弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各控訴を棄却する。
         理    由
 本件各控訴の趣意は、弁護人石橋重太郎提出の控訴趣意書記載のとおりであるか
ら引用し、これに対し当裁判所はつぎのとおり判断する。
 一、 論旨第一点(法令の解釈適用の誤りの主張)について、
 <要旨>森林法第一九七条にいわゆる「森林において」とは、当該森林産物の生育
していたその森林を指称し、犯罪場所がその森林内であるかは客観的に、同
法第二条第一項所定の森林に属するかどうかによつて定むべく、窃盗の目的たる森
林産物は当該森林またはこれと同一森林と目しうる森林に生育した産物を指し、し
たがつて森林内に集積された森林産物であつても、他の森林から搬入されたものの
ごときは、「その森林」の産物に該当せず、その窃盗はいわゆる森林窃盗にはあた
らないと解するのが相当であるけだし、同法第一九七条が「森林においてその産
物」と定め、同法第二条第一項第一号が「木竹が集団して生育している土地および
その土地の上にある立木竹」と規定しているから、その産物とは、文理上ある森林
における当該森林の産物と解すべきであり、さらに森林窃盗罪は普通窃盗罪に比
し、法定刑が著しく軽減されている所以は、前者は犯罪の目的たる森林産物の所在
の場所態様の特異性から、当該産物に対する権利者の支配力並びに犯人の悪性ない
し反社会性が、後者に比してはるかに薄弱であると認められるからであると解せら
れる。ゆえに、当該森林内に他の森林の産物を搬入した場合のその産物に対する権
利者の支配力は、通常の森林産物に対するそれよりも概して特別強度に働くものと
いうべく、不法領得の意思をもつてするその所持ないし支配の侵害は、権利者の他
の一般の物に対するそれの侵害と毫も択ぶところはないから、これを目して森林窃
盗というは当らず、普通窃盗罪を構成するというべきである。
 これを本件についてみると、所論原判決添付犯罪表第一の1567911121
415171820ないし2427の各事実は、原判決の引用する検証調書および
同調書に関する証人尋問調書によれば、原判示のとおりその犯罪場所は森林でない
かまたは森林内の犯行であつても犯罪の目的物件が他の森林から搬入された素材で
あることを認めることができるから、右各事実は森林窃盗に該当せず、普通窃盗罪
を構成することが明らかであり、これと同旨の判断をした原判決に、所論のような
法律の解釈適用の誤り等の違法はない。所論は独自の見解を前提とし、原判決を非
難するもので採用しえない。論旨は理由がない。
 二、 論旨第二点(審理不尽による事実誤認の主張)について
 しかし、犯罪の日時場所は、犯罪の構成要件たる事実ではなく、訴因を特定しう
る程度に記載されておれば足り、また被害物件の数量が真実と多少相違していたと
しても、その最少限が認定されている以上被告人に不利益をもたらすことはないか
ら、これを目して不法不当に事実の認定をしたものとは断じえない。そこで論旨に
指摘するところを検討する。
 (一) 所論(二)の(イ)の原審認定の原判決添付犯罪表第二16の事実は、
犯行時期並びに被害物件の数量は、A名義の被害届の記載と、原審証人たる同人に
対する尋問調書の記載とは異なるけれども、原審第一七回検証調書中、被告人Bの
検証現場(2)における指示説明は、立会人Aの指示説明と合致しており、原判決
挙示の関係証拠によれば、被告人Bは共謀の上、原判示の場所で、A所有の松坑木
を、少なくとも三〇本窃取したことを認めることができ、その犯行時が、仮りに原
判示の九月一〇日でなくて四月末頃か五月初頃であつたとしても、その相違は本件
窃盗訴因の特定になんら消長を及ぼすものとはいえない。
 (二) 同(二)の(ロ)(ハ)について。原判決添付犯罪表第一の2123の
各事実は、原判決の挙示する関係証拠により優にこれを認めることができ、原判決
には審理不尽の結果事実を誤認したような違法は在しない。
 (三) 同(二)の(ハ)について。原判決添付犯罪表第一の9の事実は、原判
決の挙示する関係証拠中、原審証人Cに対する尋問調書によれば、同挙示の同人名
義の被害届は、同人が作成提出したものでないことが認められるけれども、同調書
および原審第二二回検証調書により、原判決認定の同事実を認めることができる。
 要するに、所論は原判決が適法に判断した証拠の証明力を争い、事実の認定を非
難するに帰し採用することができない。各論旨は理由がない。
 三、 論旨第三点(量刑不当の主張)について
 本件は、被告人らが二名ないし四名共謀(単独犯は被告人Bの二件のみ)の上、
昭和三二年八月頃から同三八年四月中頃までの長期にわたり、前後約六〇回に及
び、深夜トラツクを使用して山林内または道路傍等に積載されていた他人所有の杉
檜または坑木等の素材を、窃取または立木を盗伐搬出し、木材商等に売却していた
もので、その犯罪手口は極めて大胆大規模であり、かつその被害金額も多額に上る
こと、ことに被告人B・D・Eはいずれも多数回にわたる前科を有し、それぞれ本
件と同種の犯罪により処罰を受けたものであることのほか、記録に現われている本
件各犯罪の動機態様、被告人らの性格年令経歴、犯罪後の情状等を綜合考量すれ
ば、所論の点を参酌しても、被告人らに対する原判決の量刑は相当と認められ、所
論のように重すぎるものとは認めがたい。論旨は理由がない。
 よつて、刑事訴訟法第三九六条に則つて本件各控訴を棄却すべきものとし、主文
のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 柳原幸雄 裁判官 中倉貞重 裁判官 至勢忠一)

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