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平成29年2月20日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成27年(ワ)第10267号特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日平成28年12月15日
判決
原告環境電子株式会社
同訴訟代理人弁護士田上洋平
被告株式会社アニマックス
同訴訟代理人弁護士若山満教
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は,別紙「被告物件目録」記載の製品の製造,販売及び販売の申出をし
てはならない。
2被告は,前項記載の製品及びその半製品を廃棄せよ。
3被告は,原告に対し,1782万円及びこれに対する平成27年10月31
日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,発明の名称を「水質自動監視装置及び低濃度毒性検知方法」とする特許
権を有する原告が,被告が製造販売するなどした製品が当該発明の技術的範囲に属
すると主張して,被告に対し,当該特許権に基づいて,当該製品の製造販売等の差
止め並びに当該製品及びその半製品の廃棄を求めるとともに,特許権侵害の不法行
為による損害賠償請求として,被告が得た利益の額に相当する損害金1500万円,
弁護士費用相当額150万円及び消費税相当額132万円を合計した1782万円
並びにこれに対する不法行為後であり,訴状送達の日の翌日である平成27年10
月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め
た事案である。
1前提事実(当事者間に争いがないか,後掲証拠又は弁論の全趣旨により明ら
かに認められる。)
(1)当事者
原告は,水質汚濁等の環境監視システムに関する機器の製作,販売等を目的とす
る株式会社である(甲14)。
被告は,水質浄化等の環境改善システムの研究開発等を目的とする株式会社であ
る(甲3,乙1)。
(2)原告の有する特許権
原告は,以下の特許(以下「本件特許」といい,本件特許の請求項7に係る発明
を「本件発明1」といい,請求項11に係る発明を「本件発明2」といい,本件発
明1及び2を併せて「本件発明」という。また,本件特許のうち,本件発明1につ
いての特許を「本件特許1」といい,本件発明2についての特許を「本件特許2」
という。そして,本件特許の特許出願を「本件特許出願」といい,本件特許出願の
願書に添付された明細書及び図面をまとめて「本件明細書」という。)に係る特許権
を有する。本件明細書の記載は,別紙の特許公報(甲2)のとおりである。
特許番号特許第4712908号
発明の名称水質自動監視装置及び低濃度毒性検知方法
出願日平成22年11月2日
登録日平成23年4月1日
特許請求の範囲
【請求項7】
ヒメダカ等の小型魚類を群れで飼育する監視水槽と,
前記監視水槽内に試料水を連続供給する給水手段と,
前記監視水槽内の小型魚類の動きを外部から撮影するCCDビデオカメラと,
前記CCDビデオカメラで撮影した映像から画像処理によって小型魚類が群れで
固まる状態を検知することで試料水への低濃度有毒物質の混入と判定する画像処理
手段と,
前記画像処理手段で試料水への低濃度有害物質混入の混入と判定すると警報を表
示する表示手段と,
を備えていることを特徴とする水質自動監視装置。
【請求項10】
請求項7~9のいずれかに記載の水質自動監視装置において,
前記画像処理手段は,CCDビデオカメラで撮影した映像から画像処理によって
小型魚類が群れで固まる状態をセンサードットで検知することで試料水への低濃度
有毒物質の混入と判定するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置。
【請求項11】
請求項10記載の水質自動監視装置において,
前記画像処理手段は,CCDビデオカメラで撮影した映像から画像処理により監
視水槽全面に所定数のセンサードット毎に縦横にブロック化した複数のセンサーブ
ロックを配置し,監視水槽内の小型魚類が動いて各センサーブロック内のセンサー
ドットに触れるとセンサーブロックが計数される仕組みのアルゴリズムにおいて,
計数されたセンサーブロック数が所定時間連続して予め設定した設定ブロック数以
下である時に小型魚類が群れで固まる状態を検知することで試料水への低濃度有害
物質の混入と判定するようにしたことを特徴とする水質自動監視装置。
(3)本件発明1の構成要件の分説
本件発明1を構成要件に分説すると,以下のとおりである。
Aヒメダカ等の小型魚類を群れで飼育する監視水槽と,
B前記監視水槽内に試料水を連続供給する給水手段と,
C前記監視水槽内の小型魚類の動きを外部から撮影するCCDビデオカメ
ラと,
D前記CCDビデオカメラで撮影した映像から画像処理によって小型魚類
が群れで固まる状態を検知することで試料水への低濃度有毒物質の混入と判定する
画像処理手段と,
E前記画像処理手段で試料水への低濃度有害物質混入の混入と判定すると
警報を表示する表示手段と,
Fを備えていることを特徴とする水質自動監視装置。
(4)本件発明2の構成要件の分説
本件発明2を構成要件に分説すると,以下のとおりである。
Aヒメダカ等の小型魚類を群れで飼育する監視水槽と,
B前記監視水槽内に試料水を連続供給する給水手段と,
C前記監視水槽内の小型魚類の動きを外部から撮影するCCDビデオカメ
ラと,
G1前記CCDビデオカメラで撮影した映像から画像処理により監視水槽
全面に所定数のセンサードット毎に縦横にブロック化した複数のセンサーブロック
を配置し,監視水槽内の小型魚類が動いて各センサーブロック内のセンサードット
に触れるとセンサーブロックが計数される仕組みのアルゴリズムにおいて,
G2計数されたセンサーブロック数が所定時間連続して予め設定した設定
ブロック数以下である時に小型魚類が群れで固まる状態を検知することで試料水へ
の低濃度有害物質の混入と判定する画像処理手段と,
E前記画像処理手段で試料水への低濃度有害物質混入の混入と判定すると
警報を表示する表示手段と,
Fを備えていることを特徴とする水質自動監視装置。
(5)被告の行為
被告は,業として別紙「被告物件目録」記載の水質自動監視装置(以下「被告製
品」という。)を生産し,譲渡又は譲渡の申出をしている。
2争点
(1)被告製品は,本件発明1の技術的範囲に属するか。
ア被告製品は,本件発明1の各構成要件を文言上充足するか。
(争点1-1)
イ被告製品は,本件発明1と均等なものとして,その技術的範囲に属する
か。(争点1-2)
(2)被告製品は,本件発明2の技術的範囲に属するか。
ア被告製品は,本件発明2の各構成要件を文言上充足するか。
(争点2-1)
イ被告製品は,本件発明2と均等なものとして,その技術的範囲に属する
か。(争点2-2)
(3)本件特許1は,特許無効審判により無効にされるべきものであるか。
ア乙11公報,乙12公報及び乙13論文に基づく新規性欠如
(争点3-1)
イ乙6公報,乙7公報,乙8公報,乙14公報又は乙15論文を主引例と
する進歩性欠如(争点3-2)
ウ乙16公報に基づく新規性欠如(争点3-3)
エ乙16公報を主引例とする進歩性欠如(争点3-4)
オ実施可能要件違反(争点3-5)
(4)本件特許2は,特許無効審判により無効にされるべきものであるか。
ア乙16公報に基づく新規性欠如(争点4-1)
イ乙16公報を主引例とする進歩性欠如(争点4-2)
(5)原告の損害額(争点5)
第3争点に関する当事者の主張
1-1争点1-1(被告製品は,本件発明1の各構成要件を文言上充足するか)
について
【原告の主張】
以下のとおり,被告製品は,文言上,本件発明1の各構成要件を充足する。
(1)被告製品の構成
被告製品の構成は別紙「被告製品説明書1」記載のとおりであり,被告製品の構
成を,本件発明1の構成要件に対応させて表現すると,以下のとおりとなる。
aヒメダカを群れで飼育する遊泳槽と,
b前記遊泳槽内に試料水を連続供給する水中ポンプと,
c前記遊泳槽内のヒメダカの動きを外部から撮影するCMOSビデオカメ
ラと,
d前記CMOSビデオカメラで撮影した映像から画像処理によってヒメダ
カの存在と動作の検知を行い,ヒメダカの長期と短期の移動平均値を比較すること
で試料水への低濃度有毒物質の混入と判定する画像処理手段と,
e前記画像処理手段で試料水への低濃度有害物質の混入と判定すると警報
を表示する表示手段と,
fを備えていることを特徴とする水質自動監視装置。
(2)構成要件Aの充足性
被告製品の監視水槽は,沈殿槽,ポンプ槽及び遊泳槽から成る。
本件明細書の【0014】,【図1】及び【図2】によれば,被告製品の監視水槽,
遊泳槽,沈殿槽及びポンプ槽は,それぞれ,本件発明1の水槽全体,監視水槽,受
水槽及びポンプ水槽に該当する。
したがって,被告製品の構成aは,構成要件Aを充足する。
(3)構成要件Bの充足性
本件明細書の【0032】によれば,被告製品の給水ポンプは本件発明1の給水
手段に相当する。
したがって,被告製品の構成bは,構成要件Bを充足する。
(4)構成要件Cの充足性
CCDビデオカメラとCMOSビデオカメラはいずれも極めてありふれた撮像素
子であり,実質的に同一である。
したがって,被告製品の構成cは,構成要件Cを充足する。
(5)構成要件Dの充足性
ア「小型魚類が群れで固まる状態を検知する」の意義
本件明細書の【0043】,【0047】,【0056】及び【0057】によれば,
「小型魚類が群れで固まる状態を検知する」とは,画像処理により監視水槽内を所
定数のセンサードットごとにブロック化し,ヒメダカが触れているセンサーブロッ
ク数があらかじめ設定したブロック数以下の場合を検知することを意味する。
また,請求項7(本件発明1)を引用する請求項10をさらに引用する請求項1
1(本件発明2)において,「小型魚類が動いて各センサーブロック内のセンサード
ットに触れるとセンサーブロックが計数される仕組みのアルゴリズム」と記載され
ているとおり,動いた小型魚類が存在するセンサーブロックのみを計数するとの構
成が開示されており,当該構成をサポートする記載が本件明細書(【0032】,【0
056】)にも開示されている。そして,本件明細書の【図13】及び【図15】に
おいて,ヒメダカが存在するにもかかわらず検知されていないセンサーブロックが
存在していることからも,動いた小型魚類のみが検知される。そうすると,本件発
明1において,センサーブロック数の検知は,ヒメダカの動作があったブロックの
みを検知する構成,すなわち,動作状態のブロック数を検知して,「群れで固まる状
態」を検知している構成を含む。したがって,「小型魚類が群れで固まる状態を検知
する」とは,ヒメダカが触れているセンサーブロック数の計数においては,ヒメダ
カが動いてセンサードットに触れたセンサーブロックを計数する構成を含むもので
ある。
イ被告製品へのあてはめ
被告製品の取扱説明書及び仕様書によれば,被告製品は,画像処理により監視水
槽内を所定数(25個)のセンサードットごとにブロック化し,ヒメダカが触れて
いるセンサーブロック数やヒメダカが動いて触れたセンサーブロック数があらかじ
め設定したブロック数以下の場合,例えば3分平均のブロック数が,24時間平均
の50%以下の場合を検知することで,試料水への低濃度有毒物質の混入と判定す
る画像処理手段を備えている。
また,被告製品における「表示名」,「判定値」,「判定秒数」及び「画像取込み判
定速度」は,それぞれ,本件明細書の【0043】及び【表2】における「アラー
ム」,「検出ブロック」,「タイマー」及び「動作時間」に対応する。そして,取扱説
明書(甲5)の8頁「①水質条件一覧編集」及び同3頁「画像解析パターンと生存
数のカウント方法」によれば,当該検知の基準は任意に変更でき,判定基準を指定
値とすることや判定値を固定値とすることができ,換言すれば,ヒメダカの動作状
態の検知ブロック数を判定基準としても,水質異常を検知できるようにしているか
ら,本件明細書の【0043】及び【表2】と同一の設定をすることができる。
したがって,被告製品の構成dは,構成要件Dを充足する。
(6)構成要件E及びFの充足性
被告製品の構成e及びfは,それぞれ,構成要件E及びFを充足する。
【被告の主張】
以下のとおり,被告製品は,本件発明1の各構成要件を文言上充足するものでは
ない。
(1)構成要件Dの解釈
「群れで固まる状態」という言葉の通常の意味としては,多くの同類のものが集
まっている状態,ばらばらであったものがひとまとまりになっている状態を意味す
る。そして,本件明細書の記載(【0004】,【0006】,【0032】,【0043】,
【図2】,【図6】,【図7】),公知技術(乙6ないし8)及び審査経過(乙4,5)
に鑑みると,本件発明1は,小型魚類の生態本能から低濃度の毒性でも危険を感じ
て群れで固まる性質を利用し,従来知られていなかった特殊な異常行動である「小
型魚類が群れで固まる状態」を検知することで試料水への低濃度有毒物質の混入と
判定するようにしたことに本質的な特徴を有する。
したがって,「小型魚類が群れで固まる状態を検知する」とは,「画像処理により
監視水槽内を所定数のセンサードットごとにブロック化し,ヒメダカが触れている
センサーブロックの計数(センサーブロックにおけるブロック数の検知は,ヒメダ
カの動作があったブロックのみを検知する構成を含む。)に基づき,監視水槽におけ
るヒメダカの局在状態を検知すること」と解釈すべきである。
(2)被告製品へのあてはめ
アヒメダカの存在状態(個体数)の検知
被告製品は,従来から存する動作状態(活動量)の検知というファクターと新た
な存在状態(個体数)の検知という二つのファクターから被検水に毒物が含まれて
いないかどうかを検査しているものであるが,ここでいう存在状態(個体数)の検
知とは,OECD(経済協力開発機構)の魚類急性毒性試験のテストガイドライン
に合わせるため,ヒメダカの個体数が96時間で50%以下あるいは25%以下に
減少したかどうかをブロック数の増減から把握して警報を発し,ヒメダカの生存数
が正常かどうか,ヒメダカの個体数が急減していないかどうかを把握しているもの
である。
被告製品においては,細かくセンサブロックを設置することにより,ヒメダカ1
匹を複数のブロックが検知し,ヒメダカの存在状態(個体数)で検知したセンサブ
ロックの数の減少と個体数の減少とを結び付けることができるため,ヒメダカの個
体数を把握できるが,ヒメダカが分散して回遊しているか,群れで固まっているか
により,検知されるブロック数に特段の差異はなく,ヒメダカの存在状態の検知に
基づいて,ヒメダカが群れで固まっているのか否かを判断することはできない。
このように,存在状態の検知は,ヒメダカの個体数を把握するものであって,ヒ
メダカの局在状態を判定しているものではなく,また,判定することもできないた
め,被告製品は,構成要件Dを充足しない。
イヒメダカの動作状態(活動量)の検知
ヒメダカの動作状態の検知とは,具体的には,ヒメダカの存在状態を検知した画
像と一つ前の撮影画像とを比較して,一つ前の画像でヒメダカを検知せず,当該画
像でヒメダカを検知したブロックを特定することにより行う。
被告製品は,被検水に毒物が含まれた場合,ヒメダカが狂乱的に活発化したり,
逆に緩慢になったりする習性に着目し,動作状態(活動量)で検知するブロック数
の増減を見ることにより,ヒメダカが狂乱的に活発化したり,逆に緩慢になったり
しているかを把握し,それらの異常行動が見られた場合には,警報を発信するよう
にしたものである。
そして,動作状態の検知は,活動量を把握しようとするものであり,監視水槽に
おけるヒメダカの局在状態を把握しようとするものではなく,動作状態の検知によ
り,ヒメダカの局在状態を把握することもできない。つまり,ヒメダカが群れで固
まって活動が緩慢となっている場合も,ヒメダカが分散した形で活動が緩慢となっ
ている場合も,動作状態の検知における検知ブロック数は同程度となり,その両者
を区別することはできないため,動作状態の検知により,ヒメダカの局在状態を把
握することはできない。
したがって,被告製品は,構成要件Dを充足しない。
1-2争点1-2(被告製品は,本件発明1と均等なものとして,その技術的
範囲に属するか)について
【原告の主張】
仮に,被告製品が本件発明1の「CCDビデオカメラ」(構成要件C)を文言上充
足しなかったとしても,以下のとおり,被告製品は,本件発明1と均等なものとし
て,その技術的範囲に属する。
(1)相違点が本件発明1の非本質的部分であること
本件発明1の構成要件Cは「CCDビデオカメラ」を用いるのに対し,被告製品
は「CMOSビデオカメラ」を採用している。
しかしながら,本件発明1は,「監視水槽の外側に設置したCCDビデオカメラで
監視水槽内の小型魚類の動きを撮影し,この映像から画像処理によって小型魚類が
群れで固まる状態を検知することで,ヒメダカ等の小型魚類が大型魚類から捕食さ
れる捕食防御本能があり危険を感知すると群れで固まる生態本能から低濃度の毒性
でも危険を感じて群れで固まる性質を利用し,希釈された低濃度の毒性でも検出す
ることができる」(本件明細書の【0008】)という効果を奏する点に本質がある
ところ,ビデオカメラの撮像素子として「CCD」を用いるか「CMOS」を用い
るかによって,上記の効果の有無に対して何らの影響も生じない。
すなわち,撮像素子の相違は,「小型魚類が群れで固まる状態を検知する」ための
画像処理に影響を与えるものではなく,本件発明1の本質的部分ではない。
(2)置換可能性
本件発明1における「CCDビデオカメラ」を「CMOSビデオカメラ」に置き
換えても,上記(1)のとおり,画像処理に影響を与えるものではなく,「映像から画
像処理によって小型魚類が群れで固まる状態を検知すること」ができ,ヒメダカ等
の「低濃度の毒性でも危険を感じて群れで固まる性質を利用し,希釈された低濃度
の毒性でも検出することができる」という,本件発明1と同一の効果を奏する。
(3)置換容易性
ビデオカメラの撮像素子としてCCDに代えてCMOSを用いることは,いずれ
もビデオカメラの撮像素子として汎用されているため,被告製品の製造等の時点に
おいて当業者が容易に想到することができたものである。
(4)被告製品の構成が公知技術から容易に推考されないこと
被告製品は,本件特許出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から
出願時に容易に推考できたものではない。
(5)意識的除外事由など特段の事情はないこと
被告製品が本件特許出願の手続において,特許請求の範囲から意識的に除外され
たものに当たるなどの特段の事情は存しない。
【被告の主張】
否認ないし争う。
2-1争点2-1(被告製品は,本件発明2の各構成要件を文言上充足するか)
について
【原告の主張】
以下のとおり,被告製品は,文言上,本件発明2の各構成要件を充足する。
(1)被告製品の構成
被告製品の構成は別紙「被告製品説明書2」記載のとおりであり,被告製品の構
成を,本件発明2の構成要件に対応させて表現すると,以下のとおりとなる。
aヒメダカを群れで飼育する遊泳槽と,
b前記遊泳槽内に試料水を連続供給する水中ポンプと,
c前記遊泳槽内のヒメダカの動きを外部から撮影するCMOSビデオカメ
ラと,
g1前記CMOSビデオカメラで撮影した映像から画像処理により遊泳槽
全面に25のセンサードット毎に縦横にブロック化した768枡(縦24×横32)
のセンサーブロックを配置し,遊泳槽内のヒメダカが動いて各センサーブロック内
のセンサードットに触れるとセンサーブロックが計数される仕組みのアルゴリズム
において,
g2計数されたセンサーブロック数が所定時間連続して予め設定した設定
ブロック数以下である時に試料水への低濃度有害物質の混入と判定する画像処理手
段と,
e前記画像処理手段で試料水への低濃度有毒物質の混入と判定すると警報
を表示する表示手段と,
fを備えることを特徴とする水質自動監視装置。
(2)構成要件AないしC,E及びFの充足性
前記1-1【原告の主張】のとおり,被告製品の構成aないしc,e及びfは,
それぞれ,構成要件AないしC,E及びFを充足する。
(3)構成要件G1の充足性
被告製品の取扱説明書によれば,被告製品においても,監視水槽内を所定数(2
5個)のセンサードットごとにブロック化してセンサーブロックとし,ヒメダカが
動いてセンサードットをヒメダカの体の輪郭がふさいだり開放したりするとセンサ
ーブロックを計数する仕組みのアルゴリズムが用いられている。
したがって,被告製品の構成g1は,構成要件G1を充足する。
(4)構成要件G2の充足性
ア構成要件G2の解釈
構成要件G2は,単に一瞬のセンサーブロック数の減少を比較するものではなく,
「所定時間連続して」として,一定時間の継続的な状態を捉えるものである。そも
そも,メダカの行動としては一般的に集合行動,生殖行動,たたかい行動,なわば
り行動,食餌行動といった行動が存在し,いずれの行動においても,メダカは動い
て(游泳して)いるのであり,所定時間連続して同じ場所にとどまる(動きが緩慢
となる)ことはなく,ヒメダカが毒物を検知して動作が緩慢になる(活動量が低下
する)のは,死亡に至る前しか発生しない現象である。そうすると,ヒメダカの動
作状態を検知するセンサーブロックが「所定時間連続して」減少することは,死亡
(停止行動)に至る前に活動量が低下する場合を除いては,群れで固まる状態より
他に存在しない。
また,本件明細書の【0042】,新聞記事(甲14)及び「東京都水道局工場
検査記録」(甲15)によれば,本件発明2は,「群れで固まる状態を検知する」も
のであることから,ヒメダカが1匹も死亡に至ることなく,極めて低濃度の毒物を
検知している。
そして,本件明細書の【0042】ないし【0052】,【0056】及び【00
57】によれば,本件発明2は,構成要件G2の構成を採用することにより,ヒメ
ダカが動いてセンサードットに触れたセンサーブロックを検知してそのブロック数
を計数し,所定時間連続して(例えば,注意1であれば30秒),あらかじめ設定し
たブロック数以下(例えば,注意1であれば10個)である時に,小型魚類が群れ
で固まる状態であると検知し,低濃度有毒物質の混入と判定するものであると解さ
れる。
イ被告製品へのあてはめ
被告製品の取扱説明書によれば,被告製品においても,被告の主観はともかく,
客観的には,ヒメダカが動いてセンサードットに触れたセンサーブロックを検知し
て計数し,計数されたブロック数が所定時間連続してあらかじめ設定したブロック
数以下である時,例えば3分平均のブロック数が,24時間平均の50%以下の場
合を検知することで,水質注意の警報を発することとし,結果としてヒメダカが群
れで固まる状態を検知している。
そして,3分間の検知ブロックの平均値が24時間平均の50%以下になるなど
ということは,死亡(停止行動)に至る前に活動量が低下する場合を除いては,群
れで固まる状態より他に存在しない。
このように,被告製品は,ヒメダカが死亡に至る前の活動量の低下ではなく,ヒ
メダカが1匹も死亡に至ることなく,極めて低濃度(シアン化カリウム0.02m
g/L)の毒物が検知できるようにセンサードットに触れたセンサーブロックを検
知して計数できるようにされている。
また,被告製品は,ヒメダカの動作状態のみならず,存在状態も検知し,ヒメダ
カの個体数の減少についても警報を発信するようにしている。このように,魚の生
存数(ないしは死亡数)を検知する以上,死亡に至る手前の活動量の低下をわざわ
ざ個別に検知することは,被告製品において予定されていない。また,被告製品で
は,動作状態について,狂奔行動(狂乱)を検知しているのであるから,それとは
別に死亡に至る手前の活動量の検知をする必要はなく,被告製品における活動量低
下の検知は,ヒメダカが死亡に至らない「群れで固まる状態」を検知するためのも
のである。
したがって,被告製品の構成g2は,構成要件G2を充足する。
【被告の主張】
以下のとおり,被告製品は,本件発明2の各構成要件を文言上充足するものでは
ない。
(1)構成要件G2の解釈
「小型魚類が群れで固まる状態を検知する」は,前記1-1【被告の主張】のと
おり,「監視水槽における小型魚類の局在状態を検知すること」という意味に解釈す
べきである。
(2)被告製品へのあてはめ
被告は,平成13年頃からヒメダカの活動量等を検知することにより水源施設へ
の毒物混入等を監視するシステムの開発に取り組み,当該システムを製品化した自
動水質監視装置を,各市町村の浄水場等へ納品してきた。そして,ヒメダカの活動
量等を検知する方法が,ヒメダカの動作状態の検知である。その後,被告は,OE
CDテストガイドライン203に沿う形で,ヒメダカの個体数も把握すべく,新た
なファクターとして,ヒメダカの存在状態の検知という方法をも開発した。このよ
うに,被告製品は,活動量の低下と個体数の両面から水質異常を把握しようとする
ものである。
この点,有毒な化学物資の影響により,ヒメダカの活動量の低下が現れるため(魚
の衰弱),その活動量の低下を把握することにより水質異常を検知すべく水質自動監
視装置が開発されてきたのであり,ヒメダカの活動量の低下と群れで固まることと
は,別次元の現象である。
したがって,被告製品は,「小型魚類が群れで固まる状態を検知」しておらず,ま
た,検知できるものではなく,構成要件G2を充足しない。
2-2争点2-2(被告製品は,本件発明2と均等なものとして,その技術的
範囲に属するか)について
【原告の主張】
仮に,被告製品が本件発明2の「CCDビデオカメラ」(構成要件C)を文言上充
足しなかったとしても,前記1-2【原告の主張】のとおり,被告製品は,本件発
明2と均等なものとして,その技術的範囲に属する。
【被告の主張】
否認ないし争う。
3-1争点3-1(乙11公報,乙12公報及び乙13論文に基づく新規性欠
如)について
【被告の主張】
構成要件Dの「小型魚類が群れで固まる状態を検知する」について,原告の解釈
を前提とした場合,以下のとおり,本件発明1は,本件特許出願前に頒布された特
開2002-257815号公報(以下「乙11公報」という。)に記載された発明
(以下「乙11発明」という。),特開2003-139764号公報(以下「乙1
2公報」という。)に記載された発明(以下「乙12発明」という。)及び平成19
年11月刊行の「水環境学会誌」30巻11号39頁ないし44頁掲載の論文(以
下「乙13論文」という。)に記載された技術(以下「乙13技術」という。)と実
質的に同一であり,新規性を欠き,本件特許1は特許無効審判により無効とされる
べきものである。
(1)乙11発明,乙12発明及び乙13技術
乙11公報の【図3】,【0027】,【請求項8】及び【0033】の記載,乙1
2公報の【図3】,【0040】及び【0046】の記載並びに乙13論文の「2.
2.3画像解析方法」の記載によれば,乙11公報及び乙12公報において,ヒメ
ダカが触れているセンサーブロック数があらかじめ設定したブロック数以下の場合
を検知することにより,試料水への毒物混入と判定して警報を表示するという技術
が採用されており,また,乙13論文においても,同技術は公知技術であったとい
える。
(2)本件発明1との対比
本件発明1の構成要件Dについて,原告の解釈を前提とした場合,本件発明1の
要旨は,「画像処理により監視水槽内を所定のセンサードットごとにブロック化し,
ヒメダカが触れているセンサーブロック数があらかじめ設定したブロック数以下の
場合を検知する」ことにより,試料水への毒物混入と判定して警報を表示する水質
自動監視装置となるところ,試料水への毒物混入と判定して警報を表示する水質自
動監視装置は,公知技術であって,新規性を欠く。
【原告の主張】
(1)乙11発明及び乙12発明は,監視魚類の異常行動として鼻上げ行動,狂
奔行動,忌避行動,横転行動を開示するとともに(乙11公報の【0003】,乙1
2公報の【0003】),上記異常行動の誤認を防ぐために,上流側の魚類数の減少,
すなわち,弱ったり死亡(停止行動)したりする現象のみを検知して水質異常を検
知するものである(乙11公報の【請求項2】,【0018】,乙12公報の【請求項
2】,【0026】)。そして,乙11公報の【請求項1】及び乙12公報の【請求項
1】には「健全な生活行動パターンから外れた行動」との記載があるものの,ヒメ
ダカが群れで固まる性質については,記載も示唆もない。
したがって,乙11公報及び乙12公報には,本件発明1の構成要件Dにおける,
「画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態を検知する」との構成に相当する
構成の記載はない。
(2)乙13技術は,毒性物質のダメージに基づくヒメダカの活動量の低下によ
り,水質異常を検知するものであり,ブロック数で検知しているのはヒメダカの活
動量の低下である。そして,乙13技術にいう活動量の低下とは,停止行動(死亡)
に至る状態であり,160mg/L(160ppm)という高濃度のLASを用い
た結果,40分を超えた頃には10匹のヒメダカ(乙13論文の40頁右欄の「2)
試験魚:・・・ヒメダカ10個体を選別して監視水槽に入れた」との記載)が全て
死亡したと認められる(乙13論文のFig.3,Case-3)。
これに対し,本件発明1においては,0.02mg/L(0.02ppm)とい
う極めて低い濃度のシアン化カリウムが用いられ,ヒメダカが1匹も死亡していな
いにもかかわらず,検知することが可能であり,異常警報が発せられている(本件
明細書の【0042】,【表1】,【0048】)。
したがって,乙13技術は,ヒメダカの活動量の低下(停止行動に至る前)をブ
ロック数の減少により検知しているにすぎず,本件発明1の構成要件Dにおける「群
れで固まる状態」を検知するものではなく,乙13論文には,本件発明1の構成要
件Dにおける,「画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態を検知する」との構
成に相当する構成の記載はない。
3-2争点3-2(乙6公報,乙7公報,乙8公報,乙14公報又は乙15論
文を主引例とする進歩性欠如)について
【被告の主張】
仮に,本件発明1の要旨を,画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態を検
知することで試料水への低濃度有毒物質の混入と判定して警報を表示する水質自動
監視装置であると認定したとしても,以下のとおり,本件発明1は,当業者が,本
件特許出願前に頒布された特開2002-350423号公報(以下「乙6公報」
という。)に記載された発明(以下「乙6発明」という。),特開2002-3110
15号公報(以下「乙7公報」という。)に記載された発明(以下「乙7発明」とい
う。),特開2008-134119号公報(以下「乙8公報」という。)に記載され
た発明(以下「乙8発明」という。),特開昭63-169559号公報(以下「乙
14公報」という。)に記載された発明(以下「乙14発明」という。)又は平成1
8年2月刊行の「資源環境対策」42巻2号81頁ないし85頁掲載の論文(以下
「乙15論文」という。)に記載された技術(以下「乙15技術」という。)に基づ
いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明1は進歩
性を欠き,本件特許1は特許無効審判により無効にされるべきものである。
(1)乙6発明,乙7発明,乙8発明,乙14発明及び乙15技術
乙6公報,乙7公報,乙8公報,乙14公報及び乙15論文によれば,水質検査
において,メダカ等の小型魚類を用いてその水槽に被検水を導入し,撮影されたメ
ダカ等の小型魚類の画像を解析し,化学物質に曝露されたメダカ等の小型魚類に現
れる様々な異常行動を被検水の異常として検知する水質監視装置は,公知技術とし
て既に存在していた。
(2)本件発明1との対比及び容易想到性
本件発明1の要旨は,画像処理により小型魚類が群れで固まる状態を検知するこ
とで試料水への低濃度有毒物質の混入と判定して警報を表示する水質自動監視装置
である。
この点,被検水に急性毒物が含まれた場合,ヒメダカがどのような異常行動をと
るかは,急性毒物の種類によって種々存しており(鼻上行動,狂奔行動,忌避行動,
横転行動,停止行動等),群れで固まる性質も,特殊かどうかは別として,異常行動
という広義の概念の一つであるにすぎない。乙6発明は,そうした異常行動が種々
存することを前提に,異常行動パターンを定義することなく,魚類の異常行動を判
別しようとする発明であるから,正常行動とは異なるという意味で,群れで固まる
状態も検知して,被検水の異常を検知しているといえ,そうした意味で,本件発明
1と公知技術との間には,何ら相違点が見いだせない。
したがって,本件発明1は,当業者が特許出願時における技術水準から容易に考
え出すことのできるものである。
【原告の主張】
否認ないし争う。
3-3争点3-3(乙16公報に基づく新規性欠如)について
【被告の主張】
以下のとおり,本件発明1は,本件特許出願前に頒布された特開2007-85
828号公報(以下「乙16公報」という。)に記載された発明(以下「乙16発明」
という。)と実質的に同一であり,新規性を欠き,本件特許1は特許無効審判により
無効とされるべきものである。
(1)乙16発明
乙16公報には,以下の発明(乙16発明)が記載されている。
a複数のメダカ等の水生生物を浮遊させた水槽と(【0028】),
b水槽内に検水を一定の流量にて連続導入する手段と(【0013】,【00
28】),
c水生生物の分布や挙動を撮像するCCDカメラ等の撮像手段と(【002
8】),
dCCDカメラ等の撮像手段で撮像された水生生物の分布や挙動は,水質
判断手段内に映像信号として取り込まれ(【0028】),水生生物が集まって群を形
成したときには(【請求項10】,【0034】),低濃度の毒性を検出したと判断し(【0
038】,【0039】),
e警報信号を発信する手段と(【0038】,【0039】),
fを備えた水質監視装置。
(2)本件発明1と乙16発明との対比
乙16公報の【0034】及び【0039】には,フェーズ1において,警報信
号を発することにより,低濃度の毒性であっても,それを検出することが可能であ
ることが示されているが,フェーズ1において,警報信号を発するためには,群れ
を形成したかどうか,つまり,群れで固まっている状態かどうかを検知することに
なるのであるから,乙16発明も群れで固まる状態そのものを検知するものである。
また,ヒメダカ等の小型魚類に,捕食防御本能があるとしても,低濃度の毒性で
も捕食防御本能により危険を感じて群れで固まるという性質を有するかは不明であ
り,本件発明1の本質的な構成要件は,「小型魚類が群れで固まる状態を検知するこ
と」であって,乙16発明は,ヒメダカ等の小型魚類の行動をごく初期の段階から
詳細に監視することにより,フェーズ1のような,毒性に発展するおそれがある初
期段階や極めて低濃度の毒性が生じている初期段階において,メダカが集まって群
を形成したことを示しており,本質的には,本件発明1と同一である。
したがって,構成要件Dについて,「監視水槽におけるヒメダカの局在状態を検知
すること」と解釈すべきであるとしても,本件発明1は新規性を欠く。
【原告の主張】
(1)乙16発明の認定について
乙16発明の認定のうち,構成aないしc,e及びfは認め,構成dは否認する。
乙16公報の記載(【請求項22】,【0012】,【0025】,【0033】ないし
【0036】,【図2】,【図3】)によれば,乙16発明は,CCDカメラからの画像
処理により,メダカのセクタごとの活動量を,水流方向に従って把握することによ
り,群れの中心位置(セクタ),密度,偏差,群の崩壊による分散といったメダカの
群行動を把握することにより,水質異常を検知するものである。
それゆえ,乙16公報の【請求項22】における「群れの分布」とは,上記の群
れの中心位置,密度,偏差,分散というものを意味し,群れで固まる状態そのもの
を検知して,有毒物質の混入を判断するとの技術的思想は開示も示唆もされていな
い。
(2)本件発明1と乙16発明との対比について
乙16公報の【0034】における「本試験では先ずフェーズ1にて,セクタ2
にメダカが集まって群を形成した」との記載は,①有毒物質(陰イオン界面活性剤
LAS)の濃度が200ppmと高濃度であること,②活動量が112(乙16公
報の【図4】)であり,乙16公報で開示されている中では最も活発であることから
すれば,ヒメダカの毒物に対する公知の反応である忌避行動であるとしか当業者に
は理解できない。このことは,乙13論文のFig.2の記載及び「LAS流入初期に
は,様々な要因によっても起こりうる一過性の最大ブロック数の増加が若干みられ
た。これは,LASに対するヒメダカの忌避行動と考えられる」との記載(41頁
左欄)によっても支持されている。
また,乙16公報のLAS200ppmは,本件発明1の実施例であるシアン化
カリウム0.02ppmの1万倍もの高濃度であり,本件発明1における「捕食防
御本能で群れが固まる生態本能」(本件明細書の【0051】)とは根本的に異なり,
乙16公報には本件発明1の構成要件Dに相当する構成について記載も示唆もされ
ていない。乙16公報の【0034】のとおり,LAS200ppmは「貯水量7
Lの水槽11に,1L/minの一定流量にて導入した」ものであり,1分後には
約28.6ppmとなっており,5分経過後のフェーズ1では既に相当の高濃度に
なっている。
これに対し,本件発明1における「群れで固まる状態」とは,20時間経過して
もヒメダカが1匹も死なないシアン化カリウム0.02mg/L(0.02ppm)
を導入した場合に,捕食防御本能で群れが固まる生態本能を利用するものである(本
件明細書の【0051】,【0042】,【表2】)。
したがって,乙16公報に記載されているのは公知の忌避行動であり,また,乙
16発明はメダカが群れで固まる状態を検知するのではなく,群れの行動(活動量)
や群れの分布(一群か,分散しているか)等を検知するものであり,乙16公報に
は,本件発明1の構成要件Dにおける,「画像処理によって小型魚類が群れで固まる
状態を検知する」との構成に相当する記載はない。
3-4争点3-4(乙16公報を主引例とする進歩性欠如)について
【被告の主張】
以下のとおり,本件発明1は,当業者が,本件特許出願前に頒布された特開20
07-85828号公報(乙16公報)に記載された発明(乙16発明)に,特開
2002-257815号公報(乙11公報)に記載された発明(乙11発明)及
び特開2003-139764号公報(乙12公報)に記載された発明(乙12発
明)を適用することによって,当業者が容易に発明をすることができたものである
から,本件発明1は進歩性を欠き,本件特許1は特許無効審判により無効にされる
べきものである。
(1)乙16発明
乙16公報には,水生生物の群の分布を監視し(乙16公報の【請求項10】),
水生生物の行動パターンにより検水の水質を判断する(乙16公報の【請求項13】)
ことが記載されている。また,乙16公報には,「水生生物の行動をごく初期の段階
から詳細に監視することにより,急性毒性に対してはもとより,そのような毒性に
発展するおそれがある初期段階や極めて低濃度の毒性が生じている初期段階に対し
ても,適切に水質を判断できるようにした水質監視方法および装置を提供する」(乙
16公報の【0009】)ことも記載されている。さらに,乙16公報には,「CC
Dカメラで水槽全体の映像を撮影すると,本試験では先ずフェーズ1にて,セクタ
2にメダカが集まって群を形成した」(乙16公報の【0034】,【図4】のフェー
ズ1)ことが記載されている。このように,乙16公報には,本件発明1の「小型
魚類が群れで固まる状態を検知」することが記載されている。
(2)本件発明1と乙16発明との対比
ア一致点
乙16発明の構成aないしf(前記3-3【被告の主張】(1))は,それぞれ,本
件発明1の構成要件AないしFに相当する。また,本件発明1と乙16発明は,解
決しようとする課題も効果も同じである。
イ相違点
仮に,構成要件Dについて,「小型魚類を群れで固まる状態を検知」を,「画像処
理により監視水槽内を所定数のセンサードットごとにブロック化し,ヒメダカが触
れているセンサーブロック数があらかじめ設定したブロック数以下の場合を検知す
ること」と解釈すると,乙16発明は,小型魚類を群れで固まる状態を検知する仕
方において,「画像処理により監視水槽内を所定のドットごとにブロック化し,ヒメ
ダカが触れているセンサーブロック数があらかじめ設定したブロック数以下の場合
を検知すること」としていない点で,本件発明1と相違する。
(3)相違点に係る構成の容易想到性
ア想到性について
乙16発明も本件発明1も,解決しようとする課題は,低濃度の毒性でも検出す
ることができる水質監視装置を提供することであり,その解決手段として,低濃度
の毒性の場合にメダカが集まって群れを形成することに着目した点においても,共
通している。
結局,本件発明1と乙16発明の上記の相違点は,メダカが集まって群れを形成
していることをどのように検知するか,その検知方法の違いにすぎない。すなわち,
本件発明1は,低濃度の毒性の場合にメダカが集まって群れを形成することから,
CCDカメラ等の撮像手段で撮像されたメダカの分布や挙動を映像信号として取り
込んで,メダカが集まって群を形成した時には,低濃度の毒性を検出したと判断し
て,警報信号を発する水質監視装置という公知技術(乙16発明)を基礎としなが
ら,具体的にどのような画像処理によってメダカが群れて固まる状態を検知するか
について,CCDビデオカメラ等で撮影した映像から「画像処理により監視水槽内
を所定のセンサードットごとにブロック化し,ヒメダカが触れているセンサーブロ
ック数があらかじめ設定したブロック数以下の場合を検知する」という公知技術の
手法(乙11発明及び乙12発明)を利用したにすぎない。
イ容易性について
本件発明1の課題は,乙16発明の課題と同一である。
ここで,水質検査において,メダカ等の小型魚類を用いてその水槽に被検水を導
入し,撮影されたメダカ等の小型魚類の画像を解析し,化学物質に曝露されたメダ
カ等の小型魚類に現れる様々な異常行動を被検水の異常として検知する水質監視装
置は,乙6発明,乙7発明及び乙8発明のように,公知技術として既に存在してい
た。そして,撮影されたメダカ等の小型魚類の画像を解析する方法としては,乙1
1公報及び乙12公報記載のとおり,画像処理により監視水槽内を所定のセンサー
ドットごとにブロック化し,ヒメダカが触れているセンサーブロック数があらかじ
め設定したブロック数以下の場合を検知するという手法も公知技術として存在して
おり,乙11発明及び乙12発明は,いずれも小型魚類を用いた水質監視装置であ
って,乙16発明と同じ技術分野の公知技術である。
さらに,乙16発明に乙11発明及び乙12発明の画像処理手段の構成を組み合
わせることを困難にする阻害要因も存在しない。
そうすると,乙16発明の画像処理手段に換えて,乙11発明及び乙12発明の
画像処理手段を用いることは,当業者が容易に想到し得ることであり,本件発明1
は,乙16発明,乙11発明及び乙12発明に基づいて当業者が容易に想到できた
といえる。
【原告の主張】
(1)乙16発明の認定について
乙16発明の認定については,前記3-3【原告の主張】(1)のとおりである。
乙16発明は,乙16公報の【0035】記載のとおり,小型魚類が群れで固ま
る状態ではなく,群の行動を検知するものであり,本件発明1とは根本的にその技
術的思想を異にする。
(2)本件発明1と乙16発明との対比について
本件発明1は,画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態を検知することで,
試料水への低濃度毒物の混入と判定するのに対し,乙16発明においては,画像処
理によってメダカのセクタごとの活動量を,水流方向に従って把握することにより,
群れの中心位置(セクタ),密度,偏差,群の崩壊による分散といったメダカの群行
動を把握することにより,水質異常を検知するものであり,この点で両発明は相違
する。
(3)相違点に係る構成の容易想到性について
本件発明1は「小型魚類が大型魚類に捕食される時の危険を感じた時の群れが固
まる捕食防御の生態本能から,低濃度の毒性でも危険を感じて群れで固まる性質を
利用」(本件明細書の【0010】)した結果,従来は検出不可能であった0.02
mg/L(0.02ppm)のシアン化カリウムであっても,警報を発することが
可能となった(本件明細書の【0042】,【表1】,【0044】)。
これに対し,乙16発明においてはLAS200ppmという1万倍もの高濃度
の有毒物質を検知できるにすぎず,メダカの忌避行動に基づくものである(乙16
公報の【0034】の「セクタ2にメダカが集まって群を形成した」との記載,【図
4】における活動量112の記載)。
したがって,乙16公報や被告の提出するその他の証拠には,上記の相違点に対
応する構成は記載も示唆もされていない。
3-5争点3-5(実施可能要件違反)について
【被告の主張】
本件発明1は,画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態を検知することで
試料水への低濃度有毒物質の混入と判定する画像処理手段であることを特徴とする
が,以下のとおり,低濃度有毒物質が混入した場合に,ヒメダカが群れで固まる習
性を有しているどうかは,本件明細書からも不明であり,本件発明1は,いわば未
完成の発明であって,本件明細書は,その発明の属する技術の分野における通常の
知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの
(特許法36条4項1号)とはいえず,無効である。
本件明細書には,「ヒメダカ等の小型魚類は大型魚類から捕食される捕食防御本能
があり危険を感知すると群れで固まる生態本能から低濃度の毒性でも危険を感じて
群れで固まる性質を利用し,・・・小型魚類が群れで固まる状態を検知することで試
料水への低濃度有毒物質の混入と判定するようにしたことを特徴とする」と記載さ
れているが(本件明細書の【0006】),ヒメダカ等の小型魚類が低濃度の毒性で
も危険を感じて群れで固まる性質を,本当に有しているかについては,本件明細書
から明らかでない。
この点,本件明細書の【0051】には,「図14の写真は,本件試験におけるシ
アン化カリウムの0.02mg/Lを監視水槽内のヒメダカ20匹に曝露後のヒメ
ダカ群の動く様子をモニターテレビ画面に映しだした映像である。監視水槽内のヒ
メダカの群れは表1が示すように20時間経過しても1匹も死なないシアン化カリ
ウムの0.02mg/Lの希釈された毒性では捕食防御本能で群れが固まる生態本
能を示す」と記載され,さらに,【0052】では,「図15の写真は,センサーブ
ロックが4個しか表示されていないように,シアン化カリウム0.02mg/Lの
毒性で群れが捕食防御本能で固まり,センサーブロック4個しか表示されていない
ため異常警報の対象である」と記載されており,【図14】及び【図15】では,真
ん中の辺りに,ヒメダカが固まっている写真が掲載されている。
しかしながら,ヒメダカが固まっている真ん中の辺りには排水口があり(本件明
細書の【図2】),ヒメダカが排水口に集まっているだけとも考えられる。すなわち,
被検水に急性毒物が含まれた場合,ヒメダカの異常行動の一つとして,川下や排水
口の付近に逃げるという忌避行動が見られるが,上記の写真を見る限り,監視水槽
の真ん中部分に排水口があるため,単なる忌避行動ではないかと考えられる。
【原告の主張】
本件明細書の【0012】以下には,【実施例1】として具体的な実施例の記載が
あり,かつ,センサーブロック数の検出ブロック数に基づく警報の設定についても
具体的な記載がある(本件明細書の【0043】,【表2】)。
また,効果についても具体的な記載があり(本件明細書の【0042】,【表1】,
【0044】,【0048】),当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ
十分に記載したものといえる。
さらに,ヒメダカの性質についても発明者が本件発明において初めて得た知見で
ある。
加えて,本件明細書の【0042】,【表1】及び【0051】によれば,20時
間経過してもヒメダカが1匹も死亡していない。また,忌避行動については活動量
そのものは低下しないのであり(乙13論文,乙16公報),本件発明1におけるヒ
メダカの性質は,公知の行動であった忌避行動とはその内容を異にする。
4-1争点4-1(乙16公報に基づく新規性欠如)について
【被告の主張】
本件発明2も,本件発明1と同じく,「小型魚類が群れで固まる状態を検知するこ
とで試料水への低濃度有害物質の混入と判定」(構成要件D,構成要件G2)し,警
報を表示する(構成要件E)水質自動監視装置である。ただ,本件発明2は,CC
Dビデオカメラで撮影した映像から画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態
を検知する方法につき,センサーブロック内のセンサードットに触れるとセンサー
ブロックが計数されるという画像処理手段を利用して,小型魚類が群れで固まる状
態を検知すると限定している。
このように,本件発明2は,本件発明1と基本的には同じであり,CCDビデオ
カメラで撮影した映像から画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態を検知す
る方法につき,従前からの公知技術である,上記の画像処理手段を利用するという
限定を加えたものである。したがって,前記3-3【被告の主張】のとおり,本件
発明2は新規性を欠く。
【原告の主張】
本件発明2は,画像処理によって監視水槽全面に所定数のセンサードットごとに
縦横にブロック化した複数のセンサーブロックを配置し,監視水槽内の小型魚類が
動いて各センサーブロック内のセンサードットに触れるとセンサーブロックが計数
されるアルゴリズムを採用し,計数されたセンサーブロックが所定時間連続してあ
らかじめ設定した設定ブロック数以下である時に小型魚類が群れで固まる状態を検
知することで,試料水への低濃度毒物の混入と判定するのに対し,乙16発明にお
いては,画像処理によってメダカのセクタごとの活動量を,水流方向に従って把握
することにより,群れの中心位置(セクタ),密度,偏差,群の崩壊による分散とい
ったメダカの群行動を把握することにより,水質異常を検知するものであり,この
点で両発明は相違する。
そして,前記3-3【原告の主張】のとおり,上記の相違点に係る構成は,乙1
6公報に開示も示唆もない。
4-2争点4-2(乙16公報を主引例とする進歩性欠如)について
【被告の主張】
本件発明2と乙16発明は,メダカが集まって群れを形成していることをどのよ
うに検知するか,その検知方法が異なるにすぎない。しかるに,画像処理により監
視水槽内を所定のセンサードットごとにブロック化し,ヒメダカが触れているセン
サーブロック数があらかじめ設定したブロック数以下の場合を検知するという手法
は,公知技術として既に存在し,乙11公報,乙12公報,乙13論文の「2.2.
3画像解析方法」,特開2004-125753号公報(以下「乙17公報」とい
う。)の【0022】及び【0024】等にも記載されており,さらに,原告が平成
22年に阿久根市水道課に納品した製品の取扱説明書(乙18の2の12頁等)に
も記載されている。そして,乙16発明に上記の発明等の画像処理手段の構成を組
み合わせることを困難にする阻害要因も存在しない。
そうすると,画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態を検知する方法につ
き,本件発明2が上記の画像処理手段を利用することに限定している点を,乙16
発明との相違点と捉えたとしても,乙16発明の画像処理手段に換えて,公知であ
る上記の画像処理手段を用いることは,当業者が容易に想到し得ることであり,本
件発明2は,乙16発明に基づいて当業者が容易に想到できたといえる。
【原告の主張】
(1)乙11発明及び乙12発明は,「監視範囲内の魚類の数を監視して,監視数
が変動したときアラーム信号を出力する」ものであり,乙11公報及び乙12公報
には,本件発明2と乙16発明との相違点に係る構成が開示されていない。
(2)乙13論文には,「画像処理によって監視水槽全面に所定数のセンサードッ
トごとに縦横にブロック化した複数のセンサーブロックを配置し」との構成は開示
されているものの,乙13論文記載の技術(乙13技術)は,LAS160ppm
/Lという高濃度の場合のヒメダカの活動量の低下を検知するものであり,本件発
明2にいうヒメダカの「群れで固まる状態」を検知するものではない。したがって,
乙13論文には,本件発明2と乙16発明との相違点に係る構成が開示されていな
い。
(3)乙17公報の記載(【請求項1】,【0022】ないし【0024】)によれ
ば,同公報に記載された発明(以下「乙17発明」という。)は,「画像処理によっ
て監視水槽全面に所定数のセンサードットごとに縦横にブロック化した複数のセン
サーブロックを配置」してはいるものの,メダカの数の減少及び狂奔行動を検知す
るものであり,本件発明2にいうヒメダカの「群れで固まる状態」を検知するもの
ではない。したがって,乙17公報には,本件発明2と乙16発明との相違点に係
る構成が開示されていない。
(4)平成22年9月頃の原告の製品の説明書(乙18の2)の記載(21頁)
によれば,同製品は,本件発明の完成前の製品であり,死亡に至るメダカの活動量
の低下を検知するものにすぎない。したがって,同製品は,本件発明2にいうヒメ
ダカの「群れで固まる状態」を検知するものではなく,同説明書には,本件発明2
と乙16発明との相違点に係る構成が開示されていない。
5争点5(原告の損害額)について
【原告の主張】
被告は,平成24年10月16日から平成27年10月16日までに,被告製品
を10台販売し,1台当たり150万円,合計1500万円の利益を得た。したが
って,原告の被った損害は1500万円である(特許法102条2項)。
また,本件訴訟は,特許法に基づく専門的な事件であり,自ら訴訟を提起するこ
とが困難であり,法律専門家である弁護士に依頼しなければ解決が困難な事案であ
ることなどを勘案すれば,被告の特許権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用
の損害額は150万円を下らない。
そして,これらの合計額1650万円に対応する消費税額は,訴訟提起時点にお
いては132万円である。なお,無体財産権の侵害を受けた場合に権利者が収受す
る損害賠償金は消費税の課税対象となる。
したがって,原告の被った損害の合計額は,1782万円である。
【被告の主張】
否認ないし争う。
第4当裁判所の判断
当裁判所は,以下のとおり,争点1-1及び争点2-1について,被告製品は,
少なくとも構成要件D及びG2を充足せず,本件発明1及び2の技術的範囲に属す
ると認めることはできないと判断する。
1構成要件D及びG2の意義
(1)本件明細書の記載
本件明細書の【発明の詳細な説明】には,以下の記載がある(甲2)。
ア技術分野及び発明が解決しようとする課題
本件発明は,「河川水や湖沼水,地下水,湧水,排水などのあらゆる水に有害物質
が含有したとき,ヒメダカなどの小型魚類を監視水槽に常時飼育しヒメダカ等の小
型魚類の動きを画像処理により検知し自動で警報を発報する装置」に関するもので
ある(【0001】)。
「従来の魚類を監視水槽に飼育して水質を自動で監視をする装置」において,「有
毒物質に反応する魚類の異常行動としては,従来,急性毒物のシアン系のシアン化
カリウムに対しては魚類の呼吸器官が損傷を受けるため水面上に浮き上がって空気
呼吸をする鼻上行動と言われる行動や農薬の殺虫剤でフェニトロチオンなどでは神
経系の器官に損傷を受けるため水の中を狂奔する狂奔行動や死んで底部に沈む停止
行動など」に基づいて警報が発せられていたが,「これらの行動はいずれも有毒物
質の濃度が高く魚類が毒性に身体的損傷を受けた結果の行動であ」り,「毒性の濃
度が高い場合は監視魚類の身体の損傷による反応でこれらの装置は検出できたが」,
これに対し,「稀釈された薄い毒性に対しては異常行動は現れず」,「毒性濃度の
薄いものでは身体の損傷が軽く判定が難しく,無理に警報を出そうとすれば正常行
動との違いが余りなく誤判定による誤発報を出していた」という問題があった(【0
004】,【0010】)。
そこで,本件発明の「解決しようとする課題は,希釈された低濃度の毒性でも検
出することができる水質自動監視装置における低濃度毒性検知方法及び水質自動監
視装置を提供することにある」(【0005】)。
イ発明の効果
本件発明では,「監視水槽の外側に設置したCCDビデオカメラで監視水槽内の
小型魚類の動きを撮影し,この映像から画像処理によって小型魚類が群れで固まる
状態を検知することで,ヒメダカ等の小型魚類が大型魚類から捕食される捕食防御
本能があり危険を感知すると群れで固まる生態本能から低濃度の毒性でも危険を感
じて群れで固まる性質を利用し,希釈された低濃度の毒性でも検出することができ
るようになるという効果が得られる」(【0008】)。また,本件発明によれば,
「小型魚類が大型魚類に捕食される時の危険を感じた時の群れが固まる捕食防御の
生態本能から,低濃度の毒性でも危険を感じて群れで固まる性質を利用することで
希釈された低濃度の毒性でも検出し,警報を発報することが可能になる」(【00
10】)。
ウ発明を実施するための形態
実施例1では,「シアン化カリウムの0.02mg/Lを監視水槽内のヒメダカ2
0匹に曝露」することとされ,「シアン化カリウムの0.02mg/Lは水道法(厚
生労働省所管の水道法)によるシアン化カリウムの許容量0.01mg/Lの1段
上の危険と認定された濃度であり0.02mg/Lで検出できるのは,従来は試薬
を使った化学分析法でバイオアッセイ法では検出できなかった」(【0044】)。
画像処理部Fでは,「CCDビデオカメラ18で撮影した映像を・・・0.5秒間
隔で順次取り込み,取り込まれた各映像をそれぞれ画像処理によって監視水槽4全
面に総数3584個設定されたセンサードットsを64個のセンサードット毎に分
割したセンサーブロックSを縦横に配置し,監視水槽4内のヒメダカ11が動いて
各センサーブロックS内のセンサードットsに触れるとセンサーブロックSを計数
し,計数されたセンサーブロック数が,タイマー制御部Hにより予め設定した検知
時間(「異常」用は75秒,「注意3」用は60秒,「注意2」用は45秒,「注
意1」用は30秒)連続して,予め設定した設定ブロック数(「異常」用は4,「注
意3」用は6,「注意2」用は8,「注意1」用は10)以下である時に試料水へ
の低濃度有害物質の混入を検知する」(【0032】,【0033】)。なお,「各
警報は計数されたセンサーブロックの設定ブロック数と検知時間の設定が自由にで
きる」(【0047】)。
「画像処理部Fは,CCDビデオカメラ18で撮影した映像から画像処理によっ
てヒメダカ11が群れで固まる状態をセンサードットsで検知するもので,CCD
ビデオカメラ18で撮影した映像から画像処理により監視水槽4全面に所定数のセ
ンサードットs毎に縦横にブロック化した複数のセンサーブロックSを配置し,監
視水槽4内のヒメダカ11が動いて各センサーブロックS内のセンサードットsに
触れるとセンサーブロックSが計数される仕組みのアルゴリズムにおいて,計数さ
れたセンサーブロック数が予め設定した設定ブロック数以下である時に試料水への
低濃度有害物質の混入と判定するようにした。これにより,ヒメダカ11が群れで
固まる状態を容易かつ確実に検知することができる」(【0056】)。
「1回の検知でセンサーブロックSの計数が設定ブロック数(「異常」用は4,
「注意3」用は6,「注意2」用は8,「注意1」用は10)以下と判定しても,
ヒメダカ11は常に動いているため,一瞬だけかもしれないし,また,大きな音や
振動で驚いて瞬間的に設定ブロック数以下になることもある。そのための確認機能
としてタイマー制御部Hで,検知時間(「異常」用は75秒,「注意3」用は60
秒,「注意2」用は45秒,「注意1」用は30秒)を設定し,この検知時間連続
してセンサーブロックSの計数が設定ブロック数以下となった場合に異常状態また
は注意状態を検出して警報を発報する。・・・なお,注意警報の段階,設定ブロッ
ク数,検知時間等は,状況に応じて任意に設定することができる」(【0058】)。
「シアン化カリウムの0.02mg/Lを監視水槽内のヒメダカ20匹に曝露し
た時の警報の発報経過を試験した表」によれば,「20時間まで経過しても1匹も
死んでいないこと」,「1時間後には注意1が発報し,2時間後には注意2が発報
し,7時間後には注意3が発報し,11時間後には重大警報の異常が発報している
こと」が分かる(【0044】,【0048】)。「監視水槽内のヒメダカの群れ
は表1が示すように20時間経過しても1匹も死なないシアン化カリウムの0.0
2mg/Lの希釈された毒性では捕食防御本能で群れが固まる生態本能を示す」
(【0051】)。
(2)本件特許出願の経過
後掲証拠によれば,本件特許出願の経過として,次の事実が認められる。
ア特許庁審査官は,平成22年12月2日付けで,本件特許出願の当初明
細書に記載された発明は,特開2002-350423号公報(乙6),特開20
02-311015号公報(乙7)及び特開2008-134119号公報(乙8)
に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたなどとする旨
の拒絶理由通知(乙4)を発し,その中で,「水質検査において,メダカを用いて
その水槽に被検水を導入し,撮影された画像から行動パターンを解析し,異常行動
を被検水の異常として検知する方法は文献1~3(判決注:乙6ないし8)に記載
のようによく知られているところ,本願発明の「群れで固まる」ことも,この異常
行動の一つである」,「魚群の行動パターンの解析において,マトリックス状の検
知情報を利用することは文献2(判決注:乙7)に記載されており,センサーブロ
ックを用いた画像処理を行うことは当業者が容易に想到するものである」と指摘し
た。
イこれに対し,原告は,特許庁審査官に対し,平成23年2月1日,意見
書(乙5)を提出し,また,併せて手続補正書を提出し,上記意見書の中で,「引
用文献1~3(判決注:乙6ないし8)のいずれにも,・・・(1)ヒメダカ等の小
型魚類は大型魚類から捕食される捕食防御本能があり危険を感知すると群れで固ま
る生態本能から低濃度の毒性でも危険を感じて群れで固まる性質があることを見出
した点(2)低濃度の毒性でも危険を感じて群れで固まる性質を利用し,CCDビ
デオカメラで小型魚類の動きを撮影した映像から画像処理によって小型魚類が群れ
で固まる状態を検知することで,希釈された低濃度の毒性でも検出可能とした点
については何ら開示されておらず,しかも,それを示唆する記載も見あたらない」,
「「低濃度の毒性でも危険を感じて群れで固まる」という従来知られていない特殊
な異常行動については引用文献1~3のいずれにも開示されていないだけでなく,
その異常行動を利用して希釈された低濃度の毒性を検出することが可能である点に
ついても何ら開示されてない以上,引用文献1~3に基づいて容易に発明をするこ
とができたものと認定するには無理がある」と指摘した。
(3)公知技術の内容
ア乙13論文の記載
本件特許出願前である平成19年に刊行された乙13論文は,「ヒメダカの活動低
下に着目した画像解析による水質異常検知特性」と題するものであり,同論文には
以下の記載がある。
「1.はじめに
・・・本研究では,ヒメダカを用いた水質異常の検知特性について,毒性物質に
よる影響を直接的に反映する方法としてヒメダカの活動低下に着目し,活動量の時
間的変化を画像解析を用いて定量化する方法を考案するとともに,活動量の低下に
基づく警報の発信条件とその信頼性について検討した。」(40頁左欄)
「2.2実験方法
2.2.1曝露条件
1)対象物質:生態毒性が知られた比較的ポピュラーな環境水中汚染物質の混入
を想定し,ヒメダカ行動の変化による水質異常の検知性能を調べることとした。具
体的には,・・・有機物として直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LA
S)・・・を用いて検討した。・・・
2)試験魚:・・・一般の急性毒性試験を参考にして,あらかじめ蓄養水槽で異
常がないことを確認したヒメダカ10個体を選別して監視水槽に入れた。なお,ヒ
メダカは魚齢6ヶ月から1年のもの(体長20~25㎜)を使用した。」(40頁左
欄,同右欄)
「2.2.3画像解析方法
Fig.1に示した監視システムでは,水槽を縦7列×横8列の56ブロック(1ブ
ロックは35mm×45mm)に分割し,連続検出器によって各ブロックの画像を2s
ごとに撮影して,ヒメダカの存否に変化が生じたブロック数を経時的に計数できる
ようにした。さらに,これらの経時変化のパターンを解析するプログラムを作成し
て活動低下を判断し,適切な警報を発信できるようにした。」(40頁右欄)
「2.2.4警報レベルの設定
・・・ヒメダカの存否の発生によって計数されるブロック数は,ヒメダカが活発
に遊泳するほど多くなり,逆に化学物質の影響等で活動が減少すると少なくなる。
そこで,所定の時間間隔で計数されるブロック数が一定値を下回る活動低下状態が
一定時間を超えて継続した場合に水質異常を検知したものとみなし,警報を発信す
ることとした。」(40頁右欄)
「3結果と考察
3.1監視水槽内濃度の確認
・・・Fig.2にLASの例を示すように,貯留水槽から200mg・l-1
の検水の供
給を開始した後に監視水槽内での試験物質の濃度は,徐々に上昇したが,水の入替
開始から20min後以降は160mg・l-1
で安定していた。」(41頁左欄)
「3.2ヒメダカの行動変化に伴う計数ブロック数の変化
・・・画像処理により分割した水槽内の56ブロックごとに,ヒメダカの存否を
2sごとに連続的に計数した。・・・ブロック内での存否を画像処理してヒメダカの
活動を定量化するためには,数十秒から数分単位の一定時間にわたって存否の変化
を連続的に計数し,最大ブロックカウント数(以下,最大ブロック数という。)によ
って評価することが妥当であると考えられた。・・・まずは30s間ごとの最大ブロ
ック数として整理することとした。その変化をLAS濃度および目視により計数し
た活動ヒメダカ数と合わせてFig.2に示す。LAS流入初期には,様々な要因によ
っても起こりうる一過性の最大ブロック数の増加が若干みられた。これは,LAS
に対するヒメダカの忌避行動と考えられる。しかし,その後の時間経過により水槽
内のLAS濃度が上がるにつれて,計数される最大ブロック数は次第に低下し,同
時に,実際に活動しているヒメダカ数が確実に減少している様子も目視によって観
察された。また,最大ブロック数が3以下となる条件では,画像解析による最大ブ
ロック数と目視による活動ヒメダカ数がほぼ一致したが,このとき,同一ブロック
内に留まったままでカウントされないものも観察された。これらの結果から,一定
時間内での活動が検知された最大ブロック数を画像解析により数値化することで,
混入した毒性物質のダメージに基づくヒメダカの活動低下の程度を定量的に把握可
能であることが確認できた。」(41頁左欄)
「4.まとめ
本研究では,ヒメダカを使った画像解析による水質連続監視において,事故や装
置運転トラブル等による水源や排水等の水質異常を想定した応答試験を行い,以下
の知見を得た。
1)一定時間内にヒメダカの存否に変化がみられたブロックの最大数を計数する
ことで,毒性物質が混入した際のヒメダカ活動低下の経時変化を的確に把握できる
ことが確かめられた。
2)ヒメダカ活動低下のモニタリングにより,従来行われている初期行動異常の
モニタリングに比べて,水質異常の警報発信時間はやや遅れるが,実用可能な比較
的短時間の範囲内で警報発信が可能であることが確かめられた。
3)最大ブロック数とその継続時間を適切に設定することで,従来方法に比べ誤
警報の少ない警報発信と警報レベルの進行の予見が可能であることが示された。
4)低濃度になると初期警報発信時期が急激に遅くなり,汚染物質の検知が困難
になる一方で,ある濃度以上であっても初期警報発信までに最小限の遅れ時間を要
することが示された。
5)代表的な汚染物質について,各濃度での警報レベルの経時的な変化が明らか
になった。」(44頁右欄)
イ乙15論文の記載
本件特許出願前の平成18年に刊行された乙15論文は,「魚類(メダカ)の行動
を用いた水質監視装置」と題するものであり,同論文には以下の記載がある。
「1.開発背景および目的
・・・当社は,化学物質にばく露された魚が死亡に至る前に予兆として現われる
さまざまな異常行動を研究するとともに,その異常行動を検出することにより,早
期に水質異常を判定することを目的として,水質監視装置を開発した。」(81頁右
欄)
「4.異常行動の判定
・・・シアン化カリウム,フェノール,重金属,殺虫剤,除草剤など種々の有毒
化学物質を用いた毒性試験やメダカの行動・生態の基礎研究を行うことにより,化
学物質によるメダカの行動への影響をより正確に把握することが可能となった。」
(83頁右欄)
「(1)行動範囲減少
・・・有毒化学物質のばく露によって魚が急性毒性を示すと,さまざまな異常行
動が観察できるが,中でも行動範囲の減少(魚の衰弱)はよく検出できる。
・・・さらに行動範囲減少は,次に示すいくつかの異常行動の前兆としても考え
られている。シアン化カリウム(5mg/L;シアン濃度1.25mg/L)にばく露された
メダカにおいて,ばく露19分後行動範囲減少が観察された・・・。」(83頁右欄)
「(2)鼻上げ行動
化学物質のばく露により魚の呼吸器官への影響が現われ,水面下に行動範囲が集
中し,直接空気を取り込もうとする行動をいう。」(83頁右欄,84頁左欄)
「(3)急速行動
高濃度の有毒化学物質のばく露による狂奔・錯乱行動であり,遊泳速度の激しい
変化を引き起こす。・・・シアン化カリウム(10mg/:シアン濃度4mg/L)にばく露
されたメダカにおいて,ばく露30分後に遊泳速度の異常の増加が観察され,急速
行動が検出された・・・。」(84頁左欄,同右欄)
「(4)沈下行動
鼻上げ行動や急速行動に続く異常行動である。急激な疲へいを引き起こし,魚が
自分の意思で泳げなくなり,浮上しては沈む行動を繰り返す状態を示す。」(84頁
右欄)
「(5)死亡(遊泳停止)
有毒化学物質にばく露された魚がさまざまな異常行動を呈し,最終的に死に至
る。」(84頁右欄)
(4)以上に基づき検討する。
ア前記の本件明細書の記載によれば,本件発明は,①従来の魚類を監視水
槽に飼育して水質を自動で監視する装置においては,鼻上行動,狂奔行動,停止行
動などに基づいて警報を発していたが,これらの行動はいずれも有毒物質の濃度が
高く魚類が毒性に身体的損傷を受けた結果の行動であったため,希釈された薄い毒
性に対しては異常行動は現れないという課題があった(【0004】)ことから,②
ヒメダカ等の小型魚類が生態本能から低濃度の毒性でも危険を感じて群れで固まる
性質を利用し,監視水槽の外側に設置したCCDビデオカメラで監視水槽内の小型
魚類の動きを撮影し,この映像から画像処理によって小型魚類が群れで固まる状態
を検知することで試料水への低濃度有毒物質の混入と判定するようにした(【000
8】)ものであると認められ,このことは,前記本件特許出願の経過を見ても同様で
ある。
そして,本件明細書では,低濃度有毒物質の混入として,シアン化カリウム0.
02mg/L等の低濃度の毒性が想定されており,これは,水道法によるシアン化
カリウムの許容量の1段上の危険と認定された濃度であり(【0044】),この
濃度の下では,実施例1においてヒメダカは20匹のままで1匹も死んでおらず,
本件発明は,このような希釈された毒性の下で,捕食防御本能から群れが固まる生
態本能を利用したものである(【0051】)。
イ本件発明2について
(ア)本件発明2では,CCDビデオカメラの撮影映像から画像処理によっ
て小型魚類が群れで固まる状態を検知する具体的方法として,「CCDビデオカメラ
で撮影した映像から画像処理により監視水槽全面に所定数のセンサードット毎に縦
横にブロック化した複数のセンサーブロックを配置し,監視水槽内の小型魚類が動
いて各センサーブロック内のセンサードットに触れるとセンサーブロックが計数さ
れる仕組みのアルゴリズム」(構成要件G1)を前提として,「計数されたセンサ
ーブロック数が所定時間連続して予め設定した設定ブロック数以下である時に小型
魚類が群れで固まる状態を検知する」(構成要件G2)とされており,これは,本
件明細書における実施例1に対応するものである。そして,「小型魚類が動いて・・・
センサードットに触れるとセンサーブロックが計数される」ことから,構成要件G
1及びG2は,ヒメダカの動き(活動量,いわば動作状態)を検知するものである
と解される。実際,本件明細書の【図13】及び【図15】を見ると,監視水槽に
64個のセンサードットから成る56個のセンサーブロック(総数3584個÷6
4個)が縦横に配置され,1つのセンサーブロックの大きさが,1匹のヒメダカの
大きさよりも大きく,その中に複数のヒメダカを包摂し得るものであるため,ヒメ
ダカが分散しているよりも群れで固まっている方が,ヒメダカが動いて触れるブロ
ック数が少なくなり,活動量が低下することから,これをもって,ヒメダカが群れ
で固まる状態を検知するものとしていると認められる。
(イ)もっとも,本件発明2の技術的意義を検討するには,さらに公知技術
との関係を検討することが必要である。
a前記のとおり,乙13論文の実験では,水質異常を検知するに当た
りヒメダカの活動量の低下に着目し,具体的には,監視水槽を縦横56ブロック(1
ブロックは35mm×45mm)に分割し,監視水槽の上方に設けたCCDカメラで各
ブロックの画像を2sごとに撮影して,ヒメダカの存否に変化が生じたブロック数
を経時的に計数できるようにし,計数されるブロック数は,化学物質の影響等でヒ
メダカの活動が減少すると少なくなることから,所定の時間間隔で計数されるブロ
ック数が一定値を下回る活動低下状態が一定時間を超えて継続した場合に警報を発
信することとしており(2.2.3及び2.2.4),同実験はヒメダカの活動量を
検知していると認められる。
そうすると,乙13論文記載の技術(乙13技術)においても,本件発明と同様
に,ヒメダカが動いてヒメダカの存否に変化が生じたセンサーブロックを計数し,
係数されたセンサーブロック数が所定時間連続してあらかじめ設定した設定ブロッ
ク数以下である時に,活動減少と判定しており,縦横に配置されるセンサーブロッ
クの個数は,実施例1と同数であり,その大きさは1匹のヒメダカの体長(20~
25㎜。乙13の40頁右欄)よりも大きいから,本件発明2と同様の方法により
検知判定を行っていると認められる。なお,乙13技術では,ヒメダカが動いて触
れると感知するセンサードットを使用していると明記されていないが,センサーブ
ロックごとに複数のセンサードットを設定し,センサードットの1個ごとに輝度信
号で感知するセンサ機能を持たせ,メダカないしヒメダカが泳いでこのセンサード
ットに触れると感知することによりメダカないしヒメダカの動きを検知することは,
乙11公報(特開2002-257815号公報),乙12公報(特開2003-1
39764号公報)及び乙17公報(特開2004-125753号公報)にも見
られる周知技術である。そうすると,本件発明2の活動量を検知する方法は,これ
らの公知技術において採用されていたのと実質的に同一の方法であると認められる。
bこの点について,原告は,乙13技術にいう活動量の低下とは,停
止行動(死亡)に至る状態であり,高濃度のLASを用いた結果,40分経過後に
はヒメダカが全て死亡しているのに対し,本件発明は,極めて低濃度のシアン化カ
リウムが用いられ,ヒメダカが1匹も死亡していないにもかかわらず,検知するこ
とが可能であると主張する。
確かに,乙15論文によれば,魚類(メダカ)が有毒化学物質に曝露されると,
異常行動の前兆としても考えられる「行動範囲減少」が観察され,その後に,「鼻上
げ行動」や,「高濃度の有毒化学物質のばく露による狂奔・錯乱行動」を意味する「急
速行動」が現れ,さらに,急激な疲弊により自分の意思で泳げなくなる「沈下行動」
が続き,最終的に死亡(遊泳停止)に至る。この異常行動の推移に鑑みると,乙1
3論文の実験で警報が発せられる活動量の低下は乙15論文の「行動範囲減少」や
「沈下行動」に相当するものであると考えられる。そして,乙15論文ではシアン
濃度1.25mg/Lにおいて曝露19分後に「行動範囲減少」が観察されるとこ
ろ,乙13論文において目視により計数した活動ヒメダカ数を計数したFig.2によ
れば計測開始から約40分間で10匹のヒメダカの全匹が死亡していること(乙1
3論文の41頁)に鑑みると,乙13論文のLAS160mg・l-1
という濃度は上
記のシアン濃度に匹敵する程度の毒性を有するとうかがわれる。
これに対し,本件発明2が想定する毒物濃度は,例えばシアン化カリウム0.0
2mg/Lであり,本件明細書の表1(シアン化カリウムの0.02mg/Lを監
視水槽内のヒメダカ20匹に曝露した時の警報の発報経過を試験した表)によれば,
20時間が経過しても1匹も死んでいないことからすると,本件発明2は,乙13
論文において開示された公知技術よりも著しく低い毒物濃度を想定しており,その
ため,ヒメダカ等の小型魚類が捕食防御本能から低濃度の毒性でも危険を感じて群
れで固まるという性質を利用して,低濃度有害物質の混入と判定する点に公知技術
との相違があり,この点で,原告の上記主張は首肯することができる。
しかし,本件発明2の活動量の検知方法と乙13技術の活動量の検知方法とが実
質的に同一であることは前記のとおりであり,本件明細書では,活動量の低下を検
知する方法として,試料水に低濃度有毒物質が混入して小型魚類が「群れで固まる
状態」を,試料水に高濃度有毒物質が混入して小型魚類の「活動量が低下する状態」
と区別して検知するための具体的構成は何ら記載されておらず,このことは乙13
論文でも同様である。したがって,試料水の毒物濃度が低く,ヒメダカが群れで固
まっている場合には,乙13技術の検知方法によっても本件発明2の検知方法によ
っても警報を発することになると考えられるから,その場合の乙13技術の活動量
の検知方法と本件発明2の活動量の検知方法との相違は,それを「活動量の低下」
と把握して警報を発するか(乙13技術),それとも,それを「群れで固まる状態」
と把握して低濃度有毒物質の混入と判定するか(本件発明2)の相違であるという
べきである。そして,このような本件発明2と乙13技術の関係に照らして考える
と,本件発明2は,乙13技術に係る公知の有毒物質検知方法を,低濃度の有害物
質混入の場合に小型魚類が群れで固まる性質があるという知見に基づき,低濃度の
有害物質判定の目的に使用し,計数されたセンサーブロック数があらかじめ設定し
た設定ブロック数以下である時に,それを群れで固まる状態と把握して,低濃度有
害物質の混入と判定することとした点に特徴があると認めるのが相当である。
(ウ)以上の事情を考慮すると,構成要件G2の「計数されたセンサーブロ
ック数が所定時間連続して予め設定した設定ブロック数以下である時に小型魚類が
群れで固まる状態を検知することで試料水への低濃度有害物質の混入と判定する」
とは,小型魚類が動いて各センサーブロック内のセンサードットに触れるとセンサ
ーブロックが計数される仕組みのアルゴリズムにおいて(構成要件G1),小型魚
類の活動量を検知し,計数されたセンサーブロック数が所定時間連続してあらかじ
め設定した設定ブロック数以下である時に,小型魚類が群れで固まる状態として検
知し,そのような手段によって,試料水への低濃度有害物質の混入と判定すること
を意味すると解される。
ウ本件発明1について
他方,本件発明1では,単に「CCDビデオカメラで撮影した映像から画像処理
によって小型魚類が群れで固まる状態を検知することで試料水への低濃度有毒物質
の混入と判定する」(構成要件D)とされており,これは,本件発明2のようなセ
ンサーブロックにより活動量(動作状態)を検知する方法に限られていない。そし
て,【図13】及び【図15】をみると,1つのセンサーブロックの大きさが,ヒ
メダカの大きさよりも大きく,その中に複数のヒメダカを包摂し得るものであるた
め,ヒメダカが分散しているよりも群れで固まっている方がヒメダカが触れている
ブロック数が少なくなり,これをもってヒメダカが群れで固まる状態を検知するも
のとしているとも考えられる。
このことからすると,構成要件Dの「CCDビデオカメラで撮影した映像から画
像処理によって小型魚類が群れで固まる状態を検知することで試料水への低濃度有
毒物質の混入と判定する」とは,活動量を検知する上記の構成要件G1・G2の意
味に加え,小型魚類が触れているセンサーブロック数があらかじめ設定したブロッ
ク数以下である時に,小型魚類が群れで固まる状態として検知し,そのような手段
によって,試料水への低濃度有害物質の混入と判定すること(いわば存在状態の検
知)を意味すると解される。
2被告製品へのあてはめ
(1)被告製品の構成
後掲証拠によれば,被告製品の構成は以下のとおりであると認められる。
ア概要
被告製品は,水槽内に放たれた10ないし12匹のヒメダカをカメラが捉えた映
像を基に画像処理を行い,多数の検知ブロックでヒメダカの存在検知及び動作検知
を行う。
ヒメダカの存在及び動作を検知すると,検知したブロックが表示され,検知ブロ
ック数の長期と短期の移動平均値を比較し,あらかじめ設定した水準に達すると警
報を発信する。
存在検知では,ヒメダカがブロック間を移動しなくても,ヒメダカの輪郭を抽出
してヒメダカの存在(生存)を検知し,検知ブロック数でヒメダカの個体数の減少
を測定する。すなわち,被告製品での存在検知とは,ヒメダカの生存数を検知する
ものである。他方,動作検知では,ヒメダカがブロック間を移動すると動きを検知
し,検知ブロック数でヒメダカの活動量を測定する。(甲4の1頁,甲5の1頁,乙
1の12頁,乙3の1頁,乙9の1頁,乙10の1頁)
イ画像解析の方法
監視水槽の映像には768枡(縦24×横32)のセンサブロックが配置されて
いる。1つのセンサブロックは,25個(縦5×横5)のセンサドットで構成され,
このセンサドットの幾つか(任意に設定)をヒメダカの体の輪郭がふさいだり開放
したりして,必要なドット数以上の検知数に達するヒメダカの輪郭,動作があれば
ブロック数がカウントされる。画像取込み判定速度は0.5秒単位で行い,その間
にヒメダカの動きや輪郭がなければカウントに入らない。(甲5の1頁,乙1の10
頁)
ウ毒性の判定
(ア)ヒメダカはOECDの魚類急性毒性試験魚に指定されており,OEC
Dの魚類急性毒性試験ではヒメダカを化学物質に96時間曝露させ,死亡数を計測
し,生態に与える影響を半数致死濃度として評価している。被告製品は,この国際
的な毒性検知方法に則った装置であるとされている。(甲4の1頁,乙1の11頁,
乙9の1頁,乙10の1頁)
(イ)乙3,9及び10の被告製品(以下「乙3等の被告製品」という。)で
は,動作検知において,毒物が原水に混入するとヒメダカは激しく動き回ったり,
動きが緩慢になったりするため,毒物混入の初期段階で「活発」や「緩慢」の警報
を発信する。具体的には,初期設定では,ヒメダカの活動量のブロック数の短時間
(3分間)の平均値が長時間(96時間)の平均値の200%以上になった場合,
「活発」という警報が発信され,50%以下になった場合,「緩慢」という警報が発
信される。
他方で,存在検知において,毒物が原水に混入し,ヒメダカが死亡しはじめると,
段階的に水質「注意」や水質「異常」警報を発信する。具体的には,初期設定では,
ヒメダカの個体数のブロック数の短時間(3分間)の平均値が長時間(96時間)
の平均値の50%以下になった場合,「注意」の警報が発信され,25%以下となっ
た場合,「異常」の警報が発信される。(乙1の6頁,10頁,乙3の1頁,4頁,
乙9の4頁,乙10の2頁)
(ウ)甲4及び5の被告製品(以下「甲4等の被告製品」という。)では,
魚の存在をブロック検知し,検知数があらかじめ設定した水準に達すると警報を発
信するとともに,魚の活動量もブロック検知し,あらかじめ設定した水準で警報を
発信する。初期設定では,①固定値20以上であれば,「狂乱」のアラームを発し,
②3分間の平均が24時間平均の50%以下であれば「水質注意」のアラームを発
し,③3分間の平均が24時間平均の25%以下であれば「水質異常」のアラーム
を発する。(甲4の1頁,4頁,甲5の1頁)
エ被告のホームページにおける被告製品の特長の記載
被告のホームページでは,被告製品の特長の項目において,通常,毒物混入時に
はメダカは水質の変化に敏感に反応し,初め活動量が急増し,その後,体力が弱っ
て動きは緩慢になり,やがて死に至る旨,毒物の濃度によっては活動量の増加のみ
であったり,緩慢のみで死に至らない場合があり,これらの状況に応じてアラーム
を発信させるには活動量の減少のみならず,活動量の増加や生存数の減少も検知で
きることが必要不可欠である旨が指摘されている(乙1の8頁)。
(2)被告製品の動作検知の構成要件D・G2充足性について
確かに,原告が主張するように,メダカの行動には集合行動,生殖行動,たたか
い行動,食餌行動等があり,これらの行動の際にメダカが遊泳しているので(甲1
3),毒性が低濃度の場合,ヒメダカの活動量が一定の時間にわたって低下するのは,
群れで固まった場合以外には想定し難く,仮に,監視水槽の毒性が低濃度である時
にヒメダカが群れで固まって活動量が低下したような場合,ヒメダカの活動量のブ
ロック数の短時間の平均値が長時間の平均値の50%以下となって,結果的に乙3
等の被告製品では「緩慢」の警報が発信されることもあり得,甲4等の被告製品の
「水質注意」に動作検知によるものが含まれる場合にも同様であると考えられる。
しかし,被告は,ホームページの被告製品の特長の項目において,毒物混入時に
メダカが水質の変化に敏感に反応し,活動量が急増し,その後に体力が弱って動き
が緩慢になり,死に至る旨説明しており,この説明内容を被告製品の警報に対応さ
せると,乙3等の被告製品では,「活発」の後に「緩慢」となり,さらにその後に死
亡により個体数が減少して,「注意」,「異常」の警報を発信すると考えられる。この
点,乙15論文によれば,「急速行動」の後に「沈下行動」が続き,これらの異常行
動を経て最終的に死に至るとされ,乙3等の被告製品の「活発」は上記の「急速行
動」を,乙3等の被告製品の「緩慢」は上記の「沈下行動」を,それぞれ意味する
と考えられ,乙3等の被告製品における警報の段階の設定は,乙15論文に記載さ
れた各種の異常行動から死に至るまでの段階に沿うものである。そうすると,乙3
等の被告製品の「緩慢」の警報は,「活発」と死亡の間に位置する段階を想定してい
ると認められ,毒性が低濃度である場合にヒメダカが群れで固まった状態として検
知し,低濃度有害物質の混入と判定するものとは認められない。
また,甲4等の被告製品でも,「水質注意」,「水質異常」に動作検知によるものが
含まれるとしても,「水質注意」は,長時間の活動量を24時間平均とする以外は乙
3等の被告製品と同様の判定を行うものであり,「水質異常」は「水質注意」よりも
更に活動量が減少した場合を判定するものであるから,乙3等の被告製品と同じく,
「狂乱」と死亡の間に位置する段階を想定していると認められ,毒性が低濃度であ
る場合にヒメダカが群れで固まった状態として検知し,低濃度有害物質の混入と判
定するものとは認められない。
したがって,被告製品の動作検知は,小型魚類の活動量を検知するものの,その
活動量の低下をもって「活発」と死亡の間に位置する「緩慢」(乙3等の被告製品)
ないし「水質注意」,「水質異常」(甲4等の被告製品)として把握するにとどまり,
小型魚類が群れで固まる状態として検知し,試料水への低濃度有害物質の混入と判
定するものではないから,構成要件D及びG2を充足しない。
これに対し,原告は,被告製品は,ヒメダカの動作状態のみならず存在状態をも
検知するため,死亡に至る手前の活動量の低下を個別に検知することは予定されて
いない旨主張する。しかし,被告製品において,存在検知,すなわち個体数の減少
を検知することはヒメダカが死に至ったことを意味するから,それとは別に,乙3
等の被告製品では死亡する前の段階である「活発」や「緩慢」の動作状態を検知し,
甲4等の被告製品では「狂乱」や「水質注意」,「水質異常」の動作状態を検知して,
これらの状況に応じて警報を発信させることには独自の意義があると認められ,原
告の上記主張は,採用することができない。
また,原告は,被告製品では狂奔行動(狂乱)を検知しているのであるから,そ
れとは別に死亡に至る手前の活動量の検知をする必要はないと主張する。しかし,
一般的にはいわゆる狂乱状態が「緩慢」に先立つとしても,乙3等の被告製品の初
期値では,前記のとおり,狂乱状態を検知する「活発」警報は,「活動量の3分平均
が96時間平均の200%以上」とされており,甲4等の被告製品の初期値では「狂
乱」警報は「固定値20以上」とされていて,実際の狂乱状態が被告製品の「活発」
ないし「狂乱」警報の設定値を満たさない場合もあり得るから,「緩慢」(乙3等の
被告製品)ないし「水質注意」,「水質異常」(甲4等の被告製品)の警報を「活発」
警報(乙3等の被告製品)ないし「狂乱」警報(甲4等の被告製品)とは別に死亡
に至る手前の活動量の低下を個別に検知するものとして設定する意味はあるといえ,
原告の上記主張は採用できない。
(3)被告製品の存在検知の構成要件D充足性について
乙3等の被告製品の存在検知では,ヒメダカの個体数の減少を検知し,減少の度
合いによって「注意」,「異常」の警報を発信するものであるが,国際基準である半
数致死濃度を判定基準として採用しており,本件発明の実施例1にあるようなシア
ン化カリウム0.02mg/Lという程の低濃度の毒性を判定することを想定して
いるものではない。また,甲4等の被告製品でも,その「水質注意」,「水質異常」
に存在検知によるものが含まれるとしても,長時間の活動量を24時間平均とする
以外は乙3等の被告製品と同様の判定を行うものであるから,低濃度の毒性を判定
することを想定しているものではない。したがって,被告製品での存在検知は,ヒ
メダカが存在するセンサブロックの数があらかじめ設定したブロック数以下である
時に,それを「群れで固まる状態」として検知するものとは認められず,また,「試
料水への低濃度有害物質の混入と判定する」ものとも認められない。
また,本件発明の実施例1においてはセンサーブロックが56個であるのに対し,
被告製品にはそれよりもはるかに多い768枡のセンサブロックが配置され,1ブ
ロックの大きさがより小さくなると考えられる。そのため,甲4の1頁の「Photo-2」,
乙3の1頁の「Photo-3」及び乙9の1頁の「Photo-2」のとおり,1匹のヒメダカ
の輪郭が複数のセンサブロックにまたがっている。そうすると,被告製品の存在検
知では,ヒメダカが群れで固まっている場合でも,生存数が減少しない以上,感知
するセンサブロック数がさほど減るわけではなく,その場合には警報の対象となら
ないから,被告製品は,「群れで固まる状態」を検知するものとは認められない(別
紙「被告製品におけるヒメダカの存在状態の検知」参照)。
したがって,被告製品の存在検知は構成要件Dを充足しない。
第5結論
以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求にはいずれ
も理由がないから,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官
髙松宏之
裁判官
田原美奈子
裁判官
林啓治郎
(別紙)
被告物件目録
自動水質監視装置生物センサ「BS-2010」
(別紙)
被告製品説明書1
1被告製品は水質自動監視装置であり,監視水槽と,水中ポンプと,CMOS
カメラ,ボードPC,タッチパネルモニタ等から構成される。(甲411頁6.
構成図)
2監視水槽は,沈殿槽とポンプ槽と遊泳槽からなり(甲46頁3-2.監
視水槽清掃方法),遊泳槽ではヒメダカを12匹飼育することになっている。(甲4
5頁3-1.項目説明「ヒメダカ数規定の12匹か」の記載)
3ポンプ槽に設けられた水中ポンプから試料水が遊泳槽に連続的に供給される。
4遊泳槽の上にはCMOSビデオカメラが設置されている。(甲411頁6.
構成図)
5前記CMOSビデオカメラでヒメダカの輪郭を検出し,ヒメダカの存在状態
と,ヒメダカの動作状態の検知を行い(甲51頁「1.本ソフトウェアについて」
1.及び2.),ヒメダカの長期(24時間又は96時間)と短期(任意)の移動平
均値を比較することで試料水への低濃度有毒物質の混入を判定している。(甲41
頁「1.概要」,甲51頁「3.画像解析パターンと生存数のカウント方法」)
6ヒメダカの長期と短期の移動平均値を比較し予め設定した水準に達すると警
報を発する(甲41頁1.「概要」,甲51頁「1.本ソフトウェアについて」
4.)。
(別紙)
被告製品説明書2
1被告製品は水質自動監視装置であり,監視水槽と,水中ポンプと,CMOS
カメラ,ボードPC,タッチパネルモニタ等から構成される。(甲411頁6.
構成図)
2監視水槽は,沈殿槽とポンプ槽と遊泳槽からなり(甲46頁3-2.監
視水槽清掃方法),遊泳槽ではヒメダカを12匹飼育することになっている。(甲4
5頁3-1.項目説明「ヒメダカ数規定の12匹か」の記載)
3ポンプ槽に設けられた水中ポンプから試料水が遊泳槽に連続的に供給される。
4遊泳槽の上にはCMOSビデオカメラが設置されている。(甲411頁6.
構成図)
5前記CMOSビデオカメラの映像から19200個のドットをセンサーとし
て利用し,一つのセンサーブロックは25個(縦5×横5)のセンサードットで構
成され,センサーブロックは768枡(縦24×横32)からなる。(甲51頁「2.
画像解析手順の概要説明」及び「3.画像解析パターンと生存数のカウント方法」)
6センサードットがヒメダカの体の輪郭がふさいだり開放したことを検知し,
当該センサードットに触れたセンサーブロック数を計数することによりヒメダカの
動作状態の検知を行い(甲51頁「1.本ソフトウェアについて」1.及び2.),
ヒメダカの長期(初期設定では24時間又は96時間だが,任意の値に変更できる)
と短期(初期設定では3分だが,任意の値に変更できる)のヒメダカがセンサード
ットに触れた平均センサーブロック数を比較することで試料水への低濃度有毒物質
の混入を判定している。(甲41頁「1.概要」,甲51頁「3.画像解析パタ
ーンと生存数のカウント方法」)
7ヒメダカの長期と短期の移動平均値を比較し予め設定した水準に達すると警
報を発する(甲41頁「1.概要」,甲51頁「1.本ソフトウェアについて」
4.)。
(別紙特許公報省略)

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激動の時代に
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◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

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