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裁判例


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主文
1被告は,被告補助参加人自由民主党・道民会議北海道議会議員会に対し,2
222万5000円を北海道に支払うよう請求せよ。
2被告は,被告補助参加人北海道議会民主党・道民連合議員会に対し,157
0万円を北海道に支払うよう請求せよ。
3原告のその余の請求を棄却する。
4訴訟費用はこれを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担と
し,補助参加により生じた費用はこれを2分し,その1を原告の負担とし,そ
の余を被告補助参加人らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は,被告補助参加人自由民主党・道民会議北海道議会議員会に対し,4
445万円を北海道に支払うよう請求せよ。
2被告は,被告補助参加人北海道議会民主党・道民連合議員会に対し,298
4万円を北海道に支払うよう請求せよ。
第2事案の概要
本件は,北海道の住民を構成員とする権利能力のない社団である原告が,北
海道議会の会派である被告補助参加人らが平成21年度に北海道から交付を受
けた政務調査費のうち,被告補助参加人自由民主党・道民会議北海道議会議員
会(以下「参加人自民」という。)については4445万円,被告補助参加人
北海道議会民主党・道民連合議員会(以下「参加人民主」という。以下,参加
人自民と併せて「参加人ら」という。)については2984万円をそれぞれ所
定の使途基準に反して違法に支出したとして,被告に対し,地方自治法242
条の2第1項4号本文に基づき,参加人らに対して上記金額の返還を請求する
よう求める住民訴訟である。
1関係法令等の概要
(1)地方自治法(平成23年法律第35号による改正前のもの。以下同
じ。)100条
ア普通地方公共団体は,条例の定めるところにより,その議会の議員の調
査研究に資するため必要な経費の一部として,その議会における会派又は
議員に対し,政務調査費を交付することができる。この場合において,当
該政務調査費の交付の対象,額及び交付の方法は,条例で定めなければな
らない。(14項)
イ前項の政務調査費の交付を受けた会派又は議員は,条例の定めるところ
により,当該政務調査費に係る収入及び支出の報告書を議長に提出するも
のとする(15項)。
(2)北海道議会基本条例(平成21年7月10日条例第75号。丙33)1
5条
ア議員は,議会活動を円滑に遂行するために,会派を結成することができ
る(1項)。
イ会派は,議会内の議員団体として政策立案等を行うほか,所属する議員
の活動を支援するものとする(2項)。
ウ会派は,その会議を主催するほか,政策調査,予算要望等の実施主体と
なることができる(3項)。
(3)北海道議会の会派及び議員の政務調査費に関する条例(平成13年3月
30日条例第41号。平成21年3月31日条例第56号による改正前のも
の。乙1。以下「本件条例」という。)
アこの条例は,地方自治法100条14項及び15項の規定に基づき,北
海道議会議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として,北海道議
会における会派及び議員に対する政務調査費の交付に関し必要な事項を定
めるものとする(1条)。
イ会派に係る政務調査費は,月額10万円に当該会派の所属議員の数を乗
じて得た額を会派に対し交付する(3条1項)。
ウ会派及び議員は,政務調査費を,別に定める使途基準に従い,使用しな
ければならない(8条)。
エ会派の代表者及び議員は,政務調査費に係る収入及び支出の報告書(以
下「収支報告書」という。)をそれぞれ年度終了日の翌日から起算して3
0日以内に,議長に提出しなければならない(9条1項)。この収支報告
書の記載内容については,概括的な記載が予定されている(乙2,3)。
オ会派の代表者及び議員は,収支報告書を提出する場合は,1件1万円以
上の全ての支出について,領収書その他の支出の事実を証する書類の写し
(以下「領収書等の写し」という。)を添付しなければならない(同条4
項〔北海道議会の会派及び議員の政務調査費に関する条例の一部を改正す
る条例の附則(平成21年3月31日条例第56号)3項の規定により読
み替えて適用されるもの。〕)。
カ議長は,政務調査費の適正な運用を期すため,9条の規定により収支報
告書が提出されたときは,必要に応じ調査を行うものとする(10条)。
キ会派の代表者又は議員は,その年度において交付を受けた政務調査費の
総額から,当該会派又は議員がその年度において行った政務調査費による
支出(8条に規定する使途基準に従って行った支出をいう。)の総額を控
除して残余がある場合,当該残余の額に相当する額の政務調査費を返納し
なければならない(11条)。
ク9条の規定により提出された収支報告書及び領収書等の写し(以下「収
支報告書等」という。)は,これを受理した議長において,提出すべき期
間の末日の翌日から起算して5年を経過する日まで保存しなければならな
い(12条1項)。
ケ何人も,議長に対し,前項の規定により保存されている収支報告書等の
閲覧を請求することができる(同条2項)。
コ議長は,前項の規定による請求があったときは,収支報告書等に記載さ
れている情報のうち,北海道議会情報公開条例(平成11年北海道条例第
18号)9条の非開示情報を除き,閲覧に供するものとする(12条3
項)。
(4)北海道議会の会派及び議員の政務調査費に関する規程(平成13年3月
30日議会告示第1号。平成21年3月31日議会告示第2号による改正後
のもの。乙2。以下「本件規程」という。)4条は,本件条例8条が定める
使途基準として,会派に係る政務調査費について,調査研究費,研修費,会
議費,資料作成費,資料購入費,広報費,事務費及び人件費の項目を挙げて
その内容を定めている。そのうち,調査研究費の内容は,「会派が行う道の
事務及び地方行財政に関する調査研究並びに調査委託に要する経費」と定め
られ,「調査委託費,交通費,宿泊費等」が例示されている(以下,本件条
例8条,本件規程4条により定められた政務調査費使途基準を「本件使途基
準」という。)。
(5)北海道議会事務局作成の平成18年4月付け「政務調査費の手引」(甲
3。以下「本件手引」という。)及び「政務調査費の使途基準の運用につい
て」(甲4。以下「本件ガイドライン」という。)がある。
本件手引は,政務調査費の支出に当たっての留意点の一つとして,「自己
や他の公職の候補者のために行う選挙運動,後援会活動,政党や政党支部が
選挙を目的に行う活動に政務調査費を用いることはできません。」(3頁)
とした上,また,会派に係る政務調査費の使途基準として,本件使途基準の
項目ごとに活動内容及び経費を具体的に記載した「活動例」を定めており
(4頁),調査研究費の「活動例」として,「◇道内外における現地調査
(海外調査を含む。)(研究所の視察,住民からの被災状況聴取,先進他府
県の現地調査)◇道政に関する執行部との意見交換(費用弁償支給日を除
く。)◇各種議員連盟(政策の勉強や提言を目的とするものに限る。)活動
及び政策研究会等の運営◇国等からの説明聴取及び要望活動◇国・道・市町
村・各種団体が主催する会議等への参加(意見交換を伴うものに限る。)◇
住民へのアンケート調査◇他の機関等への調査委託」が挙げられ,具体的な
費用として,「交通費,宿泊費,調査先での会議開催経費,調査報告書作成
費,郵送料,政策研究会運営経費,調査委託費等」が例示されている。
また,本件ガイドラインは,会派の人件費に関する「運用方針の考え方及
び補充説明」として,「雇用主体が会派でなくても,会派の政務調査活動の
補助実態により判断することになる。実態によっては按分の問題が生ずると
考える。」と定め,また,議員の政務調査費を充当するのに適さない会費等
の例として,「団体の活動総体が政務調査活動に寄与しない場合,その団体
に対して納める年会費,月会費への支出」と定めている。
(6)平成21年7月,北海道議会の会派及び議員の政務調査費に関する規程
の一部を改正する規程(平成21年7月10日議会告示第4号。乙5。以下
「本件改正規程」という。)により,本件規程において,本件使途基準に関
する運用方針を別に定める旨(本件規程4条2項)及び政務調査費の支出に
当たって同運用方針を尊重しなければならない旨(同条3項)が定められ,
平成22年4月1日から施行された。
また,平成22年4月付けで本件手引が改訂され,「政務調査費の手引~
実務・留意事項等」(甲13)及び「政務調査の手引(様式編)」(甲14。
以下,両者を総称して「本件新手引」という。)が作成された。本件新手引
には,本件規程4条2項に基づく運用方針である「政務調査費の使途基準等
に関する運用方針」(以下「本件新運用方針」という。)が記載されている。
本件新運用方針は,「会派及び議員が行う政務調査活動は,会派及び議員の
自発的な意志に基づいて行われるものであることから,政務調査費は,使途
基準に基づき社会通念上妥当な範囲であることを前提とした上で,会派及び
議員が行う政務調査活動に要した費用について実費弁償することを原則とす
る。」(第2(実費弁償の原則)),「政務調査費の充当の範囲は,政務調
査活動に直接必要とする経費に限られ,会派及び議員の資産形成につながる
ものには充当することができない。」(第3(充当の範囲)),「会派及び
議員の活動は,政務調査活動とその他の活動(政党活動,後援会活動等)が
混在する場合もあることから,会派及び議員が政務調査費を充当するに当た
っては,活動実態や使用実態に応じた合理的割合で按分するものとする。た
だし,合理的に区分することが困難な場合は,活動等の実態を踏まえ別に掲
げる按分率を上限として,適切に按分するものとする。」(第4(按分によ
る充当))と定め,また,会派交付分の政務調査費について,項目を調査研
究費とする場合の充当することができない使途の例として,「団体の活動総
体が政務調査活動に寄与しない場合,その団体に対して納める会費等」を挙
げ,さらに,活動の実態により明確に区分することができない場合の按分率
の上限について,政務調査活動と後援会活動とが混在する場合については2
分の1,政務調査活動と後援会活動及び政党活動とが混在する場合について
は3分の1と定めている(甲13)。
2前提事実(争いがないか,後掲各証拠等及び弁論の全趣旨により容易に認め
られる事実)
(1)当事者等
ア原告は,北海道の住民を構成員とし,北海道の区域内に事務所を有する
権利能力のない社団である。
イ被告は,普通地方公共団体である北海道の執行機関である。
ウ参加人自民は,道議会内で同一の行動をとるために国政政党である自由
民主党(以下「自民党」という。)に所属する北海道議会議員(以下「道
議」という。)を中心に構成された会派である。
エ参加人民主は,道議会内で同一の行動をとるために国政政党である民主
党に所属する道議を中心に構成された会派である。
(2)政務調査費の交付及び各会派による支出等
ア北海道は,本件条例及び本件規程に基づき,参加人自民に対し,平成2
1年度の政務調査費として総額5980万円を交付した(甲5)。
参加人自民は,平成21年4月1日付けで,自民党の地方機関であり,
道内にある自民党の支部の連合体である自由民主党北海道支部連合会(以
下「自民党支部」という。)との間で,政務調査業務委託契約(丙1。以
下「本件契約1」という。)を締結し,同年度において,上記政務調査費
から本件契約1に基づく道政調査業務委託料の名目により合計4445万
円を支出した(以下「本件支出1」という。)。
イ北海道は,本件条例及び本件規程に基づき,参加人民主に対し,平成2
1年度の政務調査費として総額4670万円を交付した(甲6)。
(ア)参加人民主は,平成21年4月1日付けで,民主党の地方機関であ
り,道内にある民主党の支部の連合体である民主党北海道総支部連合会
(以下「民主党支部」という。)との間で,政務調査業務委託契約(丙
6。以下「本件契約2」という。)を締結し,同年度において,上記政
務調査費から本件契約2に基づく政務調査業務委託料の名目により27
50万円を支出した(以下「本件支出2」という。)。
(イ)参加人民主は,平成21年4月1日付けで,社団法人北方領土復帰
期成同盟(以下「復帰期成同盟」という。)との間で,政務調査業務委
託契約(丙11。以下「本件契約3」という。)を締結し,同年度にお
いて,上記政務調査費から本件契約3に基づく平成21年度北方領土情
勢調査費の名目により39万円を支出した(以下「本件支出3」とい
う。)。
(ウ)参加人民主は,平成21年4月1日付けで,北海道日本ロシア協会
(以下「ロシア協会」という。)との間で,政務調査業務委託契約(丙
14。以下「本件契約4」という。)を締結し,同年度において,上記
政務調査費から本件契約4に基づく2009年度政務調査委託費の名目
により39万円を支出した(以下「本件支出4」という。)。
(エ)参加人民主は,平成21年4月1日付けで,日本労働組合総連合会
北海道連合会(以下「連合北海道」という。)との間で,政務調査業務
委託契約(丙17。以下「本件契約5」という。)を締結し,同年度に
おいて,上記政務調査費から本件契約5に基づく政務調査業務委託料の
名目により117万円を支出した(以下「本件支出5」という。)。
(オ)参加人民主は,平成21年4月1日付けで,北海道季節労働組合
(以下「季節労組」という。)との間で,政務調査業務委託契約(丙1
9。以下「本件契約6」という。)を締結し,同年度において,上記政
務調査費から本件契約6に基づく平成21年度政務調査委託費の名目に
より39万円を支出した(以下「本件支出6」といい,本件支出1から
本件支出6までをまとめて「本件各支出」という。)。
(3)監査請求
原告は,平成22年8月30日,北海道監査委員に対し,参加人らに対し
て交付された平成21年度の政務調査費について,住民監査請求を行った。
北海道監査委員は,同年11月1日,上記監査請求についてこれを棄却す
る旨の決定をして原告に通知した。原告は,同通知を同月4日に受領した
(弁論の全趣旨)。
(4)本件訴えの提起
原告は,平成22年12月1日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。
3争点及びこれに関する当事者の主張
本件における争点は,本件各支出の全部又は一部が本件使途基準に適合しな
い支出に充てられたものであるか否かである。
(原告の主張)
(1)政務調査費は,その使途が限定されており,道政に関する調査研究に資
するために必要な経費以外のものに充てることが禁止されている。本件手引
によれば,政務調査費の支出が許されるのは,個別具体的で使途が特定可能
な支出に限定される。もちろん,政党活動,選挙活動への支出は認められな
い。
また,本件新手引によれば,政務調査費の使途は,政務調査活動に直接必
要とする経費,すなわち実費に限られ,政党の支部や外部団体へ支出する場
合について,一般的・抽象的・包括的な業務委託の方法による政務調査費の
支出は予定されていない。本件新手引は,本件に直接適用されるものではな
いものの,それに先立つ本件条例及び本件規程の改正において本件使途基準
は何ら改定されていないから,従前の本件手引や本件ガイドラインの使途基
準の解釈を敷衍したものにすぎず,本件各支出の本件使途基準への適合性を
判断するに当たっても基準となる。
(2)本件支出1及び本件支出2について
ア本件支出1及び本件支出2は,いずれも一般的・抽象的・包括的な業
務委託の方法によるものであり,政務調査費の支出の使途基準への適合
性を北海道議会議長が判断することがおよそ不可能であるから,実質的
に,条例で定められた使途基準を潜脱するものというほかない。かかる
一般的・抽象的・包括的な業務委託の方法による支出は,それ自体が違
法となるものと解すべきである。
本件手引には,政務調査費の使途基準として規定されている各項目の
具体的な活動例が例示列挙されているが,その内容に照らし,調査研究
費として政務調査費を支出することが許されるのは,個別具体的で,使
途が特定可能な支出に限られる。そうでなければ,政務調査費が真に議
員の政務調査活動に資する費用として支出されたか否かを判断すること
ができず,他に支給される経費との二重計上を防ぐことも不可能である
からである。本件新手引においても,活動記録の整理,契約書の作成,
成果物の確認等を求めており,一般的・抽象的・包括的な業務委託の方
法による支出は予定していない。
イ本件支出1について
(ア)
参加人自民は,委託業務と委託費用の対応関係を一切明確にしない。こ
のような一般的・抽象的・包括的な業務委託の方法による支出は,本
来それだけで全額違法と判断されるべきである。本件契約1の業務委
託料の実態の相当部分が人件費であるとすれば,収支報告書の「人件
費」の項目に計上されるべき費用であり,職員の政務調査活動への専
従性が認められなければ,その全額が違法である。
(イ)仮に,本件支出1の全額が違法とは認められないとしても,本件
契約1に基づいて自民党支部の職員が行った業務には,参加人自民の
政務調査活動として行った活動と,それ以外の活動(政党活動,選挙
活動等)とが混在しており,これらを区別することは困難である。し
たがって,本件支出1のうち,「人件費」として政務調査費を支出す
ることが許されるのは,道議会庁舎内に勤務している4人の人件費合
計2016万6180円の2分の1である1008万3090円を上
回ることはないというべきであり,参加人自民は,本件支出1からこ
れを差し引いた3436万6910円を返還すべきである。
(ウ)参加人自民は,人件費のほかにも各種の経費を積算した上で本件
支出1の金額が妥当であると主張するが,「業務委託費」という名目
で包括的に行われた本件支出1について,個別の経費としての支出を
後付けで主張してその金額の妥当性を主張することは許されないし,
参加人自民が主張する各種経費は,実態として,いずれも政務調査費
から支出されるべき性質のものではない。
ウ本件支出2について
本件支出2は,実質的には,本件使途基準の定める項目のうち「人件
費」に該当する。そして,本件契約2に基づく業務に従事する職員が行っ
ている業務には,政務調査活動のみならず政党活動や選挙活動等の他の活
動の要素も含まれている。したがって,本来であれば,本件支出2の全額
が違法となるべきものであるが,仮に一部が適法となるにしても,その割
合は,2分の1を超えるものであってはならない。
(3)本件支出3,本件支出4,本件支出5及び本件支出6(以下「本件支出
3から6まで」という。)について
本件支出3から6までは,収支報告書等の記載からは契約の内容,金額の
積算根拠等が一切不明であり,真に調査業務の対価として支出されたか否か
に疑念があり,本件使途基準に適合せず違法である。
本件支出3から6までは,奇しくも,参加人民主に所属する議員数に1万
円(本件支出3,4及び6)又は3万円(本件支出5)を乗じた金額となっ
ている。また,本件支出3,4及び6については,支出先において「会費」
として処理されているとのことである。これらの事実に照らすと,本件支出
3から6までの違法性が強く推認されるものというほかない。
参加人民主が本件契約3から6までの成果物として提出する資料は,委託
契約とは関わりなく毎年通例として行っている事業に伴って作成されたもの
であったり,官公庁のホームページなどを通じて無償かつ容易に入手が可能
なものであったりするなど,委託契約に基づく成果物として提供されたもの
とはいえないし,あえて対価を支払って入手することが必要なものではない。
また,参加人民主は,情報提供の日時,回数,態様を明らかにしておらず,
調査委託費用に見合う水準の情報の提供が行われたとはいえない。本件支出
3から6までは,「議員の調査研究に資する」ものとはいえないから,本件
使途基準に適合せず全額が違法である。
(被告の主張)
(1)政務調査費交付制度の制定の趣旨は,地方議会の活性化を図るため議員
の調査活動基盤を充実させその審議能力を強化することにあり,かかる趣旨
に照らせば,政務調査費の支出は実費に限られず,「調査研究のために有益
な費用」も含まれるというべきである。
また,政務調査費制度においては,その性質が公金であるがために,その
使途が法や本件条例等の目的や基準に沿ったものでなければならない(使途
基準の適合性の要請)とされる一方,政務調査費の適正な使用について各会
派の自律を前提としつつ,執行機関や他の会派等からの干渉を防止する必要
(外部からの干渉防止の要請)があり,これら2つの要請の調和を図るため,
収支報告書の記載内容は,各会派の自律を前提に,概括的な記載で足りるも
のとされているのであるから,収支報告書等の記載について,具体的かつ詳
細にいかなる使途に用いられたのか示していないとしても,それは,上記2
つの要請の調和を図った本件条例に基づく制度によるものである。収支報告
書の記載内容が概括的な記載で足りるものとされている趣旨に照らすと,本
件手引におけるいわば参考にすぎない活動例欄の記述をもって,政務調査費
が他者からみて「個別具体的で,使途が特定可能な支出に限られる」という
ことはできない。
なお,本件新手引は,収支報告書への添付を義務づける領収書等の写しの
範囲の拡大や,政務調査費の支出に当たって尊重すべきものと位置づけられ
た新運用方針の決定など,平成22年4月1日から施行された一連の制度改
正を受けて,本件手引を改訂したものであるから,同日より前の本件各支出
に関わる本件の判断に当たって参照すべきは本件手引であり,本件新手引が
判断の基準となるものではない。ちなみに,本件新手引においても,調査研
究のために有益な費用の支出は許容されている。
(2)本件支出1及び本件支出2について
本件支出1及び本件支出2は,いずれも本件手引の活動例のうち「他の機
関への調査委託」に相当し,本件規程で調査研究費の内容として規定する
「会派が行う調査委託」に該当するものであるから,当然,収支報告書の調
査研究費の項目に計上されるべきものである。
また,本件で問題となっているのは,政務調査活動に係る業務の委託契約
であり,道議が直接雇用する職員の活動に政務調査活動とそれ以外の後援会
活動等とが含まれ,これらを明確に区分することができない場合とは前提を
異にし,委託業務には政務調査活動以外の業務が含まれていないから,そも
そも按分の問題は生じない。本件契約1及び本件契約2は,政務調査活動に
係る業務を委託したものであって,政務調査活動以外の業務が含まれる(専
従性が否定される)余地はないから,按分を必要とする実質的な根拠はない。
(3)本件支出3及び本件支出4について
参加人民主が,復帰期成同盟及びロシア協会との間で業務委託契約を締結
し,その委託内容に則って各種情報の提供を受けることは,北方領土やサハ
リン州に係る政務調査活動に寄与するものと認められ,収支報告書の修正後
における両団体への会費としての支出は,本件使途基準に合致する適正なも
のである。道議会議長への修正報告は,当該支出の性格などを踏まえ,より
適切と思われる費目に改めたものであって,虚偽報告とはいえない。
(4)本件支出5及び本件支出6について
本件支出5及び本件支出6については,収支報告書に調査研究費として記
載されている点に手続上の瑕疵は見当たらず,連合北海道及び季節労組から
各種情報の提供を受けることが,参加人民主における道民各層の生活実態,
季節労働者の雇用実態等の調査研究活動に資するものであることは明らかで
あり,違法とはいえない。
(5)被告による財務会計行為の適法性について
被告としては,北海道議会議長の先行行為に予算執行の適正確保の見地か
ら看過し得ない瑕疵がない限り,当該先行行為を尊重してその内容に応じた
財務会計上の措置を採るべき義務があり,これを拒むことは許されない。各
会派の支出の方法や内容にそうした瑕疵が存するとはいえないから,会派に
対する政務調査費の交付及び残余の額相当額の返納通知は,被告がその職務
上負担する財務会計法規上の義務に何ら違反していない。
(参加人らの主張)
(1)本件支出1及び本件支出2について
ア参加人らは,道政に関する市町村や各種団体の要望等を取りまとめ,道
民のニーズを的確に把握するとともに,道政に反映させることなどを目的
に,地域や団体の要望把握,代表質問の作成等の様々な政務調査活動を行
っている。こうした活動の全てについて,普段は道内各地域の選出議員と
して,それぞれの地域で活動している道議が分担して行うことは,非効率
かつ不経済であるといえ,会派として通年で効率的・効果的な活動を維持
するためには,これらの活動に関わる事務全般の運営,連絡調整に携わる
人員等の確保が不可欠である。また,会派としての効率的かつ経済的な政
務調査活動の実施のためには,各会派の目指す道政の方向性を熟知してい
る者がその担い手となる必要があるとともに,併せて,執行機関や他の会
派からの干渉を防ぎ,会派としての政務調査活動の独立性を保障するため
には,活動内容の秘匿性を保つことも重要な要素である。こうした事情か
ら,参加人らは,政務調査業務委託の委託先として,市町村等の要望集約
や道民のニーズ把握などについて専門的なノウハウを有し,各会派の目指
す道政の方向性を熟知している自民党支部又は民主党支部をそれぞれ選定
した。
参加人らは,本件契約1及び本件契約2の各締結時において,委託業務
の内容をあらかじめ特定することは困難であることから,各契約書におい
て概括的な記載としたのであって,こうした業務委託契約を締結すること
は何ら不合理なものではなく,本件条例や本件手引,本件新手引において
も禁じられていない。
イ本件支出1について
本件契約1の委託金額(4500万円)は,過去の実績を踏まえ,人件
費を基本に調査活動に要する経費を積算の上,算出した。なお,支出額4
445万円との差額については,会派が直接行う政務調査活動に係る経費
がかさんだことから,参加人自民と自民党支部との間の協議により,当初
の契約金額から55万円を減額することとして支出したものである。
そして,平成21年度における自民党支部が雇用する職員のうち9名は,
本件契約1に基づき,①移動政調会(地域政策懇談会ということもある。
以下,総称して「移動政調会」という。)及び団体政策懇談会の開催,ア
ンケート調査の実施その他の要望の把握,②代表質問の作成補助,③政策
集の作成補助,④意見書の作成補助,⑤ホームページの運営・管理,⑥日
常的な連絡調整,情報収集などの業務に従事した。
そして,上記職員9名のうち4名は上記業務を,その余の5名は当該業
務以外の業務を本務としていた。平成21年度におけるこれら9名の職員
に係る給与の総額は5235万4320円であった。
ウ本件支出2について
本件契約2の委託金額(2750万円)は,過去の実績を踏まえて,人
件費を積算の上,算出した。
民主党支部が雇用する専従の職員のうち3名は,本件契約2に基づき,
①道政懇話会(平成21年10月開催分からは「地域主権民主党政策懇談
会」に名称が変更された。以下,総称して「道政懇話会」という。)の開
催その他要望の把握,②代表質問の作成補助,③プロジェクトの運営補助,
④道・国等への要望・提言の作成補助,⑤意見書の作成補助,⑥広報,⑦
日常的な情報収集などの業務に従事した。また,業務繁忙期の上記職員3
名の補助として,主に上記①に係る事務を補助するため,平成21年9月
から同年11月までの間に1名が,主に平成22年第一回定例会に係る事
務を補助するため,同年1月から同年3月までの間に1名が,それぞれ臨
時職員として採用され,本件契約2に基づく業務に従事した。
そして,平成21年度における上記職員5名に係る給与の総額は236
6万7747円であった。
エ自民党支部及び民主党支部の各職員の上記職務には,政務調査活動と評
価し得ない職務が全く含まれていないか,例外的にごくわずかに含まれる
余地があったとしても,按分などにより減じる必要がないか,あるいは共
催であることを前提に,自民党支部と参加人自民とがそれぞれ負担すべき
ものを負担しているから,実態に応じた按分が必要となるものではない。
なお,本件契約1及び本件契約2を他の民間企業等に委託する場合に想
定される委託料は,それぞれ4786万4817円及び3302万869
5円であり,北海道の調査研究業務の委託事務に係る一般的な取扱いにお
ける委託料積算の考え方によれば,それぞれ4909万3325円及び3
794万7570円であり,本件支出1及び本件支出2の額をいずれも上
回っている。したがって,本件支出1及び本件支出2の額は適正である。
(2)本件支出3から6までについて
参加人民主は,本件契約3,本件契約4,本件契約5及び本件契約6(以
下「本件契約3から6まで」という。)により,それぞれの分野の調査研究
について専門的なノウハウを有する各団体に対し,情報の収集・整理,関連
資料の整理,それぞれの専門分野の諸問題に関する研究報告書(提言)など
の策定補助,その他,連絡調整を含め,道政調査活動に必要なあらゆる業務
を委託した。委託先の各団体は,各委託契約に基づき,資料を参加人民主に
提供するとともに,適宜,それぞれの分野に関する情報提供を行った。
各契約の業務委託料の額は,参加人民主に所属する議員1人当たり1万円
又は3万円程度の支出であれば可能と判断し,各団体に打診して了承を得ら
れたものである。
本件の判断に当たって本件新手引を参照する余地はないから,情報提供の
回数・態様等について,「活動記録」に基づいて明らかにすることができな
いとしても,そのことをもって,本件契約3から6までに係る支出が違法と
される余地はない。
第3当裁判所の判断
1本件使途基準への適合性判断の在り方について
(1)地方自治法100条14項,15項は,政務調査費の交付につき,普通
地方公共団体は,条例の定めるところにより,その議会の議員の調査研究に
資するため必要な経費の一部として,その議会における会派又は議員に対し
政務調査費を交付することができるものと定めており,その趣旨は,議会の
審議能力を強化し,議員の調査活動の基礎の充実を図るため,議会における
会派又は議員に対する調査研究の費用等の助成を制度化したものであると解
される。
そうすると,本件使途基準が調査研究費の内容として定める「会派が行う
道の事務及び地方行財政に関する調査研究並びに調査委託に要する経費」と
は,会派の議会活動の基礎となる調査研究及び調査の委託に要する経費をい
うものであり,会派としての議会活動を離れた活動に関する経費又は当該行
為の客観的な目的や性質に照らして会派の議会活動の基礎となる調査研究活
動との間に合理的関連性が認められない行為に関する経費は,これに該当し
ないものというべきである(最高裁平成22年(行ヒ)第42号同25年1
月25日第二小法廷判決・裁判集民事243号11頁参照)。
(2)前記のとおり,本件条例による収支報告書は,概括的な記載がされるこ
とを予定しており,個々の支出に係る政務調査活動の目的や内容等を具体的
に記載すべきものとはされていない。この趣旨は,政務調査費は議会の執行
機関に対する監視の機能を果たすための政務調査活動に充てられることも多
いと考えられるところ,執行機関と議会ないしこれを構成する議員又は会派
との抑制と均衡の理念に鑑み,議会において独立性を有する団体として自主
的に活動すべき会派の性質及び役割を前提として,政務調査費の適正な使用
についての各会派の自律を促すとともに,政務調査活動に対する執行機関や
他の会派からの干渉を防止しようとするところにあるものと解される(最高
裁平成20年(行ヒ)第386号同21年12月17日第一小法廷判決・裁
判集民事232号649頁参照)。
しかしながら,収支報告書に概括的に記載することが許容されているから
といって,客観的に「会派としての議会活動を離れた活動に関する経費又は
当該行為の客観的な目的や性質に照らして会派の議会活動の基礎となる調査
研究活動との間に合理的関連性が認められない行為に関する経費」と認めら
れるものについて,政務調査費の支出として許容されることになるわけでは
ない。
また,政務調査費の使途について,政務調査活動とそれ以外の行為(政党
活動や選挙活動等の会派の議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理
的関連性が認められない行為)が併存する場合においては,職務分担の基準
を設けるなどして両者の区別が明確にされており,その区別に基づき合理的
な割合や政務調査活動に要した費用の積算額を算出できる場合には,その算
出に従った額を政務調査費から支出することが許容されるものというべきで
あるが,他方,両者の区別が困難な場合には,その全額を政務調査費から支
出することを許容すべき理由はなく,条理に従って合理的な割合を認定し,
これによって按分した額についてのみ政務調査費の支出が認められ,これを
超過する部分については,本件使途基準に適合しないというべきである。そ
して,仮に,被告が財務会計法規上の義務に違反していないとしても,本件
使途基準に適合しない支出に充てられたものは不当利得になるというべきで
ある。
なお,会派の議会活動の基礎となる調査研究活動と政党活動とは,ある意
味では表裏一体ともいうべきものである。しかし,本件手引が明記するとお
り,政党や政党支部が選挙を目的に行う活動に政務調査費を用いることはで
きないし,本件ガイドラインが示すとおり,会派の人件費については,実態
によっては按分の問題が生じ得るのであり,この理は,支出の項目が調査研
究費であっても異なるところはないと解すべきである。なぜなら,本件使途
基準が,調査研究費の名目であれば,政務調査活動以外の政党活動等の使途
への支出を許容しているとは,およそ考えられないからである。
(3)そこで,以下,本件各支出により行われた委託業務につき,会派として
の議会活動を離れた活動や,調査研究活動との間に合理的関連性が認められ
ない行為が含まれないか,また,調査研究活動としての側面を有するとして
も,同時に同活動との間に合理的関連性が認められない行為としての側面を
も有する場合であって,支出を合理的な割合により按分すべきかを検討する。
2本件支出1について
(1)前記前提事実,丙119,丙120,後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総
合すれば,以下の事実が認められる。
ア本件契約1に係る「政務調査業務委託契約書」(丙1)には,「1,委
託業務の名称『道政調査業務委託』」「2,委託調査の目的『道政調査に
係る事務等補助業務』」「3,委託調査事項①資料,情報収集・整理
②地域における政策調査③調査結果の集計及び分析④その他,連絡調
整を含め,道政調査活動に必要なあらゆる業務」と記載されている。
イ自民党支部は,参加人自民から支払われた本件契約1に係る業務委託料
の収支について,独立した会計処理をしていなかった(証人A〔同証人調
書2頁〕)。
ウ自民党支部には,平成21年度において,職員AからIまでの9名の正
規職員が在籍していた。職員AからDまでの4名は,道議会庁舎を勤務場
所として本件契約1に基づく委託業務を本務として従事し,職員EからI
までの5名は,自民党支部の事務所を勤務場所として本件契約1に基づく
委託業務以外の業務を本務としながら,繁忙期等においては,本件契約1
に基づく委託業務の補助をすることがあった(丙21,丙22,証人B
〔同証人調書1,3,7頁〕,証人A〔同証人調書1頁〕)。自民党支部
には臨時職員又は嘱託職員も在籍していたが,本件契約1に基づく委託業
務には従事していなかった(証人B〔同証人調書1頁〕)。
委託業務に関し,職員Aは,全体の統括者として調整役等の役割を担い,
職員Bは,政策立案の専門職の立場にあり,職員C,Dは,道職員OBと
しての知見を活用するために雇用された政策専門員の立場にあった(証人
B〔同証人調書2頁〕)。
エ職員AからDまでが関与した業務は,以下のとおりである。
(ア)移動政調会の開催
移動政調会(北海道内の衆議院議員の各小選挙区に置かれた12の自
民党の選挙区支部ごとに,地域(市町村や団体)の要望聴取や意見交換
を目的として開催されるものである。なお,移動政調会の主催者は,自
民党支部又は各選挙区支部とされている。)の開催に関し,その開催方
式や日程の調整,会場の借上げ,参加案内状の発送及び取りまとめ,集
約された要望に係る執行機関の取組状況の照会,資料やデータの収集,
道議の手持ち資料の作成等を行った(丙2,丙23から30まで,証人
B〔同証人調書4,5頁〕)。
移動政調会の準備において,職員A,Bは,日程調整,出席予定道議
との連絡,会の構成内容の決定,会場の選定・設営,関係者の出欠や要
望事項の取りまとめ,要望事項についての執行機関への取組状況照会等
の情報収集,道議の手持ち資料の作成・配布等を行った(証人B〔同証
人調書9頁〕)。職員Bは,移動政調会に出席した(丙81から84ま
で)。
平成21年度の移動政調会は,同年6月20日,同月28日,同年7
月4日に第11選挙区支部,同月5日に第12選挙区支部,同月17日
に第9選挙区支部において開催された。第11選挙区支部で開催された
移動政調会には,道議3から5名のほか,国会議員1,2名,各市町議
会の議員7名程度が出席しており,その大半が第11選挙区支部の支部
長や幹事長,政調会長等の役員を務めていた(丙24から26までの
1)。第12選挙区支部で開催された移動政調会には,第12選挙区支
部の支部長を務める衆議院議員及びその秘書7名,同支部の支部長代理,
幹事長,幹事長代理を務める道議3名及びそれぞれの秘書1名づつ,同
支部の政調会長・事務総長・事務局長が出席していた(丙27の3)。
第9選挙区支部で開催された移動政調会には,第9選挙区の顧問である
参議院議員,自民党支部の政調会長又は第9選挙区支部の役員を務める
道議4,5名,各市町の議会の町長・議長等11名程度が出席していた
(丙28の1,丙28から30までの2)。移動政調会における要望聴
取にあっては,国政に関連する事項が取り上げられることがあった(証
人B〔同証人調書5頁〕,証人A〔同証人調書10頁〕)。なお,移動
政調会の会場費は,各選挙区支部が支払った(丙70の1から3まで)。
(イ)団体政策懇談会の開催
団体政策懇談会(全道規模で組織された団体又は全国規模で組織され
た団体の北海道支部などからの要望聴取や意見交換を目的とするもので
あり,自民党支部を主催者とし,平成21年度は5日間にわたって道議
会庁舎内で開催された。)の開催に関わり,日程の調整,受領した要望
に係る執行機関の取組状況の照会,資料やデータの収集等を行った。団
体政策懇談会には,道議だけでなく,衆参両議院議員が出席し,国政に
関わる要望も聴取された。(丙31,丙32,証人B〔同証人調書11
頁,17頁〕,証人A〔同証人調書11頁〕)
団体政策懇談会の準備において,職員A,Bは,日程調整,出席予定
道議及び国会議員との連絡,関係者の出欠や要望事項の取りまとめ,要
望事項についての執行機関への取組状況照会等の情報収集,手持ち資料
の作成・配布等を行った(証人B〔同証人調書10頁〕)。
(ウ)アンケート調査の実施
平成21年11月から同年12月上旪にかけて参加人自民が実施した,
179市町村を対象とする政権交代による政策変更に関するアンケート
調査に関し,文案の作成,道内各市町村長への発送,回答の集計・分析
等を行った(丙3,丙4)。
(エ)要望把握
要望等のために訪れた市町村や各種団体関係者の対応に関し,道議と
ともに応接し,要望聴取・意見交換の際の書記を務め,聴取した要望に
係る執行機関の取組状況の把握・確認,回答案の作成補助,資料やデー
タの収集等を行った。
(オ)代表質問の作成補助
年4回の道議会定例会において実施される代表質問(議員が会派単位
の行動をとっている地方議会において,個々の議員が行う質問に先立ち,
会派を代表して,当該会派の政策等を論拠として当該地方公共団体の行
政執行等について質問し,また,その見解を求めるもの。以下同じ。)
の作成補助として,執行機関へのヒアリングに係る日程や参加者の調整,
進行管理,質疑応答の内容整理等のほか,各種データの収集・分析,文
案の作成補助等を行った。
(カ)政策集の作成補助
自民党支部が発行する政策集である「重点政策2009」(丙5)の
作成補助として,参加人自民が打ち出す政策の選定に係る調整,自民党
支部の政務調査会との意見調整,会議に用いる資料の作成等を行った
(証人B〔同証人調書12,13頁〕)。
同政策集は,自民党支部の政策決定機関である政務調査会と参加人自
民の政策審議委員会との数度にわたる合同会議を経て作成され,また,
同政策集を発行する際に最終的な承認をするのは,自民党支部の政務調
査会であった(証人B〔同証人調書6,13頁〕)。同政策集の
表紙には,「北海道を守る,責任力。自民党道連重点政策2009」
と記載され,背表紙には,「このパンフレットは,政党の自由な政治活
動であって,選挙期間中でも自由に配布できます。」という文言と,自
民党支部の名称,所在地等が記載されている(丙5)。
(キ)意見書の作成補助
意見書(地方自治法99条に基づき普通地方公共団体の議会が当該普
通地方公共団体の公益に関する事件につき国会又は関係行政庁に提出す
ることができるとされているもの。以下同じ。)の作成補助として,執
行機関からのヒアリング,資料やデータの収集・分析,文案の作成等を
行った(証人B〔同証人調書5頁〕)。
(ク)ホームページの運営・管理
参加人自民のホームページについて,原稿案の作成,ホームページ管
理受託者との打合せや作業指示,ホームページを通じて寄せられた意
見・要望への対応などを行った(証人B〔同証人調書6頁〕)。
(ケ)道議会の定例会に関する業務
職員Aは,道議会の定例会に関する予想される質問事項に関し,論点
整理,情報収集及び対応協議等を行った(証人B〔同証人調書2頁〕)。
(コ)国会議員との意見交換
職員Bは,平成21年7月16日に東京の自民党本部において開催さ
れた北海道ブロック両院議員会(北海道代議士会)(議題を「北海道
『平成22年度国の施策及び予算に関する提案要望及び要請』,北海道
商工会議所連合会『第59回全道商工会議所大会決議事項に伴う中央要
望』」とするもの。)に出席し,意見交換を行った。なお,同議員会に
係る案内文書には,自民党支部の受付印がある。(丙99の1,2)
職員Bは,平成21年12月21日に東京の衆議院第1議員会館にお
いて開催された北海道ブロック両院議員会と道議との懇談会(議事を
「①平成22年度国の予算に関する要望についてD副知事より」
「②事業仕分け結果についてE総合政策部長より」「③その他」とす
るもの。)に出席した。なお,同懇談会の準備は,職員Aと職員Bが行
った。(丙100の1,2,証人B〔同証人調書14頁〕)
(サ)全国政調会長会議への出席
職員Bは,平成21年10月23日に東京の自民党本部において開催
された自民党の全国政調会長会議(議事を「①今後の政策運営について
F政調会長」「②『補正予算の見直し』による地方経済の影響について
※ブロック幹事県(宮城県・群馬県・石川県・岐阜県・兵庫県・鳥取
県・高知県・長崎県)の発言の後,各都道府県連挙手により状況・意見
表明」「③党役員との意見交換」とするもの。)に出席した(丙101
の1,2,証人B〔同証人調書15頁〕)。
職員Bは,平成22年2月10日に東京の自民党本部において開催さ
れた全国政調会長会議に出席した。平成22年1月28日付けで自民党
本部政務調査会長が自民党の都道府県支部連合会の政務調査会長及び事
務局長に宛てた「全国政調会長会議の開催について」と題する書面には,
「通常国会も召集され,国会審議を通してG総裁を先頭に民主党政権の
政治とカネ,マニフェストとの矛盾点を追及し,一丸となって政権奪還
に向けて全力を傾注しております。」「都道府県議会を前に,下記のと
おり全国政調会長会議を開催し,党本部と都道府県連政調会の意思の疎
通と政策の対応を協議致したいと存じます。」「主な内容は,民意を無
視した乱暴な民主党への陳情の一元化,外国人地方参政権,教育問題の
他,子ども手当,公共事業のあり方,農業等,広範な問題について意見
交換し,参院選挙にわが党の政策をどう訴えるか協議する予定です。」
と記載されており,同書面には自民党支部の受付印がある。(丙102
の1,2,証人B〔同証人調書15頁〕)
(シ)サンルダムの視察及び地元関係者との意見交換会
職員A及びBは,平成21年10月21日に自民党支部が実施した,
当時建設予定であったサンルダムの視察及び地元関係者との意見交換会
に参加した(丙104から107まで)。
(ス)定例懇談会の準備・出席
職員Bは,定例朝食懇談会・定例懇談会(自民党支部の幹事長等の役
員を務める道議と各種団体の幹事長等との意見交換等を行う懇談会であ
り,月に1回程度開催される。)の準備を行い,これに出席した。同懇
談会の式次第には,項目の一つとして「政局の動向と今後の見通しにつ
いて」と記載されているものがあり(平成21年7月23日及び同年9
月29日開催分),また,同懇談会においては,選挙関係の事項がテー
マとされることがあった。(丙85から87までの各1,2,丙89及
び90の各1,2,証人B〔同証人調書14頁〕,証人A〔同証人調書
11頁〕)
(セ)ふるさと政談への出席
職員Bは,平成21年12月23日に野付郡別海町において自民党本
部が開催した,地元住民と意見交換をするための集会である「ふるさと
政談」に出席した。道政記者クラブに加盟する各社に宛てられた,「自
由民主党『ふるさと政談』の開催についてのご案内」と題する書面には,
「自由民主党は,年内から年初にかけて全国300選挙区に足を運び,
地域で生活する様々な人たちとひざを交えて意見交換する『ふるさと政
談』を実施することとし」「当日はH党幹事長が来道し,住民の方々と
の対話集会を開催致しますので,取材方宜しくお願いいたします。」と
記載されている。(丙98の1から3まで)
オ平成21年度中の職員AからIまでに係る給与等の総額(社会保険料等
の事業主負担分及び退職手当積立金を含む。)は,合計6944万456
3円であり,このうち職員AからDまでに係る部分は合計2576万73
87円,職員EからIまでに係る部分は合計4367万7176円であっ
た(丙34の1から16まで,丙74)。
カなお,原告は,職員AからDまでが道議会庁舎において支援者や,後援
会,マスメディアの対応をしていたと主張するが,そのような事実を認め
るに足りる証拠はない。
(2)以上の認定事実に基づいて,本件支出1が本件使途基準に適合するか否
かを検討する。
ア本件契約1は,契約書の記載内容からして,道政調査に係る事務等補助
業務を一般的・包括的に委託するものであり,また,委託先である自民党
支部が業務委託料の収支について独立した会計処理をしていないというの
であって,自民党支部が行った業務のうち,本件契約1に基づく委託業務
として行われた活動を特定することは困難であるものの,少なくとも,本
件契約1に基づく委託業務を本務として従事していた職員AからDまでが
関与していた上記(1)エの業務については,本件契約1に基づいて自民党
支部が行った委託業務であると評価すべきものと認められる。
もっとも,以下のとおり,次の業務については,議会活動の基礎となる
調査研究活動としての側面のみならず,政党活動としての側面があると認
められる。
(ア)移動政調会の開催について
移動政調会は,道議が出席し,各地域の要望聴取や意見交換等が行わ
れるものであることからすれば,参加人自民の議会活動の基礎となる調
査研究活動としての側面を有すると認められる。他方,その主催者が少
なくとも対外的には自民党支部又は各選挙区支部とされ,出席者も各選
挙区支部の役員を務める国会議員,道議及び各市町村議会の町長等が大
半を占めていたこと,国政に関する要望聴取がされることもあったこと
からすれば,B証人自身が「全く政党活動に関与しないということはな
い」と認める供述をしているとおり(証人B〔同証人調書10頁〕),
移動政調会は,自民党本部及び自民党支部にとっての政党活動としての
側面も同時に有するものといわざるを得ない。そうすると,移動政調会
の開催に関して行われた自民党支部の職員の業務についても,参加人自
民の議会活動の基礎となる調査研究活動としての側面と政党活動として
の側面が認められるといえる。
(イ)団体政策懇談会の開催について
団体政策懇談会は,北海道に関わる団体との間で意見交換や要望聴取
を目的とするものであり,参加人自民にとっての議会活動の基礎となる
調査研究活動としての側面を有すると認められるものの,他方,その主
催者が少なくとも対外的には自民党支部とされ,また,衆参両議院議員
が出席して国政に関する要望聴取も行われていたことからすれば,自民
党本部又は自民党支部にとっての政党活動としての側面も同時に有する
ものといわざるを得ない。団体政策懇談会が,年1回道議会庁舎内で行
われるものであること,その態様をみても,参加者全体での会合におい
て道議や国会議員等が意見を述べるといったものではなく,各種団体が
順次呼び込まれる方式で意見・要望等を述べるものであることなどによ
れば,団体政策懇談会の開催に関して行われた自民党支部の職員の業務
については,上記(ア)と比較して政務調査活動の性格がより強いという
べきであるが,やはり政党活動としての側面も有するものと認められる。
(ウ)政策集の作成補助について
政策集は,それによって会派が進めようとする政策を道民に周知させ
ることにより,道民からの意見や要望を聴取することの前提となるとい
う意義を有するものであり,「重点政策2009」の作成補助は,参加
人自民の議会活動の基礎となる調査研究活動としての側面を有すること
は否定できないものの,他方,「重点政策2009」は,自民党支部の
政務調査会との会議を経て自民党支部名義で発行され,その背表紙に
「政党の自由な政治活動」と記載されていることからすれば,その発行
主体が名実共に自民党支部であると認められ,また,道民に自民党支部
の政策を訴えるための手段となり得ることからすれば,自民党支部の政
党活動としての側面も同時に有するものといわざるを得ない。そうする
と,政策集の作成補助として行われた自民党支部の職員の業務について
も,参加人自民の議会活動の基礎となる調査研究活動としての側面と政
党活動としての側面が認められるといえる。
(エ)国会議員との意見交換について
道政を国政と切り離して考えることはできず,国会議員との意見交換
については参加人自民の議会活動の基礎となる調査研究活動としての側
面を有すると認められるものの,他方,少なくとも北海道ブロック両院
議員会は,自民党本部において開催され,その案内文書が自民党支部に
送られていることからすれば,自民党の政党活動としての側面も同時に
有するものといわざるを得ない。そうすると,北海道ブロック両院議員
会に参加した職員Bの業務についても,参加人自民の議会活動の基礎と
なる調査研究活動としての側面と政党活動としての側面が認められると
いえる。
(オ)全国政調会長会議への出席について
全国政調会長会議は,政策に関する意見交換の機会がある以上,参加
人自民の議会活動の基礎となる調査研究活動としての側面を有すると認
められるものの,自民党の各支部の政調会長が出席するものであり,ま
た,自民党の政策について協議する場であることがうかがわれ,案内文
書が自民党支部に送られていることを踏まえれば,自民党の政党活動と
しての側面が強いといわざるを得ない。そうすると,全国政調会長会議
に参加した職員Bの業務についても,参加人自民の議会活動の基礎とな
る調査研究活動としての側面と,政党活動としての側面が認められると
いえる。
(カ)定例懇談会の準備・出席について
各種団体との意見交換については参加人自民の議会活動の基礎となる
調査研究活動としての側面を有すると認められるものの,政局や選挙関
係の事項については参加人自民の議会活動の基礎となる調査研究活動と
の間に合理的関連性がなく,自民党の政党活動としての側面が認められ
るといわざるを得ない。そうすると,定例懇談会に関して準備・出席し
た職員Bの業務についても,参加人自民の議会活動の基礎となる調査研
究活動としての側面と政党活動としての側面が認められるといえる。
(キ)ふるさと政談への出席について
「ふるさと政談」は,地元住民との意見交換の場であり,参加人自民
の議会活動の基礎となる調査研究活動としての側面を有すると認められ
るものの,他方,自民党本部が全国300選挙区において開催するもの
であり,自民党幹事長も参加してその取材を行うよう要請していること
に鑑みれば,自民党の政党活動としての側面がむしろ大きいものといわ
ざるを得ず,そこに職員Bが出席することも同時に政党活動としての側
面を有するものといわざるを得ない。
イ以上からすれば,本件契約1に基づいて自民党支部が行った委託業務で
あると評価し得る職員AからDまでが関与した業務の相当範囲については,
参加人自民の議会活動の基礎となる調査研究活動として行われたものと認
められる業務とともに自民党支部又は自民党本部の政党活動としての側面
を有すると認められる業務が併存するといわざるを得ない。そして,参加
人自民と自民党支部とが共催で行う業務について,費用を明確に分担した
ことを認めるに足りる証拠はなく(その旨のBの陳述書(丙120〔8
頁〕)及び証人A〔同証人調書5,6頁〕の証言を裏付ける証拠はない。
そもそも,独立した会計処理がされていないにもかかわらず,参加人自民
が負担すべき割合が観念されていたとは考え難い。),その他にも政務調
査活動と政党活動とを区別するために合理的な根拠に基づいて本件契約1
の委託料を算出したという事情を認めるに足りる証拠がない以上,本件契
約1に基づいて自民党支部が行った委託業務のうち,政務調査活動と政党
活動とを明確に区別することは困難である。
そうすると,本件支出1のうち,政務調査費を充てることが許されるの
は,2分の1にとどまると認めるのが相当であり,これを超える部分につ
いては,本件使途基準に適合しないというべきである(政務調査費を充て
ることが許される割合を認定するに当たっては,本件新運用方針が定める
活動の実態により明確に区分することができない場合の上限の按分率が参
考になるというべきである。本件改正規程が施行されたのは平成22年4
月1日ではあるものの,本件改正規程によっても本件使途基準自体は改正
されていない以上,本件改正規程による改正後の本件規程4条2項に基づ
き本件使途基準に関する運用方針として定められた本件新運用方針は,本
件使途基準の解釈を具体化したものであり,本件改正規程が施行される前
後を問わず参考となるというべきである。)。
この点,参加人自民は,本件契約1に基づく業務委託料を算出するに際
し,過去の実績を踏まえ,人件費を基本に調査活動に要する経費も考慮し
て積算したと主張するところ,職員AからDまでに係る部分は合計257
6万7387円であり,これに加えて職員EからIまでのうちの1名分が
委託業務の補助を行っていたと評価したとして,4367万7176円を
5で除した約873万5435円を加えると,約3450万円となる。こ
れらの職員の業務(上記(1)エ)のうちには,上記のとおり,自民党支部
又は自民党本部の政党活動としての側面も含まれるのであるから,上記の
按分により算出される金額には十分な合理性があるものというべきである。
これに対し,参加人自民は,他の民間企業に委託した場合の委託料等の
試算では,本件契約1の業務委託料を上回ると主張するが,その試算の当
否もさることながら,仮にそのような試算が可能であるとしても,政党活
動の側面を有する業務の全額を政務調査費から支出することを正当化する
ことにはならず,上記判断を左右しない。
したがって,本件支出1のうち,2分の1(2222万5000円)に
ついてのみ政務調査費の支出が認められ,その余の部分に係る支出は本件
使途基準に適合しないというべきである。
3本件支出2について
(1)前記前提事実,丙121,後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,
以下の事実が認められる。
ア本件契約2に係る「政務調査業務委託契約書」(丙6)には,「1委
託業務の名称『政務調査業務委託』」「2委託調査の目的『道政調査に
係る事務等補助業務』」「3委託調査事項(1)データの収集・整理,
関連資料の整理(2)地域における調査(3)調査結果の集計および分析
(4)調査結果に基づく研究報告書(提言)などの策定補助(5)その他,連
絡調整を含め,道政調査活動に必要なあらゆる業務」と記載されている。
イ民主党支部には,平成21年度においては,10人程度の職員が在籍し
ていた。そのうち正規職員である職員aからcまでが,道議会庁舎を勤務
場所として本件契約2に基づく委託業務に従事し,民主党支部の事務所を
勤務場所とする他の職員は,本件契約2に基づく委託業務に従事しなかっ
た。また,業務繁忙期にそれぞれ3か月間の任期で臨時職員として雇用さ
れた職員d,eが,道議会庁舎を勤務場所として本件契約2に基づく委託
業務に従事した。(証人C〔同証人調書1,9頁〕)
委託業務に関し,職員aは,参加人民主の政策審議会事務局長として委
託業務全体を統括するとともに,委託業務全般にわたって従事した。職員
bは,同審議会の事務局次長として職員aを補佐する立場にあった。職員
cは,同審議会事務局員として委託業務の全般にわたって職員a,bを両
者の指示に基づいて補助した。職員d,eは,職員cとともに,職員a,
bを補助した。
ウ本件契約2に基づく委託業務を行うに当たり,民主党支部は職員aから
eまでの人件費のみを負担しており,その余の経費は,参加人民主が政務
調査費から支出している。
エ職員aからeまでが関与した業務は,以下のとおりである。
(ア)道政懇話会の開催
道政懇話会(各支庁管内ごとに1年度内に22から23か所で開催さ
れ,開催地域の自治体や団体の代表を招き,地域や団体の要望把握や意
見交換を目的とするものである。)の開催に関し,関係各市町村及び団
体に対する案内状の送付と出欠の取りまとめ,市町村からの要望事項の
取りまとめ及びそれに対する回答案の作成,意見交換のための道議の手
持ち資料の作成を行った。また,職員a,bは,道政懇話会に出席し,
会場の機器等の管理,意見交換時の道議のコメントの補足などを行った。
道政懇話会には,参加人民主の役員や政策審議会の構成員などが出席し,
また,国会議員が出席することもあった。道政懇話会においては,国政
に関する事項が話題に上ることもあった。(丙37から42まで,証人
C〔同証人調書2,3,11,12頁〕)
道政懇話会は,参加人民主が主体となって開催するものの,案内文書
に開催地の民主党の支部の名前を記載して共催の形式をとることがあり,
参加人民主単独で開催する場合よりも,若干多かった。また,実務を担
うのは,民主党支部の傘下の地域別組織である各民主党総支部のうち,
開催地である支庁に関係する総支部(地元総支部)である。(証人C
〔同証人調書2頁,21頁から25頁まで〕)
(イ)要望把握
要望等のため道議会庁舎を訪れた市町村及び各種団体関係者に対し,
道議とともに応接し,要望聴取・意見交換を行う際の書記を務めるなど
した(証人C〔同証人調書2頁〕)。
(ウ)代表質問の作成補助
年4回の定例会ごとに行われる代表質問の作成補助として,執行機関
に対するヒアリングの実施,データの収集・分析,文案の作成補助等を
行った(証人C〔同証人調書2,18,19頁〕)。
(エ)プロジェクトの運営補助
プロジェクト(議員提案を目指す条例や,重点的に進めていくべき政
策などの個別のテーマの検討を目的に,当該テーマを所管する委員会に
所属する道議や,当該テーマに関心を有する道議などにより,参加人民
主内に設置される組織であり,平成21年度は9つが活動していた。)
の事務局としての事務を行った。また,各種文献調査や情報収集を行う
などして,配布する資料を作成したほか,各プロジェクトの会議の日程
調整,会場設営,執行機関の職員を参加させる場合の連絡調整等を行っ
た。(丙44から48まで,証人C〔同証人調書2頁〕)
(オ)道,国等への要望・提言の作成補助
参加人民主が道や国等に対して提出した要望・提言に関し,執行機関,
市町村,関係団体等からデータの収集を行うとともに,要望・提言の文
案を作成し,また,要望・提言を行う際の道議の日程調整を行った(丙
8の3,4,丙9,丙10)。
国に対して要望・提言を行う際には,参加人民主の役員から民主党支
部に日程を打診し,以後の民主党本部や関係省庁の政務三役との日程調
整は,民主党支部と民主党本部との間で行われる。このうち,平成22
年3月4日付けの国土交通大臣Iに宛てた「北海道の社会資本整備に関
する要望」と題する書面(丙10)は,民主党支部代表,民主党支部選
出国会議員会会長及び参加人民主会長の連名名義となっている。
(カ)意見書の作成補助
意見書の作成補助として資料,データの収集・分析,文案の作成をし
た(証人C〔同証人調書18,19頁〕)。
意見書案の作成に際しては,必要に応じて,民主党支部の見解や意見
を得るプロセスが入る。
(キ)広報
参加人民主による議会活動を所属する道議又は各自治体の首長に広報
することを目的とした「道議会活動の報告」(丙8の1から4まで)に
関し,原稿案の作成,印刷・製本の発注,地域住民への広報活動を行っ
た(証人C〔同証人調書12,13頁〕)。
(ク)日常的な情報収集など
参加人民主の政務調査活動のために必要となる,情報収集としての道
の行政情報に関する執行機関からのヒアリングや,参加人民主に所属す
る道議からの依頼に基づく政策等に関する情報提供などの業務を日常的
に行った(証人C〔同証人調書19頁〕)。
オ平成21年度中の職員aからeまでに係る給与の総額(社会保険料等の
事業主負担分及び退職手当積立金を含む。)は,合計2748万0073
円であった(丙49から51まで,丙78)。
カなお,原告は,職員cからeまでが道議会庁舎において支援者や,後援
会,マスメディアの対応をしていたと主張するが,そのような事実を認め
るに足りる証拠はない。
(2)以上の認定事実に基づいて,本件支出2が本件使途基準に適合するか否
かを検討する。
ア本件契約2は,契約書の記載内容からして,道政調査に係る事務等補助
業務を一般的・包括的に委託するものであり,また,民主党支部の職員の
うち,職員aからeまでが本件契約2に基づく委託業務に従事し,その他
の民主党支部の職員は本件契約2に基づく委託業務に従事しなかったので
あるから,職員aからeまでが関与していた上記(1)エの業務については,
本件契約2に基づいて民主党支部が行った委託業務であると評価できる。
もっとも,以下のとおり,次の業務については,議会活動の基礎となる
調査研究活動としての側面のみならず,政党活動としての側面があると認
められる。
(ア)道政懇話会の開催について
道政懇話会は,参加人民主の役員や政策審議会のメンバーが出席し,
各地域や団体の要望把握や意見交換が行われるものであるから,参加人
民主の議会活動の基礎となる調査研究活動としての側面を有すると認め
られる。他方,道政懇話会は,民主党支部との共催の形式をとることが
参加人民主単独で行う場合よりも多く,実務を民主党の地元総支部が担
当し,国会議員やその秘書が出席して国政に関する事項が取り上げられ
ることもあったのであるから,民主党支部にとっての政党活動としての
側面も同時に有するものといわざるを得ない。そうすると,道政懇話会
の開催に関して行われた民主党支部の職員の業務についても,参加人民
主の議会活動の基礎となる調査研究活動としての側面と政党活動として
の側面が認められるといえる。
参加人民主は,道政懇話会の運営は民主党支部の地元総支部と参加人
民主がそれぞれ協力して行っていたものであり,運営に必要な人手はそ
れぞれが負担すべきものを負担していたから,職員aからeまでが行っ
た業務は政党活動としての側面を有しない旨主張するが,民主党支部の
地元総支部と参加人民主がそれぞれ負担すべき割合を算定することは困
難であるし,また,道政懇話会全体に政党活動としての側面が認められ
る以上,業務を分担したことにより民主党支部の職員が行った業務が政
党活動としての側面を失うことになるものでないと解され,参加人民主
の主張には理由がない。
(イ)道,国等への要望・提言の作成補助について
道や国等に対して要望・提言を提出することは,参加人民主の議会活
動の基礎となる調査研究活動としての側面を有するといえる。もっとも,
国に対する要望・提言は,民主党支部が日程調整を行い,民主党支部と
参加人民主との連名で行われることからすれば,民主党支部の政党活動
としての側面も有するといわざるを得ず,その補助に当たる民主党支部
の職員の業務についても,政党活動としての側面が認められる。
(ウ)意見書の作成補助について
参加人民主の議会活動の基礎となる調査研究活動としての側面を有す
ると認められるものの,他方,意見書の作成に際し,民主党支部の見解
や意見を得るプロセスが入ることからすれば,意見書の作成には,民主
党支部の政党活動としての側面があることを否定できない。そうすうる
と,意見書の作成補助を行った民主党支部の職員の業務についても,政
党活動としての側面が認められる。
イ以上からすれば,本件契約2に基づいて民主党支部が行った委託業務で
あると評価し得る職員aからeまでが関与した業務の相当範囲については,
参加人民主の議会活動の基礎となる調査研究活動として行われたものと認
められる業務とともに民主党支部の政党活動としての側面を有すると認め
られる業務が併存するといわざるを得ない。そして,政務調査活動と政党
活動とを区別するために合理的な根拠に基づいて本件契約2の委託料を算
出したという事情を認めるに足りる証拠がない以上,本件契約2に基づい
て民主党支部が行った委託業務のうち,政務調査活動と政党活動とを明確
に区別することは困難である。
そうすると,本件支出2のうち,政務調査費を充てることが許されるの
は,その2分の1にとどまると認めるのが相当であり,これを超える部分
については,本件使途基準に適合しないというべきである。
この点,参加人民主は,本件契約2に基づく業務委託料を算出するに際
し,過去の実績を踏まえ,人件費を積算したと主張するところ,職員aか
らeまでに係る平成21年度の給与等の総額は,合計2748万0073
円である。これらの職員の業務(上記(1)エ)のうちに,上記のとおり民
主党支部又は民主党本部の政党活動としての側面も含まれるのであるから,
上記の按分により算出される金額には十分な合理性があるものというべき
である。これに対し,参加人民主は,他の民間企業に委託した場合の委託
料等の試算では,本件契約2の業務委託料を上回ると主張するが,その試
算の当否もさることながら,仮にそのような試算が可能であるとしても,
政党活動の側面を有する業務の全額を政務調査費から支出することを正当
化することにはならず,上記判断を左右しない。
したがって,本件支出2のうち,2分の1(1375万円)についての
み政務調査費の支出が認められ,その余の部分に係る支出は本件使途基準
に適合しないというべきである。
4本件支出3について
(1)参加人民主は,本件契約3に基づいて復帰期成同盟から提供を受けた資
料として,復帰期成同盟が作成した「平成21年度北方領土相互理解促進対
話交流使節団報告書」(丙12),「平成21年度北方領土教育研究セミナ
ー」,「北方四島の現状」(丙55の1),「『クリル』諸島社会・経済発
展計画」(丙55の2),「平成21年度北方領土の早期返還を求めて」
(丙58),「第24回“北方領土を考える”高校生弁論大会記録集」(丙
59),「㈳北方領土復帰期成同盟の運営に関する意向調査結果報告」(丙
60),外務省が作成した「われらの北方領土2008年版」(丙54の
1,2),北方四島交流北海道推進委員会が作成した「北方四島交流の軌跡
ビザなし交流実績報告書’07~’09」(丙56),「平成21年度北
方四島交流訪問事業に関するアンケート」(丙57)を提出する。
(2)しかしながら,これらの資料が,いずれも,本件契約3の委託によって
作成されたものでないことは参加人民主の認めるところであるし,中には無
償でダウンロードが可能なものが含まれている(甲22,甲23)。参加人
民主は,これらの資料がいかなる状況で交付され,これらに基づきいかなる
情報が提供されたか,これらの資料以外に提供された情報及びその時期につ
いて,原告から釈明を求められたにもかかわらず,一切明らかにしようとし
ない。上記各資料を得るための適正な対価は不明であるが,少なくとも39
万円に相当するものとは認め難い。そして,参加人民主が本件契約3の委託
内容に則って上記各資料以外の情報の提供を受けたことを認めるに足りる証
拠はなく,復帰期成同盟の活動総体が参加人民主の政務調査活動に寄与する
ものとも認められない。
(3)そうすると,参加人民主が会費の納入としてした本件支出3は,本件使
途基準に適合しない支出であるというべきである。
5本件支出4について
(1)参加人民主は,本件契約4に基づいてロシア協会から提供を受けた資料
として,北海道・ロシア極東交流事業実行委員会が作成した「第11回青少
年サハリン・北海道『体験・友情』の船2009年7月29日~8月5日報
告集」(丙15),「第4回北海道・サハリン州市民交流会議報告集」(丙
16),外務省によるプレスリリース(丙62の1から9まで),ロシア協
会が作成した「平成21年(2009年)10月サハリン州関連資料
集」(丙63)を証拠として提出する。
(2)しかしながら,これらの資料が,いずれも本件契約4の委託によって作
成されたものでないことは参加人民主の認めるところであるし,少なくとも
外務省のプレスリリースについては,無償で入手することが可能なものであ
る。参加人民主は,これらの資料がいかなる状況で交付され,これらに基づ
きいかなる情報が提供されたか,これらの資料以外に提供された情報及びそ
の時期について,原告から釈明を求められたにもかかわらず,一切明らかに
しようとしない。上記各資料を得るための適正な対価は不明であるが,少な
くとも39万円に相当するものとは認め難いそして,参加人民主が本件契約
4の委託内容に則って上記各資料以外の情報の提供を受けたことを認めるに
足りる証拠はなく,ロシア協会の活動総体が参加人民主の政務調査活動に寄
与するものとも認められない。
(3)そうすると,参加人民主が会費の納入としてした本件支出4は,本件使
途基準に適合しない支出であるというべきである。
6本件支出5について
(1)前記前提事実,証拠(丙18の1から5まで,丙122,C証人)及び
弁論の全趣旨によれば,参加人民主は,連合北海道から,道議が各定例会に
おいて代表質問や意見書の文案を作成する際などに,政策課題に関する資料
や情報の提供を受けていたことが認められる。
(2)しかしながら,参加人民主は,平成20年度以前においても連合北海道
から同様の資料や情報の提供を受けていた(証人C〔同証人調書16頁〕)
というのに,少なくとも平成19年度及び同20年度においては,連合北海
道に対して調査委託費を支出していなかったのであり(甲27,28),連
合北海道による民主党支部に対する資料や情報の提供は,対価を支払うこと
を必須とするもの(無償では得られなかったもの)であるとは認め難い。
(3)したがって,参加人民主がした本件支出5は,本件使途基準に適合しな
い支出であるというべきである。
7本件支出6について
(1)前記前提事実,証拠(丙19,丙20)及び弁論の全趣旨によれば,季
節労組は,本件契約6に基づき,平成21年6月から7月にかけて,札幌市
内に居住している4000人の季節労働者を対象として,季節労働者の賃金,
労働条件,雇用期間等についての実態調査を行い,回答を得られた2300
人についての回答を集計し,分析を行った上で参加人民主に報告したことが
認められる。
(2)上記認定事実によれば,参加人民主がした本件支出6は,会派の議会活
動の基礎となる調査の委託に要する経費として支出されたものであり,対価
として39万円が不相当であることをうかがわせる事情もないから,本件使
途基準に適合しない支出であるとは認められない。
8まとめ
以上によれば,参加人自民は本件支出1の2分の1の額(2222万500
0円)の,参加人民主は,本件支出2の2分の1の額(1375万円)並びに
本件支出3,本件支出4及び本件支出5の各全額(合計195万円)の各不当
利得返還義務を北海道に負うものというべきである。
第4結論
よって,原告の請求は,被告に対し,参加人自民に2222万5000円の,
参加人民主に1570万円の支払の請求をすることを被告に求める限度で理由
があるからこれを認容し,その余はいずれも理由がないからこれを棄却するこ
ととし,主文のとおり判決する。
札幌地方裁判所民事第5部
裁判長裁判官本田晃
裁判官齊藤恒久
裁判官貝阿彌健

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