弁護士法人ITJ法律事務所

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       主   文
債権者らの本件仮処分申請はこれを却下する。
申請費用は債権者らの負担とする。
       事   実
第一 当事者の申立
一 債権者ら
 債権者らが債務者に対して、雇傭契約上の権利を有する地位を仮に定める。
 債務者は、債権者らに対して、昭和五三年四月二一日以降、本案判決確定に至る
まで毎月二〇日に別紙債権目録記載の金員を仮に支払え。
二 債務者
 主文同旨
第二 申請の理由
一 債権者らは、いずれも債務者日本電信電話公社の職員で、その入社年月日およ
び昭和五三年四月当時の勤務部課、担当業務は次のとおりである。
(一) 債権者A。昭和四三年四月一日入社、仙台電話局第一施設部市外線路課、
市外電話回線保守業務。
(二) 債権者B。昭和四五年四月一日入社、右同部課、右同業務。
(三) 債権者C。昭和四五年一〇月一日入社、古川電報電話局線路宅内課、電話
器設置市内線路保守業務。
 債権者らはいずれも線路技術職二級として昭和五三年三月当時、毎月二〇日、別
紙債権目録記載のとおりの賃金の支給を受けていた。
 債権者らは昭和五三年四月一六日千葉地方検察庁より千葉地方裁判所に対し、兇
器準備集合罪、火炎ビンの使用等の処罰に関する法律違反の罪、公務執行妨害罪、
および傷害罪で起訴された。債権者らはいずれも昭和五三年三月二六日千葉県警察
に逮捕され、現在千葉拘置所に勾留中である。
二 公社は右起訴された日の翌四月一七日、債権者らに対し、債権者らが、右罪名
に問われる行為をしたこと、右行為により公社の信用を著しく失墜させたこと、な
らびに各債権者においてそれぞれ左記期間無断欠勤したことが、公社職員就業規則
五九条三号、七号、一八号および二〇号に該当するとして(なお債権者Cについて
は同条三号は処分理由としてあげられていない)公社法三三条により懲戒処分とし
て免職する旨の意思表示をした。
(一) 債権者A。昭和五三年二月二八日から三月二日まで三日間ならびに三月二
五日から四月一六日までの間において一五日間。
(二) 債権者B。処分辞令書受領を拒絶したため欠勤日数の詳細は不明。
(三) 債権者C。同年四月三日から四月一六日までの間において一〇日間。
三 右処分は左記理由により無効である。
(一) 本件懲戒免職処分は懲戒権の濫用であり無効である。
(1) 本件処分の本質は、政治的目的による処分であり、懲戒権の濫用であつて
無効である。
 本件処分は、新東京国際空港の昭和五二年度内開港を、その反対派農民、労働者
の実力闘争により阻止されたことに対する政治的報復目的により行われたものであ
る。福田内閣は、国際的、国内的な政治責任を反対派に対する治安問題にすりか
え、成田新立法、破防法の適用検討、拳銃使用制限緩和、反対派大量逮捕、大量起
訴等々により反対派の徹底的弾圧政策を推し進めているが、公社当局は、右政府の
方針に従い、開港反対派の労働者を理由も根拠もなく実力で封じ込めようとしてお
り、本件処分もその一環として行われたものであつて、政治的思想、信条を理由と
する処分であることが明らかであるから懲戒権の濫用であり無効である。
(2) 本件債権者らに対しては、起訴休職が適用されるべきであつて、これに違
反してなされた本件懲戒免職処分は懲戒権の濫用であり無効である。
 日本電信電話公社法三二条、公社就業規則五二条は公社職員が「刑事事件に関し
て起訴されたとき」は休職にされることがあり、「休職の期間は、その事件が裁判
所に係属する間」として、起訴休職の制度を定めている。
 他方就業規則五九条一六号は「刑事事件に関し有罪の確定判決があつたとき」懲
戒処分を受けることがあると規定している。
 即ち公社の職員が刑事事件に関し起訴されたときは、原則として休職処分を受
け、有罪判決が確定したとき始めて懲戒処分を受けるのである。
 その趣旨は刑事訴訟法上、被告人は確定判決があるまで無罪の推定を受けるので
あるから、単に起訴されたという事実だけから、直ちにその職員を免職にして公社
外に排除することは許されないので、事件が裁判所に係属する間は休職といういわ
ば暫定的な取扱をなし、確定判決によつて正当な懲戒処分を行うとするものであ
る。
 それは職員の企業外非行については、公社にこれを独自に調査する権限も能力も
ないことから、事実関係および罪責の認定は全て裁判所の公権的判断に任せ、確定
判決があつたときに始めて懲戒処分を決定するということに他ならない。しかるに
公社は右起訴休職制度の趣旨を無視し、債権者らの行為、その違法性、有責性の有
無、程度を何一つ具体的に認定することなく、債権者らが起訴されたという一事の
みをもつて、本件懲戒免職処分を行つたものである。
 公社の懲戒処分としては、免職、停職、減給、戒告の四段階あるが、債権者らに
対し右いずれの懲戒処分を適用するのが妥当であるかは、刑事事件の審理を通じて
債権者らの罪責が明らかにならなければ判断できないのであつて、刑事事件の判決
を俟つ他はない。
 債権者らは本件起訴事実につき、公判において左の諸点を争う。
① 債権者ら個人の行為としての兇器準備集合、火炎びん行使、公務執行妨害、傷
害の各行為の不存在、および共謀共同正犯としての共謀の不存在。
② 公務執行妨害罪における適法な公務の不存在。すなわち新東京国際空港開港は
違法であり、それを強行するために警備に当つた機動隊員らの職務行為は違法であ
り、従つて公務執行妨害罪は成立しえない。
③ 債権者らの行為は正当行為であり違法性を阻却する。右空港の建設と開港は違
法又は不当なものであり、これを阻止する目的をもつて行われた債権者らの行為は
正当行為であつて違法性は阻却される。
④ 債権者らの全体の行動に対する関与の形態、故意の内容からして債権者らに責
任は存在しないかあるいは存在したとしても軽微である。
 以上種々の法律的判断を含む事実認定を行わなければ債権者らの罪責の有無、程
度を明らかにすることはできないのであつて、債権者らの刑事責任が明らかになら
ない以上独自の調査権能を有しない公社が債権者らに対して懲戒処分を下すことは
できないのである。これに違反して行われた本件懲戒免職処分は懲戒権の濫用であ
つて無効である。
(二) 本件処分は懲戒理由が存在せず無効である。
(1) 就業規則五九条七号、二〇号の「非行」「不都合行為」について
① 債権者らが起訴罪名に問われる行為を行つていないことは、前述したとおりで
あり従つて「非行」ないし「不都合行為」が存在しないことは明らかである。
② 仮に、起訴事実に該当する行為が存在したと仮定しても、右起訴事実は、左記
理由により「非行」ないし「不都合行為」に該らない。
 労働者は雇傭契約によつて一定の時間、一定の場所において労務を提供し、その
対価として賃金を受けるという法律関係にあり、このような労働力の提供を離れ
て、使用者に身分的に従属し、生活上の監督を受くべき地位にあるものではない。
もつとも労働力が労働者個人を離れて抽象的に存在するものではないことから、労
働者の私生活上の行為が、労働力提供の場たる企業内の秩序、職場規律に影響を及
ぼす場合がありうるが、それはあくまで原則に対する例外として、当該行為と企業
秩序の関連性が明確なものでなければならない。
 ところで本件債権者らの起訴事実は客観的に全く公社業務と関係のない企業外行
為であり、また主体的にも債権者らはいずれも単純な肉体労務を提供するに過ぎな
い一般職員であつて、管理職でもなく、まして公社を代表する地位にあるものでも
ないから右企業外行為が企業秩序に影響を及ぼすことはありえない。
 よつて本件起訴事実は、いかなる意味でも就業規則五九条七号、二〇号の「非
行」ないし「不都合行為」に該当しない。
(2) 就業規則五九条一八号の無断欠勤について
 債権者らは本年三月二六日千葉県警察に逮捕され、勾留された後、直ちに休暇届
を作成し、最初の弁護士接見の際、それぞれ弁護士に対し、公社に届けるよう依頼
して、右休暇届を手渡し、右接見した弁護士より債権者らの同僚を通じて、それぞ
れの職場の上司に対して右休暇届が提出されたものである。
 従つて債権者らはいずれも公社に対し、債権者らが不当に逮捕、勾留されている
ために出勤できないことを遅滞なく通知しているのであつて無断欠勤ではない。
 就業規則の本条項は出勤が可能であるにもかかわらず、職員の恣意により欠勤す
ることを懲戒事由としたものであつて、職員が出勤の意思を有しているにもかかわ
らず出勤が不可能な特別の客観的事情があり、かつその旨を公社に届出ている場合
には適用されないことは明らかである。
四 公社は本年四月一七日以降、債権者らをその職員として扱わず、賃金も支払わ
ないので、債権者らは公社に対し、雇傭契約関係存在確認、および賃金支払請求の
訴を提起すべく準備中であるが、債権者らはいずれも労働者であり、資産はなく、
公社からの賃金のみによつて各債権者およびその家族の生活を維持しているもので
あつて本案訴訟の確定を待つていては著しい損害を蒙るので本件仮処分の保全の必
要性がある。
第三 答弁および債務者の主張
一 申請の理由一項および二項記載の事実は認める。ただし、二項(二)の債権者
Bの処分理由たる無断欠勤日数は昭和五三年三月二七日から同年四月一六日までの
間における一六日間である。三項中(一)の(1)は否認する。同(2)のうち債
権者ら主張のとおり刑事休職制度の定めがあること、「刑事事件に関し有罪の確定
判決があつたとき」が懲戒事由として掲げられていることは認めるが、その余は否
認する。三項中(二)の(1)は否認する。同(2)のうち、債権者らが昭和五三
年三月二六日逮捕されたのちひきつづき勾留されていることは認めるが、休暇届作
成提出の経過は不知、その余は否認する。四項は争う。
二 債権者らは、いずれも過激派集団第四インター(日本革命的共産主義者同盟の
略称。以下単に第四インターという。)のメンバーと目されていたものであるとこ
ろ、いわゆる三・二六成田空港開港阻止闘争に参加し、(一)債権者B、同Cにお
いては、(1)多数のものと共謀のうえ、昭和五三年三月二六日午後一時三〇分過
ぎ頃、千葉県成田市<以下略>所在の新東京空港警察署前路上付近において、警備
中の多数の警察官らに共同して危害を加える目的で、火炎びん・鉄パイプ・石塊な
どの兇器を準備して集合し、(2)前記日時頃、前記場所において、前記警察官ら
に対し、鉄パイプで殴打し、石塊・火炎びんを投げつけるなどして右警察官らの職
務の執行を妨害し、多数の警察官らに傷害を負わせ、(二)債権者Aにおいては、
多数の者と共謀のうえ、(1)右同日午後二時過ぎ頃、同市<以下略>先路上付近
において警備中の多数の警察官らに共同して危害を加える目的で、火炎びん・鉄パ
イプ・石塊などの兇器を準備して集合し、(2)同日時頃、同場所において、前記
警察官らに対し、鉄パイプで殴打し、石塊・火炎びんを投げつけるなどして、右警
察官らの職務の執行を妨害し、警察官一名に傷害を負わせた。
 債権者らの右行為は、公社職員としてはもとより一般市民としても許すことので
きないものであり、債権者らが右所為に及んだことは、公社職員としての品位信用
を著しく傷つけ、かつ公社の社会的評価、信用を甚だ害するものであつて、これは
就業規則五九条七号の「職員としての品位を傷つけ、または信用を失うような非行
があつたとき」および同条二〇号の「その他著しく不都合な行為があつたとき」の
各懲戒事由に該当する。
三 債権者らは、前記各行為の現場において現行犯逮捕され、勾留されて取調べを
受けたうえ債権者ら主張のとおり起訴されたものであるが、債権者らは次のとおり
無断欠勤をした。
(一) 昭和五三年三月二四日現在において、債権者AおよびBは、昭和五二年四
月一日から同五三年三月三一日までの年次休暇年度における年次休暇二〇日をすべ
て費消し、残余年休日数はゼロであつたところ、同年三月二四日、両名は上司のD
課長に対し、債権者Aにおいて三月二五日から同月三一日まで、債権者Bにおいて
三月二七日から同月三一日まで休みたい旨申出で、D課長から年休の余りはないし
欠勤は承認できないから出勤せよと命じられたにもかかわらず、債権者Aにおいて
は三月二五日から四月一六日までの間において一五日間、債権者Bにおいては三月
二七日から四月一六日までの間において一六日間無断欠勤した。なおそのほかに債
権者Aは上司の命に反して同年二月二八日から三月二日までの三日間も無断欠勤し
た。
(二) 債権者Cは、昭和五三年三月二七日から同月三一日まで上司の承認を得て
年次休暇をとり、四月一日と同月二日は週休日であつたが、四月三日からは勤務日
であるにもかかわらず、不当逮捕勾留を受けて出勤出来ないと記載した書面を申請
外E社員に託したまま四月一六日までの間において一〇日間無断欠勤した。
(三) 債権者らのこれら無断欠勤は、その動機が前記犯罪行為遂行のためにあ
り、また逮捕勾留されて長期の欠勤にわたることとなるのを充分覚悟のうえでなさ
れたものである。これは、就業規則五条一項にいう「みだりに欠勤し」に該当し、
同規則五九条一八号の懲戒事由である「第五条の規定に違反したとき」に該当する
ことは明らかであり、また債権者A、Bが事前に上司から欠勤を禁じられ、強く出
勤を命じられたのにこれを無視して欠勤に及んだ所為は、同規則五九条三号の懲戒
事由「上長の命令に服さないとき」にも該当する。
四 以上のとおり、本件懲戒免職処分は正当であるから、債権者らは仮に職員たる
の地位を求めるに足る被保全権利を有しない。
 また、債権者Aの妻は迫電報電話局に勤務して給与を得ており、債権者Bの母は
鹿島建設に、妻は地方公務員として保育所に勤務して給与を得ているし、債権者C
は独身で扶養家族はないから、保全の必要性も無い。
       理   由
一 債権者らが債務者の職員であるところ、昭和五三年四月一六日に千葉地方検察
庁検察官より千葉地方裁判所に対し、兇器準備集合罪、火炎びんの使用等の処罰に
関する法律違反の罪、公務執行妨害・傷害罪で起訴されたこと、債務者が債権者ら
に対し、申請の理由二項記載のとおり(ただし債権者Bの処分理由の一となつた無
断欠勤日数は昭和五三年三月二七日から同年四月一六日までの間における一六日間
である)懲戒処分として免職する旨の意思表示をしたこと、以上の事実は当事者間
に争いがない。
二 債務者は、債権者らが第四インターのメンバーとして起訴された事実に該当す
る行為をなし、右は公社職員就業規則五九条七号および二〇号の各懲戒事由に該当
する旨主張するので検討する。
 疎乙第一六号証によると、債権者Aは、昭和五三年三月二六日、成田市<以下略
>、朝日台三又路付近で多数の者らと共に機動隊員に対して火炎びんや石を投げつ
けたり鉄パイプをふりまわすなどした集団の一員として、同日午後二時一〇分頃右
同所付近で現行犯逮捕され、その時同人は赤ヘルメツトをかぶり、エンジ色のヤツ
ケを着用しライターを所持していたこと、債権者Bは、右同日、ほか多数の者と成
田空港内にある管理ビルあたりまで進入し、集団で機動隊員らに火炎びんや石を投
げつけたり、鉄パイプをふりまわすなどしていた一員として、同日午後一時四三分
頃成田市<以下略>付近で現行犯逮捕され、その時同人は、赤ヘルメツトをかぶり
エンジ色のヤツケを着用しライターを所持していたこと、債権者Cは、右同日、ほ
か多数の者と成田空港内にある管理ビル付近まで進入し、集団で機動隊員らに火炎
ビンや石を投げつけたり鉄パイプをふりまわすなどしていた一員として、応援にか
けつけた機動隊員らに追われて逃げる途中、同日午後一時五六分頃成田市<以下略
>付近で現行犯逮捕され、その時同人は、赤ヘルメツトをかぶり、エンジ色のヤツ
ケを着用し、ライターを所持していたこと、以上の事実が疎明され、また疎乙第一
八号証によると、債権者AおよびBはこれまでひんぱんに他の出勤職員に対して第
四インターの機関紙「世界革命」の号外やビラなどを配つていたことが疎明され、
右疎明事実にてらすと、反対の疎明がない以上は債権者らが前記懲戒免職処分の理
由とされた行為をしたものと推認される。そして反対の疎明はない。
 ところで、債務者たる日本電信電話公社が高度の公共性を有する公法上の法人で
あつてその廉潔性の保持が社会から要請されていることを考慮すると、債権者らが
前記行為を職場外において職務遂行に関係のない行為として日曜日に行なつたもの
であるとしても、これをもつて前記懲戒免職事由にあたるとしてなした債務者の本
件懲戒処分が裁量権の範囲を著しく逸脱したものであるとは解し難い。
三 債権者らは、成田空港の建設および開港は違法であつてこれを警備する機動隊
員の職務行為は適法な公務と言えず、これに対する阻止行動は正当行為であるし、
また公務執行妨害罪は成立しないから、債権者らにおいて前記起訴罪名に該当する
とされた行為をなしたとしてもそれは違法性を阻却するものであるので、これをも
つて懲戒事由にあたるとして債務者が行なつた本件懲戒免職処分は懲戒権の濫用で
あつて無効であると主張するが、債権者ら提出の疎甲号各証のみでは右債権者らの
行為が違法性を阻却し従つて本件懲戒処分が懲戒権の濫用で無効であるとは認め難
く、他にこれを認めるにたりる疎明はない。
四 債権者らは、債務者は債権者らを「刑事事件に関し起訴されたとき」に該当す
るものとして刑事休職に付し、有罪の確定判決があつたとき始めて懲戒にすべきも
のであつて、これに反してなした本件懲戒免職処分は懲戒権の濫用であると主張す
る。
 しかし、公社職員就業規則五九条の懲戒事由をみると、有罪の確定判決が無くと
も同条七号その他各号の懲戒事由があるときに懲戒できることその規定上明らかで
あり、また債務者の債権者らに対する本件懲戒が、債権者らにおいて刑事事件とし
て起訴されたことをその事由としているものでなく起訴された罪名に該当する所為
を行ないそれが同条七号に該当すると判断されたことによるものであることが明ら
かである。そして、債務者において、債権者らが右各所為を行なつたと認定したこ
とに事実誤認があつたという疎明がないことおよび右各所為を行なつたことが懲戒
免職事由にあたると判断したことに著しい裁量権の逸脱があつたとは認められない
こと前述のとおりであるから、債権者らの右主張は採用できない。
五 債務者の債権者らに対する本件懲戒免職処分は、債権者らが無断欠勤をしたこ
とをも理由の一としている。そしてその無断欠勤とされた日数の大部分は債権者ら
が前記のとおり成田空港開港阻止闘争に参加し兇器準備集合罪や公務執行妨害罪等
に該当する行為をなして現行犯逮捕された以後のものであつて、これは債権者らが
逮捕された後引続き勾留されていることによるものと認められる。債務者はこれを
も無断欠勤として懲戒免職処分の理由の一に掲げている。しかし、無断欠勤は右懲
戒処分の理由としては付随的なものであつて、主たる理由は債権者らにおいて前記
犯罪行為をなしたことにあること、本件懲戒処分の経過にてらして推察されるとこ
ろである。そして、債権者らにおいて右行為を休日に職務遂行と関係なしに犯した
ものであつてもこれをもつて懲戒免職にあたる行為であるとしてなした債務者の処
分が著しく裁量権を逸脱したとは認められないこと前述のとおりであるから、債権
者らが逮捕された後欠勤しているのが懲戒事由たる無断欠勤に該当するか否かにつ
いては判断の限りでないと解する。
六 以上のとおりであるから、債権者らの主張についてはその被保全権利について
疎明があつたとは認めることはできない。
 よつて、保全の必要性について判断するまでもなく債権者らの本件申立は理由が
ないのでこれを却下することとし、申請費用の負担について民事訴訟法八九条を適
用し、主文のとおり決定する。
(裁判官 伊藤和男 後藤一男 斎藤清実)
(別紙省略)

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