の受益を
公平に配分することができるし,その中でも,公共減歩により生み出した幹線街路
用地を公共施設管理者に帰属させ,同管理者が整備事業を施行する方式は,地区内
の権利者の負担を軽減させるもので,より合理的といえる。
イ 南東地域の市街化の必要性
原告の主張イは否認ないし争う。
現況図及び航空写真によれば,本件施行地区のうち南東地域とそれ以外の区域と
では状況にさほど差異がない。すなわち,南東地域は,既に住宅地化しているとは
いえず,その半分以上が畑,山林,原野等の住宅地以外の土地であるし,逆に南東
地域以外の本件施行地区でも住宅地化されているところが存在する。また,南東地
域においても,未だ道路・排水路の整備は不十分であり,本件事業計画は,現況道
路以外の道路の新設や現況道路の改良などの道路整備及び排水路整備を目的とした
ものである。そして,公共施設の整備について,個別の施策によるか又は土地区画
整理事業の手法によるかは,行政の裁量に委ねられるべきところ,後者の方が,整
備の大幅な促進と受益及び負担の公平の点において,行政にとっても住民にとって
も非常に有利である
。減歩等の負担の不公平性に関する原告の主張は,平均減歩率と個々の土地の減歩
率とを混同したもので,後者においては,事業の施行前と施行後の土地を評価して
換地設計をするため,もともと道路に接している土地等の公共施設が整備され既に
市街化が相当進展している土地の減歩率は低く,そうでない土地の減歩率は高くな
って,減歩率に差が生じるから,全体の公平は保たれる。
前記のとおり,本件施行地区については,平成11年1月20日愛知県告示第2
7号により,南東地域も含めて土地区画整理事業を施行するものとして,これに関
する都市計画が決定されているから,上位計画である都市計画に従い,南東地域も
含めて土地区画整理事業を施行することが適当である。
ウ 原告に対する不利益の不存在
原告の主張ウのうち,本件事業計画において公共保留地合算減歩率が47.20
パーセントとされている事実は認めるが,瀬戸環状東部線の敷地が別紙図面2のと
おりであることは知らず,その余は否認ないし争う。
上記の合算減歩率は平均減歩率であり,現段階では,原告所有の個々の土地に対
する個別減歩率は未定である。個々の土地の減歩率は,本件事業計画を決定した後
に,換地規程等を定め,その後換地設計を行って,総会又は総代会の議決を得る
等,公平を期した上で仮換地の指定が行われ,これにより個々の仮換地の位置,形
状や減歩率が明らかになり,最終的には,工事概成後,換地計画を作成する中で決
定される。しかるところ,地積が減縮しても,土地区画整理事業によって公共施設
が整備改善され,土地の利用価値の増加が見込まれれば,直ちにその交換価値に損
失を与えることにはならないし,法89条1項により,換地計画を定めるに当たっ
ては,換地と従前地の位置,地積,土質,水利,利用状況,環境等が照応するよう
に定められねばならな
いとされているから,原告も,同人所有の従前地に照応した換地がされることにな
り,損失を被るとはいえない。また,換地処分の結果,従前地より財産的価値の小
さい換地を取得するという不均衡が生じたときは,清算金(法94条)が交付され
ることによって,これらの不利益は補償される仕組みになっているので,この点か
らも,原告が損失を被ることはあり得ない。
仮に原告の主張するような不公平な事態となった場合には,その時点で具体的な
処分について争えば足りるのであり,原告の主張する事項の大部分は,個別具体的
な処分の可能性に係るもので,現時点においてはいずれも成熟性を欠くものであ
る。
なお,土地区画整理事業の施行地区内の宅地は多かれ少なかれ減歩されるのが通
例であるが,このような土地の減歩は健全な市街地造成のために土地所有者等が受
忍すべき財産権に対する社会的制約であり,地積が減縮しても直ちにその交換価値
に損失を与えることにはならず,減歩それ自体によって財産権の侵害があるという
ことはできないから,本件敷地予定地を本件事業の対象とすることは,憲法29条
1項,98条1項に違反するものではない。
(2)本件組合の経済的基盤の有無
(原告の主張)
ア 不認可事由の判断のあり方
そもそも本件組合は行政官庁ではなく,認可申請も行政行為ではないから,被告
としては,申請の逸脱濫用のみをチェックすれば足りるというものではなく,例外
的不認可事由を厳密に判断しなければならず,被告がこの点について広い裁量権を
有するものとは考えられない。このことは,昭和63年に法21条1項4号が,
「……必要な経済的基礎がないこと」から「……必要な経済的基礎及びこれを的確
に施行するために必要なその他の能力が十分でないこと」と改められ,不認可事由
が広くなっていることや,法施行規則10条1号が「資金計画のうち収入予算にお
いては,収入の確実であると認められる金額を収入金として計上しなければならな
い。」と定めていることからも裏付けられる。しかるに,被告は,本件組合の経済
的基礎について,正確
なことは分からないまま,現在の一般的な可能性をもとに,明らかに不当といえる
ような計画ではないとして,上記要件に該当するか否かの判断を放棄して本件認可
に及んでいるが,事業計画が「予定どおり進行する可能性がある」という程度では
認可することはできないのが道理であるし,保留地購入者等は本件組合が考えるべ
きというのは無責任であり,企業を誘致するという発想自体,法の理念に反する。
認可の時点では一般的な可能性で判断し,認可後にうまくいくかどうかは土地区画
整理組合の責任というのでは,法が被告に認可権限を与えた意味が全くないのであ
って,被告が,このような事実を調査することなく行った本件認可は,違法であ
る。
イ 保留地処分価格の下落
本件資金計画では,保留地処分金が42億5600万円と見込まれ,収入予定金
額の50.9パーセントに及んでいるが,保留地の処分によって事業費を賄う手法
は,土地の需要があり,地価が右肩上がりで上昇することが見込まれるため,当座
事業費を金融機関からの借入れによって賄い,事業期間中の借入利息も地価の上昇
によって十分に補てんできるという,歴史的に特殊な事情の下で,初めて成立し得
るものである。
しかるに,昨今の情勢では,土地の需要は低迷している上,特に本件施行地区一
帯では,瀬戸市の品野西地区,近接する名古屋市守山区志段味地区,尾張旭市の向
地区,印場特定地区,晴丘東地区,長久手町などにおいて土地区画整理事業が行わ
れていて,土地の供給過多の状態が生じているから,このような手法は通用せず,
現に全国各地の土地区画整理事業において,保留地処分が予定どおり進行しなかっ
たために組合員に追加負担金の拠出を求めてトラブルが生じた例もある。本件事業
計画においては,保留地を1平方メートル当たり8万円(1坪当たり26万400
0円)で処分することが予定されているが,このような価格で処分できる現実的根
拠は皆無であり,処分価格が予定を下回った場合のツケは土地所有者に回される。
例えば,処分予定価
格が1平方メートル当たり1万円下回っただけで,不足金は5億3200万円に達
し,全施工面積の3.65パーセントを占める原告の追加拠出金は1940万円と
なる。被告の援用する鑑定評価書は,瀬戸市八幡台,原山台,池田町における取引
事例を基にしているが,これらは安定した取引実績があり,新たに土地区画整理事
業が行われる地区の比準地として不適切であるし,現に,品野西地区における保留
地の処分価格は,平均して1平方メートル当たり6万4233円にすぎない。採用
した下落率(年1.9パーセント)についても,平成14年度に住宅地が全国で
5.2パーセント下落しており,瀬戸市の公示価格に至っては,10.2パーセン
トの下落を示していることなどに照らせば,甘すぎる。
ウ まとめ
以上のとおり,裏付けのない保留地処分による収入に依存する本件事業は,「土
地区画整理事業を遂行するために必要な経済的基礎が十分でないこと」(法21条
1項4号)に該当するので,本件認可は,速やかに取り消されるべきである。
(被告の主張)
ア 不認可事由の判断のあり方
原告の主張アは争う。
そもそも,法14条1項の土地区画整理組合の設立認可は,いわゆる講学上の特
許に属し,法21条1項が「次の各号……の一に該当する事実があると認めるとき
以外は,その認可をしなければならない。」と規定して,不認可事由が存しない限
り,認可が義務付けられていることに照らすと,処分権者である知事が設立認可を
しないことの効果裁量は制限され,設立認可をする要件の認定はその自由裁量に委
ねられているというべきところ,同項4号所定の経済的基礎の要件の判断は,これ
が将来生じる事象の予測であること,専門技術的な観点からなされるべきことを考
慮すると,設立認可が裁量権を逸脱し又は濫用するものとして違法となるのは,知
事が当該事業の施行のために必要な経済的基礎が十分であると判断したことが不合
理である場合に限ら
れる。しかるところ,被告は,本件資金計画だけでなく,不動産鑑定評価書,過去
5年の地価公示価格などの資料を検討し,保留地が1平方メートル当たり8万円で
売却可能としたものであるから,この判断が不合理であるとはいえない。
この点につき,原告は,付近の土地区画整理事業や全国の同事業において,保留
地が計画どおり処分できないことからトラブルになっている旨主張するが,設立認
可権者である被告は,付近あるいは全国的に土地の需要がどの程度であって,供給
過多の状態であるか否かについて,精細かつ正確な調査をしなければならないもの
ではなく,現在の一般的な可能性をもとに,明らかに不当といえるような計画であ
るか否かを判断すれば足りるというべきである。
なお,保留地処分が予定どおりに進行していない土地区画整理事業があるとして
も,それはバブル景気中又はこれが弾けた直後に設立された土地区画整理組合がそ
の大部分であると考えられ,最近に設立された土地区画整理組合においては,近年
の地価の状況を踏まえた保留地処分単価が設定されていて,その処分は予定どおり
に進行する可能性があると考えられ,本件事業計画についても,本件認可時におい
て妥当と認めたものである。仮に原告が主張するような事態が生じて,保留地処分
金が42億5600万円に達しないと見込まれる場合には,保留地の売却状況に合
わせて事業費(支出)の見直しや,保留地面積を増加するという対策も取れるので
あり,原告に追加支出を強いる事態は生じないと考えられる。
イ 保留地処分価格の妥当性
原告の主張イのうち,本件資金計画においては,保留地を1平方メートル当たり
8万円(1坪当たり26万4000円)で処分する計画であり,その見込合計額は
42億5600万円と収入予定金額の50.9パーセントを占めていること,品野
西地区及び志段味地区において土地区画整理事業が行われているが,品野西地区に
おける保留地処分が進んでいないこと,本件施行地区内の原告所有地の面積割合が
全施行面積の3.65パーセントを占めていること,以上の各事実は認めるが,土
地の需要が低迷していて供給過多の状態にあり,全国各地の土地区画整理事業にお
いて,保留地処分が予定どおり進行しなかったために組合員に追加負担金の拠出を
求めてトラブルが生じている例も出てきていることは知らず,その余は争う。
本件事業完成後の状態で評価した本件施行地区の評価額は,平成14年7月1日
時点において1平方メートル当たり8万3500円であり,保留地の処分予定時期
である平成18年度まで地価が毎年1.9パーセント下落するものとして,保留地
処分価格を1平方メートル当たり8万円とすることが適当である。地価が低下して
いる状況のもとでも,金融機関からの借入額を抑制し,保留地売却の状況に合わせ
て工事を進めれば,保留地処分によって事業費を賄う手法も十分成り立ち得るもの
であるし,保留地を売れやすい位置に指定するとか,購入者として大企業を誘致す
るという対策もある(具体的内容は本件組合が考えるべきものである。)から,原
告主張のような,組合員が追加支出を強いられるような事態を避けることは可能で
ある。ちなみに,本
件事業の施行前の地価総額161億7879万8629円,施行後の地価総額21
7億0818万円を前提として,照応の原則に反することがないように減歩する
と,保留地に取り得る最大限の地積は6万9117平方メートルであって,これは
地価が下落しても変化することはなく,本件資金計画は,保留地の地価が1平方メ
ートル当たり6万1577円まで下がっても,十分に成り立ち得る。
ウ まとめ
以上のとおり,本件組合については,本件事業を遂行するために必要な経済的基
礎が十分である。
第3 当裁判所の判断
1 本件事業の目的と瀬戸環状東部線の設置の適否(争点(1))について
(1) 土地区画整理事業の目的
法1条は,「この法律は,土地区画整理事業に関し,……必要な事項を規定する
ことにより,健全な市街地の造成を図り,もって公共の福祉の増進に資することを
目的とする。」と,同2条1項は,「この法律において『土地区画整理事業』と
は,都市計画区域内の土地について,公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を
図るため,この法律で定めるところに従つて行われる土地の区画形質の変更及び公
共施設の新設又は変更に関する事業をいう。」と定めており,これらによれば,法
の定める土地区画整理事業は,公共施設の整備(新設),改善(変更)等を通じて
施行地区全体に及ぶ健全な市街地の形成を図ることを目的としてなされる事業であ
り,このような目的が達成されることによって公共の福祉の増進を実現するものと
いうことができる。そ
して,道路は公共施設の典型例であり(同条5項参照),一般的には,その整備は
土地区画整理事業の目的に沿うものと考えられる。
(2) 本件施行地区における瀬戸環状東部線の有用性の有無
もっとも,原告は,前記前提事実(3)及び(4)記載のとおり,本件事業計画の決定
に先立つ都市計画によって設置が決定された瀬戸環状東部線が,本件施行地区にお
ける生活道路ではなく,その新設によって居住環境の破壊が必至である旨を主張す
るところ,なるほど,無秩序な道路網の整備や地域性に適合しない道路の整備は,
かえって健全な市街地の形成の支障となる可能性もないではないから,このような
内容を含む事業計画は,法1条,2条1項に違反することもあり得るというべきで
ある(被告は,法16条1項の準用する法6条10項によって,事業計画は公共施
設に関する都市計画に適合して定められる必要がある旨主張するが,都市計画に適
合しさえすれば常に事業計画の内容が適法であるとはいえないことは明らかであ
る。)。
そこで,この点について判断するに,証拠(甲8,乙3の2の2,6ないし8,
10,12ないし14,16ないし19)によれば,
ア 本件施行地区は,瀬戸市中心市街地から南東方向に約2.3キロメートル離れ
て位置し,南東地域を含めて,概ね周囲を県有林によって囲まれているところ,本
件施行地区内の主要な道路は,そのやや南寄り付近を東北東方向から西南西方向に
かけて緩やかにカーブを描きながら走る市道赤津山口線と,北北西方向から延びて
その西側付近に合流する市道川合塩草線の2本にすぎない。
イ 市道赤津山口線は,大型車両の走行が多い割に幅員が狭く(片側1車線),車
両がすれ違ったり,歩行者が道路を横断するのに神経を使わなければならない状態
であるのに対し,本件事業計画によれば,市道赤津山口線はほぼ直線化され,区画
道路(幅員9ないし12メートル)とされるとともに,その南側に4車線(本件施
行地区内は,概ね掘割式で幅員30メートル)の瀬戸環状東部線が新設され,将来
的には瀬戸環状北部線,赤津線,国道155号線,第3環状線等との連結や,東海
環状自動車道等へのアクセスの利便性の改善の見込みもある。
以上の各事実が認められ,これによれば,本件施行地区と周辺地区との間の交通
の便が向上するとともに,地区内の区画道路である市道赤津山口線においても大型
車両の通過が減少することが見込まれるから,瀬戸環状東部線の新設は,本件施行
地区の健全な市街地化の支障となるとは認められず,かえって本件施行地区におけ
る健全な市街地の形成に寄与するものといえる。そうすると,本件事業によってそ
の敷地予定地を創出することが法1条,2条1項に違反するとはいえないことは明
らかであって,原告の上記主張は採用することができない。
(3) 幹線街路設置費用の転嫁の存否
また,原告は,瀬戸環状東部線のような幹線道路の新設は,土地区画整理事業と
は別個の道路新設事業として行われるべきところ,これが土地区画整理事業として
実施されることにより,道路設置者である公共施設管理者は,本来必要な買収資金
24億1850万円と公共施設管理者負担金17億3260万円との差額約7億円
の負担を免れる結果となり,その分,土地所有者らの負担が重くなる旨主張する。
しかしながら,原告主張のように,用地の取得(任意買収ないし土地収用)と工
事の実施から成る単独事業によって道路を新設することが可能であるとしても,道
路の新設計画を契機として,周辺住民が付近一帯の土地を対象とする土地区画整理
事業を計画し,その中で道路用地を創出する手法を採用することも可能であること
はいうまでもなく,法120条1項,同法施行令64条の2第1号,2号が,この
手法を前提とした規定であることは明らかである。
ただ,この手法を採用することによって,本来道路設置者において負担すべき事
業費が第三者に転嫁されることがあってはならないことも,また論を待たないとこ
ろ,証拠(乙28の1ないし3,同8及び9,29)によれば,
ア 財団法人日本不動産研究所は,平成11年3月1日時点における,①瀬戸市塩
草町◎◎番所在の住宅地,②同町○○番並びに△△番△及び△所在の畑,③同町●
●番●所在の現況山林の各評価額について,いずれも都市計画道路設置のための法
的規制がないものとした上で,それぞれ①は更地として1平方メートル当たり6万
7500円,②は住宅地見込地として同4万8000円,③は住宅地見込地として
同3万1000円と鑑定し,平成11年3月19日付けで瀬戸市長あてに提出した
(以下「日不研鑑定」という。)。
イ 上記鑑定に基づき,本件組合準備委員会において,瀬戸環状東部線予定地とさ
れている全画地につき,上記①ないし③の土地を標準地として比準させた結果,住
宅地から比準した土地4861.21平方メートルの価格の合計が2億9909万
9907円(1平方メートル当たり6万1528円),畑から比準した土地1万9
522.02平方メートルの価格の合計が9億3094万2009円(同4万76
87円),山林から比準した土地9425.02平方メートルの価格の合計が2億
7764万0617円(同2万9458円)となり,その合計は15億0768万
2533円と算出された。
ウ そこで,本件組合準備委員会は,平成11年10月29日付けで,愛知県に対
し,上記金額に移転対象となる建築物等の補償金として2億7146万3128
円,事務費として2593万4339円を加えた合計18億0508万円の負担を
求めて,法120条2項に基づく事前協議を行ったところ,愛知県土木部長は,同
年12月17日付けで,移転のための補償金は,瀬戸環状東部線の区域内に存する
物件についてのものに限るとの留保を付けて,これに応諾する旨回答し,その結
果,最終的に,公共施設管理者負担金は,17億3260万円となった。
以上の各事実が認められ,これによれば,本件事業計画における公共施設管理者
負担金は適正に設定されたものと認められる。しかも,そもそも法120条1項
は,「……施行者は,……公共施設管理者……に対し,当該公共施設の用に供する
土地の取得に要すべき費用の額の範囲内において,……負担することを求めること
ができる。」旨定めており,法文上は,必ずしも公共施設用地の取得に要する費用
全額が施行者に支払われなければならないものではない。この規定は,幹線街路の
ように,規模の大きい公共施設を設置することに伴い,所有者らに相当の減歩とい
う負担を余儀なくさせるから,かかる公共施設については,施行地区外の住民も利
益を享受するために負担の公平化が必要な一方で,施行地区内の住民もその公共施
設としての利益を享受
することに対応して,常に対象となる土地の客観的交換価値全部に相当する金額と
一致する額の公共施設管理者負担金の拠出を要するわけではないものとする趣旨で
あると考えられる。したがって,具体的な公共施設管理者負担金の額は,当該公共
施設の設置の必要性,設置によって施行地区内の住民が受ける利益の程度等の要素
を勘案して定められるべきところ,前記(2)に認定の事実によれば,本件施行地区内
の土地所有者らが,瀬戸環状東部線の新設によって一定程度の利益を享受すると認
められる。そうすると,いずれにせよ,公共施設管理者である愛知県が,本来負担
すべき支出を免れ,その分,土地所有者らの負担が増加するとの原告の主張を採用
することはできない。
(4) まとめ
以上のとおり,本件事業計画の内容は,瀬戸環状東部線を設置することに関し
て,事業の有用性の観点からも,費用の負担の観点からも,違法であるとはいえな
い。
2 南東地域における健全な市街地形成の必要性(争点(1)イ)について
以上のように,本件施行地区に瀬戸環状東部線を設置することに関連した違法が
ないとしても,原告は,南東地域は既に健全な市街地化が進んでおり,この地域を
除外して本件事業を実施することは可能であるとして,本件事業計画の内容は違法
である旨も主張する。
そこでこの点につき判断するに,前記1(2)に認定の事実並びに証拠(甲12,1
6,乙6,7,10ないし13,17,18,22の1及び2,23)によれば,
(1) 本件施行地区は,瀬戸市中心市街地から南東方向に約2.3キロメートル離れ
て位置し,南東地域を含めて,概ね周囲を県有林によって囲まれ,昭和20年から
入植者によって開拓が始まった旧開拓地から成り,自治会や通学区域を共通にする
などの社会生活上のつながりのある地域である。
(2) 南東地域については,その北側付近を東北東方向から西南西方向にかけて市道
赤津山口線が緩やかにカーブを描きながら走るものの,大型車両の走行が多い割に
幅員が狭く(片側1車線),すれ違うのに神経を使わなければならない状態であっ
て,住民が生活道路として使用するのに安全性が十分に確保されていない。
(3) 南東地域の中央南寄り部分には,昭和45年ころから,原告が費用を投じて行
った整地,舗装工事等により,比較的整然と区画され,二十数戸の建物を有する住
宅街区(いわゆる「ミニ開発地域」)と,同街区と市道赤津山口線とを連絡する幅
員約6メートルの1本の舗装道路が存在するが,この道路は,南東地域を蛇行する
公図上の市道と部分的に重なる箇所もあるものの,かなりの部分が私有地である
上,現況においては,上記市道と私有地との官民境界の識別も困難である。また,
南東地域のうち上記住宅街区以外の部分は,建物はまばらであり,道路や排水路は
十分に整備されていない(市道赤津山口線や市道川合塩草線その他の舗装道路の脇
などには,コンクリート製の側溝が設置されているが,南東地域の西側を南北方向
に走る排水路は,地表
の低地部分を水が自然に流れている状況にあり,土地境界すら明確ではない。)。
(4) また,南東地域を含む本件施行地区内のすべての地域において,下水道や都市
ガスの供給処理施設は設置されていない。
以上の各事実が認められ,これによれば,南東地域の一部は,本件施行地区内の
それ以外の地域と比較すれば,住宅地化が進んだ状態にあるということができるも
のの,そこについてすら,公道である市道赤津山口線からの進入路が1本しかな
く,防災上の問題がある上に,その道路も私有地が大部分であって,今後の維持・
管理が十分に行われることの保証はないといわざるを得ない。これらの事実に,下
水道,都市ガス等の居住設備が整備されていないことをも考慮すると,南東地域に
おいても,土地区画整理事業を施行する必要がないほどに既に健全な市街地が形成
されていると認めることはできず,社会的,歴史的に一体の地域として観念されて
きた旧開拓地全体をもって本件施行地区とした本件事業計画の内容が違法であると
はいえない。原告の上
記主張は採用することができない。
なお,証拠(甲12,15)によれば,本件施行地区は,塩草町全体に及んでい
るわけではなく,その北東部に当たる塩草団地,万徳団地の所在する地域(塩草
台)が,本件施行地区から外されていることが認められるが,反面,証拠(乙7,
10,12)によれば,同地域は,上記旧開拓地外の地域であり,数十戸の建物が
整然と並んでいる住宅街区であること,同地域と本件施行地区との間は,概ね南北
方向に走っている山林によって隔てられており,通学区域も異なっていること,同
地域に進入する道路は複数存在して防災上の問題も少なく,その区画も明確である
こと,以上の各事実が認められ,これによれば,同地域を本件事業の対象から外し
たことには合理的理由があるというべきであるから,上記判断を覆すものではな
い。
3 原告に対する不利益の存否(争点(1)ウ)について
以上のとおり,南東地域を他の本件施行地区内の地域と一体化して本件事業施行
することの合理性が認められるとしても,原告はさらに,本件事業計画における公
共保留地合算減歩率が47.20パーセントであること(この事実は当事者間に争
いがない。)を前提として,本件敷地予定地にほぼ相当する8179.32平方メ
ートルの価格約8億1793万円(1平方メートル当たり10万円)を下らない損
失を被る旨主張する。
しかしながら,上記の合算減歩率は,被告の主張するとおり,本件施行地区全体
を平均しての減歩率にすぎず,個々の組合員の所有地(従前地)に対する個別の減
歩率は,今後予定される換地規程(本件組合の定款(甲1)75条),換地設計
(法87条1項1号),仮換地の指定(法98条),換地計画の認可(法86
条),(本)換地処分(法103条)等の手続を経て最終的に定まるものであり,
かつ,これを定める場合においては,換地と従前地の位置,地積,土質,水利,利
用状況,環境等の要素を考慮し,全体として照応することが要求される(法89
条)から,仮に従前地の価値が他の土地のそれよりも高かった場合は,その個別減
歩率は平均減歩率よりも低くなるし,さらに換地と従前地との間の財産的価値に不
均衡が生じた時は,清算金が
交付される(法94条,110条)ことによって,調整が図られることになってい
る。原告は,自らのした投資が無駄になる可能性を危惧するものであろう(甲1
2)が,その投資により,真実,本件各土地の価格が周辺の土地と比較して上昇し
たのであれば,制度上,個別の減歩率が確定される段階において,これが反映され
る仕組みになっているのであって,原告が損失を被るとの主張は,現段階において
採用することはできない(仮に,個別的に法の定める照応の原則等が満たされない
具体的処分が原告に対して行われた場合は,当該処分を争うことができるのはいう
までもないし,全体として照応の原則が満たされない危険性の有無については,争
点(2)に収れんされるものとして,後記4に判示するとおりである。)。
もっとも,土地区画整理事業が行われる以上,従前の所有地に対して減歩が行わ
れること自体は避け難いが,土地区画整理の制度そのものが健全な市街地の造成を
図り,もって公共の福祉の増進に資することを目的とする(法1条)以上,かかる
制約は財産権に内在するものというべきであって,これをもって直ちに憲法29条
に違反するものとはいえないことも明らかである(最高裁判所昭和56年3月19
日第一小法廷判決・訟月27巻6号1105頁参照)。
以上のとおりであって,本件敷地予定地の価格が1平方メートル当たり10万円
を下らないことについて立証がないことを措くとしても,本件事業計画が,原告に
対して,財産権に内在する制約を超える不利益を与えるものであるとはいえない。
4 本件事業遂行のために必要な経済的基礎の存否(争点(2))について
(1) 不認可事由の判断のあり方
前記前提となる事実(3)エ記載のとおり,本件資金計画における収入項目として
は,保留地処分金42億5600万円が挙げられており,これは,保留地予定地積
5万3200平方メートルに1平方メートル当たりの単価8万円を乗じた金額であ
るところ,原告は,昨今における土地需要の減少に照らせば,かかる価格で処分で
きる現実性はなく,仮にこの価格を下回って処分せざるを得ない状況になれば,原
告ら土地所有者は,追加拠出金の支出を余儀なくされる旨主張する。
この点について,まず,被告は,本件認可は,被告の自由裁量に属すると主張す
るのに対し,原告は,昭和63年の法改正などを根拠としてこれを争うところ,法
21条1項は,「都道府県知事は,……(土地区画整理組合の設立)認可の申請が
あった場合においては,次の各号の一に該当する事実があると認めるとき以外は,
その認可をしなければならない。」旨規定しており,その体裁に照らせば,知事に
対し,各号所定の不認可事由があると認めるとき以外は,原則的に設立認可を義務
付けていることが明らかである(これは,組合設立の自主性を尊重する趣旨に出た
ものと考えられる。)。したがって,知事は,不認可事由があると認められないに
もかかわらず,不認可処分を行うことはできないという意味において羈束されてい
るが,逆に不認可事
由の存否が不明の場合に,認可することができる要件裁量を有するかについては,
必ずしも明らかではない。しかるところ,同項の定める不認可事由のうち,4号の
「土地区画整理事業を施行するために必要な経済的基礎……が十分でないこと。」
の存否の判断については,相当期間にわたる将来的な予測が必要であり,流動的な
要素をしんしゃくすることが避けられないことなどを考慮すると,知事が一定範囲
の要件裁量を有することは否定し難い。
しかしながら,他方で,土地区画整理組合の設立認可は,その事業施行地区内の
宅地の所有権等を有する者をすべて強制的にその組合員とした上,当該組合に土地
区画整理事業を施行する権限を与える効果を付与するものであり,かつ,当該事業
の実施に反対の意見を有する者であっても,法18条所定の要件が充たされる以
上,そこから離脱したり,その申請を阻止する手段はなく,このように関係者の権
利,利益に重大な影響を与え得る行政処分であることに照らすと,知事としては,
設立認可申請に対し,現在の一般的な可能性をもとに,明らかに事業計画が不当と
いえるか否かについて判断するだけでは足りず,一般的に必要と考えられる調査を
尽くし,収集した資料を注意深く検討して,当該組合に事業施行に必要な経済的基
礎が十分に具備されて
いるか否かを判断すべきである。
そして,裁判所も,かかる観点から,知事の判断が合理性を有するか否かについ
て司法審査権を有するというべきである。
(2) 本件組合の経済的基盤の有無
そこで,以上の観点から判断するに,証拠(甲21,乙4,5,26の2)によ
れば,
ア 株式会社名古屋不動産鑑定所は,平成14年7月1日,本件施行地区の中央や
や西側に位置する瀬戸市塩草町▲▲番の畑につき,本件事業による整備が完了し,
住宅地として使用収益が可能になった状態(上水道,都市ガス,公共下水道の整
備,建ぺい率60パーセント,容積率200パーセントへの指定替え)での標準的
な画地(間口10メートル,奥行き16.5メートルの長方形地で,北側区画道路
にほぼ等高に接面)としての価格を1平方メートル当たり8万3500円と鑑定評
価し,これを瀬戸市長あてに提出した(以下「名不動産鑑定」という。)。
その手法は,①地価公示地(瀬戸市萩山台二丁目83番地の瀬戸-18番)にお
ける平成14年1月1日の公示価格(1平方メートル当たり9万3400円)を基
に,時点修正,標準化補正,地域格差補正を行って算出した比準価格1平方メート
ル当たり8万1200円,②瀬戸市八幡台六丁目,同町九丁目,同市原山台五丁目
及び同市池田町の4か所の取引事例をもとに,同様の修正,補正を行い,これらの
ほぼ中庸値に相当する比準価格1平方メートル当たり8万5000円,③瀬戸市萩
山台九丁目に所在する2階建共同住宅の賃貸事例から土地に帰属する純収益1平方
メートル当たり1494円(年間)を逆算し,これに所要の修正,補正を行った
上,還元利回り4.5パーセントで除すことによって算出した収益価格1平方メー
トル当たり3万010
0円の3種の価格を試算し,このうち精度・信頼性が高いと判断される②を重視し
つつ,①との均衡を考慮して,標準的な画地の価格を1平方メートル当たり8万3
500円と査定したものである。
イ 愛知県の住宅地の公示価格の平均下落率は,平成6年は6.1パーセント,平
成7年は3.9パーセント,平成8年は3.4パーセントとかなりの下落率を示し
ていたが,平成9年から平成13年までの5年間は,1.6パーセント,0.7パ
ーセント,3.4パーセント,1.8パーセント,2.0パーセントと下落率が鈍
化し,1年当たりの平均下落率は1.9パーセントであった。
そこで,本件組合は,保留地処分開始予定の平成18年までの4年間,同率の地
価の下落が見込まれるものとの前提で,前記鑑定評価額に(1-0.019)を4
乗して,単価を算出したところ,1平方メートル当たり7万7300円となった。
さらに,これに105パーセントを乗じて南側道路に接面した場合の価格1平方メ
ートル当たり8万1100円を算出し,安全率を見越して端数を切り捨て(概ねマ
イナス1.4パーセント),保留地の処分価格を1平方メートル当たり8万円と決
定した。そして,この金額を前提とする本件事業計画を策定し,設立認可の申請を
行った。
ウ その後の愛知県における住宅地の公示価格も,平均して,平成14年は4.5
パーセント(甲21によれば4.7パーセント),平成15年は5.8パーセント
(甲21によれば5.9パーセント)下落している。名古屋近接地域におけるそれ
となると,平成14年は5.1パーセント,平成15年は7.5パーセントの下落
率となっている。
瀬戸市においては,平成12年7月1日から13年7月1日までの住宅地の地価
調査は平均7.1パーセントの下落率,住宅地の公示価格は,平成14年は9.7
パーセント,平成15年は9.9パーセントの下落率となっており,愛知県下の市
町村においては3番目に大きな下落率となっている。さらに,前記瀬戸-18番の
公示地においては,平成12年に4.3パーセント,平成13年に5.5パーセン
ト,平成14年に10.2パーセントの下落率となっている。
以上の各事実が認められ,これによれば,前記名不動産鑑定の評価において,本
件事業完成後の標準的住宅地の価格を1平方メートル当たり8万3500円と査定
したことについては,相応の合理性を有すると判断することができる(原告は,被
告の援用する前記鑑定評価書が掲げる取引事例地は,いずれも安定した取引実績が
あるから,比準地として不適切である旨主張するところ,鑑定評価額に影響を与え
得る地域格差等を各要素ごとに補正した補正率を乗じて基準地価格を算出している
から,取引実績の有無は評価額に反映されているというべきである。)。
もっとも,保留地の処分価格を算定するに際し,平成13年から遡って過去5年
間における愛知県の住宅地の平均下落率を採用したことは,その当時においてす
ら,瀬戸市における住宅地の土地価格の下落率が,愛知県のそれよりも大きな数値
を示していたことに照らすと,やや楽観的にすぎたといわざるを得ず,現に,その
後の地価動向も,むしろ下落率が拡大する傾向を示している。加えて,証拠(甲1
0,17ないし19,22,23)によれば,現在,瀬戸市及び隣接する尾張旭市
内において土地区画整理事業を実施している4組合(尾張旭向,尾張旭印場特定,
尾張旭晴丘東,瀬戸品野西)が,保留地買受人を募集し,うち瀬戸品野西土地区画
整理組合においては,保留地の位置の変更や集合化,価格の見直し,再減歩等の検
討を要する状況にある
こと,長久手町において,6組合が土地区画整理事業を完了し,あるいは工事中で
あるが,そのうちの長鍬中部土地区画整理組合は30億円ほどの借入金債務を有
し,保留地の売却に全力を挙げていること,名古屋市守山区志段味地区において土
地開発公社が展開している「サイエンスパーク事業」の土地分譲が,進出企業が少
ないために,予定どおり進ちょくしていないこと,以上の各事実が認められ,これ
らを総合すると,平成18年までに劇的な経済情勢の改善が生じない限り,本件事
業においても,早晩,保留地の処分予定価格を修正せざるを得ない事態になる可能
性を否定し難いというべきである。
しかしながら,証拠(乙5,10,15,28の1,2,6及び7,29)によ
れば,本件組合自身,将来の地価動向を正確に見極めることは大変困難であると判
断した上,①保留地を南側で道路と接面する好位置に配置する,②処分の単位とな
る画地の面積を適切に定める,③保留地を集合して配置し,多様な需要に対応す
る,④分譲事業を手掛けるハウスメーカー等の大口需要者を開拓する,⑤保留地の
工事を優先させ,早期に処分する,などの対策を検討していること,本件事業計画
における本件施行地区全体の整理前宅地総額が161億7879万8629円であ
るのに対し,整理後のそれは,平均単価が1平方メートル当たり8万円であること
を前提に,217億0818万円であるとして,その差額55億2938万137
1円から,照応の原則
が確保される理論上の保留地の最大地積を逆算すると6万9117平方メートル
(減歩率51.05パーセント)となること(なお,証拠(乙4,15,28の1
及び3)によれば,前記1(3)ア記載の日不研鑑定が,瀬戸市塩草町●●番●所在の
現況山林(標準地)を「特に接面する道路がない」ことを前提に評価しているのに
対し,本件組合準備委員会が本件施行地区内の類似土地の価額を比準して算出する
際には,上記標準地が「接面(幅員3.0m),街路までの距離(50m),優
る」ことを前提とした結果,標準地との間で若干の減額補正がされ,整理前宅地単
価・総額が若干低下したこと,整理後の宅地単価として,南向きに位置取りしてい
くことを前提に若干高めに設定した保留地処分予定価格である1平方メートル当た
り8万円を,本件施行地
区全体の平均として採用した結果,整理後宅地総額も若干高めに上がっているこ
と,以上の事実が認められるところ,これらを総合すれば,整理前後の宅地総額の
増加額は,本件事業計画におけるものよりも小さく,したがって,保留地として取
り得る最大地積や最大減歩率も低くなるようにも見える。しかしながら,現在横這
いの地価を上昇させた場合と同様に,土地区画整理事業によって現在下り坂の地価
を下げ止まらせた場合であっても,それが土地区画整理による公共の福祉の増進に
よる効果であることには変わりがないから,保留地の最大地積や最大減歩率を算出
するために,本来は事業を施行しなかった場合と施行した場合との価格を同じ時点
に比準してその差を比較すべきところ,前記日不研鑑定及び名不動産鑑定を基礎
に,そこで評価された価
格を同じ時点に時点修正しようとすれば,本件事業を施行しなかった場合の宅地単
価について,より下落率を乗じるべき結果となって,仮に地価下落率を,本件組合
準備委員会が本件事業を施行しなかった場合の宅地単価について日不研鑑定による
価格を平成12年3月1日に時点修正するために用いた地価下落率(乙28の3及
び4)を参考として,年4パーセントとして試算しても,むしろ本件事業計画にお
けるより最大減歩率は高くなる(平成18年に時点修正した場合について別紙試算
表参照)ところ,これと比べると,前記の各問題点を解消するために必要な価格の
修正は相対的に小さいものと考えられるから,以下,この点は捨象して,本件事業
計画上の数値に従った計算をする。),この数値は,地価の下落率が拡大したとし
ても,それに伴って
整理前宅地総額も減少することから,基本的に変わることがないこと,保留地の最
大地積全部を処分すると仮定すると,本件資金計画で挙げられた保留地処分金42
億5600万円を取得するには,1平方メートル当たり6万1577円以上の価格
で処分すれば足りること,以上の事実が認められる。
そうすると,保留地の処分開始予定時期である平成18年までの地価の下落率が
予定を上回り,あるいはそれ以後も同様の傾向が続いたとしても,それが極めて深
刻なものでない限り,本件組合の処分に向けた努力いかんによっては,本件事業計
画を維持することが期待できないわけではなく,仮にこれが困難になったとして
も,減歩率を高めて(もっとも,そのためには法31条,34条1項の定める総会
決議又は36条1,4項に定める総代会の決議に加え,39条の認可手続を経て事
業計画を変更する必要がある。なお,保留地を多く取ったとしても,その分は一般
の宅地地積が減るだけで,公共施設が減らされるという関係にはなく,公共の福祉
の増進の程度が減退するわけではないから,この場合に宅地単価が下がることには
ならない。),処分単
価を下げるなどの方策を採ることにより,対応することが可能であると考えられる
から,本件事業が破綻して土地所有者らに照応の原則を維持できないほどの負担が
生ずる事態を避けることは困難とはいえない。
(3) まとめ
結局,本件においては,法21条1項4号所定の不認可事由である「土地区画整
理事業を施行するために必要な経済的基礎……が十分でないこと。」が存在すると
はいえないとした被告の判断は不合理ではなく,本件認可は適法であると認めるの
が相当である。
5 結論
以上の次第で,本件認可は,無効となり又はこれを取り消すべき瑕疵のない適法
なものであって,原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれらを棄却すること
とし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,
主文のとおり判決する。
名古屋地方裁判所民事第9部
裁判長裁判官 加藤幸雄
裁判官 舟橋恭子
裁判官 平山 馨
(物件目録,図面1,2はいずれも添付省略)
(別 紙)
試算表(地価下落率を年4パーセントとする。)
1 日不研鑑定を基礎に,本文第3の1(3)ア記載①ないし③の土地単価を平成18
年3月1日に時点修正する。
①の土地 \67,500×(1-0.04)7=\50,723
②の土地 \48,000×(1-0.04)7=\36,069
③の土地 \31,000×(1-0.04)7=\23,295
2 1記載の土地単価について,本件組合準備委員会がしたのと同じ条件(乙28
の3)として比準して,本件施行地区内全体の地目別平均土地単価を求める。
住宅地 \50,700×1.05=\53,235
田・畑 \36,100×0.81=\29,241
その他 \23,300×0.81=\18,873
3 本件事業計画上の整理前地目別面積(乙15)に基づいて,2記載の地目別平
均土地単価から,本件事業を施行しなかった場合の宅地総額を計算する。
住宅地 \53,200×60,875.24㎡=\3,238,562,768
田・畑 \29,200×258,681.55㎡=\7,553,501,260
その他 \18,900×93,623.52㎡=\1,769,484,528
合 計(413,180.31㎡)\12,561,548,556
4 名不動産鑑定を基礎に,本件事業を施行した場合の本件施行地区内の北向画地
の土地単価を平成18年7月1日に時点修正する。
\83,500×(1-0.04)4=\70,920
5 4記載の土地単価について,本件組合準備委員会がしたのと同じ条件(乙4)
として南向画地の土地単価を求め,これを本件事業を施行した場合の本件施行地区
全体の土地単価とする。
\70,920×1.05=\74,466
6 5記載の土地単価から,本件事業を施行した場合の宅地総額を計算する。
\74,500×271,352.25㎡=\20,215,742,625
7 3及び6記載の各宅地総額から,本件事業を施行した場合の宅地総額の増加額
を求める。
\20,215,742,625-\12,561,548,556=\7,654,194,069
8 5記載の土地単価と7記載の宅地総額から保留地として取り得る最大限地積を
求める。
\7,654,194,069/\74,500=102,740.86㎡
9 8記載の保留地最大地積,並びに,本件事業計画上の公共減歩地積及び整理前
宅地更正地積(乙15)を基に最大減歩率を算出する。
(102,740.86㎡+141,828.06㎡)/413,180.31㎡=59.19%
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