弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
被告は,原告に対し,金70万1376円及びこれに対する平成14年9月1日か
ら完済まで年6パーセントの割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 請求原因の要旨
被告が,訴外有限会社クリエイト・オブ・ザ・フューチャー(以下「クリエイト」
という。)から教材を購入(以下「本件販売契約」という。)するに際し,大同生
命保険株式会社から借り受けた金69万4951円(保証料10万2751円を含
む。)の債務について原告との間で締結した平成14年3月17日付け保証委託契
約(以下「本件保証契約」という。)に基づき,原告が平成14年8月31日代位
弁済した金70万1376円(利息金6425円を含む。)及びこれに対する平成
14年9月1日から完済まで年6パーセントの割合による遅延損害金の請求
2 争点
被告は,次のような主張をして支払義務を争うので,各主張の成否が中心的争点で
ある。
(1) 本件販売契約及び本件保証契約(以下「本件契約等」という。)の不成立
(2) 本件契約等の詐欺による取消若しくは錯誤による無効
(3) 本件契約等の解除(クーリング・オフ等)
第3 争点に対する判断
1 争点(1),(2)について
(1) 被告の主張の要旨は,次のとおりである。
平成14年3月10日,クリエイトの社員であるAが,被告方を訪問して話をした
のは,被告の子供(当時小学6年生)の家庭教師派遣についてであり,教材の購入
に関する話は一切出ておらず,家庭教師派遣を受けることの承諾はしたが,教材購
入の意図はなく,家庭教師サークルへの入会申込書に記入した際に複写式で本件契
約書を作成させられたもので,本件契約等は成立していない。仮に,同契約が成立
していたとしても,家庭教師を派遣してもらうことが条件で契約書に署名捺印した
ものであり,実際には家庭教師の派遣はされていないので,この事実は,法律行為
の要素に錯誤があるときに該当して無効であるか,若しくは,当初から家庭教師派
遣の意思がないにもかかわらず本件契約等を締結させられたものであって詐欺によ
り取り消し得る。
(2) 証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件契約書(甲1)の契約者欄には被告の署
名及び印影があるところ,同署名は被告本人がなし,同印影も同人の使用する印鑑
を同人が捺印したものであることが認められる。家庭教師サークルハーベスト入会
申込書と本件契約書とは書式を異にしており,被告の署名等を複写式で両者同時に
表出作成することは不可能である。被告は,目が悪く細かい文字が見にくいこと,
文字を知らないために読み書きの能力が乏しいことを考慮しても,当日,Aは午後
8時ころから午後11時ころまでの長時間にわたって被告方に居て本件契約等の説
明をしたと認められ,平成14年3月17日には原告の担当社員から被告に対して
電話による本件契約等の意思確認がされた事実(甲2の1,2の2)も合わせ考慮
すると本件契約書が
被告の意思に従って作成されたものと認めることができる。
前記契約締結に際し,被告の意思表示に要素の錯誤があったこと,Aに欺罔の意思
及び行為によって本件契約等が被告の瑕疵ある意思に基づいて締結されたと認める
に足りる証拠はいずれもない。
したがって,本件契約等は,一旦有効に成立したものと認められる。
2 争点(3)について
(1) 被告の主張の要旨は,次のとおりである。
ア Aから被告に対して法定書面の交付がされていないので,クーリング・オフの
期間(法定書面を受け取った日から8日間)は進行していない。
イ 本件契約等が有効に成立しているとしても,被告が,原告及び家庭教師サーク
ルハーベストに対して,平成14年4月25日付け内容証明郵便(乙1,2)でそ
れぞれ通知したクーリング・オフにより本件契約は解除されている。
(2) 証拠及び弁論の全趣旨によれば,平成14年3月10日,被告方において本件
契約等が締結された際,本件契約書の契約者用控えが被告に交付されていたことが
認められ,同書面にはその右側表面に本件契約等のクーリング・オフが可能なこと
及びその手続,要件等の記載があることが認められる。
したがって,被告の主張する前記各内容証明郵便は,特定商取引に関する法律(以
下「特定商取引法」という。)9条1項1号,同法48条1項に各規定する8日間
の期間の経過後に発出されたものであることが認められるから,それをもって本件
契約等が有効に解除されたものということはできない。
3 本件契約等の解除について
(1)本件契約等が締結された後である平成14年4月19日ころ,被告宅に本教材
が送付されてきたが,被告方に同居している被告の妻の母であるBが直ちに送
り主に返送したことが認められる。
また,本件契約等に関連して被告方に家庭教師が現実に派遣されたという事実は認
められない(乙5,被告本人)。
(2)被告は,原告に対して,平成14年4月25日付け,同年7月13日付け各契
約の解除に関する通知(乙2,3)を,家庭教師サークルハーベストに対して
同年4月25日付けで,クリエイトに対して同年7月13日付け各契約の無効に関
する通知(乙1,4)をそれぞれ内容証明郵便で発出している。
(3)本件契約等の前提となった家庭教師派遣は,特定継続的役務提供(特定商取引
法41条2項,同法施行令12条,別表第5)に該当し,本件契約等で販売の
対象とされた教材は,特定商取引法48条2項,同法施行令14条,別表第6に定
める関連商品であると考えられる。
(4)前記(2)の各内容証明郵便は,その内容とする本件契約等の無効の主張若しく
はクーリング・オフによる解除の効力はないものと言わざるを得ないが,少な
くとも本件契約等を将来にわたって効力のないものとする意思を含むことが明確に
認められ,中途解約(特定商取引法49条)の効力を含むものというべきであ
る。(5)本件契約等は,家庭教師派遣という特定継続的役務提供と関連して一体と

て締結されたものであり,教材の対象が中学3年生までのテキストを含むもである
ことから,少なくとも3年間は継続することが予定されているものと認められ 
る。したがって,家庭教師については,特定商取引法49条1項により,関連商 
品である教材については同法49条5項により,クーリング・オフ期間の経過後 
も役務提供期間内であれば,被告は,将来に向かって本件契約等を解除すること 
が可能であり,また,その理由の如何を問わない。
(6)なお,本件販売契約が解除されれば,割賦販売法の抗弁の接続に関する規定
(同法30条の4)によるまでもなく,本件契約書10条の定めるところにより,
被告は,原告に対しても支払停止の抗弁を主張できる。
4 結論
以上のところから,原告の請求は理由がないことに帰するので,主文のとおり判決
する。
名古屋簡易裁判所
裁判官安田弘光

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