弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 検祭官の上告趣意第一点は判例違反をいうけれども、原判決は所論引用の各判例
と相反する法律判断を示しているものではないこと原判文上明らかであるから、所
論判例違反の主張は前提を欠くものであり、同第二点ないし第四点はいずれも単な
る法令違反の主張であつて、すべて適法な上告理由に当らない。
 しかし所論にかんがみ職権をもつて記録を調べてみると、刑法一五五条一項にい
わゆる公務所又は公務員の作るべき文書とは、公務所又は公務員が印章若しくは署
名を使用しその権限内において職務執行上作成すべき文書を汎称し、その職務執行
の方法範囲が法令に基づくと内規又は慣例によるとを問わないものと解すべきであ
る(昭和一二年七月五日大審院判決、刑集一六巻一一七六頁、明治四五年四月一五
日大審院判決、録一八輯四六四頁各参照)ところ、原判決は右文書の意義について
はこれと同一の法律見解を示した上、ただ具体的に本件事案においては、判示尼崎
市建設局管理課係員には本件文書を作成すべき法令上の権限はもちろん内規又は慣
例上の権限も認められないとし、更に本件文書の形式外観においても一般人をして
公務所又は公務員の職務権限内において作成されたものと信ぜさせるに足るものと
も認められない旨判示したものであること原判文上明らかである。
 しかしながら、記録によると、本件犯行当時(昭和三四年三月ないし同年一一月)
尼崎市においては、農地につき農地法四条又は五条による転用許可を受けて土地台
帳法の規定による地目変換の申告をする場合には、その地目交換申告書を尼崎市長
を経由して所轄神戸地方法務局尼崎支局に提出していたものであり(土地台帳法四
一条の三、一項参照)、その際、地目変換申告書に農地転用許可書の原本と写とが
添付され、これらの書類が同市建設局管理課に提出されると、同管理課係員におい
て、右地目変換申告書に受付印を押捺すると共に、右添付書類である転用許可書の
写がその原本と符合するときは、その写の末尾に「原本還付」と記入し且つ同係員
の認印を押捺した上、該原本はこれを申告者に返還し、管理課から直接、前記法務
局の支局に、右受付印の押捺された申告書と「原本還付」の記入等がなされた許可
書写とを送付するか、申告者の都合によつては、管理課において自ら右送付手続を
とることなく、これらの書類を申告者の手に渡し、申告者自身をして同支局に持参
させるという取扱がなされていたものであることが窺われる。
 そこで右管理課係員において、前記の如く転用許可書の写の末尾に「原本還付」
と記入し且つ同係員の認印を押捺すること即ち本件文書を作成することにつき、法
令上ないし慣例上の権限を有していたかどうかをみるに、本件当時施行されていた
土地台帳法の規定によると、土地所有者は地目変換をなしたときは、その旨を登記
所に申告しなければならない(同法三二条、四七条)が、「市町村はその市町村内
の土地につき土地台帳の副本を備えなければならない」(同法三七条の四)という
関係上、同法の規定による申告は、「当該土地の所在地の市町村長を経由してする
こともできる」(同法四一条の三、一項本文)のであつて、その場合には、「当該
市町村長が申告書を受け取つたときは、その時においてその申告書が登記所に提出
されたものとみなす」(同条二項)と規定する。
 これらの規定の主旨からすれば、本件において、地目変換申告書が当該土地の所
在地である尼崎市の市長を経由して所轄登記所である神戸地方法務局尼崎支局宛に
提出されたとき、同市役所においてこれを受理する権限を有する建設局管理課係員
は、これを受理するに当り、該申告書及びその添付書類につき形式的審査をなす権
限を有するものというべく、その添付書類に原本と写とがある場合に両者を照合し、
写が原本と符合することを確認した上原本を還付するとき、その写に原本還付の旨
を記載して捺印することも右権限の範囲内に属するものと解すべきである。されば
原判決が尼崎市管理課係員は本件文書を作成する法令上の権限がないとしたのは、
法令の解釈適用を誤つたものというべく、のみならず記録によれば、本件当時、尼
崎市役所においては、前記の如く写に「原本還付」の記入をなし係員の認印を押捺
すること即ち本件の如き文書を作成することは、従来から実務上の慣例として行わ
れていたものであることも窺われるのであるから、原判決は、当該公務所における
係員の文書作成上の慣例の存在を認めなかつた点において事実誤認の疑があるとい
うべきである。
 右はいずれも原判決に影響を及ぼすべきものであり、原判決はこれを破棄しなけ
れば著しく正義に反するものといわなければならない。
 よつて刑訴四一一条一号、三号、四一三条本文に則り裁判官全員一致の意見によ
り主文のとおり判決する。
 検察官 関之公判出席
  昭和三九年八月二八日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    山   田   作 之 助
            裁判官    草   鹿   浅 之 助
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    右   田   和   外

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