弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件即時抗告を棄却する。
理由
1本件即時抗告の趣意は,弁護人A作成名義の即時抗告申立書及び同申立補充書各記載
のとおりであるから,これらを引用する。
論旨は,要するに,次のようなものである。すなわち,弁護人は,事実上及び法律上の
主張に関連する証拠として,相被告人B逮捕以前に作成された緊急配備,聞込み,初動捜
査,張込み及び地取・足取捜査に関する捜査状況・経緯を示す捜査報告書,事情聴取結果
報告書,捜査関係事項照会書・回答書及びこれに準ずる書面(ただし,既に開示されてい
るものを除く。以下「開示請求に係る捜査報告書等」という。)の開示命令を請求したと
ころ,原決定は,開示請求に係る捜査報告書等のうち,捜査状況・経緯を示す証拠につい
ては,開示の必要性が認められないのであって,開示が相当とはいえず,その余のものに
ついては,開示命令請求に係る未開示証拠が存在しないことを理由に,上記請求をいずれ
も棄却した。しかし,原決定は,その判断を誤っているから,原決定を取り消した上,上
記証拠の開示を命ずるとの裁判を求めるというのである。
2そこで,関係記録を調査して検討する。
本件に関する各公訴事実の要旨は,被告人が,B及びCと共謀の上,通行人から金品を
強取しようと企て,平成14年2月7日及び翌8日の2回にわたり,D県E市内において,通行
中の被害者2名に対し,それぞれ,「金を出せ。」などと語気鋭く申し向けた上,手拳でそ
の顔面を殴打するなどの暴行を加え,その反抗を抑圧し,現金合計約5万9500円及び時価合
計約6万3337円相当の物品6点を強取し,その際,上記暴行により,被害者らに対し,歯牙
破折及び全治約5日間を要する顔面打撲等の傷害,全治約1週間を要する頭部等打撲の傷害
をそれぞれ負わせたというものである。
原審は,平成20年6月4日,本件を公判前整理手続に付し,弁護人は,平成20年7月9日付
け及び同月10日付けの各書面により類型証拠開示請求をした。これに対し,検察官は,同
月17日付けの書面2通(「証拠開示請求に対する回答書(1―1)」及び「同(1―2)」)に
おいて,弁護人の上記開示請求に係る証拠のうち,118点の証拠を刑訴法316条の15の類型
証拠に該当するものとして開示に応じるほか,2点の証拠については,同条所定の要件を充
足しないものの任意に開示し,被害者らに対して実施された写真面割の捜査報告書につい
ては,刑訴法316条の15第1項6号に該当せず,その余の上記開示請求に係る未開示証拠は存
在しない旨回答した。弁護人は,類型証拠開示に関しては裁定の申立てをせず,「捜査機
関は,被告人らによる犯行後,緊急配備等の初動措置,捜査及び総合捜査による被疑者割
り出しのための捜査をしていないか,していたとしても不十分であり,本件各強盗致傷事
件の処理を6年以上もいたずらに放置し,被告人の少年審判を受ける機会を失わせたもので
あるから,捜査手続の違法は重大であり,当該捜査手続を前提とする公訴提起の手続は無
効なものとして公訴棄却されるべきである。」旨予定主張をした上,平成20年8月22日付け
「主張関連証拠開示請求書3」において,開示請求に係る捜査報告書等は上記主張に関連す
る証拠であるとして,刑訴法316条の20第1項に基づき,その開示を求めた。これに対し,
検察官は,平成20年8月29日付け及び同年11月7日付けの各書面(証拠開示請求に対する回
答書)において,争点を早期に明確にし,迅速な訴訟進行を実現するとの観点から,原決
定別紙記載の証拠7点を任意に開示する旨回答した後,同年12月1日,弁護人に対し,開示
請求に係る捜査報告書等は送致されていない旨回答した。そこで,弁護人は,同月11日,
原審に対し,主張関連証拠開示に関する裁定の申立てをし,開示請求に係る捜査報告書等
の開示に関する裁定を求めた。
3検察官の平成20年12月17日付け意見書及び電話聴取書2通(検察官が同月18日に警察
官からの回答を聴取した内容を明らかにしたもの1通及び原審が同月24日に検察官からの
回答を聴取した内容を明らかにしたもの1通)によると,検察官は,本件各強盗致傷被告事
件に係る捜査書類すべてについて,警察から送致を受けている上,これらの検察官保管に
係る捜査書類中,開示請求に係る捜査報告書等に該当するものは,捜査状況及び経緯をま
とめた報告書しかなく,同報告書の基礎となった捜査報告書等はすべて弁護人に開示され
ているものと認められる。してみれば,開示請求に係る捜査報告書等のうち,捜査状況及
び経緯をまとめた報告書については,すでに原証拠である捜査報告書等が開示済みであり,
開示の必要性の程度が著しく低いことから,開示するのは相当でないというべきであるし,
その他の証拠については,物理的に存在しないことが明らかであって,これらの証拠の開
示を命じなかった原決定は正当である。
4以上に対し,所論は,原審は,検察官の上記意見及び回答を安易に信用し,上記のと
おり判断しているところ,開示請求に係る捜査報告書等の存否は,刑訴法316条の27第1項
及び第2項に基づき,開示請求に係る証拠及び検察官保管証拠のうち,裁判所の指定する範
囲に属するものの標目を記載した一覧表の提示を命じた上で判断されるべきであるなどと
主張する。しかし,検察官の上記意見及び回答に疑いを差し挟まなければならない特段の
事情はうかがわれない上,公判前整理手続における弁護人の証拠開示請求に対する2の検察
官の具体的な対応状況等をも踏まえてみると,本件においては,開示請求に係る捜査報告
書等の存否を把握する手段として,検察官に対し,証拠そのものはもとより,証拠の標目
を記載した一覧表の提示を求める必要性までは認められない。所論は採用できず,論旨は
理由がない。
5よって,刑訴法426条1項後段により本件即時抗告を棄却することとし,主文のとおり
決定する。
(裁判長裁判官・小川正明,裁判官・河田充規,裁判官・西川篤志)

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