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主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。
2被控訴人の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2事案の概要(略語は原判決の表記による。)
1本件は,船腹調整事業を行うA連合会(A)において,その傘下の組合の組
合員(本件組合員)による既存の船舶(交付金対象船舶)の解体・撤去等(解
撤等)については,Aから,当該船舶のトン数に応じて解撤等交付金が交付さ
れる一方で,新たな船舶の建造等については,当該組合員において,その船舶
の対象トン数に応じた建造等納付金を納付すべきこととされるとともに,その
うち建造等をする船舶に相当する船種の船舶(納付金免除船舶)を解撤等する
者に対しては,これに交付される解撤等交付金相当額を限度に建造等納付金の
納付が免除されることとされているところ,暫定措置として,当該組合員が,
上記交付金相当額が上記免除限度額を超える場合に生じる余剰トン数等につい
て,これを当該交付金対象認定トン数として留保する(留保対象トン数)など
した上,留保対象トン数使用承諾書を発行して,これを他の組合員に使用させ
ることができるようにするとともに,解撤等交付金を受けようとする組合員に
おいて解撤等交付金の認定額の20パーセント相当額をAに預託し,その同意
の下に,同預託金にかかる債権の譲渡を認める扱いがされていた中で,これを
利用して,新たな船舶を建造するに当たり,他の組合員らから留保対象トン数
使用承諾書の発行を受けてその留保対象トン数を譲り受ける(本件承諾書取
引)とともに,他の組合員ら(その破産管財人を含む。)から預託金預り証書
の譲渡を受けた(本件預託金証書取引)上,所定の免除手続を経て新造船舶
(2隻)の建造等交付金を納付した被控訴人が,控訴人に対し,上記各取引に
係る取得費用はいずれも建造する船舶の営業権に該当するもので課税仕入れと
いえるから当該取得費用に係る消費税相当額を課税仕入れに係る消費税額に含
めて行うべきであるのに,そのように計算された被控訴人の消費税等の申告に
対して,上記各取引が消費税法上の課税資産の譲渡等(課税取引)に当たらず
課税仕入れには該当しないとして鹿児島税務署長がした平成16年11月1日
から平成17年10月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税に係る更
正処分等(以下,被控訴人のこの主張に対応する範囲についての処分を「本件
処分」ということがある。)は違法であると主張し,消費税の還付すべき税額
981万7737円を超え1713万0701円を超えない部分及び地方消費
税の還付すべき譲渡割額245万4434円を超え428万2675円を超え
ない部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分(本件処分)の取消しを求めた
事案である。
原審は,本件承諾書取引について,これが「資産の譲渡等」(法2条1項8
号)であり,「課税資産の譲渡等」(同項9号)であって,これと裏腹の関係
にある「課税仕入れ」(同項12号)に該当するとし(争点(1)),本件処分
のうち本件承諾書取引を不課税取引であるとした部分につき違法であるとし
て,消費税の還付すべき税額981万7737円を超え1629万3177円
を超えない部分及び地方消費税の還付すべき譲渡割額245万4434円を超
え407万3294円を超えない部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分の
うち13万1000円を超える部分を取り消した。
そこで,控訴人がこれを不服として控訴した。なお,被控訴人において,原
判決に対して不服の申立てをしていないため,その敗訴部分については審理判
断の対象とはならない。
2前提事実並びに争点及び争点についての当事者の主張
(1)本件に関係する前提事実並びに争点及び争点についての当事者の主張
は,後記(2)で補正し,同(3)で当審における当事者の主張を付加するほか
は,原判決の「事実及び理由」欄の第2の2,3のとおりであるから,これ
を引用する(なお,以下,原判決を摘示ないし引用する場合は,「原判決第
2の2」のように表記し,当審において補正があるときは,補正後のものに
よる。)。
(2)原判決の補正
ア5頁25行目の「年々漸減され」を,「その交付申請時の解撤等交付金
単価(年々漸減され,平成18年4月1日以降は見直しが行われることと
されている。)を適用して算出され」と改める。
イ13頁7行目の「納付金免除船舶として使用することができる権利,地
位」を,「解撤等交付金対象船舶を納付金免除船舶に振り替えて使用する
ことができる権利,地位,ないしAの建造承認を停止条件とする新船建造
資格という債権類似の権利」と改める。
ウ16頁9行目末尾に改行の上,次を加える。
「また,本件承諾書取引については,契約書上,「売主の所有に係る内航
船舶の一般貨物権利」(乙1),「売主が所有する」「内航船舶代替建造
引当資格」の「留保トン数」(乙2)なるものが明記されており,本件承
諾書取引の目的物を,Bが有していた「船舶(C)に係る一般貨物権利」
及びDが有していた「船舶(E)の内航船舶代替建造引当資格の留保トン
数」とされているが,これによっても,本件承諾書取引における譲渡の対
象が,Aに対する債権ないし債権類似の権利,ないし,Aの建造承認を停
止条件とする新船建造資格という債権類似の権利などということはできな
い。」
(3)当審における控訴人の予備的主張(争点(1)に関して)
(控訴人)
ア本件承諾書取引が「資産の譲渡等」に当たるとしても,「金銭債権」
(法6条1項,法別表第1の2号及び施行令9条1項6号)の譲渡とし
て,非課税取引に当たり,「課税仕入れ」(法2条1項12号)には,該
当しない。すなわち,留保対象トン数の使用による建造等納付金の免除の
法的性質は,本件組合員が新造船舶を建造するに当たり,Aに対して建造
等納付金を支払う代わりに,解撤等交付金支払請求権を自働債権,建造等
納付金の納付義務に対応する債務を受働債権として,その対当額で相殺す
ることによって建造等納付金の納付義務を免れるというものであるとこ
ろ,留保トン数の第三者使用による建造等納付金の免除の法的性質もこれ
と変わるところはないから,本件承諾書取引は,建造等納付金の納付義務
を免れることを停止条件とする解撤等交付金支払請求権という金銭債権の
譲渡契約である。したがって,本件承諾書取引は,金銭債権の譲渡とし
て,非課税取引に該当する。
イ控訴人が上記予備的主張を行うことが,信義則・禁反言の法理に照らし
て許されないということはない。
(被控訴人)
ア本件承諾書取引は,建造等納付金の納付義務を免れることを停止条件と
する解撤等交付金支払請求権という金銭債権の譲渡を目的とするものでは
ない。
本件承諾書取引は,Aの建造承認を停止条件として,Aに対する新船建
造の認可を受ける必要なもの全般を内容とする,いわば新船建造資格とい
う債権類似の権利を目的としている。使用承諾書は,金銭債権としての解
撤等交付金支払請求権の譲渡証明書ではない。
イ控訴人が本件承諾書取引を非課税取引であると主張することは,売主に
対して消費税等の課税をしていないことから,信義則・禁反言の法理に照
らし,許されない。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,本件預託金証書取引は,「資産の譲渡等」(法2条1項8号)
のうち,預託金返還請求債権という金銭債権の譲渡(法6条1項,法別表1の
2号及び施行令9条1項6号)(非課税取引)であって,「課税資産の譲渡
等」(法2条1項9号)には該当しないが(争点(2)),本件承諾書取引は,
「資産の譲渡等」(同項8号)であり,「課税資産の譲渡等」(同項9号)で
あって,これと裏腹の関係にある「課税仕入れ」(同項12号)に該当するか
ら(争点(1)),本件処分のうち,本件預託金証書取引を非課税取引であると
して行った課税処分に係る部分については適法であるが,本件承諾書取引を不
課税取引であるとして行った課税処分に係る部分については違法であるから,
後者に係る部分については取り消されるべきものと判断する。
そのように判断する理由は,後記2のとおり補正し,同3のとおり,当審に
おける控訴人の予備的主張に対して判断を加えるほかは,原判決第3の1ない
し4のとおりであるから,これを引用する。
2原判決の補正
(1)26頁7行目の「留保者は,」から,同10行目の「そのためには」ま
でを,「留保者は,Aから直接解撤等交付金の交付を受けるか,又は,これ
に代えて,新造船舶を建造するに当たって,免除船舶の引当資格に係る解撤
等交付金相当額につき,建造等納付金の免除を受けることができるほか,他
の本件組合員が新造船舶を建造するに当たって,使用を承諾した留保対象ト
ン数の限度で建造等納付金の免除を受けることができるよう,使用承諾書を
発行する手続などを行い(留保対象トン数の第三者使用),これに対して対
価を得ることができるところ,建造等納付金の免除を受けるためには」と改
める。
(2)26頁18行目末尾に,次を加える。
「すなわち,本件承諾書取引については,契約書上,目的物として種々の記
載がされているが,これは,本件要領の趣旨に照らすと,留保者である売主
(BないしD)がその保有する留保対象トン数を,新船舶建造を計画してい
た買主(被控訴人)に使用できるようにAとの関係で手続を行い,買主がこ
れに対価を支払う一方,売主がその譲渡代金により解撤等交付金の回収を図
り,買主は留保対象トン数による建造等納付金納付義務の免除によりその負
担を軽減しようとの目的の下に行われたことが明らかであるから,本件承諾
書取引は,買主である被控訴人が新造船舶を建造するに当たって,留保者で
ある売主が,被控訴人の新造船舶建造認定手続において建造等交付金の免除
を受けるべく,Aの手続に協力するという内容であり,これにより,Aが要
件を満たした申請についてはこれを認定するものと解されるから,留保者が
行使する場合と同様,取得者もAに対し,本件権利を行使しうるものという
べきである。」
(3)28頁18行目末尾に改行の上,次を加える。
「なお,控訴人は,Aが,建造等納付金免除の手続において,その要件を満
たす申請に対して,直ちに免除を認定する義務を負っているとはいえないと
主張するが,暫定事業追加措置の定められた経緯等に照らすと,上記手続に
おいて裁量があるものとは解されず,また,本件承諾書取引における当事者
には,少なくとも事実上の経済的利益があり,それは権利に類似するものと
いうべきであるから,控訴人の上記主張は,上記認定を左右するものとはい
えない。」
3当審における控訴人の予備的主張に対する判断
(1)控訴人は,当審において,留保対象トン数の使用により建造等納付金が
免除されることの法的性質につき,解撤等交付金支払請求権を自働債権,建
造等納付金納付義務に対応する債権を受働債権として行われる相殺であると
して,本件承諾書取引は,金銭債権の譲渡であると主張する。
(2)しかし,本件承諾書取引において,解撤等交付金支払請求権がどのよう
に位置づけられているのかその主張から明らかではない上,本件承諾書取引
についての契約書上,留保者の解撤等交付金支払請求権をその譲渡の対象と
する旨の文言は見当たらず,そのような趣旨を含むものとは理解し難い。
そして,留保者が,Aから直接解撤等交付金の交付を受けること(解撤等
交付金支払請求権の行使)と,自ら新造船舶を建造する際,留保対象トン数
の限度で建造等納付金の支払義務の免除を受けることとは,手続的にも,制
度的にも異なっている。
加えて,解撤等交付金は,その交付申請時の解撤等交付金単価(なお,本
件規程上は年々漸減するものとされている。)によってその額が定められて
いる上,平成16年当時は,その支給にも時間を要する事態となっていたと
ころ,これに代えて,本件組合員(留保者)が留保対象トン数使用承諾書を
新たに船舶の建造を予定している他の組合員に譲渡することによって解撤等
交付金の回収を図ることができ,他方,留保対象トン数使用承諾書の譲受人
である新造船舶の建造予定者は,Aに直接建造等納付金を納付するよりも,
留保者から当該使用承諾書を譲り受けて建造等納付金の免除を得た方が安価
で済むことができることから,留保者及び譲受人の双方がこのような経済的
な利益を目指し,使用承諾書を売買する取引が行われる実態が生じたのであ
り,この経過に照らせば,本件承諾書取引において,解撤等交付金の交付を
受ける権利(解撤等交付金支払請求権)それ自体が譲渡の目的とされたもの
とは解することができない。
したがって,控訴人の上記予備的主張は採用することができない。
4以上によれば,原判決は正当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却
することとして,主文のとおり判決する。
福岡高等裁判所第5民事部
裁判長裁判官西謙二
裁判官足立正佳
裁判官石山仁朗

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