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主      文
1 被告らは,原告甲に対し,各自,金100万5400円及びこれに対する平成14年6
月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告らは,原告乙に対し,各自,金13万3320円及びこれに対する平成14年6
月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,これを10分し,その6を原告らの負担とし,その余を被告らの負担と
する。
5 この判決は,1項及び2項に限り,仮に執行することができる。
 
 事実及び理由
第1 請求
1 被告らは,原告甲に対し,各自,金231万円及びこれに対する平成14年6月1日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告らは,原告乙に対し,各自,金27万5000円及びこれに対する平成14年6
月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本件は,合併に伴って被告三菱証券株式会社(以下「被告会社」という。)へ商号
を変更した国際証券株式会社(以下「国際証券」という。)から,円建他社株式転換
特約付社債(他社発行の普通株式を転換対象株式とし,当該転換対象株式の株
価動向により,債券額面額の金銭又は転換対象株式で償還する仕組みの社債,
以下「EB」という。)を購入した原告らが,
(1)ア 被告丙が,適合性原則及び説明義務に違反する違法な勧誘を行ったことに
より,債券額面額を下回る価格の転換対象株式での償還を受け,債券額面額
と償還後に下落した転換対象株式の株価との差額に相当する損失を被った
イ 被告丙がその従業員である被告会社には使用者責任がある
として,被告らに対し,各自,不法行為による損害賠償請求権に基づき,
(2)ア 原告甲において,EB購入価格382万円と下落後の転換対象株式の株価15
3万5000円との差額228万5000円及び弁護士費用の合計額の一部であ
る231万円並びにこれに対する訴状送達の日の翌日である平成14年6月1
日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
イ 原告乙において,EB購入価格80万円と下落後の転換対象株式の株価49
万7000円との差額30万3000円及び弁護士費用の合計額の一部である2
7万5000円並びに上記(2)アと同様の遅延損害金
の支払を求めた事案である。
2 基礎となる事実(証拠を付さない事実は,当事者間に争いがない。)
(1)当事者等(原告乙本人)
ア 原告甲は,平成4年に電子機器設計等を営む有限会社アナログテック(以下
「アナログテック」という。)を設立後,その代表者として同社を経営してきた者
であるが,国際証券との取引については,妻である原告乙に任せていた。
原告乙は,短期大学の家政学科を卒業後,電子機器製造販売会社の総務
職として約2年10か月間勤務し,昭和57年に退職して専業主婦となったが,
アナログテック設立以降,同社の雑用等を手伝っている者である。
なお,アナログテックには原告ら2名以外の従業員はいない。
イ 国際証券は,証券取引法に基づき金融庁長官の登録を経た証券業を営む
証券会社であり,被告会社は合併により国際証券を包括承継したものである
(弁論の全趣旨)。
被告丙は,平成7年5月ころから平成13年3月ころまでの間,国際証券堺
支店の従業員として原告らの取引を担当していた者である(乙16)。
(2)本件各EBの買付け
ア 原告乙は,平成12年2月7日,原告甲名義で,国際証券から,「スウェーデ
ン輸出信用銀行2001年2月9日満期円建他社株式転換特約付コーラブル債
券(NTTドコモ普通株式転換特約付)」(以下「本件ドコモEB」という。)の額面
金額382万円分を代金382万円で買い付けた。
イ 原告乙は,平成12年9月22日,原告乙名義で,国際証券から,「スウェー
デン輸出信用銀行2001年3月28日満期ディスカウント型円建他社株式転換
特約付債券(東芝普通株式転換特約付)」(以下「本件東芝EB」という。)の額
面金額80万円分を代金80万円で買い付けた。
(3)本件各EBの条件等
ア 本件ドコモEBの条件(乙6,7,9)
本件ドコモEBの条件は,以下のとおりであった。
条件確定日H12.2/7
売出期間H12.2/7(条件確定後)~H12.2/9
受渡期日H12.2/10
額面金額1万円
売出価格額面金額1万円につき1万円
利率H12.2/9~H12.8/8:年13.00%
H12.8/9~H13.2/8:年2.00%
転換対象NTTドコモの普通株式(以下「ドコモ株」という。)
期限前償還H12.8/2に参照株価が一度でも転換株価以上となった場
合,H12.8/9に額面金額で償還する。
参照株価H12.8/2に取引開始時から取引終了時までの間に取引された転
換対象株式1株の株価
転換株価382万円(H12.2/7の前場の転換対象株式1株の出来高加重平
均株価)
計算日H13.1/26
償還期限H13.2/9
最終株価計算日における転換対象株式1株の公式な終値
満期償還最終株価が転換株価の90%以上105%以下となった場合,額面金
額で償還する。
最終株価が転換株価の90%未満又は105%超過となった場合,額
面金額1万円×(最終株価÷転換株価)で償還する。
ただし,転換可能単位(転換株価を1万で割った商と等しい本件
ドコモEBの数)と同数の本件ドコモEBを所持する者に対して
は,同数の転換対象株式を交付して償還する。
計算代理人東京三菱インターナショナル・ピーエルシー
受渡代理人株式会社東京三菱銀行ロンドン支店
イ 本件東芝EBの条件(乙10,11,13)
本件東芝EBの条件は,以下のとおりであった。
条件確定日H12.9/26
売出期間H12.9/26(条件確定後)~H12.9/28
受渡期日H12.9/29
額面金額1万円
売出価格額面金額1万円につき1万円
利率年7.00%
転換対象株式会社東芝の普通株式(以下「東芝株」という。)
転換株価800円(H12.9/26の前場の転換対象株式1株の出来高加重平均
株価の88.0%)
計算日H13.3/21
償還期限H13.3/28
参照株価計算日における転換対象株式1株の公式な終値
満期償還参照株価が転換株価以上となった場合,額面金額で償還する。
参照株価が転換株価未満となった場合,
額面金額1万円×(参照株価÷転換株価)で償還する。
ただし,転換可能単位(転換株価と最低交付可能株式数1000と
の積を1万で割った商と等しい本件東芝EBの数)と同数の本件
東芝EBを所持する者に対しては,同数の転換対象株式を交付
して償還する。
計算代理人J.P.モルガン証券会社東京支店
受渡代理人J.P.モルガン証券会社ロンドン支店
ウ 本件各EBについては,流通市場がなく,被告も販売済みの本件各EBを買
い取る義務を負わないものとされていた(乙6,7,10,11)。
(4)本件各EBの償還
ア 平成13年1月26日のドコモ株の終値は230万円であったところ,本件ドコ
モEBは,同年2月9日,ドコモ株1株で償還された。
イ 平成13年3月21日の東芝株の終値は689円であったところ,本件東芝EB
は,同月28日,東芝株1000株で償還された。
(5)その後の経過
ア ドコモ株については,平成14年3月26日,旧株式1株に対して新株式5株
を割り当てる株式分割が行われた。
イ ドコモ株及び東芝株の平成15年9月1日の終値は,それぞれ30万7000円
及び497円であった(甲46,47)。
3 争点
(1)被告丙は,原告乙に対して本件各EBの購入を勧誘した所為につき,適合性原
則違反(不適格者への投資勧誘)ないし説明義務違反を責任原因として,債務
不履行責任又は不法行為責任を負うか。
(2)原告が被った損害額はいくらか。
4 争点に対する原告らの主張
(1)勧誘行為の違法性(争点(1))について
ア EBの構造上の特質について
(ア)株式プットオプションの売買と同様の経済的実体が存在すること
EB購入者は,転換対象株式の株価が転換株価以下に下落した場合,額
面金額での金銭償還の代わりに,額面金額よりも低い株価の転換対象株
式を引き受ける義務を負担する。他方,EB起債を企画する投資銀行又は
そのグループ証券会社(以下「アレンジャー」という。)は,転換対象株式の
株価が転換株価以下に下落する確率に比例して,EBの利息(以下「クーポ
ン」という。)を決定する。このように,EB購入者とEB発行体ないしアレンジ
ャーとの間には,株式プットオプション(予め定められた価格(行使価格)で,
行使時期に株式を売却できる権利)の売買と同様の経済的実体が存在す
る。
すなわち,EBには実質的にオプション取引(ある商品を予め定められた
価格で行使時期に購入ないし売却する権利をプレミアムを支払って購入す
る取引)が組み込まれており,EB購入者は個別株のプットオプションの売主
と同様のリスクを負うが,オプション取引は,賭博的投機的色彩が強く,この
危険を承知で引き受けるもののみが行うべきであるから,証券会社は,そ
の勧誘に当たって,そのリスクを十分に説明すべきである。
(イ)リターンとリスクとが非対称的かつ不均衡であり,その適正さを検証するこ
とが困難であること
EB購入者は,転換対象株式の株価がいかに上昇しても,クーポンを上
回る利益を得ることはできない一方,転換対象株式の株価が転換株価以下
に下落した際には,下落分の損失を被るところ,EB購入者が取得するリタ
ーンと負担するリスクとは非対称的である。
また,アレンジャーは,EB起債後償還期限までの間に転換対象株式の
株価が変動する度合い,ひいては,EB購入者が負担するリスクに応じてク
ーポンを設定するが,このクーポンがEB購入者に直接支払われることはな
く,EB購入者とアレンジャーとの間に介在するEB発行体ないしEBを販売
する証券会社(以下「EB販売証券会社」という。)が高い利鞘を取得するた
め,EB購入者は,負担するリスクとは不均衡なリターンしか取得できない。
さらに,かかるクーポンは,アレンジャー内部での専門的情報処理に基づ
いて設定されるところ,EB販売証券会社や一般投資家は,設定されたクー
ポンがEB購入者が負担するリスクに見合った適正なものか否かを検証す
ることができない。
(ウ)転換対象株式の株価が転換株価以下に下落した場合の損失を回避する
ことが不可能であること
EBのように金融派生商品としての経済的実体を有する商品を購入する
に当たっては,再ヘッジ取引等を行うことによってリスクを確定ないし限定す
ることが重要である。しかし,一般投資家の能力でかかる取引を行うことは
期待できないのみならず,EB購入者は,EB購入時に購入代金を支払わね
ばならない一方,償還期限が到来するまでクーポンの支払を受けることが
できないから,EB購入後その償還までの間に,代金相当額の資金ないしク
ーポンを運用することができず,転換対象株式の株価が転換株価以下に下
落した場合の損失を軽減することができない。
また,EB購入者とEB販売証券会社との取引は相対取引であるが,EB
購入者が,EB販売証券会社にEBを買い戻してもらったり,第三者にEBを
転売したりすることは事実上できない。その結果,EB購入者は,転換対象
株式の株価が下落していても,償還期限までEBを保有せざるを得ず,転換
対象株式の株価が転換株価以下に下落した場合の損失を回避することが
できない。
(エ)EB購入者とアレンジャーとの構造的利害相反関係
EB購入者とEB発行体ないしアレンジャーとの間に株式プットオプション
売買と同様の経済的実体が存在することによって,EB購入者とEB発行体
ないしアレンジャーとの間には,転換対象株式の株価が転換株価以下に下
落するか否かにつき利害相反関係が発生する。
また,アレンジャーは,EB起債の時点で,株式償還となる確率に応じた
転換対象株式を保有した上,その時々の転換対象株式の株価と転換株価
との関係,転換対象株式の株価の変動度合い及び計算日までの残存日数
等に基づき,転換対象株式の株価が上昇すればこれを売却して株式売却
益を確保し,転換対象株式の株価が下落すればこれを購入して株式保有
率を高めることにより,株式償還となる確率に応じた転換対象株式を保有す
るデルタヘッジ取引を行うところ,アレンジャーが利益を確保するべく転換対
象株式を売却する行為は,転換対象株式の株価の上昇を抑え,転換対象
株式の株価を下落させる要因となり,この点においても,EB購入者とアレン
ジャーとの間には利害相反関係が存在する。
イ 適合性原則違反について
(ア)一般投資家との関係における適合性の欠如
一般投資家が前記のような構造上の特質を有するEBの購入を自己責任
において決定するためには,①EB購入者は,転換対象株式の株価が転換
株価以下に下落した場合,額面金額よりも低い株価の転換対象株式を引き
受ける義務を負担する結果,その下落分のリスクを負担すること,②クーポ
ンは,転換対象株式の株価が転換株価以下に下落する確率に比例して設
定されること,③EB購入者が取得するリターンと負担するリスクとは非対称
的でありかつ不均衡であること,及び,④EB購入者は,転換対象株式の株
価が転換株価以下に下落した場合の損失を軽減ないし回避することができ
ないこと,について具体的に理解することが必要不可欠であって,転換対象
株式の株価が転換株価以下に下落した場合には転換対象株式で償還され
ることの抽象的な認識があるだけでは不十分であるが,一般投資家がこの
ような具体的理解をすることは,その能力を超えるものであって,到底不可
能なことである。とすれば,一般投資家に対してEB購入を勧誘することは,
適合性を基礎づける特段の事情がない限り,適合性原則に違反し,違法で
ある。
(イ)原告らとの関係における適合性の欠如
本件各EB購入の実質的窓口であった原告乙は,株式取引に関する知識
も経験もなければ,株式取引を積極的に行う意欲もなく,堅実な貯蓄だけを
志向する一般投資家であったところ,かかる原告乙に対してEB購入を勧誘
した被告丙の所為は,適合性原則違反の違法な行為である。
原告乙と国際証券との間の取引は,ほとんどが債券の取引であり,株式
の取引は,JR西日本株及びJR東日本株の各募集につき国際証券から勧
誘を受けて申し込んだところ,偶然に当選したためこれらを購入したときだ
けである。上記債券取引の途中からは,為替変動ないし株価変動のリスク
を負担する債券の取引も含まれていたが,これらの債券も,原告乙にとって
は,安全確実な外国銀行等の社債としか映っていなかった。
ウ 説明義務違反について
(ア)EB購入を勧誘する際に要求される説明義務の内容
一般投資家が,前記のような構造上の特質を有するEBの購入を自己責
任において決定するためには,前記イ(ア)①ないし④の具体的理解が必要不
可欠であるところ,一般投資家に対してEB購入を勧誘する者には,前記イ
(ア)①ないし④の各事項の説明とともに,転換対象株式に関する情報及び前
記ア(エ)の構造的利害相反関係下における転換対象株式の株価の変動度
合い並びにクーポンの利率自体がEB購入者の負担するリスクに見合った
適正なものか否か検証できないことについて説明すべき義務がある。
(イ)本件各EBの購入を勧誘する際の説明義務違反
しかし,被告丙は,原告らと国際証券との間の取引の実質的窓口であっ
た原告乙に対して本件各EBの購入を勧誘する際,上記説明義務があった
にもかかわらず,以下のとおり,かかる説明を怠った。
a 本件ドコモEBの購入を勧誘する際の説明義務違反
(a)被告丙は,本件ドコモEBの購入を勧誘するべく電話をした際,原告乙
に対し,「年利13%の利息が付きます。半年で6.5%です。1年後に
は高利息と元金が返還されます。」「NTTドコモ株の株価が5%から-
10%の範囲内であれば,元本額がそのまま返還されます。」と述べ
て,本件ドコモEBの有利性及び額面金額での金銭償還の確実性を強
調する一方,転換対象株式の株価が転換株価を下回った場合の損失
については,「あり得ないと思いますが,万一-10%以下になっても,
NTTドコモの株券で返還します。NTTドコモの株券で返還する場合でも
利息は付きます。」と述べるだけで,何ら具体的な説明をしなかった。ま
た,被告丙が原告乙に説明した時間はせいぜい15分であって,この
間,被告丙から原告乙に対し,上記会話以上に,本件ドコモEBの仕組
み,その発行体の名称及び当時騰落を繰り返していたドコモ株の株価
動向につき説明がなされたことはなかった。
その結果,原告乙は,本件ドコモEBが1年後になれば元金の返還
及び高い利息が受けられる安全高利回りのNTTドコモ発行の社債であ
ると理解し,本件ドコモEBがドコモ株で償還される事態やその際に生じ
る損失について正しく理解できないまま,原告甲名義で本件ドコモEB
の買付けを注文した。
(b)本件ドコモEBの買付注文後,国際証券から原告らの下に,本件ドコ
モEBの目論見書が郵送されてきた。この目論見書を見て本件ドコモE
Bがスウェーデン輸出信用銀行発行の社債であると知った原告乙は,
直ちに被告丙へ電話し,「スウェーデンとは聞いていないですよ。キャ
ンセルします。」と述べて,本件ドコモEBの購入を解約する旨申し入れ
たが,被告丙は,「キャンセルはできませんし,前回のスウェーデンのも
のとは全然違います。1年後には高利息と元金が入るんですよ。万が
一の場合でも利息とNTTドコモ株なんですよ。」と述べて,電話勧誘の
ときと同様に,1年後に元金の返還及び高利息の支払が受けられるこ
とが確実であって,万一の場合でも損はないかのごとく強調した。本件
ドコモEBの購入を解約することを断念した原告乙は,その日の夜に原
告ら方を訪れた国際証券の男性従業員の求めるがまま,本件ドコモE
B購入の確認書に署名捺印し,同確認書を交付した。なお,本件ドコモ
EBのリーフレットが原告らの下に送付されたことはなかった。
b 本件東芝EBの購入を勧誘する際の説明義務違反
(a)被告丙は,本件東芝EBの購入を勧誘するべく電話をした際,原告乙
に対し,せいぜい10分程度の間に「東芝債です。半年で償還されま
す。」などと述べるのみで,本件ドコモEBの購入を勧誘する際にしたよ
うな償還条件等の説明すらせず,当時激しく騰落していた東芝株の株
価動向についても説明しなかった。
その結果,東芝債であれば確実に元本が返還されると思った原告乙
は,自己の名義で本件東芝EBの買付けを注文した。
(b)その後,原告乙は,被告会社から郵送された本件東芝EBの目論見
書を見て本件東芝EBもスウェーデン輸出信用銀行発行の社債である
と知ったが,結局本件ドコモEBの購入を解約できなかったこと及びこ
の時点ではリスクが顕在化していなかったことから,本件東芝EBの購
入の解約までは申し入れなかった。なお,本件東芝EBのリーフレット
が原告らの下に送付されたことはなかった。
(2)損害額(争点(2))について
ア(ア)原告甲は,本件ドコモEBが前記2(5)アの株式分割前のNTTドコモ株1株
で償還されたことによって,本件ドコモEBの購入価格と同株式分割後のドコ
モ株5株の平成15年9月1日時点における株価との差額である228万50
00円の損害を被った。
(イ)また,原告乙は,本件東芝EBが東芝株1000株で償還されたことによっ
て,本件東芝EBの購入価格と東芝株1000株の平成15年9月1日時点に
おける株価との差額である30万3000円の損害を被った。
イ 弁護士費用
(ア)原告甲について   22万円
(イ)原告乙について     3万円
5 争点に対する被告らの主張
(1)勧誘行為の違法性(争点(1))について
ア EBの構造等について
(ア)株式プットオプションの売買と同様の経済的実体が存在しないこと
a 株式プットオプションの売買では,対象株式の株価により権利行使期日
に必ず買方か売方の一方が利益を得て他方が損失を被る仕組みとなっ
ており,株式プットオプションの買方は,権利行使期日までじっと待つのみ
である。したがって,株式プットオプションを売買する当事者は,当該株式
プットオプションの権利行使価格,権利行使期日,対象株式の株価動向
等を十分に考慮に入れて,当該オプション料が妥当かどうか判断する必
要がある。
b これに対し,EBの取引では,計算日における転換対象株式の株価によ
り償還期限にEB購入者かアレンジャーかの一方が利益を得て他方が損
失を被る仕組みとはなっていない。すなわち,計算日における転換対象
株式の株価が転換株価以上の場合,EB購入者が確定的に利益を得る
点は株式プットオプションの売買と同じであるが,デルタヘッジ取引を行う
アレンジャーは,転換対象株式の株価の変動度合いが予想どおりか否か
で利益を得るときもあれば損失を被るときもある。他方,計算日における
転換対象株式の株価が転換株価未満の場合,EB購入者が購入代金額
と償還期限における転換対象株式の株価との差額に相当する損失を被
る点は株式プットオプションの売買と同じであるが,デルタヘッジ取引を行
うアレンジャーは,転換対象株式の株価の変動度合い如何によって利益
を得るときもあれば損失を被るときもある。
また,アレンジャーは,株券プットオプションの売買における買方とは異
なり,EBの起債から償還期限までの間,利益を得るべくデルタヘッジ取
引を行っている。
さらに,EB購入者は,転換対象株式での償還を受けたとしても,その
後の転換対象株式の株価動向如何で利益を得ることもある。
c このように,EB購入者とEB発行体ないしアレンジャーとの間には,株
式プットオプションの売買と同様の経済的実体など存在しない。アレンジ
ャーは,転換対象株式の株価が転換株価を下回る確率に比例してクーポ
ンを設定するのではなく,転換対象株式の株価の変動度合いから予測で
きるデルタヘッジ取引により取得しうる利益見込みに基づきクーポンを設
定するのである。
(イ)リスクとリターンとの関係
EBの取引では,EB購入者及びアレンジャーの双方が利益を得ることが
目的とされているところ,EB購入者が負担するリスクと取得するリターンと
の非対称性は,転換対象株式の株価が転換株価を下回った場合の結果に
すぎない。
また,EB購入者は,そもそも転換対象株式の株価上昇によるキャピタル
ゲインの取得を考慮していないし,EB購入者が取得できる利益がクーポン
に限られるとしても,これに対応してアレンジャーが転換対象株式の株価上
昇時の利益を必ず取得するわけではなく,デルタヘッジ取引により損失を被
ることもある以上,かかる非対称性をもって不当であるとはいえない。
(ウ)EB購入者とアレンジャーとの間の利害相反関係について
前記のとおり,EBの取引では,計算日における転換対象株式の株価に
より償還期限にEB購入者かアレンジャーかの一方が利益を得て他方が損
失を被る仕組みとはなっていないところ,EB購入者とアレンジャーとの間に
は,転換対象株式の株価が転換株価以下に下落するか否かについて利害
相反関係はない。
また,アレンジャーがEBの組成に伴って行うデルタヘッジ取引は,転換
対象株式の株価が上昇すれば株式売却益を確保するべくこれを売却する
結果,その株価の上昇を抑制するものであるが,転換対象株式の株価が下
落すれば株式保有率を高めるべく転換対象株式を購入する結果,その株
価を下支えするものであるから,転換対象株式の株価の変動を抑さえる効
果があるとしても,一方的に転換対象株式の株価を下落させるものではな
く,転換対象株式の株価に対してニュートラルに作用するものである。
イ 適合性原則違反について
(ア)一般的投資家との関係における適合性の存在
EBが転換対象株式で償還されうるものであるとしても,前記のようなEB
の構造に鑑みれば,一般投資家に対してEB購入を勧誘することは,当該
一般投資家に株式取引の知識及び経験があれば,一律に適合性原則に違
反するものではない。
(イ)原告らとの関係における適合性の存在
原告乙は,以下のとおり,預貯金の金利を上回る利益の獲得を積極的に
求めて債券を購入していた上,株式取引に株価変動リスクがあることの認
識及び株式取引の経験を有していたところ,このような原告乙に対してEB
購入を勧誘した福光の所為は,何ら適合性原則に違反するものではない。
すなわち,原告乙は,原告甲名義での取引開始当初から,運用利回りが
定期預金金利を上回る実績を有する中期国債ファンドの買付けをしていた
が,平成3年以降の経済低迷に伴う公定歩合の段階的引下げにより国内
公社債等の運用利回りが低下すると株式投資にも興味を持ち始め,JR東
日本株及びJR西日本株を購入していた。
被告丙が原告らの担当者となった平成7年以降,国内公社債等の運用
利回りが非常に低かったのに対し,海外公社債等の運用利回りは高かった
ところ,原告乙は,被告丙の勧誘を受けて,フランス金融公社債等の買付け
を行って利益を獲得していたが,平成9年1月に買い付けたスウェーデン輸
出信用銀行発行のニュージーランドドル・デュアル・カレンシー債(以下「SE
Kデュアル・カレンシー債」という。)で約98万円の損失を被り,被告丙に対
し,「為替には懲りた,外貨に絡むものはもう案内しないでね。」と述べてい
た。
そこで,被告丙は,同年3月,原告乙に対し,円建てで高い運用利回りを
狙える商品としてドイツ銀行AGロンドン円建日経平均連動コーラブル社債
(以下「日経平均連動債」という。)の購入を勧誘した。この際,被告丙が,原
告乙に対し,日経平均連動債の仕組みについて,日経平均株価の変動に
より額面金額での償還か額面金額以下での償還かが決まる旨説明したとこ
ろ,原告甲名義でJR西日本株を継続保有していた原告乙は,好調な株式
相場をみて日経平均連動債に興味を示し,複数回にわたってこれを買い付
けた。
ウ 説明義務違反について
(ア)EB購入を勧誘する際に要求される説明義務の内容
一般投資家に対してEB購入を勧誘する場合には,EBの条件として,額
面金額,クーポン,償還期限及び償還条件等を説明すべきであるが,EB購
入者とEB発行体ないしアレンジャーとの間に株式プットオプションの売買と
同様の経済的実体が存在せず,原告らがEBの転売を意図していたのでも
ない以上,原告らが主張する事項についてまで説明する義務はない。
(イ)本件各EBの購入を勧誘する際に説明が尽くされたこと
そして,被告丙は,以下のとおり,原告乙に対して本件各EBの購入を勧
誘する際,EB購入を勧誘する場合に要求される上記のような説明を尽くし
ていた。
a 本件ドコモEBの購入を勧誘する際に説明が尽くされたこと
(a)前記イ(イ)記載の経緯を経た後,被告丙は,原告らに対し,本件ドコモ
EBの購入を勧誘するべく,平成12年2月初めにリーフレットを送付し
た上,同月7日,原告乙に電話した。
被告丙が,この電話の中で,本件ドコモEBについて,ドコモ株の株
価変動によって償還条件等が変化する点で日経平均連動債に似てい
る旨述べた上,期限前償還,ドコモ株で償還される可能性,及び,ドコ
モ株の株価の下落時には損失を被るリスクがあることを説明したとこ
ろ,日経平均連動債を気に入っていた原告乙は,本件ドコモEBの条件
を確認した上で買付意向を示した。同日午後,被告丙が,原告乙に対
して最終決定した本件ドコモEBの条件を伝えるべく電話をしたところ,
原告乙は,原告甲名義で本件ドコモEBを買い付ける旨の注文をした。
(b)上記買付注文成立後,被告丙が原告らの自宅へ本件ドコモEBの目
論見書,確認書及び最終条件の案内書を送付したところ,本件ドコモE
Bの発行体がSEKデュアル・カレンシー債と同じであったため,原告乙
は,被告丙に対して本件ドコモEBが外貨建てでない旨確認する電話を
し,被告丙から円建てであるとの説明を受けたため,同月7日付けの
確認書を国際証券へ返送した。
b 本件東芝EBの購入を勧誘する際に説明が尽くされたこと
平成12年4月以降,日経平均株価は下落基調であったが,かかる状
況の下,被告丙は,原告らに対し,株価下落時でも高いクーポン得られる
本件東芝EBの購入を勧誘するべく,同年9月22日,原告乙に電話した。
被告丙が,本件東芝EBが本件ドコモEBと同じEBである旨述べた上,
本件東芝EBについて東芝株で償還される可能性があること等を説明し
たところ,原告乙が,本件東芝EBの買付意向を示した。被告丙が,原告
らの自宅へ本件東芝EBのリーフレット,目論見書及び確認書を送付した
ところ,原告乙が同日付けの確認書を返送したため,被告丙は,同月26
日,最終決定した本件東芝EB条件を電話で伝え,原告乙は,これに応じ
て,自己名義で本件東芝EBを買い付ける旨の注文を出した。
(2)損害額(争点(2))について
争う。
第3 当裁判所の判断
1 事実経過について
第2,2の各事実,証拠(甲30,乙3,5ないし13,16,21,24ないし46,原告
乙本人,被告丙本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)原告らと国際証券との従前の取引など
ア 原告乙は,昭和62年12月ころ,当時サラリーマンであった原告甲の給料か
ら月々の生活費を費消した余剰金から住宅ローンの臨時返済に充てる資金を
貯蓄するため,銀行の預金よりも利率が高いが自由に出し入れができる中期
国債ファンドを買い付けようと考え,国際証券を通して原告甲名義でこれを買
い付けたのをきっかけに,国際証券との取引をするようになった。当初,原告
乙は,原告甲名義での中期国債ファンドの買付けを続けていたが,国際証券
の店頭従業員から金貯蓄及び利付工業債等の買付けを勧められ,当時これ
らの商品の利率が銀行の預金のそれと比べて高かったこともあって,これらの
商品をも買い付けるようになり,その後には,近鉄及び北陸銀行の各社債を
買い付けていた。(甲30,乙3,原告乙本人,弁論の全趣旨)
イ 原告乙は,平成5年10月ころ,国際証券からJR東日本株の公募があるので
抽選に申し込んでみないかとの勧誘を受けた。当時株式にも興味があった原告
乙が家族全員の名義で申し込んだところ,原告乙名義の申込みが当選したた
め,原告乙は,国際証券を通して自己名義でJR東日本株を38万円で購入し,
これ以降,自己名義でも国際証券と取引するようになった。なお,原告乙は,同
年11月,JR東日本株を49万円で売却した。(甲30,原告乙本人,乙5)
ウ 被告丙は,平成7年5月,前任者から引継ぎを受けて原告らの取引を担当す
るようになった。
当時,原告乙は,原告甲名義で近鉄社債及び長期国債ファンドを保有してい
たが,これらの利回りは当時の国内公社債等の運用利回りよりも高かったため,
被告丙は,原告乙に対し,そのまま乗り換えることを勧め,これに応じた原告乙
は,これらを乗り換える買付けを行った。(乙16)
当時,国内公社債等の運用利回りは,平成3年以降の経済低迷に伴う公定歩
合の段階的引き下げに比例して低くなっていたところ,原告乙は,このような状況
下でも以前と同程度の運用利回りを望むという投資意向を持っていたため,被告
丙は,運用利回りの高い海外公社債等による運用であればかかる原告乙の投
資意向に沿うことができると考え,平成7年10月,原告乙に対し,フランス金融
公社債の買付けを勧めた。被告丙は,原告乙に対し,マルク建であるフランス金
融公社債には,円に換算して償還される際に為替変動による元本割れのリスク
がある旨電話で説明したところ,原告乙は,為替変動は気になるものの,銀行預
金もほとんど利息が付かないので,利回りがよいものならば購入しようと述べ,フ
ランス金融公社債を買い付けた。(乙16,被告丙本人)
その後も国内公社債等の運用利回りの低迷が続いたため,原告乙は,被告
丙からの勧誘に応じて,平成8年6月にはゴールドマンサックス国際公社債ファ
ンドを,同年7月にはフィンランド輸出金融公社発行のデュアル・カレンシー債を,
平成9年1月にはSEKデュアル・カレンシー債を,平成10年4月にはアライアン
ス・ハイ・イールド・オープン投資信託(以下「アライアンス」という。)を,それぞれ
買い付けた。被告丙は,これらの勧誘の際,原告乙に対し,電話で各商品の概
要及び為替変動による元本割れのリスクがある商品についてはその旨を説明す
るとともに,各商品についての説明が記載された目論見書及びリーフレットを送
付した。(乙16,21,24ないし26)
また,原告乙は,平成8年9月ころ,被告丙から,JR西日本株の公募への申
込みの勧誘を受け,家族全員の名義で申し込んだところ,原告甲名義の申込み
が当選したため,原告乙は,国際証券を通して原告甲名義でJR西日本株を35
万7000円で購入した。(甲30,原告乙本人,乙3)
エ 原告乙は,これらの取引のうちアライアンス及びSEKデュアル・カレンシー債
以外の取引では利益を得ていた。しかし,アライアンスについては,買付け後値
下がりが進み,SEKデュアル・カレンシー債については,平成10年10月初め
に為替相場が急速に円高となったため,その償還期限に損失が発生する状況
となった。被告丙は,原告乙に対し,売却できなくなる日の直前まで利息を得
て,償還期限前にSEKデュアル・カレンシー債を売却して税金がかからないよ
うにすることを助言した。原告乙は,この助言に従って償還期限前にSEKデュ
アル・カレンシー債を売却し,平成11年1月,98万8466円の損失を被ったと
ころ,被告丙に対し,為替相場が関係する商品には懲りた旨告げた。(乙3,乙
16,原告乙本人,被告丙本人,弁論の全趣旨)
オ そのころの国内株式相場は,平成11年1月を最安値に同年2月及び同年3
月と回復基調にあった。そこで,被告丙は,平成11年3月,原告乙に対し,為
替相場の影響を受けず,かつ,原告乙の前記のような投資意向に沿った商品と
して,日経平均連動債の買付けを勧誘した。被告丙は,この勧誘の際,原告乙
に対し,日経平均連動債の仕組みについて,日経平均株価の変動によって償
還期限が早まったり最終償還期限における額面金額での償還か額面金額以下
での償還かが決まること,及び,償還期限が早まらないと5年後の最終償還期
限まで売却することができないこと等を説明したところ,原告乙は,為替相場の
変動によって損失を被らないならばと述べ,原告甲名義で日経平均連動債の
買付けを申し込んだ。かかる申込みを受け,被告丙が原告乙に対して日経平
均連動債の説明が記載された目論見書及びリーフレットを送付すると,原告乙
は,確認書を返送し,日経平均連動債を買い付けた。(乙16,27ないし29,原
告乙本人,被告丙本人)
国内株式相場の回復基調が続いたため,被告丙は,同年5月,原告乙に対
し,同月発行の日経平均連動債の買付けを勧誘し,原告乙も,これに応じて日
経平均連動債を買い付けた。国内株式相場の回復基調はその後も続き,原告
乙が同年3月及び同年5月に買い付けた日経平均連動債は,償還期限が早ま
ってそれぞれ同年9月及び同年11月に償還された。そこで,被告丙は,かかる
償還の際,原告乙に対して日経平均連動債の乗換えを勧誘し,原告乙も,これ
を受け入れて同年9月及び同年11月に日経平均連動債を買い付けた。これら
の勧誘の際には,同年3月の日経平均連動債の買付けの時と同様に,被告丙
からの目論見書及びリーフレットの送付並びに原告からの確認書の返送がなさ
れ,同年9月及び同年11月の勧誘の際には,被告丙から最終条件の案内書も
送付された。(乙16,乙30ないし38,弁論の全趣旨)
カ 本件ドコモEBの買付け後も国内株式相場は堅調に推移していたため,原告
乙は,平成12年3月,被告丙の勧誘に応じ,国際証券を通して,株式投資信託
であるシナプス及びJエクイティを買い付けた。被告丙は,これらの勧誘の際
に,原告乙に対し,それぞれ目論見書及びリーフレットを送付した。(乙41ない
し44,弁論の全趣旨)
(2)本件ドコモEBの勧誘(乙6ないし9,16,45,被告丙本人,弁論の全趣旨)
ア かかる経緯の下,被告丙は,原告らに対し,本件ドコモEBの購入を勧誘す
るべく,同月7日,原告乙に電話した。
被告丙は,「アルペジオ(注:日経平均連動債のこと)に似た商品で,今度は
日経平均株価ではなくNTTドコモの株価の動きによって変わる商品が出るの
ですが」と話を始め,「NTTドコモのEBというのですが,これはNTTドコモの株
価が例えば380万円を基準とすると,この380万円を投資して,今年8月2日
にNTTドコモの株価が380万円以上つければ,利息24万7000円と元本が
償還されます。」「8月2日にNTTドコモの株価が380万円以上にならなけれ
ば来年2月9日の償還となりますが,その場合は利息は32万3000円です。
この場合は,来年1月26日のNTTドコモの株価が342万円から399万円の
間であれば,元本が償還されます。来年1月26日のNTTドコモの株価がこの
間に入らなければNTTドコモの株券で償還されます。」「リスクとしては償還が
株式になった場合,株価が下がっていればそれがリスクになります。反対に株
価が上がっていれば,それはプラスになります。」「早期償還とならない場合は
1年後の満期まで途中売却できません。」と述べ,本件ドコモEBについて,期
限前償還,ドコモ株で償還される可能性があること,ドコモ株の株価が下落し
たときは損失を被るリスクがあること及び途中売却できないことを説明し,さら
に,本件ドコモEBが円建てであることをも説明した。これを受けて,原告乙が,
本件ドコモEBの条件を確認した上,原告甲名義で本件ドコモEBを買い付ける
意向を示したため,被告丙は,最終条件の決定次第連絡する旨述べた。
イ 被告丙は,同日午後,原告乙に対し,最終決定した本件ドコモEBの条件を
伝えたところ,原告乙は,原告甲名義で本件ドコモEBの買付けの注文を出し
た。かかる買付注文を受け,被告丙は,その日のうちに,原告らの自宅へ,本
件ドコモEBの目論見書,リーフレット,確認書及び最終条件の案内書を送付
した。この目論見書には,前記第2,2(3)アのような本件ドコモEBの条件,本
件各EBには流通市場がなく被告も販売済みの本件ドコモEBを買い取る義務
を負わないこと及び満期償還される場合の償還差損益等が,リーフレットには
本件ドコモEBの条件の概略が,最終条件の案内書には確定した本件ドコモE
Bの条件が,それぞれ記載されていた。
上記各書類を受領した原告乙は,本件ドコモEBの発行体がSEKデュアル・
カレンシー債と同じスウェーデン輸出信用銀行(以下「SEK」という。)であった
ため,被告丙に電話をし,「スウェーデンって,これ外国ものではないのよね。」
と確認したところ,被告丙から再度円建てであるとの説明を受けたので,「な
ら,買うわ」と返答した上,同月7日付けと記載して署名捺印した確認書を返送
した。
(3)本件東芝EBの勧誘(乙10ないし13,16,46,被告丙本人,弁論の全趣旨)
ア 平成12年4月以降,日経平均株価は下落基調となっていたが,被告丙は,
夏以降にある程度反発すると考え,同年9月22日,原告乙に対し,東芝株の
株価が転換株価より12%下落しても元本が償還されて高いクーポンが得られ
る本件東芝EBの購入を勧誘する電話をした。
被告丙は,「NTTドコモと同じEBで,今度は東芝のEBが出るのですが」と
話を始め,「今度の東芝EBは,スタート時の株価より下がっても元本が返って
くるのが特徴です。例えば,スタート時の株価が900円とすると,半年後の来
年3月21日に株価が792円以上であれば元本と90万円投資の場合で3万1
500円のお利息となります。792円を下回りますと利息は変わりませんが,東
芝の株券で償還されます。」「償還までの半年は原則として途中売却できませ
ん。」と述べ,本件東芝EBについて,東芝株で償還される可能性があること及
び途中売却できないこと等を説明し,本件東芝EBが円建てであることも説明
した。これを受けて,原告乙が,自己名義で本件東芝EBを買い付ける意向を
示した。
イ 被告丙は,原告乙の買付け意向を受け,原告らの自宅宛に,本件東芝EB
の目論見書,リーフレット,確認書及び最終条件の案内書を送付した。この目
論見書には,前記第2,2(3)イのような本件東芝EBの条件,本件東芝EBには
流通市場がなく被告も販売した本件東芝EBを買い取る義務を負わないこと,
満期償還時の想定償還差損益及び利金の合計額等が,リーフレットには本件
東芝EBの条件の概略が,最終条件の案内書には確定した本件東芝の条件
が,それぞれ記載されていた。
その後,被告丙は,平成12年9月26日昼ころ,原告乙に対し,最終的に確
定した本件東芝EBの条件を電話で伝えたところ,原告乙は,自己名義で本件
東芝EBの買付けの注文を出した。
2 本件EBをめぐる取引当事者の所為
第2,2の各事実,証拠(甲31,乙7,11,調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨
によれば,以下の事実が認められる。
(1)本件ドコモEBをめぐる取引当事者の所為について
ア 平成12年2月から同年9月当時,USドルLIBOR(LondonInterBank
OfferedRate)1年金利は,年6.1%から6.8%であったが,SEKは,低金利
の日本市場で起債して得た円資金を通貨交換することによって上記LIBOR金
利を下回る金利でUSドル資金を調達するため,本件ドコモEBを発行すること
とした。
イ 本件ドコモEBの条件は,SEKがその引受けを委託した国際ヨーロッパから
これを買い付けて販売する国際証券が,東京三菱証券株式会社(以下「東京
三菱証券」という。)を含む複数の証券会社から提示された条件の中から,平
成12年2月7日,東京三菱証券の提示した条件を採用したことによって最終
確定した。この際,東京三菱証券は,株式会社東京三菱銀行ロンドン支店(以
下「東京三菱銀行」という。)が行うデルタヘッジ取引(当初一定数量の株式を
購入して株価が上昇すれば徐々に株式を売却して売却益を確保し,株価が下
落すれば当該株式を購入して株式保有率を高める取引)によって得られる見
込みの利益から,東京三菱銀行の収益を差し引いた上で国際証券に提示す
る条件を決定した。かかる本件ドコモEBの条件のうち,その利率は,当時の
円LIBOR6か月金利0.15%及び同1年金利0.24625%を基礎とし,平成
12年3月期及び同年9月期における額面1万円に対する配当額を各500円,
計算時のドコモ株の株価を385万円,ドコモ株の株価変動度合いを42%,転
換株価を382万円として,ブラック・アンド・ショールズモデル(株式プットオプ
ションを念頭に考案されたオプションプレミアムの評価モデル。原資産の実勢
価格,オプション行使価格,満期までの期間,無リスク資産の金利及び原資産
の価格の変動度合いの5つのパラメーターからプレミアムを算出する。)と同様
の根拠に基づく数値解析モデルによって算出された。
ウ SEKは,上記条件に従って本件ドコモEBを国際ヨーロッパを引受人として
額面1万円当たり96.80円を上乗せして発行し,国際証券は,これを額面1
万円当たり96.85円を上乗せして国際ヨーロッパから買い付けた。その結
果,本件ドコモEBの組成コスト及び販売コストは,額面1万円に対してそれぞ
れ0.47%及び3.20%となった。なお,売れ残った本件各EBは,SEKが国
際証券からかかる買付価格を下回る価格で買い取った。
エ SEKは,本件ドコモEBの発行後,GeneralReFinancialSecuritiesLimitedと
の間で,本件ドコモEBの利払い及び償還に備えた取引を含む通貨交換契約
を締結し,これによって,SEKは,当時のUSドルLIBOR1年金利より0.45
%低い金利でUSドル資金を調達することができた。なお,かかる通貨交換契
約の中には何らかのオプション取引に該当するものも含まれていたが,その
部分を特定した対価の決定はなされていなかった。
オ 東京三菱銀行は,本件ドコモEBの発行後,その償還に備えてデルタヘッジ
取引を行い,その収益を確保していた。
(2)本件東芝EBをめぐる取引当事者の所為について
ア 平成12年2月から同年9月当時のUSドルLIBOR1年金利は,前記(1)アの
とおりであったところ,SEKは,低金利の日本市場で起債して得た円資金を通
貨交換し,上記LIBOR金利を下回る金利でUSドル資金を調達するため,本
件東芝EBを発行することとした。
イ SEKは,上記条件に従って本件東芝EBを国際ヨーロッパを引受人として額
面1万円当たり96.91円を上乗せして発行し,国際証券は,これを額面1万
円当たり96.915円を上乗せして国際ヨーロッパから買い付けた。その結果,
本件東芝EBの販売コストは,額面1万円に対して3.09%となった。なお,売
れ残った本件各EBは,SEKが国際証券からかかる買付価格を下回る価格で
買い取った。
ウ SEKは,本件東芝EBの発行後,MorganGuarantyTrustCompanyofNew
Yorkロンドン支店との間で通貨交換契約を締結した。MorganGuarantyTrust
CompanyofNewYorkロンドン支店は,SEKに対し,オプションヘッジを提供し
た上,本件東芝EBと同率のクーポンを支払うとともに,国際証券に対し,本件
東芝EBの手数料を支払った。
エ J.P.モルガン証券会社ロンドン支店は,本件東芝EBの発行後,その償還
に備えてデルタヘッジ取引を行い,その収益を確保していた。
3 EBの構造等について
(1)本件各EBの取引当事者の関係について
前記2の各認定事実,証拠(乙7,11,15)及び弁論の全趣旨を総合すれ
ば,本件各EBの取引当事者の関係は,次のとおりであったと推認できる(別紙
取引関係図参照)。
ア SEKは,USドルLIBOR金利を下回る金利でUSドル資金を調達するため,
本件各EBの発行を立案し,国際証券に対し,USドル資金の需要を伝えた
上,本件各EBの販売条件の確定並びに本件各EBの引受及び販売を委託す
る。
イ 国際証券は,かかるSEKの委託を受け,複数の証券会社に対し,条件の提
示を求める。
各証券会社は,提示すべき条件を決定する際,自社とグループ関係にあ
り,SEKとの通貨交換契約を行うべき銀行等及び本件各EBの受渡代理人と
なるべき投資銀行又は証券会社等と協議する。この際,受渡代理人がデルタ
ヘッジ取引によって得られる見込みの利益等を検討するが,かかる検討は,
円LIBOR金利,1額面に対する配当額,転換対象株式の株価,転換対象株
式の株価変動度合い及び転換株価に基づき,ブラック・アンド・ショールズモデ
ルと同様の根拠に基づく数値解析モデルをもって計算して得られた結果を基
礎に行われ,この場合,クーポンは,株価変動度合いと転換価格等からその
実額が決定される。
各証券会社は,国際証券に対し,かかる検討結果に基づいて本件各EBの
条件を提示し,国際証券は,その中から適当と考える本件各EBの条件を採
用する。
ウ SEKは,上記条件に基づき,国際ヨーロッパを引受人として本件各EBを発
行し,国際証券は,国際ヨーロッパから本件各EBを買い付けこれを一般投資
家に販売する。国際ヨーロッパ及び国際証券は,それぞれSEK及び国際ヨー
ロッパに対して引受代金及び買付代金を支払う。一般投資家に販売できなか
った本件各EBは,SEKが国際証券から買付代金を下回る価格で買い取る。
エ SEKは,本件各EBの発行によって得た円資金について,国際証券が採用
した条件を提示した証券会社とグループ関係にある投資銀行等との間で,オ
プション取引を含む本件各EBの利払い及び償還に備えた取引をも含む通貨
交換契約を締結する。SEKは,この通貨交換契約により,USドルLIBOR金
利より低い金利でUSドル資金を調達する。他方,通貨交換契約を締結した投
資銀行等は,国際証券に対して手数料を支払うとともに,本件各EBの受渡代
理人に対してデルタヘッジ取引を行うために必要な資金を融資する。
オ 本件各EBの受渡代理人は,本件各EBが転換対象株式で償還される場合
に備えるとともに,自らも利益を確保するために,本件各EBの発行の時点で,
株式償還となる確率に応じた転換対象株式を保有した上,その時々の転換対
象株式の株価と転換株価との関係,転換対象株式の株価の変動度合い及び
計算日までの残存日数等に基づき,転換対象株式の株価が上昇すればこれ
を売却して株式売却益を確保し,転換対象株式の株価が下落すればこれを購
入して株式保有率を高めることにより,株式償還となる確率に応じた転換対象
株式を保有するデルタヘッジ取引を行う。
(2)EBの特質について
ア 株式プットオプション売買との経済的同質性の有無について
株式プットオプションとは,予め定められた価格(行使価格)で,行使時期に
株式を売却できる権利をいうが,この権利の売主は,売却できる権利を売った
結果,行使時期には行使価格で自らが買い受ける義務を負担することにな
る。株式が下落した場合には,時価より下落した株式を当初の額面金額等の
行使価格で引き受ける義務を負担することになる。
前記第2,2の認定事実によれば,転換可能単位のEBを保有するEB購入
者は,計算日における転換対象株式の株価が転換株価以下に下落した場
合,額面金額による金銭償還の代わりに額面金額よりも低い株価の転換対象
株式を引き受ける義務を負担する(以下,この義務を「下落株式による償還を
受ける義務」という。)のであるから,株式プットオプションを売却した場合と近
似した効果をもつことが認められる。
もっとも,株式プットオプションの売買は,対象株式の株価により権利行使
期日に必ず買方か売方の一方が利益を得て他方が損失を被る一種のゼロサ
ムゲームの関係となっている。そして,株式プットオプションの売買に当たっ
て,当事者は,株式プットオプションの権利行使価格,権利行使期日,対象株
式の株価動向等から,株式プットオプションの対価が妥当かどうかを判断す
る。ところが,EBの場合は,EB購入者に下落株式による償還を受ける義務が
あるとしても,EBをめぐる取引においては,受渡代理人がデルタヘッジ取引を
行っているため,EB購入者が計算日における転換対象株式の株価の如何に
よって償還期限にクーポン相当額の利益を得るか転換対象株式の株価との
差額に相当する損害を被るかという問題と,受渡代理人が転換対象株式の株
価の変動度合いの如何によって利益を得るか損失を被るかとの問題とは必ず
しも対応するものではなく,クーポンも転換対象株式の株価が下落する確率に
比例して決定されるものではない。また,受渡代理人が株式プットオプションを
買い取ったならばこれを転売して利益を上げようとすると思われるが,本件各
EBに関してかかる転売がなされたと認めるに足る証拠もない。かかる相違が
存する以上,EB購入者とEB発行体等との関係は,EBの取引当事者による
全体的な経済的活動をみる限り,株式プットオプションの売買と全く同一であ
るとはいえない。
しかし,受渡代理人がデルタヘッジ取引によって得られる見込みの利益等
の検討は,円LIBOR金利,1額面に対する配当額,転換対象株式の株価,転
換対象株式の株価変動度合い及び転換株価に基づき,ブラック・アンド・ショー
ルズモデルと同様の根拠に基づく数値解析モデルによって計算して得られた
結果を基礎に行われるのであるが,このモデルによれば,株価変動度合いが
大きければ一般に受渡代理人の利益が増加する(乙15)。株価変動度合い
が大きくなることは,当然,株価が大幅に下落するリスクも増加することになる
が,EB購入者は,下落株式による償還を受ける義務を負担しているから,結
局,その場合の転換対象株式の株価下落リスクを引き受けているのはEB購
入者である。その限度では,EB購入者は株式プットオプションの売り手と同様
の危険を負担する地位に立つと言っても差し支えない。
イ リターンとリスクとの非対称性ないし不均衡の有無等について
(ア)本件東芝EBについては,EB購入者は,東芝株の株価がいかに上昇して
も,クーポンを上回る利益を得ることはできない一方,計算日における東芝
株の株価が転換株価を下回った際には,転換株価を下回る分の評価損を
被る。株価の変動がさほど大きくない場合においても比較的高い利率のク
ーポンをEB購入者が確保できるという利点を考慮に入れても,EB購入者
が取得するリターンと負担するリスクとは非対称的であるといわざるを得な
い。
他方,本件ドコモEBについては,EB購入者は,計算日におけるドコモ株
の株価が転換株価の105%を上回れば,転換株価を上回る分の評価益を
取得することができるから,EB購入者が取得するリターンと負担するリスク
とは対称的であるとも思われるが,本件ドコモEBには前記第2,2(3)アのよ
うな期限前償還の条件があり,期限前償還の判定日におけるドコモ株の株
価が一度でも転換株価以上となれば,EB購入者は,転換株価を上回る分
の評価益を取得できない。しかるに,EB購入者が評価益を取得できるの
は,期限前償還の判定日におけるドコモ株の株価が一度も転換株価以上に
ならず,かつ,計算日におけるドコモ株の株価が転換株価の105%を上回
るという限定的な場面に限られるから,本件ドコモEBについても,本件東芝
EBほどではないにせよ,EB購入者が取得するリターンと負担するリスクと
の間には一定程度の非対称性が存在することは否定できない。
(イ)前記各認定事実のとおり,本件各EBの取引当事者間では手数料等がの
支払がなされており,国際証券も額面1万円に対して3%強の手数料(販売
コスト)を取得している。外国債券の売買に当たってこれを販売する証券会
社が3%程度の手数料を取得するのが通常であること(弁論の全趣旨)及
び国際証券を除く本件各EBの取引当事者が不当に高い利鞘を取得したと
は認められないことに鑑みれば,かかる手数料等の支払をもって,本件各E
Bの購入者の負担するリスクと取得するリターンとが不当視されるほどに不
均衡なものになっていたとまではいえない。
(ウ)本件各EBのクーポンが設定された経緯は,前記(1)イのとおりであるとこ
ろ,クーポンは,受渡代理人によって金融工学の専門的手法を駆使して設
定されるのであるから,クーポンがEB購入者が負担するリスクに見合う適
正なものであるかどうかを一般投資家が検証することはできないことはいう
までもない。もっとも,販売証券会社である国際証券においては,かかる適
正さを検証した上で本件各EBの販売条件を採用している蓋然性はあるが,
その適正さをEB購入者に保証しているわけではない。
ウ 転換対象株式の株価の下落による損失の回避可能性の有無について
本件各EBの購入者は,購入時に代金を支払わねばならない一方,償還期
限が到来するまでクーポンの支払を受けることができないから,その間に,代
金相当額の資金ないしクーポンを運用することができず,前記第2,2(3)ウの
事実に鑑みれば,本件各EBの購入者は,本件各EBを償還期限までに売却
することも不可能であったといえる。とすれば,本件各EBの購入者には,計算
日における転換対象株式の株価が転換株価を下回った場合の損失を回避す
る可能性がなかったといえる。
エ EB購入者と受渡代理人等との間の構造的利害相反関係の有無
EB購入者の受益ないし損失と受渡代理人等の受益ないし損失との間に,
直接的な対応関係がないことは前記アのとおりである。
また,デルタヘッジ取引には,転換対象株式の株価が上昇した場合におけ
る上昇抑制効果だけではなく,転換対象株式の株価が下落した場合における
下支え効果もあり,デルタヘッジ取引は,転換対象株式の株価に対して理論
的にはニュートラルに作用するものである。
してみると,受渡代理人が転換対象株式の株価上昇時に転換対象株式を
売却するとしても,このことをもって,EB購入者と受渡代理人等との間の構造
的利害相反関係があるとはいえない。
なお,本件ドコモEBについては,転換対象株式であるドコモ株の株価が上
昇した際,購入代金額を上回るドコモ株による償還を回避するために,受渡代
理人が,デルタヘッジ取引を適正に行わず,ドコモ株を必要以上に売却してそ
の株価を下落させる誘因がないではないが,受渡代理人がこのような違法行
為に及ぶことを前提として本件ドコモEB自体に構造的利害相反関係があると
するのは相当ではない。
もっとも,受渡代理人等は株価変動度合いが大きければ利益を得る確率が
増加することになるが,それは下落リスクが高い場合も同様である。このよう
に下落する方向での株価変動度合いの大きい株式を転換対象株式として商
品設計したとしても,転換対象株式の株価が下落したことによる損失はEB購
入者に帰属し,受渡代理人は一方的に利益を確保できると考えられるから,こ
の意味では受渡代理人とEB購入者の利害が相反することは否めない。
(3)EBの特質の総括
以上のとおり,EB購入者とEB発行体等との関係は,経済的実体として,株式
プットオプションの売買と全く同一であるとはいえないが,EB購入者は,転換対
象株式の株価が転換株価以下に値下がりしたときにその転換対象株式を引き
受けなけれならないという下落リスクを引き受けるにもかかわらず,リターンとリ
スクとの非対称性が見られ,転換対象株式の株価が値下がりする場面では,受
渡代理人とEB購入者との利害が相反する可能性もある。しかも,EBは,その購
入者が転換対象株式の株価の下落による損失を回避できない商品構造となって
いるのである。このような構造であるからといって,EB購入者がそのリスクを考
慮に入れて投資行動できる条件が整うならば,EBの金融商品としての適格性を
喪失させるものとはいえないが,かようなEBの商品構造は,後記のとおり,適合
性ないし説明義務の内容に影響を及ぼすものといわなければならない。
4 適合性原則違反(争点(1))について
(1)EBの特質と適合性原則との関係
ア 前記認定のとおり,EBは,預貯金金利を上回るリターンを得られる商品で
はあったが,株価が下落し転換対象株式で償還された場合に下落分の評価
損を被る(もっとも,本件各EBの転換対象株式はいわゆる一流企業の信用度
の高い株式であるから,当該企業の倒産等によって本件各EBが無価値にな
るという事態は想定しがたい。)という相当程度高いリスクを負担することとな
る商品であったといえる。また,EB購入者は,代金相当額の資金ないしクー
ポンを運用する意思ないし能力があるか否かにかかわらず,計算日における
転換対象株式の株価が転換株価を下回った場合の損失を回避することがで
きないところ,このようなEB購入者が負担する株式償還リスクを軽減ないし回
避することができない点も看過することはできない。
EBは,その名称等のため,一般投資家にとっては,通常売却が容易でか
つ元本割れがほとんどない円建ての社債のようにみえるが,かかる外見にも
かかわらず,EB購入者は,前記のようなリスクを負担することになる。一般投
資家にとっては,前記のようなEBの商品構造を理解することは必ずしも容易
ではなく,一見しただけでは比較的安全性の高い商品であるとの誤解を招き
やすいと考えられ,このような一種誤導的な要素も勘案するならば,EBに内
在する危険性は相当高いものであったといわざるをえない。
イ このEBの特質に鑑みれば,一般投資家が本件各EBの買付けを自己の責
任において決定するためには,
① EB購入者は,転換対象株式の株価が計算日において一定額を下回った
場合,EBの額面金額より低い株価の転換対象株式を引き受ける義務を負
担する結果,EBの額面金額と転換対象株式の株価との差額に相当する評
価損を被るリスクを負担すること,
② EB購入者は,EBを途中売却できないためかかる評価損を軽減ないし回
避することができないこと,
の理解が必要であることは明らかである。
さらに加えて,前記各認定事実によれば,受渡代理人がデルタヘッジ取引
によって得られる利益等の見込みの検討は,円LIBOR金利,配当額,転換対
象株式の株価,転換対象株式の株価変動度合い及び転換株価に基づき,ブ
ラック・アンド・ショールズモデルと同様の根拠に基づく数値解析モデルによっ
て計算して得られた結果を基礎に行われること,転換対象株式の株価変動度
合いや転換価格等は,条件を提示する証券会社がクーポン金額算定に当た
って,通貨交換契約を行うべき銀行等及び受渡代理人の収益との関係上,重
要な要素であるとされ,クーポンは,転換対象株式の株価変動度合いの見込
みや転換価格等に応じて決定されること,株価変動度合いの高い株式であれ
ばあるほど,受渡代理人はデルタヘッジによる利益を見込んでいることが認め
られる。
ところが,株価変動度合いが大きいことは株価の下ぶれリスクが大きいこと
につながり,転換価格が高いことは株式償還になる可能性が高くなることは明
らかであるところ,転換可能単位の本件各EBを保有するEB購入者は,下落
株式による償還を受ける義務を負担するのであるから,その株式が値下がり
した株式で償還されるというリスクを引き受けている関係にある。換言すると,
株価変動度合いが高い転換対象株式を選定して商品設計することは,受渡代
理人の利益につながるが,EB購入者にとっては値下がりした株式で償還され
るリスクが高いことになるし,転換価格を高く設定することも株式による償還の
可能性が増加することになる。クーポンの利率は,このような関係を反映して
決定されていると考えられる。この関係を素直に見るならば,通常の社債とし
ての利率相当分を超えるクーポンは,下落した株式でEB購入者に償還される
というリスクの実質的な対価に他ならないといわざるをえない。
そして,EBは,以上のような転換対象株式の株式リスクが大きい点で,購
入者の負担するリスクが基本的に発行体の破綻による債務不履行とその可
能性(いわゆる信用リスク)だけである円建て社債とは決定的に異なる。
ところが,前述したとおり,EBは,発行体の信用が高ければ元本割れがほ
とんどない円建ての社債という外見を有し,しかも格付けが高く,その信用や
知名度が高い企業が発行体となることが多い(甲2)関係上,一般投資家が,
元本保証の商品と誤解し,あるいは元本割れのリスクを軽視し,クーポンの利
率のみに目を奪われがちであることは容易に想定できる。このような一般投資
家の誤解を防止し,EBに内在する危険を避けるためには,高利率のクーポン
は株式償還による元本割れリスクの対価であり,その大きさと連動することを
理解することが必要不可欠であると考えられる。
そうであれば,一般投資家が本件各EBの買付けを自己の責任において決
定するためには,①及び②のほかに,
③ クーポンは,転換対象株式の株価の変動度合いの見込みや転換価格等
に応じて設定されている結果,転換対象株式の株価が計算日において一定
額を下回った場合にそのまま下落分の評価損を被るという株式償還リスク
の対価であり,これと連動していること,
についても,具体的に理解することが必要不可欠であり,かかる理解ができな
い者は,本件各EBの購入者として適合性を欠くといわざるを得ない。
これに対し,上記①ないし③について具体的に理解することができる者であ
れば,EB購入者の取得するリターンと負担するリスクが非対称的であること
についても具体的に理解することができるといえるから,かかる非対称性の具
体的理解可能性は,上記①ないし③の要件の中に吸収されると解される。
(2)これを本件についてみるに,原告乙は,当初こそ中期国債ファンド等の安全な
商品による資産運用を志向していたが,国内公社債等の運用利回りが低下して
からも以前と同程度の運用利回りを得るために,元本割れのリスクがある商品
による資産運用を考えるようになっており,本件各EBの買付け前に,かかる投
資意向に沿った商品を勧誘に応じてとはいえ買い付けるとともに,買い付けた商
品の元本割れによる損失も実際に経験している。また,原告乙は,本件各EBの
買付け以前に,JR東日本株及びJR西日本株を購入し,JR東日本株について
は,購入後1か月で転売して利益を上げているところ,株価が変動するということ
を実際に体験している。さらに,原告乙は,日経平均株価の動向によって償還金
額及び償還条件等が決まる日経平均連動債を4回買い付けた経験をも有してい
るところ,この日経平均連動債は,株価変動によって損失を被るリスクを負担す
る特殊な債券であること及び途中売却できない結果かようなリスクを軽減ないし
回避することができないこと等の点で本件各EBに相当程度類似するものであ
る。
このような原告乙の取引経験に加え,前記1(2)イのとおり,原告乙が商品につ
いて理解できない点があれば質問をする人物であること並びに原告乙の学歴及
び職歴等を勘案すれば,原告乙には,前記①ないし③ないし③の点を具体的に
理解する能力があったものといいうるから,本件各EBが原告乙にとって適合性
を欠くものであったとまではいえない。
(3)これに対し,原告らは,第2,4イ(イ)のとおり主張するが,そもそも株式取引に全
く興味がないのであれば,JR東日本株及びJR西日本株の買付けが公募された
としてもその抽選を申し込まないと考えられること,前記1(1)アのとおり,原告乙
が原告甲名義で国際証券との取引を開始したのは,そもそも銀行預金の利息を
上回る利回りを得たかったためであり,為替変動等のリスクを負担する商品の取
引を始めたのも,前記1(1)ウのとおり,元本割れのリスクを負担しても銀行預金
の利息を上回る運用利回りを得たかったためであることなどに鑑みれば,原告ら
の主張は採用できない。
5 説明義務違反(争点(1))について
(1)一般投資家が前記のような特質を有する本件各EBの買付けを自己の責任に
おいて決定するためには,前記4(1)①ないし③の点について,具体的に理解す
ることが必要不可欠であるところ,一般投資家に対してEBの購入を勧誘する者
は,当該EBの条件のみならず,前記4(1)①ないし③の各事項につき,勧誘対象
たる一般投資家の能力及び経験に応じた説明をする義務があるというべきであ
る。なぜならば,EBは,前記のとおり非常に難解な構造を持つところ,一般投資
家が,これらの点の説明を受けることなく,その商品構造に由来するリスクを踏
まえて自己決定することは期待できないといわざるをえないからである。
これに対し,前記4(1)①ないし③について上記のような説明がされれば,本件
各EBの購入者の取得するリターンと負担するリスクが非対称的であることにつ
いても具体的に理解しうるといえるから,かかる非対称性についてまで別個に説
明する義務はないと解する。
(2)ア 被告丙は,原告乙に対して本件ドコモEBの買付けを勧誘する際,本件ドコモ
EBの条件とともに,ドコモ株の株価が下落したときは損失を被るリスクがある
こと及び途中売却できないことを,ある金額を投資した場合の事例を挙げて具
体的に口頭で説明し,あわせて本件ドコモEBには日経平均連動債との類似
点がある旨説明している。原告乙は,前記のとおり,本件ドコモEBの買付け
以前に,JR東日本株等を購入ないし転売して株価変動の実体験を有してお
り,日経平均株価の動向によって償還金額及び償還条件等が決まる日経平
均連動債を複数回買い付けているところ,かような取引経験を有する原告乙
が,被告丙から上記説明を受ければ,前記4(1)①及び②の各事項について具
体的に理解ができるといえるから,これらの事項について説明をすべき義務は
尽くされたといい得る。
しかし,証拠(被告丙本人)によれば,被告丙自身,本件各EBのクーポンと
転換対象株価の株価変動度合いの見込みとの関係につき具体的に理解して
おらず,その結果,被告丙は,原告乙に対し,前記4(1)③の事項について何ら
説明していないことが認められる。原告乙が相当の取引経験を有し取引能力
にも問題がないことは前記のとおりであるが,かような点に加えて後に目論見
書等を送付していること等を考慮しても,上記事項についての説明が欠如す
れば,本件ドコモEBのクーポンの対価として実際に負担することとなるドコモ
株による株式償還リスクの程度を具体的に理解することはできないから,かか
る被告丙の説明の欠如は,違法と評価すべき程度の説明義務違反に該当す
るというべきである。
イ 被告丙は,原告乙に対して本件東芝EBの買付けを勧誘するに際し本件東
芝EBの条件とともに,本件東芝EBが東芝株で償還される可能性があること
及び途中売却できないことを,ある金額を投資した場合の事例を挙げて具体
的に口頭で説明し,あわせて本件東芝EBが本件ドコモEBと同じEBであるこ
とを説明している。また,被告丙は,原告乙が本件東芝EBの買付注文を出す
前に,本件東芝EBの条件,途中売却できない旨及び満期償還時の想定償還
差損益等を記載した目論見書等を原告らの自宅に送付している。そして,前
記のような原告乙の取引経験及び本件東芝EBの勧誘に先立って本件ドコモ
EBについて前記のような説明を受けていること等を勘案すれば,かかる本件
東芝EBについての説明を原告乙が受ければ,前記4(1)①及び②の各事項に
ついては具体的に理解ができるものといえるから,これらの事項について説明
をすべき義務は尽くされたといいうる。
しかし,被告丙は,本件東芝EBの買付けを勧誘する際にも,前記4(1)③の
事項について何ら説明していないところ,原告乙は本件ドコモEBの買付けの
勧誘を受けた際にもこの点についての説明を受けておらず,前記のとおり原
告乙が相当の取引経験を有し取引能力にも問題がないこと等を考慮しても,
上記事項についての説明が欠如すれば,本件東芝EBのクーポンの対価とし
て実際に負担することとなる東芝株による株式償還リスクの程度を具体的に
理解することはできないから,かかる被告丙の説明の欠如も,やはり,違法と
評価すべき程度の説明義務違反に該当するというべきである。
(3)ア 原告乙は,陳述書(甲16)及び当法廷において,被告丙は,本件ドコモEBの
発行体がSEKであると述べておらず,原告乙は,本件ドコモEBの発行体がS
EKであると認識した後に本件ドコモEBの買付けをキャンセルする旨申し入れ
たが,被告丙は,キャンセルできないと述べた旨供述する。
しかし,前記認定事実のとおり,被告丙は,本件ドコモEBが円建てである旨
説明している。また,原告乙は,本件ドコモEBの目論見書等の送付を受けた
後,発行体がSEKであり外貨建てはないかと確認の電話をしているが,被告
丙から円建てであるとの説明を受けて納得している。とすれば,被告丙が本件
ドコモEBの発行体がSEKであると述べていなかった可能性はあるものの,本
件ドコモEBの買付けをキャンセルする旨申し入れたとの原告乙の供述は採用
できない。
イ また,原告乙は,陳述書(甲16)及び当法廷において,被告丙が本件東芝E
Bを東芝債として説明していた旨供述し,これに符合する証拠(甲37)も存在
しないではない。
しかし,原告乙が本件東芝EBの買付注文を出したのは本件東芝EBの目
論見書等が原告らの自宅に送付されてきた後のことであり,被告丙が東芝債
と説明していたのであれば,原告乙が何らの躊躇なく本件東芝EB買付注文を
出すとは考えられない。また,被告丙は,本件東芝EBについて,説明義務違
反に該当する部分があったとしても,前記1(3)アのとおり説明しており,東芝債
として説明していないことは明らかである。そして,被告丙が目論見書等を送
付する際に同封した手紙(甲37)に東芝債と記載したのは,本件東芝EBを示
す趣旨で東芝のEB債とすべきところを東芝債と略記ないし誤記したものにす
ぎないと認められるから,上記原告乙の供述は採用できない。
6 損害額(争点(2))について
(1)第2,2(2)及び(5)によれば,原告甲は,本件ドコモEBの購入価格である382万
円と平成15年9月1日時点におけるドコモ株5株の価格である153万5000円
との差額である228万5000円の損失を,原告乙は,本件東芝EBの購入価格
である80万円と上記年月日時点における東芝株1000株の価格である49万7
000円との差額である30万3000円の損失を,それぞれ被っていることが認め
られる。
(2)もっとも,原告乙は,当初から銀行預金の利息を上回る運用利回りを得るため
に取引をしているのみならず,国内公社債等の運用利回りが低下して以降,元
本割れのリスクがある商品による資産運用をも考える等,ある程度のリスクは負
担してもそれに見合ったリターンを求める方向で投資を行い,本件各EBの買付
けも,かかる投資意向に沿ったものとして行われている。また,原告乙は,本件
各EBの買付け前にJR東日本株を購入後に転売して利益を得る等株式取引の
経験を有しているし,株価に連動するという点で本件各EBと類似性が認められ
る日経平均連動債を複数回買い付けた経験をも有している。
他方,被告丙に前記のような説明義務違反があったとはいえ,被告丙は,前
記4(1)①及び②の各事項について,原告乙の投資経験及び能力に応じた具体
的な説明をしているところ,前記のような投資の経験,意向及び能力を有する原
告乙がかかる説明を受けたのであれば,本件各EBの株式償還リスクの程度を
具体的に理解することまでは要求できないものの,本件各EBには株式償還リス
クがあることを十分理解できるはずである。そして,原告乙と同じ程度の投資経
験及び能力を有する者であれば,預貯金金利を上回る中程度のリターンが得ら
れるのであればそれ相応のリスクを負担しなければならないことは容易に想像
がつくはずであり,被告丙にこの点を質問することも可能であったと考えられる。
このような点について何ら注意を傾けていなかった原告乙の過失も看過すること
はできない。
これらの事情を斟酌すれば,原告甲については被害者側のものとして,原告
乙については自己のものとして,それぞれ過失があったといわざるを得ないとこ
ろ,これらの事情に加えて本件に現れた一切の事情を斟酌すれば,原告らの各
損失額から,それぞれ6割を過失相殺として控除するのが相当である。
(3)そして,弁護士費用については,被告らに負担させるべき各損失額の1割を被
告に負担させるのが相当であるから,原告らの損害額は,次のとおりと
なる。
項目原告甲原告乙
ⅰ損失額\2,285,000\303,000
ⅱ過失相殺60%60%
ⅲ被告らの負担すべき額[ⅰ*(100%-ⅱ)]\914,000\121,200
ⅳ弁護士費用[ⅲ*10%]\91,400\12,120
合計[ⅲ+ⅳ]\1,005,400\133,320
7 結論
よって,原告らの本訴請求は主文の限度で理由があるからその限度でこれを認容し,そ
の余の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につ
き民事訴訟法61条,64条本文,65条1項を,仮執行の宣言につき同法259条1項をそ
れぞれ適用して,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第24民事部
裁判長裁判官   森 宏司
裁判官   真辺朋子
裁判官   安木 進

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