弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主       文
 1 原告の請求を棄却する。
 2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
   被告は,原告に対し,80万円及びこれに対する平成14年10月1日から
支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
   本件は,桃山学院大学を設置運営する被告との間で在学契約を締結し,入学
金等を納入した原告が,後に桃山学院大学への入学を取りやめ,準委任契約として
の在学契約を解除したとして,不当利得による利得金返還請求権に基づき,被告に
対して,入学金等の返還として80万円及びこれに対する訴状送達日の翌日である
平成14年10月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
の支払を求めた事案である。これに対して,被告は,上記80万円の法的性質及び
原告と被告との間の在学契約において,いったん納入された入学金等は,理由のい
かんを問わず返還しない旨の特約があることを根拠に,支払を拒絶している。
第3 争いのない事実等(証拠等によって容易に認められる事実を含む。)
1 当事者(争いがない。)
 (1) 原告は,平成11年3月9日,桃山学院大学社会学部社会学科の一般入試M
方式による一般入学試験を受験し,同月15日に合格した者である。
 (2) 被告は,教育基本法及び学校教育法に従い,桃山学院大学(被告及び桃山学
院大学を併せて,以下,単に「被告」という。)を設置運営する学校法人である。
2 原告が,被告への入学を辞退した経緯
(1) 被告が,平成11年度の受験生に対して配布している「受・験・ガ・イ・ド」
と題する冊子(乙3)には,「一旦納入された入学手続時納入金は,理由の如何に
かかわらず返還いたしません。ただし,入学辞退申出締切日までに申し出られた方
に限り,入学金を除く授業料と施設費を返還します。」と記載されている。
(2) 原告は,平成11年3月9日,被告の社会学部社会学科の一般入試M方式によ
る入学試験を受験し,同月15日に合格通知を受けた。(争いがない。)
(3) 被告が,合格発表後において,原告に交付した平成11年度入学手続案内書
(乙4)には,以下の内容が記載されている。
 ア 一般入試M方式による入学試験の合格者は,平成11年3月15日から同月
18日までの間に,入学金,初年度前期授業料(以下,単に「前期授業料」とい
う。)及び初年度前期施設費(以下,単に「前期施設費」という。)の納入を含め
た入学手続を完了せねばならない。
 イ いったん納入された入学金,前期授業料及び前期施設費は理由のいかんに関
わらず返還しない。ただし,入学辞退申出締切日である平成11年3月23日まで
に入学辞退の手続を行った者に対しては,前期授業料及び前期施設費を返還する。
(4) 原告は,乙4に目を通した上で,平成11年3月18日ころ,被告に対し,入
学金30万円,前期授業料35万円及び前期施設費15万円(以下,これらすべて
を総称して「学納金」ともいう。)を納入し,必要書類を提出して入学手続を完了
した。(争いがない。)
(5) 原告は,平成11年3月31日,被告に対して,入学を辞退する旨電話で通知
し,その後,近畿大学に入学した。(乙6,弁論の全趣旨)
3 上記2(3)(4)の事実からすれば,原告は,被告から交付された入学手続案内書
(乙4)に目を通し,平成11年3月23日を過ぎてから入学辞退の手続を行った
者に対しては,既に納入した学納金は一切返還されないことを認識した上で,被告
に学納金を納入したものであることが推認されるから,原告と被告との間には,原
告が,平成11年3月23日を過ぎてから被告への入学を辞退した場合には,被告
は,既に納入された学納金を返還しない旨の合意が成立しているものと解すべきで
ある(以下,かかる合意をもって「本件不返還特約」という。)。 
第4 争点及び当事者の主張
 1 学納金の法的性質をいかに解すべきか(そもそも,被告は,学納金を納入し
た後に自ら入学を辞退した原告に対し,学納金を返還すべき義務を負いうる
か。)。
  (1) 原告の主張
 学納金は,入学金を含め,すべて,原告が被告から教育役務等を受けることにつ
いての対価(準委任契約の受任者の前払報酬)としての性質を有するから,原告
が,入学を辞退したことにより,被告から教育役務等の提供を受けることなく在学
契約が終了した場合には,被告は,もはや学納金を保持する法律上の原因を失うか
ら,被告は,原告に対して,学納金を返還する義務を負いうる。 
  (2) 被告の主張
 原告が被告に学納金を納入した時点において,原告被告間に入学地位取得保持契
約なるものが成立し,その後,原告が,入学に必要な書類を提出し,被告に対する
入学手続を完了した時点で,別途,原告被告間に在学契約が成立する。したがっ
て,学納金は,すべて,被告に入学しうる地位の対価としての性質を有するもので
あり,原告が,学納金を納入した後に自ら入学を辞退した場合,被告に入学しうる
地位を放棄したにすぎず,既に支払われた学納金が,被告の不当利得になるわけで
はないから,被告が,原告に対して,学納金を返還すべき義務を負うことはありえ
ない。(その意味で,本件不返還特約は,当然のことを確認的に合意したものにす
ぎない。)
 2 本件不返還特約が,公序良俗に反して無効であるといえるか。
  (1) 原告の主張
 以下の理由から,本件不返還特約は,原告の無思慮・窮迫に乗じて,甚だしく不
相当な財産的給付を約束させたものとして,公序良俗に反し無効である。
ア 被告は,自ら募集要項や入学手続を決定し,合格を決定する立場にあるのに対
し,原告は,後日,他の志望校に合格したために,被告への入学を辞退し,学納金
の返還を受けられなくなることを覚悟した上で,被告に学納金を納めるのか,それ
とも,より優先的に志望している他大学に合格できなければ浪人することを覚悟し
た上で,被告に学納金を納めないかという二者択一を迫られる状況にある。
  このような状況下において,原告が,被告に学納金を納入しているのは,決し
て本件不返還特約に対して積極的に同意したからではなく,単に,他の志望校に合
格できなかった場合に浪人したくないがためにすぎない。
 したがって,被告は,原告の窮迫につけ込んで本件不返還特約を押しつけたもの
といえる。
イ 原告が入学を辞退したことにより,被告に実際生じる積極的損害は,せいぜ
い,原告に対する各種通知の郵送費や人件費等,わずかな額に限られるのに対し,
原告は,本件不返還特約によって,入学金及び半年間の授業料等相当額の返還を受
けられなくなるものである。
 このように,被告に生じる実際の損害額と,被告が取得する金銭との差は何十
倍,何百倍にもなるものであって,明らかに不相当な財産的給付というべきであ
る。
ウ 被告は,原告の入学辞退により,学納金を取得できなくなるという不利益を被
ることになるが,被告においては,長年の経験から実際に入学する学生の数を予想
することができるはずであるから,入学定員を上回る合格者を出すことなどによっ
て,そのような不利益を回避することが十分可能であるから,本件不返還特約には
合理性が認められない。
  (2) 被告の主張
 以下の理由から,本件不返還特約は,公序良俗に反するものではない。
ア 原告は,多数の大学の中からどの大学を受験するかについて,何らの制約も課
せられておらず,自己の学力,将来の展望,大学間の優劣順位及び入試日程等の諸
事情を考慮した上で,希望する大学の一つとして被告を選択して受験し,自らの判
断と責任に基づいて被告に対する入学手続を行ったものであるから,被告が,原告
の窮迫につけ込んで本件不返還特約を押しつけたとはいえない。
イ 私立大学は,その運営資金の多くを学生からの納入金に依拠しており,国公立
大学に比して,その財政基盤が脆弱であるから,入学希望者からいったん納入され
た学納金を一定の期限以降返還しないとする本件不返還特約は,結果的に私立大学
の運営を助成する役割を果たしているという点において合理性を有するものであ
る。
ウ 大学の定員は文部科学省の認可事項になっていることに加え,定員を大幅に上
回る学生を受け入れることは,教育環境の悪化を招くため,合格者数や入学者数の
算定は慎重に行わなければならないし,他方において,仮に定員割れを起こした場
合,大学のイメージダウンにつながり,これに伴う入学辞退者の増加による減収
が,大学の財政に大きな影響を及ぼすことになる。
 かといって,大規模な補欠合格を実施する場合には,必然的に,当初の合格者に
比して学力が大幅に下回る者を対象にせざるを得ず,当初の合格者に比して学力の
下回る者にも入学許可を与える大学であるとの風評が立ち,大学のイメージダウン
につながるばかりでなく,入学者について学力層の分断が生じることになるため,
教育環境の悪化を招くことになる。
 それゆえ,被告が,本件不返還特約を利用してこれらの不利益を回避しようとす
ることは,合理性を有するものである。
第5 争点に対する判断
1 争点1(学納金の法的性質をいかに解すべきか〔そもそも,被告は,学納金を
納入した後に自ら入学を辞退した原告に対し,学納金を返還すべき義務を負いうる
か。〕)について
 (1) 在学契約の成立について
   大学の入学試験を受験して合格した者(以下「入試合格者」という。)が,
学生募集要項等の定める日までに,大学に対して必要書類の提出とともに学納金を
納入して入学手続を完了した場合,特段の事情のない限り,この手続の履践によっ
て入試合格者の入学意思と大学のこれを受諾する意思とが合致したものとみること
ができる。
 したがって,原則として,この時点において,大学が,入試合格者に対して,次
年度の初日である4月1日以降,継続的に教育役務等を提供し,入試合格者が,こ
れについての対価を支払うことを主たる内容とする,準委任契約に類似する双務有
償の無名契約である在学契約が成立するものと解される。
 本件においては,特段の事情はないから,原告が,平成11年3月18日ころ,
被告に対して学納金を納付し,必要書類を提出して入学手続を完了した時点で,原
告被告間に在学契約が成立したものと認められる。
(2) 学納金の性質について
  ア 学納金には,大別して,入学時にのみ支払われる入学金と授業料その他毎
年支払われるべき金員の二種類が存在することは公知の事実であり,一般的に,入
学金の額が,授業料と比較すると低額であることも,当裁判所に顕著な事実であ
る。 
 イ 前期授業料・前期施設費について
   学納金のうち,前期授業料及び前期施設費については,その名目の相違や金
額の多寡,そして,前述のように,学生が,入学後においても,毎年支払うべき金
員であるという性格に鑑みると,これらの金員は,入学後において,被告から教育
役務等の提供を受けることの対価としての性質を有するものと解すべきである。
  この点,被告は,学納金が,すべて被告に入学しうる地位の対価であると主張
する。
  しかしながら,入学金はともかく,その他の費用も含めた学納金全額を,入学
しうる地位の対価とみることは,各費用の名目及び金額の大きさからして相当でな
いし,仮に,学納金全額が,入学しうる地位の対価であるとするならば,原告は,
少なくとも,入学初年度の前期中は,無償で被告から教育役務を受けているものと
解せざるを得ないが,そのような理解が大学運営の実態に反するものであることは
明白である。
  よって,被告の上記主張は採用することができない。
ウ 入学金について 
 (ア) 学納金のうち入学金については,その名目や,学生が,入学時に一度だけ
支払うべき金員であるという性格,そして,多くの大学において,入学金とその他
の学納金とで,入学金の方が低額であり,納入時の取扱い(納入期限,分割納入制
度・納入後の返還の有無)にも区別がなされており(弁論の全趣旨),実際に,被
告においても,前記争いのない事実等に記載のとおり,区別された取扱いがなされ
ている(入学辞退申出締切日である平成11年3月23日までであれば,前期授業
料及び前期施設費は返還するとされている。)こと,「私立大学の入学手続時にお
ける学生納付金の取り扱いについて」(文管振第251号昭和50年9月1日文部
大臣所轄各学校法人理事長あて文部省管理局長文部省大学局長通知・乙1,以下
「文部省通知」という
。)において,「入学料以外の学生納付金については,合格発表後,短期間内に納
入させるような取扱いは避けることとし,」とされ,「平成15年度大学入学者選
抜実施要項について」(14文科高第170号平成14年5月17日各国公私立大
学長,各国立短期大学部学長及び独立行政法人大学入試センター理事長あて文部科
学省高等教育局長通知・乙2)においても,「少なくとも入学料以外の学生納付金
を納入する期限について,合格発表後,短期間内に納入させるような取扱いは避け
る等の配慮をすること。」とされていることから,文部行政においても,入学金に
ついては,その他の学納金とは別の性質を有するものと捉えられていることが窺わ
れる。
    このような事情からすれば,入学金は,その他の学納金とは性質が異なる
ものといわざるを得ず,大学から教育役務等の提供を受けること自体の対価である
とは解されない。
  一方,学生の立場からすれば,特定の大学に入学しうる地位を取得するという
ことは,それによって当該大学への進学というひとつの進路が確保されることであ
り,その他の可能性と併せて,自らの進むべき進路についての選択肢を多様化する
ことにつながるものである。したがって,特定の大学に入学しうる地位を取得する
こと自体に一定の価値を有するものと評価することが可能であり,前記のとおり,
入学金が入学時に一度だけ支払うべき金員であることにも鑑みれば,入学金は,当
該大学に入学しうる地位の対価(一種の権利金)としての性質を有するものと解す
るのが相当である。
 (イ) この点,原告は,入学金も,被告から教育役務を受けることについての対
価であると主張し,その論拠として,入学金が入学しうる地位の対価であるとすれ
ば,原告と被告との間で,在学契約とは別個の契約が締結されたものと考えざるを
得ないが,両契約の関係及び具体的成立時期等につき合理的説明がつかないことな
どを挙げている。
  しかしながら,入学金を入学しうる地位の対価と捉え,その他の学納金を教育
役務等の提供を受ける対価と捉えたからといって,必ずしも,在学契約とは別個の
契約なるものを観念しなければならない必然性はなく,在学契約の意思解釈とし
て,入学金とその他の学納金の性質とを別意に合意したものと理解することは十分
に可能である。
   以上からすれば,原告の上記主張を採用することはできない。
(3)ア 上記のとおり,学納金のうち,前期授業料及び前期施設費については,実際
に被告に入学した後に被告から教育役務等の提供を受けることの対価としての性質
を有するものであるところ,原告は,学納金を納入して入学手続を完了した後に,
次年度に入る前に入学を辞退することによって在学契約を将来に向けて解除し(民
法656条,651条1項,652条,620条参照),被告から教育役務等の提
供を受ける機会を得ることなく在学契約が終了している。
 そうである以上,原告が納入した前期授業料及び前期施設費は,本来的には,原
告に返還されるべき金銭であると解すべきである(ただし,原告と被告との間に
は,在学契約に伴う本件不返還特約が存在するため,別途,かかる特約の有効性を
検討する必要がある。)。
イ これに対し,入学金については,入学しうる地位を得たことの対価としての性
質を有するものであるところ,原告は,被告に対する入学手続を完了した時点にお
いて,既に,反対給付としての入学しうる地位を取得しており,その後に,原告
が,自ら入学を辞退することにより在学契約が将来に向けて解除されたとしても
(民法656条,651条1項,652条,620条参照),被告が,入学金を返
還すべき義務を負うことはないものと解すべきである。
 2 争点2(本件不返還特約が,公序良俗に反して無効であるといえるか。)に
ついて
  (1) この点,原告は,本件不返還特約は,原告の無思慮・窮迫に乗じて,甚だ
しく不相当な財産的給付を約束させたものとして暴利行為に当たり,公序良俗に反
し無効である旨主張する。
  たしかに,原告からすれば,受験したすべての大学の合否が明らかになった
後,その結果を踏まえて入学すべき大学を選択し,その選択した一つの大学につい
てのみ学納金納入等の入学手続をとることが可能であれば,あるいは,入学するこ
とを選択した大学以外の大学から既に納入した学納金が返還されるのであれば,心
理的・経済的負担も軽く済み,それが一番望ましいことはいうまでもない。
(2)ア しかしながら,被告は,文部科学省から,あらかじめ定められた収容定員を
遵守するよう指導を受けており,かかる収容定員に基づいて財務計画を策定してい
るところ,入学者数が定員を大幅に超過したり,逆に定員を大幅に割り込んだりし
た場合には,国庫補助金が減額又は不支給となる可能性がある(私立学校振興助成
法5条2号,3号,6条)。また,入学式の時点で欠員が生じている場合には,途
中で欠員の補充を行うことが認められない以上,被告は,以後,一般的な修学年限
である4年間にわたり欠員が生じたまま学校運営を行わざるを得ず,その間,被告
は欠員分の授業料等を取得できないという損失を被ることになる。(弁論の全趣
旨)
   したがって,被告としては,早期かつ確実に入学定員に足りる入学者を確保
する必要性があるところ,入学式の日が迫り,繰り上げ合格等により欠員を補充す
ることが困難となる一定時期以降,入学希望者から納入された学納金を一切返還し
ない旨の取扱いをすることによって,欠員が生じること及び欠員が生じた場合に発
生する損失を可及的に回避しようと試みることは,全く不合理であるとまでは言い
切れない。
 イ そして,被告が,平成11年度において,入学辞退者に対する入学金以外の
学納金の返還締切期限を3月23日に設定したことにつき合理性が認められるかと
いう点については,文部省通知によると,「…ついては,今後少なくとも入学料以
外の学生納入金については,合格発表後,短期間内に納入させるような取扱いは避
けることとし,例えば,入学式の日から逆算しておおむね2週間前の日以降に徴収
することとする等の配慮をすることが適当と考えますので,善処されるよう願いま
す。」とされており(乙1),平成11年度における被告の入学式は4月5日に実
施されている(乙4)。
   してみると,被告が設定した学納金の返還締切期限は,実質的に見て,文部
省通知が定める上記基準にも反するものではないし,しかも,ほとんどの私立大学
の合格発表が終了している時期であるとも認められる(顕著な事実)から,特段不
合理なものであるとまではいえない。
 ウ また,このように,いったん大学に納入された学納金を一定の期限以降一切
返還しない旨の特約は,全国各地にある多数の大学において,過去数十年にわたっ
て継続的に利用されてきたものであり(顕著な事実),このような大学側の取り扱
いについては,いくつか訴訟により争われた事案も存在するものの,少なくとも平
成13年4月1日に消費者契約法が施行される以前においては,大きな社会問題と
して議論されたこともなく,従前の世論も,消極的にとはいえ,このような大学側
の取扱いを概ね是認してきたものと推認される。
(3)ア この点,原告は,被告に入学しない場合に返還されないことを承知の上で,
学納金を納めるか,それとも,より優先的に志望している他大学に合格できなけれ
ば浪人することを覚悟した上で,被告に学納金を納めないかという二者択一を迫ら
れる状況にあり,本件不返還特約は,このような原告の窮迫した状況につけ込んで
押しつけられたものである旨主張する。
  しかしながら,前記争いのない事実等によると,原告は,少なくとも,より優
先的に志望している他大学に合格できなかった場合には,被告に入学したいとの積
極的意思を有していたからこそ,本件不返還特約の存在を知りながら,他大学の合
格発表がなされる前に,あえて被告に対して高額な学納金の納入を含めた入学手続
を行ったものと推認しうるのであって,ただ単に,いわゆる浪人生活を送ることを
回避したいとの消極的理由のみから,やむにやまれず被告への入学手続を行ったも
のとまで認めることはできない。
  したがって,その限りにおいて,原告は,自らの自由な意思に基づいて被告に
学納金を納め,入学手続をとったものといわざるを得ないから,学納金を納めるか
浪人を覚悟するかという二者択一を迫られる窮迫した状況にあったとする原告の主
張は認めることができない。
イ また,原告は,被告が入学定員を上回る合格者を出したり,補欠合格を行うこ
となどによって,入学辞退者が出た場合の経済的損失を回避することが十分可能で
あるから,本件不返還特約には合理性がないと主張する。
  たしかに,被告は,平成7年から平成11年までの間,毎年,全学部における
入学定員を2.3倍ないし2.6倍程度上回る合格者(補欠合格者を含む。)を発
表しており,その結果,定員を上回る入学者数を確保していることが認められる
(争いがない。)。
  しかし,仮に,本件不返還特約が存在しないとすれば,入学辞退者がより増加
することも予想されるし,入学辞退者がいつまでも学納金の返還を求められるとい
うことになれば,入学式の直前になってからもなお入学辞退者が多数続出すること
も予想され,そのような場合には,もはや補欠合格等による欠員補充を行うことが
困難になる可能性がある。
  また,大学が,その学術水準を維持して研究成果をあげるためには,単に定員
に見合った入学者数を確保すれば足りるというものではなく,入学者の学力水準が
一定以上に維持されることも重要な課題であるといえるところ,合格者数の大幅な
増加や大規模な補欠合格を実施する場合には,必然的に,従前の合格者に比して学
力が大幅に下回る者についても対象にせざるを得ず,その結果,入学者の学力水準
を維持することが困難になることも予想される。
 したがって,このような点においても,本件不返還特約にまったく合理性がない
とまではいえず,原告の上記主張は認めることができない。
(4) 以上を総合すれば,本件不返還特約は,いまだ公序良俗に反するとまではいえ
ないものと解さざるを得ず,争点2について原告の主張を認めることはできない。
3 まとめ
  よって,被告は,入学金については,原告に反対給付としての入学しうる地位
を付与しているから,そもそも返還義務を負うことはない。
  これに対し,入学金以外の学納金については,原告が,次年度に入る前に在学
契約を解除し,被告から教育役務等の提供を受ける機会を得ることなく在学契約が
終了している以上,本来的には返還されるべき性質のものであるが,上記のとお
り,本件不返還特約は公序良俗に反するものでなく,その有効性が認められるか
ら,被告は,本件不返還特約に基づき,入学金以外の学納金の返還を拒絶すること
ができる。
第6 結論
   以上のとおり,原告の請求は理由がないからこれを棄却し,主文のとおり判
決する。
   大阪地方裁判所第12民事部
       裁 判 長 裁 判 官  中  村  隆  次
             裁 判 官  宮  武     康
             裁 判 官  籔     崇  司
   

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