弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用を上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人は「原判決を破毀する」旨の裁判を求め、その理由として、別紙上告
理由書及び追加上告理由書記載のとおり主張した。
 上告理由書一ないし四及び六に対する判断。
 上告人主張上の上告理由はすべて原判決の適法になした事実認定に対する非難
で、原判決には、上告人主張のような法律の解釈を誤り、又は事実のくいちがい或
は審理不尽というようなことはなにも存しない。上告理由は結局独自の立場に立つ
ての原判決に対する非難であるから、いずれも理由がない。
 上告理由書五及び追加上告理由書第一に対する判断。
 上告人は、被上告人が昭和二十七年一月頃本件家屋について贈与を受けたとの主
張をなしたことがないと主張しているが、本件記録によれば、被上告人は本件控訴
状で本件家屋の贈与を受けたことを主張しているが、右控訴状の記載を昭和二十九
年四月二十六日午後一時の本件口頭弁論期日に陳述すると共に、贈与契約のなされ
た日が昭和二十七年一月頃であると述べている(三九丁)こと、本件記録によつて
明である。原審での被上告人本人尋問の調書によれば、本件家屋の贈与を受けたの
は昭和二十八年八月中であることが認められ、原判決も贈与がなされたのは昭和二
十八年八月初旬頃と認定している。従つて被上告人の上記認定の主張とくひちがい
があるようにみえるが、被上告人の主張でも又裁判所の認定も共に上告人から被上
告人に対する本件家屋の贈与という事実は一回だけで何回もあつたわけではないの
であるから、被上告人の主張事実と裁判所の認定した事実との間にはくいちがいは
なく、又裁判所は当事者の主張しない事実を認定したり、証拠によらないで事実を
認定したわけではないから、この点についての上告人の主張も採用することができ
ない。
 上告理由書七に対する判断。
 本件記録によれば、上告人は原審において、本件贈与契約は書面によらないもの
であるから取消すとの主張はなしたが、民法第七五四条によつて取消すとの主張は
なしていないことが明である。従つて原判決が民法第五五〇条を適用して取消しを
認めず、民法第七五四条についてなんの判断しなかつたのは当然であつて、原判決
には、上告人主張のような法律の解釈適用を誤つた違法はないから、この点に関す
る上告理由は理由がない。
追加上告理由書第二ないし第四に対する判断。
 本件記録によれば、上告人が上告理由書を原審に提出したのは、昭和三十年八月
十八日であり、上告代理人に上告受理の通知がなされたのは同年六月二十九日であ
るから、民事訴訟法第三九八条第一項民事上告等訴訟手続規則第七条による五十日
の期間内に提出されたことが明であるが、上告の追加上告理由書が原審に提出され
たのは昭和三十年九月十五日であつて、右五十日の期間経過後であることも明であ
る。もつとも原裁判所は昭和三十年八月二十七日付で上告人に対し右規則第四条第
九条によつて補正すべき旨の命令を十四日の期間をおいて出し、右命令が到達した
のは昭和三十年九月一日であるから、右追加上告理由書は右補正期間内に提出<要
旨>されているのである。しかしながら、右規則第九条にいう補正命令は、上告理由
書に記載されていること自体が右規則第三条及び第四条の規定に違背してい
ることが明である場合に出されるものであるが、それが補正であるということと、
他方上告理由書の提出期間を上告受理の通知を受けた後五十日と法定してあること
とを合せ考えると、上告理由書に記載はしているが不充分又は不明確である場合
に、それを補正することなく直ちに民事訴訟法第三九九条第一項第二号後段によつ
て却下することは当事者に対し不親切であるから一応補正を命じた上に処置すべき
であるとしたので、上告理由書に全く記載していないような新な主張を許す趣旨で
ないと解するを相当とする。上告人の右五十日の期間後に提出された追加上告理由
書の第二ないし第四の主張は、いずれも上告理由書には全く記載されていない新な
主張で、補正の範囲と認めることはできない。故に右主張はいずれも上告理由書提
出期間後に提出されたものとして、この点に関する判断はしない。
 よつていずれにしても本件上告は理由がないから民事訴訟法第四〇一条により本
件上告を棄却し、上告審での訴訟費用を上告人をして負担させ、主文のように判決
する。
 (裁判長判事 柳川昌勝 判事 村松俊夫 判事 中村匡三)

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