弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原決定を取消す。
     抗告人を処罰せず。
     手続費用は第一、二審とも国庫の負担とする。
         理    由
 本件抗告の趣旨および理由は別紙記載のとおりであつて、これに対する当裁判所
の判断はつぎのとおりである。
 非訟事件手続法第一二一条第一項は、法人の登記事項に変更を生じた場合の変更
登記は「理事……ノ申請ニ因リテ之ヲ為ス」と規定し、法人の設立登記を理事全員
の申請によらしめている(同法一二〇条一項)のと対照的な規整をしている。この
点からすれば、理事数人ある場合には、各理事がめいめい変更登記の申請義務を負
い、これを怠れば各理事が過料の制裁を受けなければならないかのように解せられ
ないではない。
 そこで、法人の変更登記の申請義務者は何人であるかの問題についてみるのに、
変更登記の申請は理事単独でなし得るといつても、それは理事が法人のために外部
に対してなす事務の部類に入るから、法務局に対する。変更登記の申請は、特に規
定がないかぎり法人を代表し、かつ、その事務を執行しうる理事の職務権限に属す
ることを予想するものというべきである。民法第五三条本文は「理事ハ総テ法人ノ
事務ニ付キ法人ヲ代表ス」ると規定しているけれども、その半面において、定款又
は寄附行為によつてこれを制限し得ることが認められている(民法五三条但書、五
四条参照)。すなわち、理事数人ある場合、定款又は寄附行為をもつて、そのうち
の一人を、法人を代表すべき理事(例えば理事長)、と定めることが法律により許
されている。このような職務分担が定められた場合には、理事は、法人に対して
は、定款又は寄附行為によつて定められた制限に従う義務があり(民法五三条但書
前段)、その分担する業務につき、委任の本旨に従い、善良なる管理者の注意をも
つて処理する義務を負うのである(民法六四四条)。もつとも、理事の代表権に加
えたこの種の制限は、これを「善意ノ第三者」に対抗し得ないとされ(民法五四
条)、したがつて、理事がかかる制限に反して行為した場合でも、対内的には代表
権限の踰越として、法人に対する義務違反の責任を生ずることがあるとしても、対
外的には依然として代表権の範囲内の行為として有効たることを失わない。しか
し、この「善意ノ第三者」保護の規定は、商法第七八条第二項、第二六一条第二項
と全く同列の規定であり、法人と取引する相手方の利益を擁護する趣旨であつて、
畢竟取引安全保護の要請に基くものである。しかるに、法務局に対して変更登記の
申請をする行為については、それが取引行為に属しないこと勿論であるから、かか
る善意の第三者保護の規定を働かしめる根拠は全く存しない。そして変更登記の申
請が法務局に対する理事の行政上の義務の履行であり、その義務の懈怠に対して過
料の制裁を課せられるものであることを考えると、いかなる理事が変更登記の申請
義務を負うかの問題は、変更登記の申請事務を処理する職務権限との関連において
考察するのが、最も条理にかなつたものといわなければならない。なぜなら、定款
又は寄附行為等によつて代表権したがつてまたこれに伴う事務行を制限せられた理
事が、その職務権限に属しない対法務局事務につき懈怠責任を問われて行政上の処
罰を受けることは、矛盾であり、苛酷であるからである。したがつて、定款又は寄
附行為により変更登記の申請という法人事務を処理する職務権限を有する代表理事
だけにその行政上の申請義務を負わせるのが筋道といわなければならないし、かか
る制限は、なんら前記非訟事件手続法第一二一条第一項の趣旨を没却せしめるもの
ではないから、有効とすべきである。
 この点について、他の場合の規整と比較検討してみるのに、民法の建前では、法
人の清算人は、法人の機関して各自法人を代表し、清算人の代表権に加えた制限は
善意の第三者に対抗し得ないこと、理事の場合と同様であるが、明治四四年法律第
七四号による改正の結果、定款又は寄附行為をもつて代表清算人を特に定めている
場合には、現任の当該代表清算人が清算人に関する変更の登記につき申請義務者と
されている(非訟一二五条、一七七条、民法七四条但書、商法一二三条一項各
号)。さらに、わが法(民法三三条)上、法人である民事会社(民法三五条、商法
五二条二項)をはじめ合名会社や株式会社においては、変更登記の申請義務者は、
以前は総社員又は総取締役とされていたが、現行法では、会社を代表すべき社員又
は代表取締役とされている(非訟一八〇条、一八八条一項)。同じく法人である民
法上の公益法人の理事について、これらと別異に扱う合理的根拠に乏しいのであつ
て、定款又は寄附行為の定める代表理事に変更登記の申請義務を負わせるだけで法
の目的を達するのに必要にして十分な措置といわなければならない。
 <要旨>以上の考察に徴すれば、前記非訟事件手続法第一二一条第一項が法人の変
更登記を申請すべき理事を単に「理事」と規定しているのは、法人の理事が
各個に法人を代表して行為し得る職務権限を有するという民法の建前を前提とする
ものであつて、定款又は寄附行為によつて数人の理事の職務分担を設け、法人を代
表すべき理事を特に定めている場合にあつては、当該代表理事だけが変更登記の申
請義務者であると解するのを相当とする。
 本件において、財団法人白楽天山保存会の寄附行為によれば、理事五名の中から
互選で理事長一名を定めることとし(第一四、一五条)、「理事長はこの法人の事
務を総理し、この法人を代表する」(第一六条第一項)と定められ、他の理事の代
表権が制限せられていること、昭和三五年八月四日から同年九月一二日にいたる間
の本件変更登記(新理事Aの就任登記)の懈怠期間中の理事長はBであつて、抗告
人ではないことが、本件添附の各書類により認められるから、本件変更登記の申請
義務者はBであつて代表理事でない抗告人はその申請義務者ではないといわなけれ
ばならない。それゆえ新理事就任の登記を申請すべき義務のなかつた抗告人に、そ
の義務を怠つたとして過料を科した原決定は、その他の抗告理由に対する判断をま
つまでもなく、失当である。
 よつて、原決定はこれを取消し、抗告人を処罰しないこととし、手続費用の負担
について非訟事件手続法第二〇七条第五項を適用して主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 沢栄三 裁判官 木下忠良 裁判官 石川義夫)

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