弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     昭和二六年四月二三日執行の秋田県鹿角郡D町議会議員の一般選挙にお
ける当選の効力に関し訴外Eから提起された訴願について被上告人が同年一〇月三
〇日なした同年五月一九日右D町選挙管理委員会が訴外人の異議申立に対して為し
た決定を取消し上告人の当選を無効とする旨の裁決を取消す。
     訴訟の総費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士金崎益枝の上告理由について。
 原判決の確定したところは、次のとおりである。すなわち、昭和二六年四月二三
日執行された秋田県鹿角郡D町議会議員の一般選挙において、原審原告F、同Gの
両名は各九九票、同(上告人)Aは九六栗の得票でいずれも当選し、訴外Eが九五
票の得票で首位落選者であつたこと、右訴外人が同月二三日附を以て翌月三日被上
告人に対し訴願を提起したのに対し被上告人は同年一〇月三〇日「同年五月一九日
右D町選挙管理委員会が訴願人の異議申立に対して為した決定を取消し当選人原審
原告等三名の当選を無効とする。」との裁決を為し、その旨の告示をしたことは、
当事者間に争なきものとし、また、原判決は、右裁決で無効と認められたいわゆる
潜在無効投票四票中I、J、Kの投票合計三票だけを自筆によらない無効のもので
あり、従つて原審原告(上告人)Aの得票から右無効の三票を控除すればその得票
は九三票となり首位落選者の得票より少くなるものとし、上告人の当選を無効であ
るとして本訴請求を棄却したものである。しかるに、昭和二七年八月一六日法律三
〇七号により改正追加された公職選挙法二〇九条の二は所論のごとく、いわゆる帰
属不明の潜在無効投票があることが判明したときは、当該選挙管理委員会又は裁判
所は九五条の規定の適用に関する各候補者の有効投票の計算については、その開票
区ごとに各候補者の得票数から当該無効投票数を各候補者の得票数に応じて按分し
得た数をそれぞれ差し引くものとする旨を規定し、同改正法附則二項但書は、右二
〇九条の二の規定を現に係属している訴訟についても適用することを規定している。
従つて、前記のごとく右規定と異なる判断により上告人の当選を無効とした原判決
は、結局違法に帰したもので、所論はその理由があり、原判決は破棄を免れない。
 そして、原判決の確定した原審原告等三名及び首位落選者の得票数から原判決の
確定した無効投票数三票をその得票数に応じて按分し得た数を差し引いても上告人
の得票数が首位落選者の得票数よりも多いことは明白であるから、各候補者全員の
得票数を確定するまでもなく上告人に対する被上告人の前記裁決を取消すベき旨の
上告人の本訴請求を正当として認容すべきものとし訴訟費用につき民訴九六条、八
九条に従い主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    入   江   俊   郎

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