弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上吉を棄却する。
         理    由
 被告人A弁護人藤修上告趣意第一点について。
 論旨は、原審は、警察職員による本件連行を、警察官職務執行法三条一項一号に
よる保護であるとし、その中には、強制力の行使をも含むものと解しているが、か
ゝる解釈は、憲法三三条三四条に違反しており又かりに、かゝる強制力行使もまた、
警察官職務執行法に規定する保護の内容であるとすれば、同法は、憲法の前記条項
に違反し無効であり、従つて本件連行を、警察職員の公務執行とした原判決は、違
法であると主張する。
 然れども、原判決は、本件連行を、所論の如く強制力行使を含む保護であるとは、
認定していない。論旨は、原判示に副わない独自の見解である。それのみならず、
控訴趣意中に、所論の連行が憲法三三条三四条に違反すること及び警察官職務執行
法が、憲法の前記条項に違反することについては、何等の主張がなされていない。
原審において、主張判断のない事項を、上告理由とすることの不適法なるは、屡次
判例の示すところである。(昭和二四年新(れ)五九号、同二四年一二月一二日第
二小法廷決定、集三巻一二号一九三七頁、同二四年新(れ)二七二号同二五年五月
二日第三小法廷判決、集四巻五号七四二頁、同二四年新(れ)四九二号同二五年五
月一九日第二小法廷決定、集四巻五号八三八頁、同二五年(あ)二一二一号同二六
年三月二七日第三小法廷決定、集五巻四号六九五頁参照。)
 憲法違反あるを前提として、原判決に違法があるとする論旨は、理由がない。
 同第二ないし第四点について。
 論旨は、原審に、単なる法令違反、事実誤認、刑の量定不当のあることをいうも
のであつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 被告人B弁護人藤修上告趣意について。
 同第一点は、第一審は、証人Cの公判廷における証言を採用せずして、同人の検
事に対する供述調書を罪証に供しており、原審は、これを適法としているが、同調
書は刑訴三二一条一項二号の書面として提出されだものであつて、これを証拠能力
ありとするには、同調書が、右証言より一層信用すべき特別の情況のあるを要する
にもかかわらず、原審は、その情況につき何等示すところがないのは、訴訟法違反
であり、原判決挙示の証拠よりこの調書を除けば、同被告人の自供調書のみとなり、
原審は、被告人の自白のみにより犯罪を認定したるに帰し、憲法三八条三項に違反
しておるという。然れども、当裁判所の判例は、刑訴三二一条一項二号の書面につ
いては、信用すべき特別の情況を判断するため、証拠調を要しないこと、またその
判断を判示することも必要としない旨、示している。(同二八年(あ)三四七八号
同二八年一二月二五日第二小法廷決定、同二九年(あ)二六二六号同三一年一一月
二〇日第三小法廷決定、同三一年(あ)二七一九号同三一年一二月七日第二小法廷
決定参照。)
 したがつて原審に所論の訴訟法違反なく、憲法二八条三項違反があるとする前提
を欠くことになる。
 その余の論旨は、原審に、単なる法令違反、事実誤認、量刑不当のあることを主
張するにとゞまつている。
 以上第一ないし第三の論旨は、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。論旨はすべ
て採用できない。
 被告人B弁護人妹川正雄上告趣意について。
 論旨中、原審の判例違反をいうものがあるけれども、引用の判例は、本件に適切
であるとはいえない。その余の論旨は、原審に、事実誤認があると主張するもので
ある。
 論旨は、すべて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない
 よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとお
り決定する
  昭和三三年一一月二四日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    島           保
            裁判官    垂   水   克   己

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