弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人下田三子夫の上告理由第一点について。
 論旨は虚無の証拠による事実認定の違法をいうけれども、原判決の引用する一審
判決挙示の証拠により、本件鉄塔基盤二組はいずれも本件a番地元地上に存在する
ことを認めるに充分であつて、被上告人両名の所有地と上告人の所有地の境界を所
論(A)(B)線と確定したことも充分首肯することができる。原判決添附図面は
その判示を明瞭ならしめるためのものに過ぎないことは明らかであつて、乙八号証
の一、二はいずれも本件土地登記簿謄本であり、これは鉄塔基盤の存する場所とは
何の関係もない。論旨は理由がない。
 同第二点について。
 本件においては、被上告人両名が上告人に対し、(イ)a番山林六反六畝二〇歩
を、(ロ)a番の一山林三反三畝一〇歩と(ハ)a番の二山林三反三畝一〇歩に分
筆して後者を上告人に売渡したことは当事者間に争なく、甲三号証ノ一、二、乙八
号証の一、二の登記簿謄本によれば右の(イ)を(ロ)と(ハ)に分筆登記してい
る事実が認定されているのであるから、なる程甲一号証の二、乙一号証(何れも土
地立木売買契約書)には「b番地一、山林一丁一反六畝二〇歩ノ内約五反八畝歩」
と記載されてはいるが、被上告人らと上告人の間には当時本件以外に土地の売買が
なかつたことは原判決挙示の証拠資料、就中D証人の証言(第二回)、被上告人B
の供述、乙一号証、甲一号証の二を綜合することによつて窺うに充分であつて、原
審が右を誤記と認めたことに違法があるとはいえない。所論は採用できない。
 同第三点について。
 論旨は、上告人主張のc番山林が本件a番元地に含まれていたとの事実を前提と
して判断遺脱をいうが、右事実は原審の否定したところであるから、所論は前提を
欠き採用できない。
 同第四点について。
 上告人主張のような陳述が原審口頭弁論でなされていることは記録上認められる
けれども、上告人主張のc番山林が本件a番の山林の元地に含まれていたとの事実
は原審の否定したところであること前点説示の通りであるから、論旨は原審の否定
した事実を前提とするのみならず、所論のような錯誤は原審の否定した趣旨である
こと原判文(「それが控訴人主張のような関係にないことは成立に争のない甲第二、
四、五号証、乙第二、三号証によりこれを認めることができる」との判示部分)上
充分に窺はれるから所論は採用できない。
 上告人の上告理由第一ないし第五はすべて事実誤認の主張であつて上告適法の理
由とならない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    高   橋       潔
            裁判官    石   坂   修   一

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