弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告人A1及びA2名義の上告理由第一点、第二点について。
 上告人A1はその所有にかかる本件建物の所有権を訴外Dに移転したが、右建物
の登記名義がA1の先代Eの所有名義になつていたので、昭和二〇年一〇月一五日
EからDに所有権を移転した旨の登記を経由したこと。Dは税金滞納のため昭和二
五年一〇月二五日国から右建物に対し差押をされ、同年一一月一五日その旨の登記
を経由されたこと。然るにDは同年同月一九日右建物を訴外Fに売り渡し同月二〇
日その旨の登記を了したこと。次に、上告人A1は右Fを相手方として右登記の抹
消登記手続請求の訴を提起し、同訴訟において昭和二九年三月一日Fとの間に裁判
上の和解契約を締結し、FはA1に対し、Dの所有権取得の無効なること、及びD
から自らが取得した所有権移転の無効なることを各々認め、Fは右所有権移転登記
の抹消登記手続を約束したこと。上告人A1は右和解調書の正本に基き昭和二九年
六月二一日抹消登記の申請をなしたところFの所有権取得登記とDの所有権取得登
記とがともに抹消されたこと。しかして、上告人A1はその後昭和三〇年七月四日
本件建物につき相続に因る所有権取得登記を経由した上同日上告人A3、同A4、
同A5三名の被相続人であるA2に対し本件建物の所有権移転を約し、その旨の登
記を了したこと。以上は原判決の確定した事実である。
 しかして、上告人A1とF間の前示裁判上の和解契約は前示差押の効力に抵触す
るが故に、且つまた前示Dを当事者として加入させていないが故に、Dにその効力
を及ぼすべき筈がないから、前示和解調書正本に基いてなされたDの所有権取得登
記の抹消登記は違法に帰し(従つて本件建物の所有権は依然としてDの所有に属し
ていたものと解さなければならない)、Dは右抹消した登記の回復登記を求める権
利を有することは当然であり、右抹消登記は前記滞納処分による差押の後になされ
たものであること前示の如くである以上、国がDの所有権を代位し上告人A1に対
し右抹消した登記の回復登記手続を請求する権利あることもまた当然の次第と言わ
なければならない。そして、前示和解契約がDを当事者として参加させないでなさ
れているものなること前示の如くである以上、Fから上告人A1に所有権移転の約
定がなされ且つその旨の所有権移転登記手続がなされたとて、右は実体関係に吻合
しないものであり、且つまた、前示差押の効力にも抵触するものであるから、それ
ぞれその効力を生ずるに由なきものであり、また上告人A1が自ら相続に因る所有
権取得登記を経由した上、上告人A3、同A4、同A5の被相続人であるA2に対
し所有権移転の約定をなし且つその旨の登記を経由したとて、右と同じ理由により
その効力を生ずべき筋合があるべき筈のものではないから、前示差押債権者たる国
はDの所有権を代位し右各所有権移転登記及び相続に因る所有権取得登記の抹消登
記手続を請求する権利を有するものと言わなければならない。さすれば理論の建前
はともあれ以上と同一轍の結論に出た原判決の判断は正に正当とすべきである。
 所論はDが上告人に対し被上告人の訴と同趣旨の訴を被上告人と相呼応して提起
したから、被上告人はもはや代位権を行使し得べき限りではないと主張する。しか
し原判決によればDは被上告人の本件訴の後に上告人に訴を提起したものであるこ
とが窺われるのであり、このように代位権者が訴を提起して代位権を行使した後は
債務者は代位の目的となつた権利について訴を提起することを得ないものと解すべ
きであるから、所論はその理由がないものと言わなければならない(昭和一四年五
月一六日大審院判決民集第一八巻五六二頁参照)。なお、所論はDは東京地方裁判
所昭和三〇年(ワ)第七六六二号家屋明渡請求事件において上告人に対し本件代位
権行使の目的たる権利を行使していたと主張するが、右事実は本上告論旨において
初めて主張された事実であるからここに審究の限りではない(記録を精査するに、
右事件は前示A2から訴外D某外二名に対して提起された事件で、本件代位請求事
件とは内容上関係を有しないものの如くに認められる)。次に原判決がDを登記義
務者と判示していることは所論のとおりである。しかし、右は原判文を熟読すれば
判明するように、上告人A1とF間の前示和解契約の効力がDに及ばないことの理
論構成上の説明として判示されたものに外ならないのであるから、その説明の当否
を攻撃しても原判決窮極の判断(当審の判断と一致する判断)に対し毫末も影響す
るところはないのである。従つてこの点の所論は採用に値しないものと認める。次
にまた本訴はDとFとを共同被告として提起されている訴でもないのである。この
点の所論も原判決を正解しないものであつて採るに足りない。
 同第三点について。
 冒頭説示の原判決確定の事実によつても明らかなとおり、国は徴税権確保のため
納税義務者であるDの所有不動産に対し差押をなしたものであり、この差押の及ぶ
限度において前示各登記は無効に帰すべく、これら無効の登記は税徴收実行のため
妨害となり、国としてはこれらの妨害を排除する必要のあることは当然であるから、
この場合国に最終的には競売申立権が留保されているからといつて、国において、
Dの所有権を代位行使することを否定すべき何らの理由なきものと言わなければな
らない。右に反する所論は独自の見解に外ならず、採用の限りではない。
 同第四点について。
 所論中前段の点を除きその他の点はすでに上来叙説したところによりその理由な
きことを説示されているものと考えられるから、ここに重ねて説明を加えない。そ
して前段の点は冒頭説示の原判決確定の事実に抵触する事実を主張するものであつ
て、結局原審の裁量に属する事実認定を非難する以外のものではない。以上の次第
で、所論もすべて理由がなく、採用できない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    高   木   常   七

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