弁護士法人ITJ法律事務所

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         主    文
       本件上告を棄却する。
       上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人岡村共栄の上告受理申立て理由(排除された部分を除く。)について
 1 消費税法(平成9年3月31日以前の課税期間については平成6年法律第1
09号による改正前のもの,平成9年4月1日以降の課税期間については平成12
年法律第26号による改正前のもの。以下「法」という。)が採る申告納税制度の
趣旨及び仕組み並びに法30条7項の趣旨に照らせば,【要旨】事業者は,同条1
項の適用を受けるには,消費税法施行令(平成9年3月31日以前の課税期間につ
いては平成7年政令第341号による改正前のもの,平成9年4月1日以降の課税
期間については平成12年政令第307号による改正前のもの)50条1項の定め
るとおり,法30条7項に規定する帳簿又は請求書等(同日以降の課税期間につい
ては帳簿及び請求書等。以下「帳簿等」という。)を整理し,これらを所定の期間
及び場所において,法62条に基づく税務職員による検査に当たって適時に提示す
ることが可能なように態勢を整えて保存することを要するのであり,事業者がこれ
を行っていなかった場合には,法30条7項により,事業者が災害その他やむを得
ない事情によりこれをすることができなかったことを証明しない限り(同項ただし
書),同条1項の規定は適用されないものというべきである(最高裁平成13年(
行ヒ)第116号同16年12月16日第一小法廷判決・裁判所時報1378号登
載予定参照〔編注:民集58巻9号2458頁に登載〕)。
 2 原審の適法に確定した事実関係によれば,上告人は,被上告人の職員が上告
人に対する税務調査において適法に帳簿等の提示を求め,これに応じ難いとする理
由も格別なかったにもかかわらず,上記職員に対して帳簿等の提示を拒み続けたと
いうのである。そうすると,上告人が,上記調査が行われた時点で帳簿等を保管し
ていたとしても,法62条に基づく税務職員による帳簿等の検査に当たって適時に
これを提示することが可能なように態勢を整えて帳簿等を保存していたということ
はできず,本件は法30条7項にいう帳簿等を保存しない場合に当たるから,被上
告人が上告人に対して同条1項の適用がないとしてした別紙処分目録記載の各処分
に違法はないというべきである。
 これと同旨の原審の判断は是認することができる。論旨は採用することができな
い。なお,その余の請求に関する上告については,上告受理申立て理由が上告受理
の決定において排除されたので,棄却することとする。
 よって,裁判官滝井繁男の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文
のとおり判決する。
 裁判官滝井繁男の反対意見は,次のとおりである。
 1 私は,税務調査において,帳簿等の提示を求められた事業者が,これに応じ
難いとする理由がないとはいえ,帳簿等の提示を拒み続けたというだけの理由で,
法30条7項所定の帳簿等を保管していたのに,同項にいう「帳簿(中略)等を保
存しない場合」に当たるとして,同条1項による課税仕入れに係る消費税額の控除
を受けることができないと解するのは相当でないと考える。多数意見は結局そのよ
うな解釈を採るに帰着するものであるから,これに賛成することはできない。その
理由は次のとおりである。
 2(1) 我が国消費税は,税制改革法(昭和63年法律第107号)の制定を受
けて消費に広く薄く負担を課することを目的とし,事業者による商品の販売,役務
の提供等の各段階において課税することとしたものであるが,同法は課税の累積を
排除する方式によることを明らかにし(同法4条,10条,11条),これを受け
て,法30条1項は,事業者が国内において課税仕入れを行ったときは,当該課税
期間中に国内で行った課税仕入れに係る消費税額を控除することを規定しているの
である。この仕入税額控除は,消費税の制度の骨格をなすものであって,消費税額
を算定する上での実体上の課税要件にも匹敵する本質的な要素とみるべきものであ
る。ただ,法は,この仕入税額控除要件の証明は一定の要件を備えた帳簿等による
こととし,その保存がないときは控除をしないものとしているのである(同条7項)。
しかしながら,法が仕入税額の控除にこのような限定を設けたのは,あくまで消費
税を円滑かつ適正に転嫁するために(税制改革法11条1項),一定の要件を備え
た帳簿等という確実な証拠を確保する必要があると判断したためであって,法30
条7項の規定も,課税資産の譲渡等の対価に着実に課税が行われると同時に,課税
仕入れに係る税額もまた確実に控除されるという制度の理念に即して解釈されなけ
ればならないのである。
 (2) しかしながら,法58条,62条にかんがみれば,法30条7項は,事業
者が税務職員による検査に当たって帳簿等を提示することが可能なようにこれを整
理して保存しなければならないと定めていると解し得るとしても,そのことから,
多数意見のように,事業者がそのように態勢を整えて保存することをしていなかっ
た場合には,やむを得ない事情によりこれをすることができなかったことを証明し
た場合を除き,仕入税額の控除を認めないものと解することは,結局,事業者が検
査に対して帳簿等を正当な理由なく提示しなかったことをもって,これを保存しな
かったものと同視するに帰着するといわざるを得ないのであり,そのような理由に
より消費税額算定の重要な要素である仕入税額控除の規定を適用しないという解釈
は,申告納税制度の趣旨及び仕組み,並びに法30条7項の趣旨をどのように強調
しても採り得ないものと考える。
 (3) 事業者が法の要求している帳簿等を保存しているにもかかわらず,正当な
理由なくその提示を拒否するということは通常あり得ることではなく,その意味で
正当な理由のない帳簿等の提示の拒否は,帳簿等を保存していないことを推認させ
る有力な事情である。しかし,それはあくまで提示の拒否という事実からの推認に
とどまるのであって,保存がないことを理由に仕入税額控除を認めないでなされた
課税処分に対し,所定の帳簿等を保存していたことを主張・立証することを許さな
いとする法文上の根拠はない(消費税法施行令66条は還付等一定の場合にのみ帳
簿等の提示を求めているにすぎない。)。また,大量反復性を有する消費税の申告
及び課税処分において迅速かつ正確に課税仕入れの存否を確認し,課税仕入れに係
る適正な消費税額を把握する必要性など制度の趣旨を強調しても,法30条7項に
おける「保存」の規定に,現状維持のまま保管するという通常その言葉の持ってい
る意味を超えて,税務調査における提示の求めに応ずることまで含ませなければな
らない根拠を見出すことはできない。そのように解することは,法解釈の限界を超
えるばかりか,課税売上げへの課税の必要性を強調するあまり本来確実に控除され
なければならないものまで控除しないという結果をもたらすことになる点において
,制度の趣旨にも反するものといわなければならない。
 (4) 保存の意味を本来の客観的な状態での保管という用語の持つ一般的な意味
を超えて解釈することが,制度の趣旨から是認されるという場合がないわけではな
い。例えば,青色申告の承認を受けた者は所定の帳簿書類の備付け,記録及び保存
が義務付けられ,それが行われていないことは青色申告承認の取消事由となるもの
と定められているところ,納税者が正当な理由なく税務職員による帳簿書類の提示
の要求に応じないときは,帳簿書類の備付け,記録及び保存の義務を履行していな
いものとして青色承認の取消事由になるものと解されている。しかしながら,青色
申告制度は,納税義務者の自主的かつ公正な申告による租税義務の確定及び課税の
実現を確保するため,一定の信頼性ある記帳を約した納税義務者に対してのみ,特
別な申告手続を行い得るという特典を与え,制度の趣旨に反する事由が生じたとき
はその承認を取り消しその資格を奪うこととしているものである。そして,青色申
告の承認を受けた者は,帳簿書類に基づくことなしには申告に対して更正を受けな
いという制度上の特典を与えられているのであるから,税務調査に際して帳簿等の
提示を拒否する者に対してもその特典を維持するというのは背理である。したがっ
て,その制度の趣旨や仕組みから,税務職員から検査のため求められた書類等の提
示を拒否した者がその特典を奪われることは当然のこととして,このような解釈も
是認されるのである。
 これに対し,法における仕入税額控除の規定は,前記のとおり課税要件を定めて
いるといっても過言ではなく,青色申告承認のような単なる申告手続上の特典では
ないと解すべきものである。そして,法は,消費税額の算定に当たり,仕入税額を
控除すべきものとした上で,帳簿等の保存をしていないとき控除の適用を受け得な
いとしているにとどまるのである。法30条7項も,消費税を円滑かつ適正に転嫁
するために帳簿の保存が確実に行われなければならないことを定めたものであり,
着実に課税が行われるよう,課税売上げの額を正しく把握すると同時に控除される
べき税額は確実に控除されなければならないという消費税制度の趣旨を考えれば,
同項にいう「保存」に,その通常の意味するところを超えて税務調査における提示
をも含ませるような解釈をしなければならない理由は見いだすことはできず,その
ように解することは,本来控除すべきものを控除しない結果を招来することになっ
て,かえって消費税制度の本来の趣旨に反するものと考えるのである。
 (5) 事業者が帳簿等を保存すべきものと定められ,これに対する検査権限が法
定されているにもかかわらず,正当な理由なくこれに応じないという調査への非協
力は,申告内容の確認の妨げになり,適正な税収確保の障害にもなることは容易に
想像し得るところであるが,法は,提示を拒否する行為については罰則を用意して
いるのであって(法68条),制度の趣旨を強調し,調査への協力が円滑適正な徴
税確保のために必要であることから,税額の計算に係る実体的な規定をその本来の
意味を超えて広げて解することは,租税法律主義の見地から慎重でなければならな
いものである。
 3 以上のような理由で,私は法30条7項についての多数意見には賛成するこ
とができないのである。
 同項につき上述したところと異なる解釈を採った原判決には,判決に影響を及ぼ
すことが明らかな法令の違反がある。そして,同項にいう帳簿等の「保存」の有無
につき更に審理を尽くさせる必要があるから,本件は原審に差し戻すべきものであ
ると考える。
(裁判長裁判官 梶谷 玄 裁判官 福田 博 裁判官 北川弘治 裁判官 滝井
繁男 裁判官 津野 修)

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