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○ 主文
一 本件控訴を棄却する。
二 被控訴人の附帯控訴に基づき、原判決中被控訴人敗訴の部分を取り消す。
三 控訴人の請求を棄却する。
四 訴訟費用は、第一、二審とも控訴人の負担とする。
○ 事実
第一 申立て
一 控訴の趣旨
1 原判決を次のとおり変更する。
2 被控訴人は控訴人に対し、金二六八二万五四五〇円及びこれに対する昭和六二
年二月一五日から支払済みまで年五分の割合により金員を支払え。
二 附帯控訴の趣旨
主文二、三項と同旨。
第二 事実関係
一 請求原因
1 (本件裁決の存在)
被控訴人は、起業者として、阪神間都市計画道路事業塚口駅小中島線、東塚口線、
上坂部西公園線の土地収用を計画し、兵庫県尼崎市<地名略>田五九平方メート
ル、同所<地名略>田四六九平方メートル(いずれも公薄上)等の土地について兵
庫県収用委員会に対し土地収用の裁決の申請を行ったところ、同収用委員会は、昭
和六一年一〇月三一日右土地の所有者であるA及び関係人である控訴人等に対し、
収用の裁決(以下「本件裁決」という。)をした。
2 (控訴人の賃借権)
(一) 控訴人は、昭和一二四年にAと締結した賃貸借契約に基づき、同人から前
記収用に係る土地の一部である別紙物件目録記載の土地(以下「控訴人主張賃借
地」という。)のうち別紙図面のホ、へ、ト、チ、ニ、ホの各点を順次直線で結ん
だ線で囲まれた部分(以下「乙地」という。)を除いた土地を建物所有の目的で賃
借し、さらに、昭和三六年には乙地を右賃貸借契約の対象に加えることを黙示的に
合意し、又はAの黙示の承諾を得た。
(二) 仮に、控訴人主張賃借地のうち別紙図面のイ、ロ、ニ、ハ、イの各点を順
次結んだ線で囲まれた部分(以下「甲地」という。)が控訴人とA間の賃貸借契約
の対象に含まれていなかったとしても、甲地は、昭和三四年以降二〇年以上にわた
り、控訴人が賃借地の一部として平穏公然に使用占有してきたものであり、控訴人
が甲地を賃借地の一部と信じたことについて過失はなかった。したがって、控訴人
は、甲地の賃借権を時効取得した。
(三) また、乙地について、仮に昭和三六年に賃借地に加えることの黙示的合意
ないし承諾が認められないとしても、控訴人は、昭和一二六年以降二〇年以上にわ
たり乙地を賃借地の一部として平穏公然に使用占有してきたものであり、控訴人が
乙地を賃借地の一部と信じたことについて過失はなかった。したがって、控訴人
は、乙地の賃借権を時効取得した。
(四) 控訴人は、本訴において、右ロ及び(三)の時効を援用する。
3 (本件裁決の内容)
本件裁決は、控訴人の賃借地につき、
(一) 借地面積を二四〇・七平方メートルとし、
(二) 更地価格を平方メートル当たり二五万五〇〇〇円(昭和五八年三月八日時
点)とし、
(三) 借地権配分割合を〇・五五とし、
(四) 物価変動修正を行い、
結局、控訴人に対する損失補償の額を三五一〇万一七五〇円とした。
4 (適正な損失補償額)
しかし、本件裁決の右損失補償の額は適正なものではない。すなわち、
(一) 控訴人がAから賃借している土地の範囲は、前記のとおり控訴人主張賃借
地であるから、その面積は二八六・七〇平方メートルである。
(二) 更地価格は平方メートル当たり三六万円を下らない。
(三) 借地権割合は〇・六が相当である。
これらの数字により損失補償額を算出すると、六一九二万七二〇〇円となる。
よって、控訴人は被控訴人に対し、前記土地収用による損失補償金として、本件裁
決との差額金二六八二万五四五〇円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日であ
る昭和六二年二月一五日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金
の支払を求める。
二 請求原因に対する認否及び被控訴人の主張
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2(一)のうち、控訴人が昭和三四年にAから別紙図面の一〇二B及び一〇
三Bの土地を賃借したことは認めるが、その余の事実は否認する。
同2(二)及び(三)の事実は否認する。
3 同3の事実は認める。
4 同4の事実は否認する。本件裁決の控訴人に対する損失補償額は適正である。
本件裁決において、兵庫県収用委員会が控訴人に対する損失補償額算定の基礎とし
て認定した控訴人の賃借地の更地価格は平方メートル当たり二五万五〇〇〇円であ
るところ、原審鑑定の結果では、右更地価格を平方メートル当たり二五万五三六〇
円としている。しかし、不動産の価格の算定は、その性質上、評価人・評価方法に
よりある程度の差異が生ずることは避け難いから、不動産価格を基礎として算定さ
れる補償額の裁決については、収用委員会に合理的な範囲内での裁量が認められる
べきである。
本件裁決における控訴人借地の更地価格と原審鑑定の結果とでは、平方メートル当
たり三六〇円、率にして〇・一四パーセントというごくわずかの差しかないのであ
るから、本件裁決の右補償額は、合理的範囲内の裁量の枠内である。仮に、右裁量
が認められないとしても、前記鑑定と本件裁決との更地価格の差異は、土地価格の
評価という事柄の性質上鑑定に不可避的に伴う誤差の範囲内であり、右鑑定結果は
本件裁決の正当性を示すものにほかならない。
○ 理由
一 請求原因1の事実(本件裁決の存在)は、当事者間に争いがない。
二 1「同2の事実(控訴人の賃借権)のうち、控訴人が昭和三四年にAから別紙
図面の一〇二B及び一〇三Bの土地を賃借したことは、当事者間に争いがない。
2 控訴人は、昭和三四年にAから控訴人主張賃借地のうち乙地を除いた部分を賃
借した旨主張するので、検討する。
証拠(甲第五号証、第一〇号証、乙第二号証、第七号証、第九ないし第一一号証、
第一五号証、原審証人B、当審証人A、原審・当審控訴人本人、原審鑑定)によれ
ば、次の事実が認められる。
(一) Aは、昭和二八年一〇月、柄谷建設株式会社に対し、その所有する一〇二
番、一〇三番の土地のうち別紙図面の一〇二B及び一〇三Bに相当する部分七二・
六坪を賃貸した。右賃貸に際しては、柄谷建設において土地を測量し、実測図面を
作成した。
(二) その後、Aは柄谷建設に対し、更に右賃貸土地の南側の土地(別紙図面の
一〇二C、一〇三C及び一〇三Dの部分)七二・六坪を賃貸した。
(三) Aは、柄谷建設が賃料を支払わなくなり、賃借権を放棄しなとして、昭和
三四年六月右会社を被告として尼崎簡易裁判所に右賃貸地上の建物の収去及び右賃
貸地の明渡しを求める訴えを提起し、同年一〇月二四日、同裁判所においてAの請
求を認容する判決が言い渡された。
(四) ところが、柄谷建設に対して債権を有していた控訴人が、同会社から右賃
貸地上の建物の権利を取得したとして、Aに対し自己に土地を賃借してほしいとの
申し入れをした。
(五) そこで、Aは、従前右会社に賃貸していた土地のうち当初の賃貸部分すな
わち別紙図面の一〇二B及び一〇三Bの部分を賃貸することとし、昭和三四年一二
月七日Aと控訴人双方の代理人の弁護士が立会いのうえ「土地賃貸契約公正証書」
(乙第二号証)を作成した。
右公正証書では、賃貸土地の面積は七二坪六合とされ、その範囲を示すための図面
が添付されたが、右図面は、Aが柄谷建設に賃貸したときに作成された実測図に基
づくものであった。
(六) 右公正証書添付の図面と本件裁決の申請に当たって被控訴人が作成した実
測図面とを対比すると、右公正証書によってAが控訴人に賃貸した土地の面積は七
二坪六合で別紙図面の一〇二B及び一〇三Bの部分の実測面積二四〇・七平方メー
トルと等しく、また、公正証書添付図面の上で賃貸土地の東側の境界線の長さは
五・八一間と記載されており、別紙図面のリハ線の実測距離一〇・五六三メートル
と一致しており、その他土地の形状、位置の比較からいっても、右賃貸地が別紙図
面の一〇二B及び一〇三Bの部分に該当することは明らかである。また、別紙図面
の一〇二A及び一〇三Aの部分は、北側の公道(県道)に面した水路であるとこ
ろ、右公正証書添付の図面においても、県道の南側の「公溝」が賃貸地の範囲に含
まれないことは明示されている。
以上の事実が認められ、右認定の事実によれば、Aが昭和三四年に控訴人に対して
貸貸した土地の範囲は別紙図面の一〇二A及び一〇三Bの範囲のみであることが明
らかである。
原審・当審の控訴人本人尋問の結果中には、控訴人がAから賃借したのは別紙図面
のロ二線より北側であり、甲地も別紙図面の一〇二A及び一〇三Aの部分の土地も
含まれていた、賃借に当たっては、Aが現地でその範囲を指示し、ロニ線上に杭を
打ったので、後に自分が石の杭に変えた、検甲第一号証の三ないし六の写真に写っ
ている石がその石杭であるとの供述部分がある。しかし、検甲第一号証の三ないし
六に写っている石が控訴人が供述するようなものであるかどうかは右写真からは明
らかでないし、控訴人の右供述部分は、右認定の事実及び証人Aの証言に照らして
信用できない。また、弁論の全趣旨によれば、別紙図面のロニ線は、控訴人が所有
する居宅及び店舗建物の南側の軒の線とほぼ一致することが認められるが、証拠
(甲第六、第七号証、当審控訴人本人)によれば、右建物が建築されたのは昭和三
五年九月ころであり、控訴人がAと賃貸借契約を締結した昭和三四年一二月当時に
はこれらの建物は存在しなかったことが認められるから、ロニ線が右建物の位置を
基準に定められたわけではなく、特にロニ線を賃借地の境界線と定める必要があっ
た事情を認めるに足りる証拠もない。
他に、別紙図面の一〇二B及び一〇三Bの部分以外をAが控訴人に賃貸したことを
認めるに足りる証拠はない。
3 控訴人は、昭和三六年に乙地を賃貸借契約の対象に加えることを控訴人とAの
間で黙示的に合意し、又はAの黙示の承諾を得た旨主張するので検討する。
証拠一乙第三ないし第五号証、第一二、第一三号証、第一四号証の一ないし五、検
甲第一号証の八、原審証人B、当審証人A、原審・当審控訴人本人、原審鑑定)に
よれば、乙地上にはAが柄谷建設に賃貸していた当時から便所に使用されている建
物があったこと、Aは右便所については後に取り壊すつもりでいたので、控訴人と
賃貸借契約を締結した際にもその敷地部分まで控訴人に貸すつもりはなかったこ
と、しかし、控訴人はAとの賃貸借契約締結後右便所を使用し、乙土地を占有して
きたこと、Aは昭和三六年に、控訴人が賃貸地以外の部分すなわち別紙図面の一〇
二C、一〇三C及び一〇三Dの部分に物置小屋を建築して権原なく右土地を占有し
ていると主張して、控訴人を被告として、建物収去及び右不法占拠部分の土地の明
渡しを求める訴訟(右訴訟でAが明渡しを求めた土地の範囲には乙地も入っている
が、便所の建物については収去を求めていない。)を尼崎簡易裁判所に提起し、昭
和三七年に請求認容の判決があり、右訴訟は昭和三九年四月に神戸地方裁判所で控
訴棄却、昭和四〇年六月に大阪高等裁判所で上告棄却の各判決があり、確定したこ
と、Aは同年一一月に右物置小屋の収去の強制執行をしたこと、当時、便所につい
てAが収去まで求めなかったのは、柄谷建設が建築した同会社の所有物であると考
えていたことによるものであって、その敷地を控訴人が使用することを認める趣旨
ではなかったこと、以上の事実が認められる。
右認定の事実によれば、控訴人が乙地上の便所を使用して長年の間乙地を占有して
きたからといって、Aが乙地まで賃貸地の範囲に加えることを黙示的に控訴人との
間で合意したとか、承諾したとはいえない。他に、控訴人の右主張を認めるに足り
る証拠はない。
4 次に、控訴人は、甲地及び乙地について賃借地の一部として長年占有してきた
として右部分の賃借権を時効取得した旨主張する。
しかし、これまで認定してきた事実によれば、控訴人は甲地及び乙地を単に事実上
占有してきたものにすぎず、さらに、証拠(乙第一六、第一七号証)及び弁論の全
趣旨によれば、Aと控訴人との間の賃貸借契約の資料は昭和三四年以来数回にわた
り値上げされてきているが、常に賃貸面積を七二・六坪として計算されていること
が認められ、この事実からも、控訴人が右各土地を賃借の意思で占有していること
が客観的に表現されているものとみることはできない。
したがって、控訴人の右主張は採用の限りでない。
三 請求原因3の事実(本件裁決の内容9は、当事者間に争いがない。
四 そこで、本件裁決が適正なものであるか否かについて判断する。
1 控訴人の賃借地の面積が二四〇・七平方メートルであることは、前示のとおり
であるから、本件裁決の右の点の判断に誤りはない。
2 本件裁決は、更地価格を平方メートル当たり二五万五〇〇〇円(昭和五八年三
月八日時点)と認定しているところ、乙第八号証(本件裁決書)によれば、右更地
価格は、同地区の地価の動向、近傍類地の取引価格及び兵庫県収用委員会が現地に
ついて調査した右土地の価格形成上の諸要因並びに同委員会が求めた不動産鑑定士
の鑑定評価を総合勘案した結果算定したものであるとされていることが認められ
る。そして、原審鑑定の結果(不動産鑑定士Cの鑑定)は、右時点での更地価格に
ついて、取引事例比較法により、公示価格も参考にして近隣地域の標準的画地の更
地価格を求め、これに個別格差を勘案して、二五万五三六〇円と認定しているとこ
ろ、右鑑定の過程に特に疑問とすべき点も見当たらないから、この結果は信頼する
ことができる。そして、右鑑定の結果に照らせば、同時点での更地価格を平方メー
トル当たり二五万五〇〇〇円とした本件裁決の認定は正当なものとして是認でき
る。本件裁決の認定した更地価格と前記鑑定が算定した更地価格とは平方メートル
当たりで三六〇円の差があるが、ごくわずかの差にすぎず、不動産の価格の評価が
その性質上ある程度の幅を持つものであることに鑑みると、この程度の差は不動産
の価格評価に伴って生じる誤差の範囲内であると考えるのが相当であり、本件裁決
の認定額の正当性を左右するものではない。
甲第三号証の一ないし三及び原審・当審の控訴人本人の供述も右認定を動かすには
足りず、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。
3 乙第八号証によれば、本件裁決は、控訴人の賃借地の借地権割合について、類
似地域における借地権の取引慣行、大阪国税局が認定する相続税の権利割合、右土
地の利用形態等を総合勘案して〇・五五と認定したものとしていることが認められ
る。そして、本件裁決の右記定は、前記鑑定の結果に照らして、妥当なものと認め
られる。
右鑑定の結果によれば、右土地付近における国税庁査定の借地権割合は〇・六であ
ることが認められるが、右鑑定は、この国税庁の査定の数値も参考にしたうえで、
控訴人の賃借地の個別的な要因(資料支払の経緯、敷金権利金等の支払の経緯、建
物の用途等)を勘案して借地権割合は〇・五五が妥当であると判断しているのであ
り、国税庁の査定数値が〇・六であることは右認定を左右するに足りるものではな
い。
他には右認定を左右するに足りる証拠はない。
4 したがって、控訴人が本件裁決による損失補償額の算定が適正でないことの根
拠として主張する点は、いずれも失当である。
五 以上によれば、控訴人の本訴請求が理由がないから棄却すべきものである。
よって、控訴人の本件控訴は理由がないからこれを棄却し、被控訴人の附帯控訴に
基づき原判決中被控訴人敗訴の部分を取り消して控訴人の請求を棄却することと
し、主文のとおり判決する。
(裁判官 上田次郎 渡辺 貢 小松一雄)
別紙
物  件  目  録
(一) 尼崎市<地名略>
田(現況宅地)   五九平方メートル   (公簿)
八七・〇四平方メートル(実測)
のうち六八・七六平方メートル
(二) 同所<地名略>
田(現況宅地)  四六九平方メートル   (公簿)
六〇九・〇三平方メートル(実測)
のうち二一七・九四平方メートル
以上合計二八六・七〇平方メートル(別紙図面中赤線で囲んだ部分)
(原裁判等の表示)
○ 主文
一 被告は、原告Dに対し、四万九五五五円及びこれに対する昭和六二年二月一五
日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、原告らの負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は、原告Dに対し、二六八二万五四五〇円、原告Eに対し、二二八五万八
一九三円、
及び右各金員に対する昭和六二年二月一五日から支払済みまで年五分の割合による
金員を支払え。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
3 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は、原告らの負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 当事者
(一) 被告は、起業者として、阪神間都市計画道路事業塚口駅小中島線、東塚口
線、上坂部西公園線の土地収用を計画し、これについて、兵庫県収用委員会は、昭
和六一年一〇月三一日、原告らに対し、裁決(以下「本件裁決」という。)をし
た。
(二) 原告Dは、別紙物件目録一記載の土地を、原告Eは、別紙物件目録二記載
の土地を、いずれも、建物所有を目的として、土地所有者Aから賃借している。前
記両土地は、右土地収用の対象地である。原告Dの借地の範囲は、昭和三四年の賃
貸借の当初から変わっていない。
2 本件裁決の内容
本件裁決によれば、原告らに対する損失補償は次のとおりである。
(一) 原告Dの分
(1) 借地面積を二四〇・七平方メートルとし、
(2) 更地価格を平方メートル当り二五万五〇〇〇円(昭和五八年三月八日時
点)とし、
(3) 借地権配分割合を〇・五五とし、
(4) 物価変動修正を行い、
結局、損失補償の総額を金三五一〇万一七五〇円とした。
(二) 原告Eの分
(1) 借地面積を二三五・八四平方メートルとし、
(2) 更地価格を右借地面積のうち、二・七〇平方メートルについては平方メー
トル当り二五万五〇〇〇円(昭和五八年三月八日時点)、一八六・七一平方メート
ルについては平方メートル当り二二万七三〇〇円(昭和五八年三月八日時点)、四
六・四三平方メートルについては平方メートル当り二四万二五〇〇円(昭和六〇年
三月九日時点)とし、
(3) 借地権配分割合を〇・五とし、
(4) 物価変動修正を行い、
結局、損失補償の総額を金二八〇八万三二四七円とした。
3 適正数額
しかし、右裁決の数額は適正なものではない。適正な数額は次のとおりである。
(一) 原告Dの分
(1) 借地面積は二八六・七〇平方メートルである。
(2) 更地価格は平方メートル当り三六万円を下回らない。
(3) 借地権割合は〇・六である。
これらの数字により損失補償額を算出すると、金六一九二万七二〇〇円となり、
裁決の額との差は金二六八二万五四五〇円となる。
(二) 原告Eの分
(1) 借地面積は争わない。
(2) 更地価格は平方メートル当り三六万円を下回らない。
(3) 借地権割合は〇・六である。
これらの数字により損失補償額を算出すると、金五〇九四万一四四〇円となり、裁
決の額との差は金二二八五万八一九三円となる。
よって、原告らは、被告に対し、右各差額及びこれに対する本件訴状送達の日の翌
日である昭和六二年二月一五日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延
損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
1 (一)は認める。1(二)のうち原告Dが賃借した土地の範囲が別紙図面の一
〇二B及び一〇三Bであることは認め、その余の土地が右範囲に含まれることは否
認、1(二)のその余の事実は認める。
2 は認める。
3 のうち(二)(1)は認め、その余は争う。
第三 証拠(省略)
○ 理由
一 請求原因1(当事者)のうち原告Dが賃借した土地の範囲を除いた部分及び同
2(本件裁決の内容)については、当事者間に争いがない。
二 原告Dが賃借した土地の範囲について
1 別紙図面の一〇二B及び一〇三Bの土地が前記賃借した土地の範囲に含まれる
ことは、当事者間に争いがない。
2 別紙図面の一〇二A及び一〇三Aが前記賃借した土地の範囲に含まれることを
認めるに足りる証拠はない。
3 別紙図面中一〇二C及び一〇三Cのうち別紙図面ロ-ニ線より北側の部分(以
下「甲地」という。)についてみると、原告Dの供述によれば、同図面中イ-ハ線
は原告Dの所有する建物の外壁面を、ロ-ニ線は同建物の庇の端を示すことが認め
られるけれども、原本の存在及び成立に争いのない乙第二号証及び証人Bの証言に
よれば、原告Dが土地所有者Aから昭和三四年に土地を賃借する際に作成した土地
賃貸借契約公正証書において当該土地の北側境界直線と南側境界直線との距離は
五・八一間と明示されており、この一〇・五六三メートル(一間は一・八一八メー
トル)は、別紙図面リ-ハ間の実測距離と一致すること、Aが前記賃貸借の後に右
公正証書に示した当該土地を現地で実験したところ、原告Dの所有する前記建物の
庇が当該土地の境界を越えていることを確認したことが認められ、以上によれば、
甲地がDの賃借した土地の範囲に含まれるとは認めることができない(原告D本人
の供述中にこれに反する趣旨の部分は、採用することができない。)。
4 別紙図面中ホ-へ-ト-チ-ニ-ホを順次結ぶ直線で囲まれる部分(以下「乙
地」という。)についてみると、原告D自ら、乙地が昭和三四年の当初の賃貸借の
目的の範囲に含まれていなかったことを認めており、同原告は、その後の乙地につ
いての賃借権の取得原因事実を主張しない。
5 以上によれば、原告Dの賃借した土地の範囲は、一〇二B及び一〇三Bの合計
二四〇・七〇平方メートルということになる。
三 更地価格
鑑定の結果によれば、原告Dの前記借地二四〇・七〇平方メートルの一平方メート
ル当りの価額は二五万五三六〇円、原告Eの前記借地合計二三五・八四平方メート
ルの一平方メートル当りの価格は二二万八〇〇〇円であると認めることができる。
乙第八号証中原告Dの借地部分に関する更地価格の判断は、甲第三号証の一ないし
三、第四号証、原告D本人の供述に照らし、採用しない。
四 借地権の割合
鑑定の結果によれば、原告Dの前記借地につき〇・五五、原告Eの前記借地につき
〇・五〇が相当である。
五 適正価格
以上の結果に、本件裁決の採用した補償金支払期限時における修正率(乙第八号証
=本件裁決書別表第1(3)中の算式(3)の結果一・〇三九八及び同算式(4)
の結果一・〇〇五六)を乗じて、各原告に対する補償額を、別紙計算書のとおり算
出すると、原告Dに対する補償額は三五一五万一三〇五円が相当であり、本件裁決
における補償額三五一〇万一七五〇円はこれに四万九五五五円不足し、他方、原告
Eに対する補償額は二七七七万四七九〇円が相当であり、本件裁決における補償額
合計二八〇八万三二四七円はこれに超過する。
六 結論
よって、本訴請求は、原告Dが被告に対し四万九五五五円及びこれに対する訴状送
達の日の翌日である昭和六二年二月一五日から支払済みまで民法所定年五分の割合
による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その
余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九三条一項本文、九
二条但書、八九条を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を、それぞれ適用し
て、主文のとおり判決する。
別紙(省略)

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