弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
原告らの請求を棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告
(一) 被告が原告らに対し、昭和四六年八月七日付でなした別紙(二)官職等目
録処分欄記載の各処分は、これを取消す。
(二) 訴訟費用は被告の負担とする。
二 被告
 主文同旨
第二 当事者の主張
(原告らの請求原因)
一 原告らはいずれも林野庁(以下当局ともいう。)職員であるとともに同庁職員
により組織された全林野労働組合(以下全林野又は全林野労組という。)所属組合
員であるが、その勤務部署、官職、昭和四四年七月以降の組合役職は別紙目録
(二)の各欄記載のとおりである。
二 被告は原告らに対し、昭和四六年八月七日付で同目録処分欄記載の各解雇及び
懲戒処分(以下あわせて本件処分という。)をなした。
 本件処分はいずれも全林野労組員が昭和四六年四月二三日、同月三〇日及び五月
二〇日に実施した職場放棄による争議行為(以下四・二三スト、四・三〇スト、
五・二〇ストという。)を違法としたうえで、原告a、同b、同cに対する解雇
は、同原告らが被告からの事前の警告にもかかわらずこれを企画指令し、かつ、実
施せしめたとして公共企業体等労働関係法(以下公労法という。)一八条に基づき
なされ、原告dに対する懲戒処分は同原告が旭川営林局長からの事前の警告にかか
わらずこれを実施せしめたとして国家公務員法(以下国公法という。)八二条に基
づきなされ、その余の原告らに対する懲戒処分は被告からの事前の警告にもかかわ
らずこれを企画し、かつ実施せしめたとして同条に基づきなされたものであるが、
原告e、同f、同gについては、鹿児島営林局管内における同年五月八日の違法な
職場放棄による争議行為(以下五・八ストという。)を全林野労組九州地方本部役
員らと共に企画し、かつ実施せしめたとの理由が付加され、更に原告eについては
五・八ストを現地において指導したとの理由が付加されている。
三 しかしながら本件処分は違法であるから、その取消しを求める。
(請求原因に対する被告の答弁)
請求原因一、二項の事実は認める。
(被告の抗弁)
被告が原告らに対し本件処分をした理由は以下のとおりである。
一 四・二三スト(常勤制確立、全員常用化要求)、四・三〇スト、五・二〇スト
(賃上げ要求)の背景と経過
(一) 作業員の処遇問題
1 国有林野事業と雇用制度
 国有林野事業はその種類、形態の面から自然的、季節的要因に左右される面が多
く、年間を通じて平準化した事業量を確保することは困難な状況にあり、他方沿革
的に従業員を地元から採用し、また、地元民間業者等に事業の一部を請負わせてお
り、これらの者は林野庁が国有林野事業をある一定量毎年実施することによつて生
計を維持している実情にある。国有林野事業においては、これら諸条件の制約に応
じて種々の雇用形態をとることが必然的に要求され、そのうちに一定期間に限つて
作業員を雇用するという形態が存在するのもやむを得ないところである。かかる本
質的制約の下で林野庁は以下に述べるとおりこれら作業員の処遇改善について努力
してきた。
2 作業員の雇用形態
 国有林野事業に従事する職員は、恒常的官職に充てるべき職員の数を定める「行
政機関の職員の定員に関する法律」第三条による行政機関職員定員令所定の定員内
職員と同令の適用を受けない定員外職員にわかれているが、作業員のほとんどが日
給制の定員外職員として人事院規則八ー一四所定の雇用期間を二ケ月以内とする非
常勤職員の扱いを受けている。
 これら定員外職員である作業員の雇用形態については、昭和三六年の労務者処遇
規定によつて明確化され、その後の改善を経たあと、昭和四四年四月に労使間にお
いて「定員外職員の雇用区分、雇用基準及び試用期間に関する覚書」、「同覚書に
関する議事録確認」(以下あわせて単に「雇用区分等覚書」という。)が締結さ
れ、現在に至つているが、同覚書によれば、定員外職員の雇用区分として常用作業
員、定期作業員、臨時作業員の三種類が規定されており、常用作業員については形
式的には有期の雇用であるが、必ず更新され、実質的には期間の定めのない安定し
た雇用となつている。定期作業員は毎年一定期間の雇用であるが、昭和三七年一一
月一六日全林野との間に「優先雇用に関する事業の処理についての確認」が行なわ
れ、雇用期間満了となりいつたん退職しても当該営林署の事業実行上の事情が同様
であれば、翌年度も当年度雇用した者を優先的に雇用することが確認されており、
現に安定した反覆雇用が行なわれ失職期間中は国家公務員等退職手当法一〇条によ
る退職手当又は失業保険金の給付を受けている。
3 いわゆる「二確認」について
(1) 三・二五確認
 全林野は作業員の雇用形態が季節的であるため、かねてからこれを通年化するこ
とにより雇用を安定化することを要求していたが、これに対し林野庁は、昭和四一
年三月二五日の団体交渉の席上「当局の方針を説明すれば、農林大臣が国会で『国
有林の経営については中央森林審議会の答申もあり、目下鋭意検討中であるが、国
有林の経営の基本姿勢として直営直用を原則としてこれを積極的に拡大し雇用の安
定を図ることを前提として検討して参りたい。なお、通年化については努力して参
りたい。』と述べた趣旨に沿つて検討を進めていく考えである。」と雇用安定等に
関する林野庁の方針を表明し確認した。これが「二確認」の一つでいわゆる「三・
二五確認」と称されているものである。
(2) 六・三〇確認
 その後、同年六月三〇日に林野庁は雇用安定等に関し「雇用の安定については、
林業基本法一九条ならびに三月二五日表明した方針の趣旨に基づき、従来の取り扱
いを是正して基幹要員の臨時的雇用制度を抜本的に改めるという方向で雇用の安定
をはかる考えである。この基本的な姿勢に立つて、さしあたりの措置としては生産
事業の通年化による通年雇用の実現、事業実施期間の拡大あるいは各種事業の組合
せによる雇用期間の延長などによつて雇用の安定をはかる考えである。なお、これ
らの具体化にあたつては、労働組合と十分協議話合いを行ない意思の疎通をはかり
ながら円滑に進めていく考えである。」との考え方を示し、確認した。これが「二
確認」の一つでいわゆる「六・三〇確認」と称されているものである。
(3) 以上の二つが、全林野の「二確認」と称するものであるが、「三・二五確
認」は国会における雇用安定についての審議と関連して、労使間でかねてから懸案
事項とされていた雇用安定等に関し、基本的な考え方を表明したものであり、また
「六・三〇確認」は、これをさらに具体化した形で示したものである。また、
「六・三〇確認」において林野庁が示した「臨時的雇用制度を抜本的に改める方
向」というのは、その解決の前提として、関係省庁と調整、予算措置など林野庁が
単独で即時実施を期待し難い諸種の困難性が予想されるところから、雇用安定の当
面の措置として、事業の通年化、事業実施期間の拡大、あるいは、各種事業の組み
合せ等により、常用化、雇用期間の延長を逐次実施しようとするものであつた。
(4) 「二確認」をめぐる労使交渉と林野庁の態度
 その後林野庁は二確認の内容を実現するべく努力をしたが、作業員も国家公務員
とされている以上定員外職員の雇用制度の抜本的改善には、法律上予算上種々の制
度面からの困難があり、また、昭和三六年二月八日及び昭和三九年一月一九日の閣
議決定の制約もあるため、ひとり林野庁限りでは処理できない事項が極めて多く、
法改正はもとより関係諸法令との調整、或いは国家公務員制度上の問題等の観点か
ら関係省庁との事前の折衝を要するものでそのためには多大な日時と労力を要し、
短時日のうちに結論を得ることは至難なことであつた。
 その中にあつて林野庁はかねてから全林野が提出していた臨時的雇用制度の抜本
的改善、基幹要員全員の常用化、現行臨時雇用制度における常用作業員の処遇の改
善のいわゆる差別撤廃要求に応えるべく、昭和四三年一二月二七日には「六・三〇
確認」において林野庁が表明した基幹要員の臨時的雇用制度を抜本的に改める方向
として基幹要員については通年雇用に改め、常勤性を付与し、それにふさわしいよ
うに処遇改善するなどの諸点であることを明らかにし、国公法上の常勤職員にする
ことについては前記閣議決定もあり困難であることから、常勤職員に準ずる性格を
与え、またこれにふさわしい処遇を図ろうとする抜本的改善の基本的姿勢を明らか
にした。
4 林野庁による臨時的雇用制度の抜本的改善の方向
(1) 雇用区分改正案の提示
 林野庁としては右の基本的姿勢に立つて昭和四五年実施を図るべく関係省庁と折
衝を進めたが、了解を得るに至らず、同年度実施は見送らざるを得なかつた。その
後、林野庁としては昭和四六年度実施を図るべく関係省庁の了解が得られることを
前提として昭和四五年七月雇用区分改正案(以下七月提案という。)を全林野に非
公式に提示した。その内容は従来の常用、定期作業員の区分を基幹作業員(通年及
び有期)と臨時作業員に改め、基幹作業員の資格要件を定めて現行区分の常用、定
期の各作業員から選考のうえ任用し、国家公務員法上の常勤の職員として取り扱
い、休日休暇などについて処遇改善することなどを骨子とするものであつた。
 これに対し、全林野は同年一二月「六・三〇確認」の基幹要員とは現行の定期、
常用全員を指すもので、これを選考し、また年令その他の制限を付することは新た
な差別であるとして反対し、同月一一日始業時から全国六七営林署において約四、
〇〇〇名が半日のストライキを行なつた。
(2) 「七月提案」と政府統一見解
 林野庁は「七月提案」について昭和四六年度実施を目途に全庁あげて関係省庁と
の調整に努力したが、他省庁にも同事例があるなど林野庁のみの問題ではなく、事
態は極めて困難な事情に立ち至つた。一方、この問題は昭和四六年の通常国会でも
取上げられ、同年四月一三日の衆議院農林水産委員会において林野庁長官は「国有
林野事業の基幹的な作業員の雇用及び勤務の態様は長期の継続勤務となつており常
勤の職員に類似している面があると考えられるが、基幹的な作業員を制度的に常勤
の職員とすることについては、国家公務員の体系にかかわる困難な問題なので慎重
に検討する。」との政府統一見解を答弁し、同問題は極めて高度の政治問題にまで
発展した。
(3) 政府統一見解後の労使の折衝
 林野庁は四月一四日全林野に対し、政府の統一見解に沿い、また林業振興に関す
る決議の趣旨を尊重して、作業員の処遇について真剣に検討する旨の態度を表明し
たところ、全林野は同月一六日、基本的にはあくまでも常勤職員として制度化する
こと、このために林野庁は政府としての結論を早急に出させるように努力するこ
と、これと併行して種々の処遇改善を直ちに行なうこと等の内容を含む「常勤性確
立についての具体的メモ」を提示してきた。全林野の要求に対し、林野庁は政府統
一見解というあらたな情勢のもとにおいて慎重に検討し、同月二〇日「基幹的な作
業員について常勤職員としての制度化は困難な問題であるが、政府としての結論を
得るように引続き努力する、常用、定期作業員の処遇についても更に検討する。」
などの回答をした。右回答を不満とする全林野に対し、林野庁は制度化はなかなか
困難であり、政府統一見解に沿つて処遇改善に努力するが、今後とも政府部内の折
衝や予算など問題が多く長期の裏付けのある責任ある発言をしたいのでしばらく猶
予して欲しい、今後も最大の努力をするから組合も自重するよう要望した。
5 常用化と処遇の改善について
 林野庁は「二確認」後本件各スト直前の昭和四六年三月までの間に国有林野事業
のおかれた制度的、季節的制約下にあつて累計九、九一〇名に及ぶ作業員の常用化
を実現し、他方作業の組み合せ、事業期間の拡大等により雇用期間の延長を最大限
に図るなど雇用の安定に努めたほか、賃金日額の上昇、各種休暇の有給化、諸手当
の制度化等その処遇改善、定員内職員との格差是正に努めた。
(二) 争議行為の実施
1 全林野の運動方針
 全林野は、昭和四五年七月二一日から四日間、福島市において開催した第二一回
定期全国大会において闘争目標の最重点課題を大幅賃上げと作業員の差別処遇改善
(常勤制確立)とし、大幅賃上げについては春闘共闘、公労協共闘の一員として強
力なストライキを組織して闘うこと、差別処遇改善については、秋から年末予算編
成段階、春闘段階で最大限のストライキをもつて闘うことを決定した。
 右運動方針に基づき、全林野は秋季年末闘争として常勤制度確立を闘争目標とし
て昭和四五年一二月一一日、全国六七営林署で、四、一七二名の参加により半日ス
トライキを実施した。
 昭和四六年三月一日、二日東京において開催された全林野労組第五〇回中央委員
会は(1)大幅賃上げについては春闘共闘、公労協共闘の一翼をにない、四月下旬
から五月上旬の自主交渉の山場と同月中旬決着の山場で半日から一日のストライキ
を行なう、(2)常勤制確立・全員常用化については、三月二六日に半日ストライ
キを行なう、旨の春闘方針を決定し、三月二日、闘争宣言を発すると共に三月二六
日のストライキの準備指令を発した。
2 四・二三ストについて
(1) 全林野労組中央本部は三月二三日前記(一)の4の(2)に述べた常勤
性、常用化に関する国会での論議の動向をみるため三月二六日のストライキの延期
を決定したうえ、あらためて、同年四月二三日に半日ストライキを行なう旨の指令
を発し、四月一三日全国代表者会議を開催し、四・二三ストの具体的行動を決定
し、同月二一日常勤制確立、全員常用化を要求する四・二三ストのストライキ宣言
を発し、翌二二日a中央執行委員長名義の四・二三ストに対する「檄」文を発し
た。
(2) そして翌二三日別紙(四)の同日のストライキ実施状況記載のとおり全国
七二営林署の製品事業所(営林署の出先機関で主として素材(丸太)の生産を行な
う事業所)、担当区事務所(営林署の出先機関で森林の保護、管理、植林等を行な
う)などの各現場において五、三二二名が参加し、約四時間にわたり労務提供を拒
否し本件処分理由の一つとして掲げられている違法な争議行為を実施した。
3 四・三〇、五・二〇ストについて
(1) 全林野は前記中央委員会の決定に従い、昭和四六年三月八日月給制職員に
つき一万五、三〇〇円、日給制職員につき日額一、三〇〇円の賃上げを要求し、同
月三一日以後、賃上げ要求をめぐつて林野庁との間に数次にわたつて団体交渉を行
ない早期に賃上げの方向を明らかにすることを要求してきたが、林野庁としても公
労法適用下の国営事業として一般職の職員の給与に関する法律の適用を受ける国家
公務員、公労法適用のいわゆる三公社四現業の国家公務員等の職員及び民間事業の
従業員の給与の動向、政府の財政上の基本方策、国有林野事業の財政事情、物価、
その他賃金水準のあり方に対するあらゆる諸要因を総合的に検討のうえ、賃上げの
要否、その程度を決定せざるを得ないので、早急に結論を得難く、この間の事情を
述べ、具体的回答については暫時の猶予を組合側に申し入れた。また全林野は日給
制賃金は月給制に比し単純平均で一万四、〇〇〇円の格差があり、更に他産業との
間にも格差があるので「日給制賃金の一〇確認(昭和四二年五月二四日付の日給制
賃金引き上げ要求に関する団体交渉要旨、以下「一〇確認」という。)」に基づ
き、昭和四六年度に格差是正に積極的に取組むべきことを要求してきたので林野庁
は月給制職員と日給制職員とは職務内容が異なり、必ずしも同一水準が要求される
ものでないこと、月給制との格差縮小については従来どおり「一〇確認」で対照し
ており基本姿勢は変らず、「一〇確認」以降格差は縮小している旨回答した。
 このような労使交渉の経緯のなかにおいて全林野はa中央執行委員長名義の四月
一七日付指令をもつて各地方本部に対し、同月三〇日に自主交渉の重要段階として
半日スト、五月七日に第二波半日スト、同月一一日ないし一二日前後に交渉決着段
階として半日から一日のストライキを行なう態勢を確立するよう指令した。
 同年四月二七日全林野労組中央本部は林野庁の有額回答を不満として四・三〇ス
ト突入を指令し、翌二八日、a中央執行委員長名義の四・三〇ストに対する「檄」
文を発した。
(2) そして同月三〇日、別紙(五)同月三〇日のストライキ実施状況記載のと
おり全国二〇営林署の製品事業所、担当区事務所等の各現場において四八五名が参
加し、約四時間にわたり労務提供を拒否し、本件処分理由の一つとして掲げられて
いる違法な争議行為を実施した。
(3) 全林野労組中央本部は、五月六日、かねて計画していた同月七日のストラ
イキを同月一四日に延期し、同月一三日、さらに同月一四日のストライキを延期し
て同月二〇日全日ストライキを実施することを決定し、その準備指令を発したが、
ストライキ当日の午前九時一〇分、全日ストを抗議ストとして午前一〇時まで行な
うことに決定し、その旨指令を発した。そして別紙(六)の昭和四六年五月二〇日
のストライキ実施状況記載のとおり全国二一営林署の製品事業所、担当区事務所等
の各現場において五二九名が参加し、約二時間五〇分にわたり労務提供を拒否し、
本件処分理由の一つとして掲げられている違法な争議行為を実施した。
二 五・八スト(景山丸廃船反対)の経緯
(一) 労使交渉の経過
 熊本営林局は昭和四六年二月八日全林野労組九州地方本部に対し、同年度業務計
画の一つとして鹿児島営林署に所属し、屋久島国有林における生産材を鹿児島港へ
輸送していた木材輸送船景山丸の廃船計画を説明した。廃船の主な理由は屋久島国
有林の自然保護に関する施業計画の樹立に伴う生産量の減少、景山丸の老朽化に伴
う整備費等の増加による輸送コストの高騰等であつた。同営林局は廃船に伴う船舶
輸送職員の労働条件につき組合と十分協議していくとの基本的態度のもとに、関連
する措置として(1)継続就航の錦嶺丸の乗員について再編成し、錦嶺丸、景山丸
の乗員中海技免許を有する一二名を優先的に選考し、乗船させる。(2)他職員は
本人の希望を十分尊重して近接営林署の自動車運転手等の機械要員として配転す
る。
(3) 機械要員としての必要な資格の取得については今回限りの措置として別途
基準により公務扱いで資格取得に必要な研修参加などを実施する。但し、六〇才以
上の高令職員五名については極力退職勧奨を行なうこと等を提案した。
 これに対し、全林野労組九州地方本部は官船廃止阻止の態度を明らかにし、同月
一四日、鹿児島市において鹿児島分会とともに、官船廃止阻止闘争のための戦術会
議を開き、闘争体制を確立し、同月一五日以降組合員を動員して闘争を展開し、同
月二二日全林野労組中央本部、九州地方本部、鹿児島分会の共闘会議を発足させ
た。
 当局側と組合との間には、団体交渉等を中心として、廃船が決定された同年五月
八日までの間二六回に及ぶ交渉等が行なわれ、また景山丸所属の鹿児島営林署にお
いては実に四四回にわたつて労使の折衝が行なわれ、この間当局は廃船がやむを得
ないことを情理を尽して説明し、これに伴う労働条件についての協議に入ることを
主張したのに対し、組合側は廃船そのものに反対し、景山丸の就航を強く主張する
のみであつた。
 五月六日からの団体交渉は翌七日に継続されたが、話合いがつかず、更に八日に
持ちこされ、同日午前八時一〇分団体交渉は決裂し、鹿児島分会所属組合員である
船員一九名に対し抗議指名ストが指令された。
(二) 右指令に基づき鹿児島営林署所属の船員である定員内職員一一名が四時間
にわたり労務提供を拒否し本件処分理由の一つとされている違法な争議行為を実施
した。
三 処分理由たる原告らの所為
(一) 原告ら(原告dを除く。)はいずれも争議行為当時全林野労組の中央本部
にあつて原告a(以下単に原告aという場合は同人をさす。)は中央執行委員長、
同bは副中央執行委員長、同cは書記長の地位にあり、組合のいわゆる三役とし
て、また原告dを除くその余の一一名の原告は中央執行委員としてそれぞれ、違法
な争議行為である四・二三、四・三〇、五・二〇のストライキを企画し、また同ス
トライキを決定した定期全国大会、中央委員会等一連の諸会議を主催するなど、そ
の企画、決定において中心的役割を果し、延べ一一三営林署において延べ六、三三
六名の職員にストライキを実施せしめた。
(二) 原告dは争議行為当時全林野労組旭川地方本部執行委員の役職にあり、違
法な争議行為である四・二三、四・三〇、五・二〇の各ストライキに際して旭川営
林局管下営林署のストライキを指導し、実施せしめた。
(三) 原告g、同e、同fは景山丸廃船問題の交渉のために中央本部から派遣さ
れ団体交渉の指導等にあたつていたが、昭和四六年五月八日全林野労組九州地方本
部と共に鹿児島営林署における違法な争議行為である五・八ストを指令し、指導、
実施せしめた。また、原告eはストライキ実施の責任者として現地に赴き、同日早
朝鹿児島貯木場前で実施された職場大会においてストライキ突入を指示するなど組
合員の職務放棄につき自ら現地でこれを指導した。
四 適条
 原告らの各行為は公労法一七条一項前段により禁止された同盟罷業の共謀、そそ
のかし、あおり行為に該当するので、同項後段に違反し、かつ信用失墜行為の禁止
を規定した国公法九九条に違反するということができる。原告らは全林野労組の専
従役員として、違法な争議行為を指導したことなどを理由として既に別紙(三)の
原告らの被処分歴記載のとおりの処分を受けていたところ、更に本件各ストにより
国有林野事業における諸業務を広範にわたり阻害する行為をなしたのであつてその
責任は極めて重いといわねばならない。
 よつて被告は公労法一八条により原告a、同b、同cを解雇し、国公法八二条一
号及び三号によりその余の原告らに対し各懲戒処分をしたのである。
(抗弁に対する原告らの答弁)
一 抗弁に対する認否
(一) 抗弁一、(一)、1のうち国有林野事業が季節的要因に左右される面を有
し、作業員を地元から採用し、地元民間業者に事業の一部を請負わせてきたことは
認め、その余の事実は否認する。
 同2のうち、作業員の雇用形態が昭和三六年の労務者処遇規定によつて定められ
たこと、現在の定員外職員の常用、定期、臨時の雇用区分が「雇用区分等覚書」に
よるものであること、右常用、定期、臨時の各作業員についての雇用形態がほぼ被
告主張のとおりであることは認め、常用、定期作業員の雇用形態が安定したもので
あること、充分な処遇を受けているとの点は否認する。国有林野事業作業員の処遇
が定員内職員に比較し、著しく劣つていることは後記再抗弁二、(二)で主張のと
おりである。
 同3の(1)ないし(3)の各事実は認める。同(4)のうち、全林野が林野庁
に対しいわゆる差別撤廃要求を提出したこと、林野庁はこれに対し、臨時的雇用制
度の抜本的改善の方向として基幹要員については通年雇用に改め、常勤性を付与
し、それにふさわしいように処遇を改善するなどの諸点であることを明らかにした
ことは認め、その余は否認する。
 同4の(1)のうち林野庁が常勤性を付与するとの基本的姿勢に立つて昭和四五
年度実施を前提として関係省庁と折衝を進めたが了解を得るに至らず、同年度実施
を見送らざるを得ない状況となつたことは否認し、その余の事実は認める。同
(2)のうち林野庁が昭和四六年度実施のために全庁あげて関係省庁との調整に努
力したが、実施が困難な状況に立ち至つたことは否認し、常勤化問題が高度の政治
問題になつたことは不知、その余は認める。同(3)の事実は認める。なお、被告
が「二確認」以降作業員制度の確立を遷延してきたことは後記二で主張のとおりで
ある。同5の「二確認」以降作業員の常用化、休暇の有給化、諸手当の制度化が漸
次実現していることは認め、林野庁がそのために最大限の努力をしてきたとの点は
否認する。
 抗弁一、(二)、1は認める。
 同2の(1)のうち林野庁が定員外職員の処遇改善について最大限の努力を払
い、一四日以降二〇日までの間全林野の要求に対し、誠意をもつて検討、回答して
きたとの点は否認し、その余の事実は認める。同(2)のうち、争議行為が違法で
あるとの点は否認し、その余の事実は認める。
 同3の(1)のうち林野庁が有額回答をなすにあたつて諸事情から早急に結論を
得難かつたことは否認し、その余の事実は認める。同(2)、(3)のうちストラ
イキが違法なものであるとの点は否認し、その余は認める。
(二) 抗弁二、(一)のうち当局側が景山丸廃船に伴う職員の労働条件につき組
合と十分な協議をするとの基本的態度を有していたこと、廃船はやむを得ないもの
であつたこと、当局が廃船問題について十分な説明をしたとの点はいずれも否認
し、その余は認める。当局側が作業員の労働条件低下となるにもかかわらず一方的
にその案を押しつけようとしたものであつてこの点についての原告らの主張は後記
二のとおりである。同(二)のうちストライキが違法なものであるとの点は否認
し、その余は認める。但し、争議行為を指令したのは全林野労組中央本部である。
(三) 抗弁三、(一)ないし(三)のうちストライキが違法なものであるとの点
及び(三)のうち原告gら三名が全林野労組九州地方本部と共に五・八ストを指令
したとの点は否認し、その余は認める。五・八ストの指令は全林野労組中央本部が
指令し、原告gらは同指令を伝達したにすぎない。
(四) 抗弁四のうち原告らが全林野労組の専従役員として争議行為を指導したな
どの理由により別紙(三)原告らの被処分歴記載のとおりの処分を受けたこと、被
告が原告らに対し本件処分をしたことは認め、その余は否認する。
二 本件各ストの背景と経緯
(一) 作業員の雇用上の処遇問題と四・二三ストの経緯
 国有林野事業においては組織体の「基幹」要員である大量の作業員を日給制の定
員外職員として月給制の定員内職員と区別し特別扱いする特異な雇用形態が採用さ
れていたが、定員外とされる作業員制度はたんに勤務条件の劣悪にとどまらず、労
働災害、職業病との関連もあつて前近代的な現場作業員の差別撤廃、処遇改善、臨
時雇用制度の抜本的改善、或いは「全員常用化、常勤制確立」の要求は必然的に全
林野の最重要課題となつていた。当局は昭和四一年に至り、前記「二確認」により
国有林野経営の基本姿勢として直営直用の拡大、雇用の安定を図る方針を明らかに
し、昭和四三年一二月二七日には漸く基幹要員については通年雇用とし、常勤性を
付与し、処遇を改めるとの態度を明らかにしたので、全林野は「常勤性」について
その具体的内容の明示を求めたが、林野庁は誠意のない態度でこれを遷延した。更
に昭和四五年七月全林野に対し提案したいわゆる七月提案もその実態は常用、定期
作業員の差別的身分を固定化し、その処遇を分断しようとするもので人員合理化の
一つとして提案された疑問すらあつた。そこで全林野は林野庁に対し、その全面的
再検討を求めたところ、林野庁はこれを約し、昭和四五年一二月一四日常勤性付
与、雇用の通年化については昭和四六年実施の決意であること、各関係省庁と折衝
を早急に終え、二月末までに組合と協議することを表明した。昭和四六年三月、林
野庁は行政管理庁の承認が得られないので同年度実施は困難と回答したので、全林
野は自主交渉を強める一方、独自で各省庁との折衝を行なつたところ、当局が真
実、誠実に関係省庁と折衝してきたのか疑問を生ずる状況に立ち至つた。そこで全
林野は同月二三日に各地代表者会議を開き協議し、結局「当局の誠意ある回答を得
るには行動によつて事態の進展を図るほかない。」との結論に至り、同月二六日の
ストライキを予定し、その背景の下に中央交渉に及んだ。この交渉の間国会審議を
通じて四月中旬には常勤性についての政府統一見解が示されることが明らかとな
り、また三月二五日の長官交渉で長官より「四月中旬を目途に早期に結論を得るよ
うに努力する決意である。」との表明があつたので、全林野は予定した三月二六日
のストライキを四月二三日に延期した。同月一三日政府統一見解が示され、全林野
はこの段階において常勤性という制度的問題は多少時間がかかるという認識を持ち
つつも、最低限当面の処遇改善の基本方向を明示させる必要があると考え、同月一
六日林野庁に対し、現行の雇用区分、雇用基準を変更しないこと、七月提案の「選
抜」はしないこと、常用作業員の処遇については基準内賃金は一応除外して常勤職
員と同じにすることなどの控え目な要求をした。しかるに林野庁は「制度にのせる
ということで努力する、国会での決議は尊重する。」というものの「制度問題」を
除外しての処遇改善については「常勤と同様の処遇にするという検討方向は現時点
では明示できない。」という極めて不誠意な回答を示した。結局、全林野の政府統
一見解、国会の特別決議に基いて少しでも局面の打開を図ろうとした努力は無視さ
れ、やむなく四月二三日の半日ストに至つたものである。
(二) 作業員の賃金問題と四・三〇、五・二〇ストの経緯
 国有林労働者の賃金体系は月給制と日給制の二本建であり、定期、常用の現場作
業員は職種制別日給制であるが、日給制の賃金水準は月給制に比較しても、他産業
(五〇〇人以上の規模)の賃金水準と比較しても極めて低く、その格差は年々拡大
しており、国有林労働者の収支は都市世帯員、全国世帯員に比して低いのが実状で
ある。全林野は月給制との賃金格差解消などを求め、毎年闘争を続け、林野庁もい
わゆる一〇確認により格差解消等による賃金水準の引上げ等を約しながら満足な実
現をみなかつた。昭和四五年時の賃金闘争でも日給制との格差は縮小せず、全林野
にとつて大きな不満があつたものの、諸般の情勢により最終的にはやむを得ないと
して収拾した。しかし同年七月の全林野全国大会ではこの収拾が一〇確認尊重の趣
旨を生かしていなかつたことについて批判が続出し、昭和四六年春闘では完全実施
を目ざしてストライキも辞さない旨の方針が決定された。
 同年春闘においては、全林野は月給制一人月額平均一万五、三〇〇円、日給制一
人日額平均一、三〇〇円の賃上げを要求決定し、同年三月八日これを当局に提示し
て団交に入り、五月一三日決裂して調停に移行するまで一二回の団交を行なつた。
その間、林野庁は四月二七日の第七回の団交に至り、漸く月給制一人月額平均四、
八九六円、日給制一人日額平均二一三円の有額回答をしたが、前年妥結額二九七円
を大きく下廻る回答であり、日給制について格差解消のあとが全くなく、物価上昇
率からの実質賃金の低下、民間賃金の動向と比較しても問題にならなかつた。全林
野は団交で当局の積極的姿勢がないことなどを追求し、再回答を求めたが、当局は
再検討の姿勢すら示さなかつたので、やむなく全林野は四・三〇ストを決意し、指
令を発した。他の公労協組合の場合は各企業が前向きの努力をする旨言明したため
スト回避となり、結局四・三〇ストは全林野の単独ストの結果になつた。
 全林野はその後も再回答を求める交渉を続け、予定していた五月七日のストを同
月一四日に変更し、当局に検討の余地を与えることも配慮した。同月一二日、第一
一回団交で当局は「今後更に民間会社の動向もみながら誠意をもつて努力した
い。」旨の公式回答をし、更に非公式ではあるが長官の態度表明があつたので全林
野は五・一四ストを回避し、調停に移行することになつた。しかるに調停段階に至
つても当局は「全体ペースの関係で具体案を示せない。」との自主性のない態度を
とり続けたため、全林野は五・二〇スト突入の指令を出した。同月二〇日午前八時
三〇分には調停委員長の見解表明があつたが、労使ともこれをのむに至らず、その
まま仲裁に移行する事態になつたので、全林野は大きな不満を残しながら全一日予
定したストを短縮して事態の推移を見守つたのである。
(三) 景山丸廃船問題と五・八ストの経緯
 昭和四一年、鹿児島営林署の木工所廃止問題があり、当時すでに将来官船の廃止
が懸念されたので、前記二確認のうちの直営直用に関する確認の労使間の合意にあ
たり、同時に、木工所廃止の件を将来官船には波及させない、廃船問題が生じたと
きは組合と協議することの確認をした。また従来、森林鉄道廃止、製材場廃止等の
事案については相当以前に説明があり、協議していくということで処理されてい
た。
 しかるに当局は右確認や慣行に反し、昭和四六年二月八日に突如、四月一日実施
を前提に本件景山丸の廃船計画を説明して実行しようとしたのである。また当局は
所轄庁に景山丸の中間検査を申請しながら故意にこれを隠し、組合に対しては廃船
を絶対、既定のものとし、これと共に廃船に伴う船員の労働条件についてもその低
下、或いは退職を必定のものとして当局案を押しつけようとした。全林野はスト実
施の五月八日まで条理を尽し、誠実に交渉したが、当局の廃船自体の当否を再検討
する姿勢のない一方的不誠実なやり方のためやむなくストライキに至つたものであ
る。
 なお景山丸は廃船処理後、民間企業に買いとられて再生、就航している。
(四) 四・二三、四・三〇、五・二〇ストの規模、態様
 全林野労組の分会数は三七五、組織人員六万名中本件各ストに参加した全林野労
組の分会及び組合員数は被告主張のとおりであるが、いずれもその態様は労務不提
供に過ぎず、四・二三、四・三〇、五・二〇ストの場合治山関係職員は参加せず、
林野関係でも参加者を製品生産業及び造林事業のそれぞれ一部に限定しているし、
五・八ストの場合船員の指名ストにとどまるから、本件各ストにより国民生活に支
障は与えてはいない。
(五) 以上のとおり、本件争議行為の目的、経過、態様等に非難される点はなく
正当なものであり、とくに争議行為に至つた経過はいずれの場合も当局の労使間の
確認無視或いは軽視という不誠実又はこれによる回答遅延等の事由に基くものであ
り、当局の労使間の信義に即した対応があれば、発生し得なかつたものである。ま
た事業計画は予定の期日には終了しており、「業務の遂行に重大な支障を与えた」
という事実は全くなく、まして国民生活に対する影響とか重大な支障に至つてはあ
り得べくもなく、また皆無であつた。
(原告らの再抗弁)
次のとおり被告のなした本件処分は違法であるから取消されるべきである。
一 公労法一七条一項は憲法二八条に違反する。
(一) 労働基本権の本質
 労働基本権は労働者が団結して争議行為の脅威を示すことによつて使用者と対等
な立場に立ち、憲法二五条が宣言する生存権すなわち健康で文化的な生活を営む権
利を獲得するために認められているものであるから、たんなる手段的、経済的権利
ではなく、人間の尊厳と自由を回復し、幸福を追求する権利として保障され、他の
自由権と同様に尊重され、保障されるべきものである。これを禁止することは、他
人の支配下に労働力提供を強制することであり、自由意思を否定し、人間の尊厳を
踏みにじるものである。憲法はかかる労働基本権の重要性に鑑みこれを全面的に保
障したものである。
(二) 明白性の原則について
 労働基本権の根源的性格は前記のとおり精神的自由権等に類するものであるから
その保障が立法府の裁量に委ねられているという性格のものではなく、いわゆる明
白性の原則によつて制限し得るものではない。
(三) 労働基本権制限の根拠について
1 前記の労働基本権保障の趣旨に鑑みれば、その制限は他の基本的人権と衝突す
る場合に両者を比較衡量することによつてのみ許容されるのであつて公共の福祉と
か、国民全体の共同利益というような抽象論をもつてこれを制限し、又は否定する
ことは許されない。
2 公務員の地位の特殊性ということも制限根拠とはなり得ない。即ち、制限論が
その論拠とする「全体の奉仕者」(憲法一五条二項)とは公務員が特定の政党、階
級など国民の一部の利益に奉仕すべきものではないとする点に意義があり、それ以
上に公務員と国民又は政府との間の関係の本質を規定するものではない。公務員を
任免し、その指揮命令のもとに服務させ、労働の対価たる賃金を支払つているのは
国民ではなく、法律上も事実上も政府であるから公務員が政府に対し従属関係にあ
ることは明らかである。とくに現業公務員は労働協約締結権を有し、給与などの労
働条件について諸々の協約を締結しているから一般の民間企業と変らず、少くとも
原告ら現業公務員についてはその地位に特殊性があるとはいえない。また公労法一
七条一項は公務員でない公共企業体等の職員及び組合の争議行為も禁止の対象とし
ているから、「全体の奉仕者」論は国有林野事業に従事する労働者の労働基本権制
限の根拠となり得ないものである。
3 次に制限論のひとつである勤務条件法定主義について検討してみても憲法は公
務員の勤務条件の全てを逐一法律によつて決定さるべきことを要請していないし、
その全てを法律で定めることは不可能であり、法律に定められていない勤務条件に
ついては団体交渉等により決定されているのが現状である。また、給与等の勤務条
件が国会の審議により決定されるとしても、そのことが論理必然的に争議権禁止に
結びつかないのは公務員の給与決定に対する関与及びストライキ権を認めている諸
外国の例や、終戦直後の政令二〇一号までの間旧労調法において争議権が認められ
ていたこと、公庫の予算は国庫の承認を受けることになつているのに公庫の職員に
は争議権に関する何らの規制もないことに照らして明らかである。現在の国家公務
員法の規定等は詳細に公務員の勤務条件を定めているが、これは憲法の要請に基づ
くものではなく、使用者としての政府は法律上委任されている事項は勿論、法律で
委任されていなくても法律に違反しない限り公務員の勤務条件を自ら決定する自由
を有する。従つて政府は公務員の組合と協議し、その労働条件について合意する権
限を有しているのであつて、一般企業と異なるのは政府の合意がそれのみでは直ち
に実効性あるものとならない点である。政府は協議の結果を法律案、予算として国
会に対して提出する義務とその承認を受ける政治的責任を負うが、わが国のような
議院内閣制のもとでは政府の合意は国会多数の合意であり、承認されるのが通常
で、承認が得られない場合は政府の約束不履行としてその当否が国民によつて判断
されるのである。また私企業において使用者に認められる対抗手段たるロツクアウ
トを公務員の労働関係においても一定の条件のもとに使用者たる政府に認めること
は可能であるし、私企業でも市場の抑制力などは独占企業にも働かないから歯止め
があるとは言い難い。公務員の給与改善の要求は一般に民間企業の賃金水準と見合
つた要求であり、法外な賃金要求をした例もなく、仮に暴走を懸念するのであれ
ば、その限度で禁止すれば足りるものである。
 しかも公労法により人事院の給与その他の勤務条件の改善等に関する報告は勿
論、給与、分限懲戒等をつかさどる権限はすべて適用除外されているから、国有林
野の労働者の労働条件は団体交渉による労働協約や就業規則によつて定まるので民
間労働者と同様であり、右の理由は労働基本権制限の理由となり得ない。
4 同じく制限論の根拠とされている代償措置についてみても労働基本権の制約と
代償措置、存在とは論理的に結びつくものではなく、争議行為の禁止が許容される
ときにはじめて代償措置制度は国家が義務として講ずべきものであり、代償措置の
存在をもつて直ちに全面一律の争議行為禁止が「必要やむを得ない制限」と帰結で
きるものではない。その代償措置とされる人事院は労使関係の一方当事者である政
府の任命する人事官によつて運営されており、制度的にも現実的にもその機能を十
分に果たしていない。
(四) 公労法一七条は争議行為を「一律」「全面的」に「禁止」するから憲法二
八条に違反する。
 公労法一七条の規制の対象となる公共企業体等の職員の争議行為が国民生活に及
ぼす影響はその業務内容、争議行為の規模態様により千差万別であるのに、同条が
この点を無視し争議行為により侵害される他の人権との調整ということを考慮する
ことなく公共企業体等の職員の争議行為を一律に全面的に禁止することは憲法二八
条に違反する。
(五) 公労法一七条は立法事実を欠き、またその後立法事実は消滅したから憲法
二八条に違反する。
 憲法上認められている基本的人権を規制する法律は一定の事実状態を前提として
はじめて合憲性が認められ、従つて、ある法律を支える政策が変転する社会の事実
状態に適合しなくなつたときは、現在合理的根拠が存在しないことを主張・立証し
て合憲性を争うことができると解される。
 公労法は国内法の通常立法形式をとつて成立したが、それはマツカーサー書簡に
根拠をおき、占領軍の超憲法的権力によつて対日占領政策転換のために阻害要因に
なることが予想された官公労働者の分断支配と武装解除をねらいとして制定された
ものであり、法案作成から公布までの全過程を通じて内容上の修正は一切禁止され
た。このように公労法の実質は管理法令であり憲法体系とは無縁・異質のもので審
議過程で述べられた立法理由も「再建途上の国家経済のための客観的情勢上の必要
性」のみであり、従つて過渡的、暫定的立法であることが強調された。しかし、公
労法一七条の唯一の法的根拠である占領軍命令は講和条約の発効による日本の独立
によつてその効力を失い、また立法理由とされた経済的復興などの客観的情勢も消
滅したから公労法一七条は当初から立法事実を欠き、或いは少なくともその立法事
実は合理性を失い消滅したからその違憲法は確定したといわねばならない。
二 国有林労働者に公労法一七条一項を適用することは憲法二八条に違反する。
(一) 国有林野事業の特色と争議行為の影響
 国有林野事業は水資源涵養、土砂流出防止等の国土保全機能、木材製造による経
済的機能その他多くの公益的機能を有するが、その事業計画は森林の成育に長年月
を要することからわかるように極めて長期的視野のもとにたてられており、また、
国土の山林がすべて国有林ではなく民間企業においても同種事業が経営され右同様
の公益的機能を果たしており、更に国有林野事業のかなりの部分が民間委託により
行なわれている実状にかんがみれば、国有林野事業に従事する作業員が争議行為を
行ないこれにより業務に一時的停滞が生じても国民生活に直接影響を及ぼすことは
ない。
(二) 国有林野事業労働者の地位
1 国有林野事業で働く常用作業員(一万六、〇〇〇名)、定期作業員(二万一、
〇〇〇名)、臨時作業員(四万名)は国公法上の公務員であるが、定員令に定めら
れた職員以外の非常勤国家公務員であり、人事院規則八ー一四に基いて採用されて
いる特殊な公務員、いわゆる定員外職員であり、その雇用区分等については前記雇
用区分等覚書なる労働協約によつて規定され、法律、政令とかかわりのない労使の
自主的な交渉にゆだねられている。定員外職員のほぼ全部を占める非常勤職員は、
国公法上の分限、保障その他の規定の適用を除外され、共済組合には加入できず、
有給休暇もなく、給与は所轄庁の長が定めるなど常勤労務者との間に著しい懸隔が
生じている。これら非常勤職員は定員内職員と同様国有林野事業の基幹的業務に従
事しているのであるから、これら職員を定員内職員にするのを拒否する理由は全く
ない。臨時的雇用制度のもとで組合は少くとも定期、臨時作業員については通年雇
用せよとの要求を繰返してきたが、民間請負部分の直営直用への切換えによつて容
易であるにかかわらず、当局はその現実化を怠つてきた。
2 作業員は日給であるために勤務日数によつて賃金の支払いを受け、更に伐木作
業等及び造林作業等基幹部分は出来高給制であるため、出来高によつて賃金の額が
左右される。また作業員の賃金は事業費から支出され、給与予算とかかわりがな
く、給与総額制の拘束を受けることはない。出来高給は当該事業の場所の地価、立
木状況等により功程単価を協議決定したうえ、出来高に乗じて賃金を算出するもの
であるから、各事業において功程単価の合意が成立しない限り、当該事業の労働が
停廃することは制度自体やむを得ないとして予定されているところである。また出
来高給制は従来の仕事の結果の分量に対して賃金を支払う制度であり、労働の結果
に対する支払いをもつて刺激する刺激給であるといわれ、出来高について労働者の
意欲に依存せざるを得ないから計画予定量よりの増減は制度に内包し、予定されて
いるといわねばならない。そうすると争議行為による労働時間の喪失が出来高の増
減に影響することを理由として争議行為を禁止しようとすることは無意味というほ
かない。
3 作業員は人事院規則八ー一四により任用された非常勤職員とされているが、非
常勤職員については国公法は定まつた規定をおかず、たんに公務員の任用について
は条件付任用により採用され、正式採用となる普通の任用と同法六〇条の臨時的任
用を規定するのみであるから同法は人事院規則八ー一四の根拠法規たり得ない。ま
た人事院の職務及び所掌事務を規定する国公法三条の規定のうち、二項以下は公労
法適用の職員については適用除外となつているから(同法四〇条)職員の任免につ
いても公労法適用下の職員に対し人事院は一般的権限を有しないというべく、従つ
て人事院規則八ー一四の規定自体違法といわねばならない。その規定の文言、内容
からみて国家公務員法付則一三条の委任に基いて制定されたともいえないから人事
院規則八ー一四に基く非常勤職員の任用に関する特例をもつて作業員について差別
取扱いをすることは国公法の趣旨を越えた違法な強行措置といわざるを得ない。
(三) 以上のとおり国有林野事業の業務内容からみて争議行為によつて森林が破
壊されるということはなく、国民生活全体の利益に重大な影響を与えることもない
から国有林野労働者の争議行為に公労法一七条を適用することは憲法二八条の趣旨
に反する。
 また作業員にとつては代償措置としての国家公務員法体系に基く保障機能も奪わ
れているから、自らの団結活動により雇用の安定、処遇の改善を図るより道はな
く、公労法一七条をこれら日給制作業員を主体とする労働条件の維持、向上を目的
とする争議行為にまで適用し、これを禁止することは憲法二八条の保障する労働基
本権を代償なしで奪うことであつて違憲の非難を免れることができない。
三 本件争議行為は公労法一七条で禁止された争議行為に該当しない。
(一) 公労法一七条の法意について
 公労法一七条は公共企業体等の内容、性質、もしくは職員ないし作業員の職務の
公共性の強弱と争議行為の種類態様、規模と相関関係的に考慮し、その公共性の度
合、争議行為の態様等に照らして国民生活全体の利益を害し、国民生活への重大な
障害をもたらす虞れのある争議行為に限りこれを禁止したものと限定的に解される
べきである。そして、争議行為による国有林野事業の一時的停滞がもたらす影響の
程度、本件ストの規模、態様に照らせば、本件ストにより国民生活に対する影響が
生じたとは認められないから、本件ストはいずれも公労法一七条により禁止された
争議行為には該当しない。
(二) 仮に公労法一七条一項につき右のような解釈が許されないとしても、本件
ストは伐出造林など民間林業と全く同一業務に従事する作業員により行なわれた単
純労務不提供であるうえ治山関係職員は含まれていないことなどの本件各ストの態
様、既に述べたような争議に至る経過特に当局側の不誠実不信義な態度を考慮すれ
ば、これに対してまで公労法一七条一項を適用し、同法一八条による解雇又は国公
法八二条による懲戒処分をなすことは憲法二八条の趣旨に反する。
四 本件争議行為に国公法八二条の懲戒規定を適用することは違法である。
 国公法所定の懲戒制度は使用者としての国が国家公務員に対して有する指揮命令
権に基づき、職場秩序を維持するための制度であり、従つてこれによつて保護され
る法益は使用者としての国の有する指揮命令権の確保、職場秩序の維持にほかなら
ない。ところで、争議行為は労働者が集団的意思に基づき、労働契約の履行を集団
的に拒否する行為であるから、当然使用者の指揮命令権は排除され、使用者の所期
する職場秩序は維持できないことになる。しかし、労働組合の争議行為は憲法二八
条、労働組合法七条一項の保障の範囲内にある限り、労働者の権利に属し、その争
議行為を理由として使用者が懲戒権を発動できないことは明らかである。
 公労法一七条は争議権を制限しているが、それは「国民全体の利益の保障」にあ
り、当該使用者を保護するためではないから、これら規制に反して争議行為がなさ
れてもその行為の違法性はその規制違反たる点にのみ存し、使用者は争議行為につ
き職場秩序を乱したとして懲戒権を発動することはできないといわねばならない。
 原告らの本件争議行為は全林野組合員の労働条件の改善を目指して行なわれた集
団的、組織的機関行為であり、その目的と手段においても正当であつたから懲戒処
分の対象とならず、原告らに対し、国公法八二条を適用することは違法といわねば
ならない。
五 本件処分の不当、不法性と不当労働行為及び解雇、懲戒権の濫用、裁量権の逸

(一) 処分の不当、不法性について
 争議行為が一般に解雇或いは懲戒処分等不利益処分の事由となるとしても、その
禁止について期待可能性をもたない争議行為、例えば労働協約を遵守しない使用者
にその遵守を強要する等の特段の事情のある争議行為は不利益処分に値せず、解雇
事由或いは懲戒処分事由とはならないと解される。
 本件において処分対象とされた原告らの行為は、劣悪な労働条件に苦しむ組合員
の下からの強い要求によるもので、個人的な企画、指導行為とは無縁であるばかり
でなく、そこに掲げた諸要求は、林野庁当局との間の確認にかかわる正当なもので
あり、本件各ストに至る間の林野庁当局の右諸要求に対応する態度が不当であつた
点からしても、右諸要求実現のための行為はやむを得ないものであつた。このよう
な事情の存する本件ストに対する原告らの指導は、解雇又は懲戒処分に値せず、従
つて本件処分も不当、不法というほかない。
(二) 不当労働行為
 林野庁当局は自ら認めた労使間の二確認及びこれに基づく一連の各確認が存在す
るにもかかわらず、その内容の具体化、実現を怠つてきた。従つて、これら確認の
実現を求める全林野組合幹部及び組合員の活発な組合活動は林野庁当局にとつてま
ことに迷惑であり、嫌悪そのものであつた。林野庁当局は毎年大量の不利益処分を
加えてきているが、この処分の動向をみると、当局がストライキ参加者のどの範囲
に、どのような不利益処分を加えれば全林野の組織の破壊、弱体化、組合活動の制
限により効果的であるかの観点に立つて恣意的、政治的な処分をなしていることが
明らかである。本件原告らに対する不利益処分も例外ではなく、その決定的動機、
原因は、原告らが全林野三役或いは執行委員として活発な組合活動に従事してきた
こと以外にはないから、被告は原告ら組合幹部に重大処分を加えることをもつて、
全林野組合員を威圧し、全林野の弱体化を意図したというべく、本件各処分は労働
組合法七条一号、三号に該当し、無効である。
(三) 処分権の濫用、裁量権の逸脱
 公労法一七条に規定する争議行為禁止により保護される法益は国民生活全体の利
益であるから、それに支障を生じない本件各ストに対する不利益処分は公正かつ妥
当な必要最小限度のものでなければならない。
 本件各処分が全林野の弱体化を意図する恣意的、政治的処分であることは前述の
とおりであるが、のみならず労使間の争議行為により処分を行なう場合には、当局
側がクリーンハンドを有し、違法な行動がないことが要求されるものと解すべきと
ころ、本件各ストに至る過程をみれば、当局の不誠実な対応が明らかであるから、
当局は本件処分においてクリーンハンドを有しないといわねばならない。また、本
件各ストは組合幹部の企画、指導というよりはむしろ、組合員の全体的な盛り上り
によるもので、幹部個人の企画、指導とは無縁であり、更に本件各ストの目的、態
様、手段、規模及びその実害のないこと、全林野組合員の切実かつ正当な要求に対
する被告の一貫した不誠実な対応、並びに本件処分前後の各年のスト処分の経過、
ILOの報告等諸般の事情を総合すれば本件各ストが公労法一七条一項に触れると
しても、原告らに対する本件処分は著しく合理性を欠き、妥当な範囲を逸脱したも
ので、解雇権或いは懲戒権の濫用として取消されるべきである。
(再抗弁に対する被告の反論)
一 公労法一七条一項の合憲性について
(一) 労働基本権の本質について
 労働基本権は勤労者の生存権確保のための一手段であつていわゆる経済的自由権
にすぎず、それ自体が目的ではないから生存権保障のため他に代るべき手段があれ
ば制限することも合理的な必要性のある限り違憲とはいえない。
 使用者の営む事業、経営若しくはその担当している機能、又は勤労者の地位、職
務如何によつては勤労者の団結又は団体交渉その他の団体行動が国民社会を構成す
る国若しくは地方公共団体、国民全体又は社会の公共的権益を著しく害し、また
国、地方公共団体の公共的機能の実現を妨げることがあり、その場合には法律に基
づいてこれらの労働基本権を制限することは合理的な必要性があるものということ
ができる。
(二) 労働基本権制限についての合憲性判断の基準
 (一)で述べたとおり、労働基本権は経済的基本権として後国家的な権利であ
り、国家が立法によつて労働基本権を具体的に保障するにあたつては「公共の福
祉」に適合するように保障の内容、保障の範囲を決定することができるのである。
従つて労働基本権の制限については立法府の合理的な裁量が認められるべきであ
り、合憲性判断の基準については「合理性」の基準(明白性の原則)によるべきも
のと考えられる。
(三) 労働基本権制限の根拠
1 公務員の地位の特殊性と職務の公共性
 公務員の労働関係は一般私企業におけるが如く労使対抗の関係ではなく、相手方
たる使用者は究極的には国民であり、国民と公務員との関係は憲法にいう信託奉仕
の関係にある。従つて外見上は公務員の使用者は政府という形で現われているが、
その政府に対して公務員は、一般労働者が使用者に対する場合と同じ関係に立つと
はいえない。また、公務員の任用、勤務に関する事項は法律によつて規律されるべ
きもので、立法府に委ねられている事項といえる。このように公務員の勤務条件等
について立法府の裁量が認められる以上公務員中一部の者には争議行為を認めるの
が適当であると考えられる場合があり得るとしてもその範囲は公務員たる地位を保
有させることの可否と共に立法機関において慎重に考慮されるべき立法問題であ
る。
 また公務員は国民のためにその担当する職務内容の別なくそれぞれの職場でその
職責を果す義務を負い、その結果として公務員の職務は国民全体の共同利益と密接
なかかわり合いを持ち、公共性を有するに至るものであり、停廃は勤労者を含めた
国民全体の共同利益に重大な影響を及ぼすか、またはその虞れがあるといえる。従
つてその業務に従事する職員に対して争議行為を禁止する規定を設けることは十分
合理性があるといえよう。
2 公務員の勤務条件決定過程の特殊性
 国家公務員の勤務条件は国会の制定した法律、予算によつて決定され、政府は勤
務条件の最終的な決定権を有せず、従つてその政府に対して争議行為等により圧力
を加えることは政府の処理し得ない事項について要求し、圧力を加えることに他な
らない。このような争議行為が許容されれば政府はそれによる損害を甘受する以外
になく、そのことは国会において民主的に行なわれるべき公務員の勤務条件の決定
過程を歪曲することにもなりかねない。また一般に私企業では労働者の争議権に対
しては市場の抑制力が働き、労働者もその争議権の行使を自制せざるを得ず、使用
者もまた合理的な採算の上に立つて労働者の要求を認めるか否かを決定し得るから
争議行為が妥当な労働条件の決定のために有効な機能を果すのに反し、公務員の場
合には争議権はそのような合理的な労働条件決定の機能を有せず、民主的な決定機
能を停止させるからたんに同様の公益的機能を有する私企業に争議権が認められて
いるというだけで公務員の場合にも認めることには大きな疑問があるといわねばな
らない。
 なお現業国家公務員についてはその労働条件に関する事項は団体交渉の対象と
し、これに関し労働協約を締結することが認められ(公労法八条)、一応労働条件
は労使が自主的に決定するものとされているが、職員の給与においてはいわゆる給
与総額制が採用され(給特法五条)一般に公共企業体等の予算上又は資金上不可能
な資金の支出を内容とする協定は国会の承認を求めなければならない(公労法一六
条)から労使の自主性には限界があり、自主交渉が許容される範囲内で争議権を認
めたとしても争議行為がその限度内にとどまる保障はない。
3 代償措置について
 国公法は公務員の労働基本権の制約に見合う代償措置として身分、任免、服務、
給与その他に関する勤務条件について周到詳細な規定を設け、更に中央人事行政機
関として準司法機関的性格をもつ人事院を設置している。現業公務員である国有林
野事業に従事する職員もその職務の特殊性等に反しない限り勤務条件及び人事院に
関する国公法の諸規定の適用を受けるのであり(国公法付則一三条、公労法四〇
条)、また、その労使紛争解決のため公共企業体等労働委員会が設けられ、同委員
会による賃金関係の仲裁裁定は完全に実施されている。このように国有林野事業職
について代償措置は整備しておりかつ機能も十分果されているということができ
る。
二 限定解釈について
 原告は公労法一七条は国民生活に重大な影響を与える争議行為を禁止したと限定
的に解釈されるべき旨主張するが職務の公共性の強弱及び争議行為による国民生活
への影響などの判断に明確な基準がなく、公務員の行為規範として機能するとはい
えないから限定解釈することはかえつて公務員の地位を不安定にするといわねばな
らない。
三 国有林野事業の公共性と争議行為による影響
1 国有林野事業は、国民の信託に基づき、国民全体の福祉向上を目的として管理
運営されているのであつて、民有林が専ら経済的利益の追求を目的として経営され
ているのとは本質的に相違している。そして、各種事業も国民経済的観点から長期
かつ詳細な一貫した諸計画に基づき有機的に関連しながら運営されており、このよ
うな計画事業では一部における齟齬は直ちに他の部分に波及し、全体的な事業実行
に重大な支障を与える可能性がある。従つて、国有林野事業に従事する作業員の争
議行為により生ずる業務の停廃が国民生活に影響がないという原告の主張は誤つて
いる。
2 本件各争議行為はその日時又は実施時間等に一部の変更はあつたが、団体交渉
の進展のいかんにかかわらず、中央委員会等において予め決定したスケジュールに
基づいて指令を発し、林野庁の事前の警告にもかかわらずこれを無視して実施した
ものである。本件争議行為の多くは営林署の現場事業所等で行なわれているもので
あるがその参加者は事業担当主任をはじめとする定員内職員及び常用、定期作業員
総計約六、三〇〇名であつて前記国有林野事業の公共性及びその経営組織機構が広
汎多岐にわたり有機的統一体として機能していることを考慮すればその影響を軽視
することはできない。
四 国公法八二条適用の適法性について
 公務員の懲戒は公務員関係の秩序維持を目的とする制裁たる性質を有するととも
に公務員として課せられた服務義務違反に対する制裁である。
 前記のとおり公務員は国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務するもの
であつて、かかる公務員の職務の公共性、地位の特殊性から法は公務の内外を問わ
ず、全体の奉仕者としての公務員たること自体を対象として信用失墜行為の禁止
(国公法九九条)、政治的行為の制限(同法一〇二条)、私企業からの隔離・営利
企業等の法律制限(同一〇三条、一〇四条)など公務員固有の服務規定を設けてい
るのである。公務員の懲戒制度は、このような国民全体の奉仕者として公共の利益
のために勤務すべき公務員の特殊的地位に基づき、公務の執行ないしは公務員に対
する国民の信頼を維持することにその目的が存するから、かかる服務規定違反に対
して課せられる制裁でもあるのである。
 従つて禁止された争議行為を行なつた者に対して国公法八二条の懲戒処分をした
としても何ら違法とはいえない。
五 懲戒権の濫用の主張について
 原告らは全林野の要求に対する林野庁の不誠実な対応が本件各ストの原因であ
り、また、本件スト前後の春闘の際のストライキ参加者に対してなされた処分に比
較して本件懲戒処分は過酷な処分であり、懲戒権ないしは懲戒権者の裁量権の濫用
であるかの如く主張している。
 しかしながら、林野庁が全林野の要求に誠実に対応しその実現のため努力をして
きたことは既に述べたとおりであるし、被告は、原告らが本件ストライキ等違法行
為を行なつた事実に対し、現業国家公務員には争議行為を全面一律に禁止している
公労法一七条一項に鑑み、違法行為の態様、程度、懲戒処分の効果とその影響及び
諸般の事情等を総合勘案して懲戒処分のうち、いずれの処分を選ぶべきかを慎重か
つ公正に判断し、決定したものであり、単にその結果を対比較量して懲戒処分の妥
当性を論ずることは裁量権を誤つて理解しているといわざるを得ない。本件原告ら
の懲戒事由となつた行為は、いずれも昭和四六年四月二三日・同月三〇日・五月八
日・同月二〇日行なつたストライキ(職務放棄)であるところ、右ストライキは公
労法一七条一項によつて禁止された違法なものであるのみならず、前記のとおり第
二一回定期全国大会以降の闘争スケジュールに沿つて決行したいわゆるスケジュー
ル闘争であつて、極めて不当違法なものであり、またスト当日予定の諸業務を麻痺
状態に陥入れて実施不能とし、業務の正常な運営を阻害したのであるから、その情
状は決して軽いとはいえない。加えて原告らは、当局の再三の事前の警告を無視し
た上、再三の職務復帰命令をも無視して参加し実行したもので、公務員の命令遵守
義務、職務専念義務及び信用失墜行為の禁止等(国公法九六条一項、九八条一項、
九九条、一〇一条)に違反するもので強い違法性を有するものである。被告はその
他他の職員、社会に与える影響、及び別紙(三)のとおりの原告らの被処分歴等を
総合参酌して本件各処分をなしたものであるから社会通念に照らして合理性を欠き
違法とはいえない。
第三 証拠 (省略)
       理   由
一 請求原因一、二の事実は当事者間に争いがない。
二 国有林野事業の規模と機能
 成立に争いのない甲第一号証の一、二、乙第一号証、第五号証、第一四号証、第
一九号証を総合すると次の事実が認められる。
 わが国の林野面積は昭和四五年四月一日現在で国土総面積約三、七〇〇万ヘクタ
ールの六九パーセントにあたる約二、四四九万ヘクタールを占めているが、国有林
野面積は右林野面積の約三一パーセント、七五八万ヘクタール、国土総面積の約二
〇パーセントを占めている。また国有林野の森林総蓄積は昭和四六年四月一日現在
で約八億七、六〇〇万立方メートルでわが国森林蓄積約一九億立方メートルの約四
六パーセントを占めており、民有林が比較的里山近い地域に位置するのに対し、国
有林野は各地のせき梁山脈沿いの奥地の主要河川の上流地帯に位置し、国土の保
全、水資源の涵養、自然環境の保全、保健休養の場の提供等の公益的機能を重視す
べき森林が多い特色を有している。国有林野事業は、このような国有林野を統一的
かつ計画的に管理運営する国営企業であつて、木材生産事業、林道事業、造林事
業、種苗事業、治山事業等を経営し、もつぱら利潤追求を目的とする民有林野事業
と異なり、企業性の確保を考慮しつつもその適切な運営を通じて国土保全上必要な
施策その他の公益的業務を推進するもので(国有林野経営規程三条)右のような公
益的機能のほか、林産物の供給など経済的機能の面においてもその需給及び価格の
安定に寄与し、更に精神的、文化的な農山村の福祉の向上に努めることもその目的
にしている(林業基本法四条)。
三 処分事由たる争議行為
 昭和四六年四月二三日別紙(四)記載のとおり常勤制確立、全員常用化を要求し
て七二営林署に勤務する全林野所属組合員五三二二名が四時間にわたりストライキ
を実施し、賃金値上げを要求して同月三〇日別紙(五)記載のとおり二〇営林署に
勤務する同組合員四八五名が四時間にわたり、同年五月二〇日別紙(六)記載のと
おり二一営林署に勤務する同組合員五二九名が二時間五〇分にわたりそれぞれスト
ライキを実施したこと、全林野九州地方本部鹿児島分会所属の船員である定員内職
員一一名が景山丸廃船に反対して昭和四六年五月八日四時間にわたりストライキを
実施したことは当事者間に争いがない。
(一) 四・二三ストの背景と経緯
1 作業員の雇用形態、待遇等
 当事者間に争いがない事実と成立に争いのない甲第一号証の八ないし一三、第六
号証の一、二、第一一号証、第一二号証の一ないし六、第一三ないし第一六号証、
第二〇号証、第二六ないし第二八号証、第五九、第六〇号証、第六一号証の一ない
し五、乙第二二ないし第四六号証、第五六、第五七号証、第五九号証、第六一号証
の一、二、第六二号証、第六八号証の一、二、第六九ないし第八二号証、第八四な
いし第八七号証、第八九号証、第九一ないし第九四号証と弁論の全趣旨によつて真
正に成立したと認められる甲第五〇号証、第五二号証及び原告c本人尋問の結果と
これによつて真正に成立したと認められる甲第五三号証を総合すると国有林野事業
における作業員制度について次の事実が認められ、原告c本人尋問の結果中右認定
に反する部分は採用しない。
(1) 一般に林野事業経営は、造林、種苗事業のように地拵え、植付けの作業適
期が春から秋に限定され、また、積雪地帯では冬の作業遂行は不可能であるなどそ
の事業の性質上自然的、季節的要因に左右される面が多く、年間を通じて平準化し
た事業を継続することは困難であるため、作業員の雇用も季節的形態をとらざるを
得ないことから、右作業員の大部分は定員外職員としての扱いを受けて現在に至つ
ているが、賃金が日給制であり、有期雇用であること、その他諸手当、休暇等の労
働条件につき定員内職員に比し劣るところがあつたため、その地位と処遇問題は林
野庁及び全林野間の長年の懸案事項となつていた。
(2) 国有林野事業は昭和二二年にいわゆる林政統一が実現して従来の農林省、
内務省の内地国有林、北海道国有林、御料林の各所管が一本化され、それと併行し
て国有林野特別会計法が制定され、独立採算制を指向することとなり、同時に作業
員の身分についても昭和二二年一〇月制定の国公法では「単純な労働に雇用される
者」として国家公務員の特別職として取扱われたが、翌二三年には一般職の国家公
務員に切換えられ、非常勤職員として人事院規則が適用されることになつた。しか
し、労務の実態は戦前の組頭制度が残つているところもあつたので林野庁は昭和二
五年に「営林局署労務者取扱規程」、同二六年には「営林局署労務者処遇規程」を
定めて、同制度を廃止し、組頭は班長として直接雇用されることになつた。
 その後昭和二八年に国有林野事業の作業員の労働関係には公労法が適用されるこ
ととなり、同年一月一日林野庁と全林野との間に「労働条件の暫定的取扱いに関す
る協定」が結ばれ、更に同二九年三月には「定員外職員の雇用区分、雇用基準及び
解雇の場合に関する覚書」が締結され、労使協議による雇用制度として常勤及び常
用作業員、定期作業員、臨時作業員の新雇用区分が定められ、同三〇年四月国有林
野事業職員就業規則、同作業員就業規則が制定され後者の中に右の雇用区分が規定
され更に常用、定期、臨時の各作業員の賃金については同三六年九月に三六林協第
三五号協約が結ばれ、同三七年一一月には「定期作業員の優先雇用」について労使
の確認がなされた。かかる変遷を経て、同四四年四月に前記昭和二九年三月の覚書
を改正した「雇用区分等覚書」が締結され、常勤等を除く定員外職員として常用作
業員、定期作業員、臨時作業員の雇用区分、雇用基準等が定められ、以後現在に至
つている。
(3) 現行の雇用区分を定めた昭和四四年四月の雇用区分等覚書によれば、作業
員の雇用基準につき、常用作業員(一年以上雇用される者)が、従来「一年以上の
継続勤務の実績及び同種職務の経験又は同程度の能力の保有」をも資格要件として
いたのを改め「一二ケ月をこえて継続して勤務する必要があり、かつ、その見込が
あること」をもつて足りるとし、定期作業員(毎年六ケ月以上雇用される者)が従
来「前年度同程度の期間の継続勤務の実績」をも資格要件としていたのを改め、
「毎年同一時季に六ケ月以上継続して勤務することを例とする必要があり、かつ、
その見込があること」をもつて足りるとし、臨時従業員(臨時に雇用される者)が
従来日雇と月雇があつて月雇が「一ケ月以上の継続勤務の必要」等を資格要件とし
ていたのを改め、右二種の区別を廃し「臨時に勤務する必要があること」をもつて
足りるとして、いずれもこれを緩和することによつて、更に雇用の安定化がはから
れることとなつた。昭和四六年七月現在における常用作業員は約一万六〇〇〇人、
定期作業員は約一万九六〇〇人、臨時作業員は約四万二〇〇〇人である。
 これら作業員は非常勤職員としての資格で人事院規則八ー一四に基づき採用され
ているが、常用作業員は雇用期間(二ケ月)の更新により実質上通年雇用であり、
定期作業員は、雇用期間(二ケ月)の更新による六ケ月以上一年未満の有期の雇用
であるが、翌年の作業適期に優先的に再雇用され冬期の失職期間中は、国家公務員
等退職手当法一〇条による退職手当又は失業保険金を受給するという反覆雇用であ
り、いずれも実質上安定した雇用形態となつている。その結果、常用作業員の平均
勤続年数は七、八年、定期作業員の平均在職年数は八、九年に及んでいる。
(4) 国有林野事業に従事する職員の賃金については給特法が適用され、同法三
条二項により国家公務員、民間企業の従業員の給与等諸般の事情を総合して定めら
れるが、定員外職員である作業員については昭和三六年九月に締結された前記三六
林協第三五号協約によつており、同協約は作業員の基本賃金につき日給制をとり、
その支払形態として定額日給制と単純出来高給制を定めている。これらの賃金額の
決定については毎年団体交渉が行なわれるが、合意に達することが殆んどないの
で、公労法により労使双方又はいずれかが公共企業体等労働委員会に調停、仲裁を
申請し、その結果、年々金額の上昇がみられ、月給制職員である定員内職員との上
昇率の差が縮小に向つている。このほか労使交渉の結果、常用及び定期作業員に対
する期末手当、扶養家族手当、通勤手当、住居手当、薪炭手当、石炭手当、寒冷地
手当、役付手当、山泊手当等の諸手当の支給、各種休暇及び祝日の有給化等の待遇
改善が順次制度化され、実現するに至つており、定員内職員との処遇上の格差及び
常用作業員と定期作業員との処遇上の格差が漸次縮小されつつある。なお、国有林
野事業の会計は国有林野事業特別会計法により特別会計として運営され、歳入歳出
の予算は事業勘定と治山勘定に区分され国会の議決を受けることになつているが、
定員内職員の給与については予算上目の立てがあり予算給与総額に拘束されるのに
対し、定員外職員である常用、定期、臨時の各作業員の給与については予算上目の
立てはなく事業費(物件費、役務費、労賃)の中に積算される仕組みになつてい
る。
2 雇用安定化をめぐる労使交渉と四・二三ストの実施
 当事者間に争いのない事実と前掲甲第二〇号証、第二七、第二八号証、第五二、
第五三号証、乙第二九ないし第三七号証、第五九号証、第六九号証、第七一号証、
成立に争いのない甲第一八、第一九号証、第三〇号証、第三二号証、第三六、第三
七号証、乙第四七ないし第五三号証と原告c、同dの各本人尋問の結果を総合する
と「二確認」をめぐる労使交渉の経過について次の事実が認められる。
(1) 全林野の作業員の雇用安定化要求は、作業員が恒常的業務に従事している
との前提に立つたうえで、その定員内への組入れか、少なくとも、定員内職員と同
じ待遇を受け得る常勤職員としての地位を法的に位置づけるという点にあつたが、
林野庁は全林野の要求に対し、昭和四一年三月二五日直営直用による雇用の安定化
の検討と通年化の努力(三・二五確認)、同年六月三〇日基幹要員の臨時的雇用制
度の抜本的改善による雇用の安定化の実現とそのための当面の措置として生産事業
の通年化による通年雇用及び事業実施期間の拡大、各種事業の組合わせによる雇用
期間の延長をはかること(六・三〇確認)を要旨とする作業員の雇用安定化のため
の方策を確認した(当時の全林野の雇用安定化要求は前記の如く明確には整理され
ていなかつたが、基本的にはこれと同旨に出たものとみて差支えない)。作業員の
雇用、処遇改善は前記「二確認」をどう具体化するかにあつたが、六・三〇確認
後、林野庁当局は雇用制度検討会を設置し、制度改正の具体化を検討し、全林野も
昭和四二年一〇月に臨時的雇用制度を抜本的に改善し、基幹要員の全員常用化を実
施すること、常用作業員の処遇を改善することなどを内容とする「差別撤廃要求」
を林野庁に提示した。かくて、労使は交渉とこれに基づく確認事項を重ねたが、と
くに昭和四三年一二月の団体交渉において林野庁は、作業員を国公法上の常勤職員
とするについては昭和三六年の閣議決定「定員外職員の常勤化の防止について」、
昭和三七年一月の同「定員外職員の定員繰入れに伴う措置について」があるので困
難であるとしながらも、「基幹要員は通年雇用に改める。基幹要員については常勤
性を付与する。処遇関係についても常勤性にふさわしいよう改善する。」旨常勤職
員に準ずる性格を与え、これにふさわしい処遇を図ろうとする基幹要員の臨時雇用
制度の抜本改善の基本方向を明らかにした。そして、右基本方向に沿つて林野庁は
抜本的解決について予算措置及び国家公務員共済組合法との関連については大蔵省
と、国公法及び人事院規則との関連については人事院と、昭和三六年の常勤化防止
の閣議決定との関連については行政管理庁と、退職手当法との関連については総理
府人事局と折衝したが、定員外職員である非常勤職員の常勤化の問題は林野庁固有
の事項ではないこと等の理由で、これら関係省庁の了解を得るに至らなかつた。か
かる事態の推移の中にあつて、林野庁は、全林野から当局なりの構想を示すように
との強い要求もあつたので、関係省庁との折衝を今後も鋭意に進めることを前提と
して、同庁なりの雇用制度改正の案をまとめ、昭和四五年七月非公式に全林野に対
し、国有林野事業における作業員の雇用区分の改正について「現行の三区分(常
用、定期、臨時)を基幹作業員(通年及び有期)と臨時作業員に改正し、基幹作業
員については資格要件を定めて経験年数、技能その他の選考基準により、現行の常
用、定期作業員の中から人事院規則八ー一二「職員の任免」に基づいて任用し、処
遇についても国公法上の常勤職員として取扱い、臨時作業員については人事院規則
八ー一四「非常勤職員等の任用に関する特例」に基づき任用し、処遇についてはほ
ぼ現行通りとする。」旨のいわゆる「七月提案」を行なつた。「七月提案」に対
し、全林野は「二確認」の基幹要員とは現行の常用定期作業員の全員を指すもので
選考により基幹作業員を設けることは新たな差別を設けるものとして反発すると共
に全作業員についての常勤性を強く要求し、同年九月には早急に具体策をたてて実
現するようにとの総合的要求書を提示し、更に後記第二一回定期大会の闘争方針に
基づき同年一二月一一日には全国六七営林署において組合員約四、〇〇〇名が参加
して半日のストライキを実施した。林野庁はその後も作業員の地位の抜本的改善に
ついて昭和四六年実施を目指して関係省庁との折衝を重ねたが了解を得るに至ら
ず、同年度の実施は見送らざるを得ない状況となつた。
(2) 全林野は、昭和四五年七月開催の第二一回定期大会において闘争目標の最
重点課題を大幅賃上げと作業員の差別待遇改善(常勤制確立)とし、後者について
は秋から年末の予算編成段階、春闘段階で最大限のストライキをもつて闘うことを
決定していたが、昭和四六年三月一、二日東京における全林野労組第五〇回中央委
員会において右闘争方針に基づき春闘の一環として、賃上げ闘争のほかに同月二六
日常勤制確立、全員常用化を要求して半日ストライキを行なうとの方針を決定し、
スト準備指令を発したが、国有林野事業の作業員の処遇改善問題は同月二三日の衆
議院内閣委員会、同農林水産委員会において論議され、同月二五日の同委員会にお
いては、林業労働者の雇用安定、他産業なみの賃金水準の確保、労働条件の改善等
を講ずること、基幹労働者については常勤職員との雇用条件との均衡を考慮しつつ
処遇の改善に特段の措置を講ずること等を内容とする「林業振興に関する件」
(案)の決議がなされ、国会動向を受けて林野庁長官も同月二五日の団体交渉にお
いて同年四月中旬を目途に早期に結論を得るよう努力する旨表明したので、全林野
は右政府の統一見解をみるとして同年三月二六日のストライキを延期した。
 同年四月一三日の衆議院農林水産委員会において林野庁長官は関係省庁と協議し
た上での政府統一見解として、国有林野事業作業員の常勤性付与の問題について
「国有林野事業の基幹的な作業員は、その雇用及び勤務の態様からすれば、長期の
継続勤務となつていること等、常勤の職員に類似している面があるものと思料され
ます。しかしながら、これらの基幹的な作業員を制度的に常勤の職員とすることに
ついては、国家公務員の体系にかかわるなかなか困難な問題であるので、慎重に検
討してまいりたいと存じます。」との見解を表明した。そこで全林野は政府統一見
解の常勤性確立の具体化の基本方向の最低限の要求であるとして「1、現行雇用区
分、雇用基準を変更しないこと。2、『七月提案』の『選抜』はしないこと。3、
常用作業員の処遇については基準内賃金は一応除外して常勤職員と同じ処遇にする
こと。4、定期作業員については常用作業員に準じて改善を図ること。5、出来高
払制をなくし、常勤制度にふさわしい賃金制度を確立するための特別の委員会を設
けること。6、定期の常用化促進の具体化計画を早急に組合に提示すること。」の
内容を含む常勤性確立についての具体的メモを提示してきたので、林野庁は「1制
度にのせるということで努力する。2当局の『七月提案』では組合との円満解決に
ならないと考えている。3国会での林業振興決議は尊重する。」などの回答をし
た。その後も全林野と林野庁間で交渉が重ねられたが合意に至らず結局全林野は被
告及び各営林局長の事前の警告にもかかわらず原告a中央執行委員長名義の檄文を
発して同月二三日前記のとおり当事者間に争いのない四・二三ストを実施した。
3 雇用安定化のため実施された施策
 因みに当事者間に争いのない事実と前掲乙第五九号証、第七一号証、成立に争い
のない乙第五五号証によれば、林野庁は独自の立場から全林野の要求に対応し既に
認定した事項のほか次のように具体的施策を実施し漸次作業員の処遇改善をはかつ
てきたことが認められる。
 林野庁は「二確認」の雇用安定の具体的実施及び農山村の過疎化による従来の若
年労働力の確保の困難性に対処するとの観点から昭和四一年一〇月、「直営直用を
原則とし、能率性を前提としてこれを積極的に拡大し、雇用の安定を図る。基幹要
員の臨時的雇用制度の抜本的改善を検討するが、さし当り、製品生産事業の通年化
による通年雇用の実現、事業実施期間の拡大などを検討して雇用の安定に努め
る。」旨を基本方針とする長官通達を発し、当面の措置としては、事業について
は、製品生産事業、造林事業を主体に直営直用の拡大を図り、冬山作業についても
可能なものについては漸進的に実施し、雇用については余剰労働力の活用と定期作
業員の雇用の通年化等を図ることとした。その後、冬山作業の実施の可能性の追求
や各種事業の組合せ等による事業の平準化によつて昭和四五年までの間に約一万名
が常用化され、その結果昭和四一年当時定期作業員の平均雇用期間は七年五か月で
あつたが昭和四五年末には八年一か月となつた。また昭和四四年には既に認定した
ように前記「雇用区分等覚書」により従来、常用、定期各作業員は過去一年ないし
六か月以上の継続勤務の実績を必要とした点が廃止され、通年雇用のために署間常
用の制度が設けられ、臨時作業員の月雇制度が廃止されて極力定期化されるなど雇
用の安定が図られ、従来、貨物自動車の運転手、集材機の運転手等でもつぱらその
運転業務に専念する常用作業員で定員外職員とされていた者についても昭和四一年
以降昭和四六年までに約二、七〇〇名が欠員補充方式で定員内職員に繰り入れられ
るなどの改善が実施された。
(二) 四・三〇、五・二〇ストの経緯
 当事者間に争いのない事実と前掲甲第一三ないし第一六号証、第五二、第五三号
証、乙第五六、第五七号証、第六八号証の一、二、成立に争いのない第六五号証の
一ないし四、第一〇八号証、第一一一号証、及び原告c本人尋問の結果を総合する
と次の事実が認められる。
 全林野は、前記第二一回定期大会において作業員の差別待遇改善と共に闘争目標
の最重点課題とされた大幅賃上げにつき春闘共闘、公労協共闘の一環として強力な
ストライキを組織して闘うことを決定していたが、昭和四六年三月一、二日の全林
野労組第五〇回中央委員会において右闘争方針に基づき春闘の一環として四月下旬
から五月上旬の自主交渉の山場と同月中旬の決着の山場で半日から一日のストライ
キを行なうことを決定したあと、同月八日林野庁との第一回団体交渉において物価
上昇率(七・七パーセント)、他産業との格差等を理由として月給制月額平均一万
五、三〇〇円(当時の平均月給額六万四、〇〇〇円)、日給制(常用、定期作業
員)日額平均一、三〇〇円(当時の平均日給額二、一〇〇円)の賃上げを要求し、
以降労使間では数回にわたつて交渉が重ねられた。林野庁は昭和四六年四月三日の
第三回交渉において同年度は五〇億円の赤字予算を組んでおり、また、一般公務員
の給与、民間賃金等を総合的に勘案する必要があるので慎重に検討する旨回答し、
同月二七日の第七回団体交渉では国有林野事業が逼迫した財政事情であることを理
由として月給制月額平均四、八九六円(賃上率七・七パーセント)、日給制日額平
均二一三円(賃上率一〇・一一パーセント)の有額回答をした。これに対し、全林
野は前年の第一次回答と同額で、前年の上昇率を下廻つていること、物価上昇率を
考慮すると実質賃金が低下し、日給者と月給者の格差の是正は達せられないこと、
民間における賃上げについての回答単純平均約九、〇〇〇円を下廻ることを理由と
して右回答を不満とし、統一歩調をとつてきた他公労協組合との関連では使用者側
が調停段階では努力する旨表明しているのに当局にはそれがないとして独自で予定
のストライキを行なう旨決定し、四・三〇スト突入を指令し、被告及び各営林局長
による事前の警告にもかかわらず、翌二八日a中央執行委員長名義の「檄」文を発
し、前記争いのない四・三〇ストを実施した。
 その後も団体交渉は続けられ、全林野は当初予定の同年五月七日のストライキを
同月一四日に予定変更し、更に同月一二日の第一一回団体交渉において当局が「賃
金引上げについては今後、更に民間賃金の動向もみながら誠意をもつて努力する。
日給制についても月給制の賃金水準との間にかなりの開きが存在する事実に立つて
誠意をもつて対処する。」旨の回答をしたことを考慮するとして更に同月二〇日に
延期したが、同月一三日の第一二回の団体交渉において交渉は決裂に至つた。翌一
四日全林野は公労委に調停を申請し、労使交渉の場は調停に移されたが、同月二〇
日被告及び各営林局長による事前の警告にもかかわらず全林野は前記争いのない
五・二〇ストを実施した。
 なお、公労委は同月二二日に調停委員長の最終的な解決案として月給制月額平均
七、四一三円、日給制日額平均三三〇円を提示したが合意に至らず、同月二五日仲
裁手続に移行し、同年六月一日調停委と同額の仲裁裁定により妥結した。
(三) 五・八ストの経緯
 当事者間に争いのない事実と成立に争いのない甲第五六号証、乙第一〇九号証、
第一一〇号証、第一一二号証の一、二、第一一三、第一一四号証、第一一五号証の
一、二、第一一六ないし第一一八号証と原告fの本人尋問の結果(後記採用しない
部分を除く。)を総合すると五・八ストの経過について次のとおり認められる。
 景山丸(一九九トン、一二名乗組み)は昭和三一年以降屋久島国有林における生
産材を鹿児島港へ輸送するため鹿児島営林署に配署され、僚船錦嶺丸と共に木材の
直営輸送に使用されていたが、昭和四五年四月一日屋久島国有林の自然保護に関す
る施業計画の樹立により同島の国有林の年間伐採指定量が前計画の約七八パーセン
トに減少し、これに伴い、同島からの輸送量は減少し、加えて人件費の高騰、償却
費の増加等により輸送コストは上昇し(景山丸の昭和四四年度の一立方メートル当
りの運送単価が二五一七円、昭和四五年度は三七二六円であり、錦嶺丸については
それぞれ二八五四円、三二一〇円)、民間請負化の方が安価な状態となつていた。
とくに景山丸の老朽化は著しく、昭和四一年以降修理費は増加し、昭和四五年のみ
で九一七万円を要し(錦嶺丸については二〇七万円)、更に継続就航すれば昭和四
六年度においては定期検査のための出費九五〇万円が見込まれ、他に同年五月の中
間検査を受けるとすればそのための出費も予定された。
 そこで、熊本営林局は同年度業務計画の一つとして同船の廃船計画を立案し、同
年二月八日全林野労組九州地方本部に対し、右輸送コストの増加等の理由を説明し
て同船の廃船及び関連措置として「1継続就航の錦嶺丸の乗員について再編成し、
錦嶺丸ならびに景山丸の乗員中海技免許を有する一二名を優先的に選考し、乗船さ
せる。2他職員は本人の希望を尊重して近接営林署の自動車運転手等の機械要員と
して配転する。3機械要員としての必要な資格取得については今回限りの措置とし
て別途の基準により公務扱いで、資格取得に必要な研修参加などを実施する。但
し、六〇歳以上の高令職員五名については極力退職勧奨を行なう。」等を提案し
た。これに対し、全林野は「廃船は雇用安定のための事業確保を規定する『二確
認』に反する。新業務計画実施予定の同年四月一日まで二か月足らずで十分な協議
ができないうえ、職種変更の者、勧奨退職を受ける者にはそれなりの決意が必要で
ある。景山丸運航にあたつては屋久島杉のみでなく他荷物も集荷し、併せて積載運
送することにより輸送コストは下げられる。」などの主張をして廃船に反対し、同
年二月二二日全林野労組中央本部、九州地方本部、鹿児島分会の共闘会議を発足さ
せ、官船廃止阻止闘争を展開することとした。労使間では更に中央交渉及び局、署
段階での下部交渉が行なわれ、同年三月二九、三〇日の中央交渉では同年四月一日
の廃船予定日を延期し、同月二八日を労使間の最終交渉期限として交渉が続けられ
ることになつたが、全林野は当局の廃船の決意が固く、労使の意見は対立のまま平
行線をたどつていたので、交渉が決裂に至つた場合を予想し、同日を抗議スト予定
日としてその準備指令を発した。しかし、更に同月二七日頃の中央交渉では交渉期
限が同年五月八日まで延期されたのでスト予定日も同日に変更された。この間当局
は必要な各種資料を提示して労組側と同日までの間二六回に及ぶ交渉を行ない、こ
れとは別途に景山丸が所属する鹿児島営林署においては四四回にわたる折衝を行な
つたほか、最終段階として同月六日から同月八日早朝までに及ぶ交渉を行なつた
が、両者は合意に至らず当局は組合側に景山丸の廃船を通告し、交渉は決裂した。
そこで全林野は前記争いのない五・八ストを実施した。
 なおその後交渉は再開され、同年七月八日廃船に伴う関連措置として「当局は職
員の配置換えについては勤務地、職務内容等について本人の意思も尊重して協議の
上円満に解決するよう努力する。退職勧奨については船員を理由に特別扱いしな
い。」などを内容とする官船官トラ廃止に伴う労使条件について団体交渉議事録抄
NO・2が締結され、景山丸の廃船問題は事実上解決に至り、五・八スト以後鹿児
島県山川港に繋留されていた景山丸も昭和四七年一月民間業者に引きとられ、同年
二月には独航機能を撤去され船籍を失うに至つた。
 以上の事実が認められ、原告fの本人尋問の結果中、景山丸が廃船処分後民間業
者に売却され海運業務に供されていたとの部分は前掲の各証拠に照らし、採用する
ことができない。
(四) 争議行為における原告らの役割
1 dを除く原告らが、別紙(二)記載の全林野労組の中央本部の三役又は執行委
員として、四・二三、四・三〇、五・二〇の各ストを企画し決定した第二一回定期
全国大会、第五〇回中央委員会等一連の諸会議を主催するなどして右争議行為の企
画、決定において中心的役割を果たし、別紙(四)ないし(六)記載のとおり延べ
一一三営林署において延べ六三三六名の職員にこれを実施せしめたこと、原告dが
別紙(二)記載の組合役職にあつて旭川営林局管下の営林署職員の四・二三、四・
三〇、五・二〇の各ストを指導し実施せしめたことは当事者間に争いがない。
2 原告g、同e、同fが景山丸廃船問題の交渉のために中央本部から派遣され、
団体交渉の指導等にあたつていたこと、同人らが昭和四六年五月八日五・八ストを
指導、実施させたこと、原告eはその実施の責任者として現地に赴き、同日早朝鹿
児島貯木場前で実施された職場大会においてストライキ突入を指示するなど組合員
の職務放棄につき自ら現地でこれを指導したことは当事者間に争いがなく、原告f
の本人尋問の結果によれば、前記のとおり全林野労組中央本部は当初の交渉、期限
最終日とされた同年四月二八日をスト予定日として準備指令を発したが、同期限は
同年五月八日まで延期されたのでスト予定日を同日に変更したこと、スト参加予定
の組合員は景山丸の乗組員とされたが、当日乗船していない者も予想されるのでス
ト参加者の指名等その他の実施方法は派遣された原告gら三名の中央執行委員と地
元の九州地方本部にゆだねられていたこと、交渉決裂後、原告gらにおいてスト参
加者を指名し、スト突入を指令したことが認められる。
 右の事実によれば、五・八ストはもとより全林野労組中央本部の企画指導のもと
に行なわれたものであるが、その実施についての具体的指令は同原告ら三名と九州
地方本部により発せられたものということができる。
(五) 原告らの行為と公労法一七条一項違反
 本件各ストは集団的労務提供拒否であるから、公労法一七条一項前段により禁止
された同盟罷業に該当し、原告らが本件各ストにおいてなした前記(四)の行為は
その共謀、そそのかし、あおり行為ということができる。被告は同条違反を理由と
して本件処分に及んだのであるが、原告らは同条の違憲性、国公法による懲戒処分
の違法性、本件処分の不当性等を主張するので、以下に項を改めてこれらの点に順
次判断を加えることとする。
四 公労法一七条に関する原告らの主張について
(一) 原告らは公労法一七条一項が憲法二八条に違反する旨を主張する。しか
し、公労法一七条一項が合憲であることは、昭和三〇年六月二二日、昭和四一年一
〇月二六日、昭和五二年五月四日の各最高裁判所大法廷判決により一貫して示され
ているところであるから、右主張を採用することはできない。
 この点に関連し原告らは国有林野事業に従事する職員、特に定員外職員である作
業員としての地位の特殊性から同事業には公労法一七条を適用すべきではない旨を
主張する。しかし、名古屋中郵事件に関する昭和五二年五月四日の前記最高裁判所
大法廷判決は、公労法適用下にある五現業及び三公社の職員につき、勤務条件決定
の面からみた憲法上の地位の特殊性(勤務条件法定主義、財政民主主義からの制
約)、市場における抑制力等の面からみた社会的経済的関係における地位の特殊
性、職務の公共性、代償措置の整備等の諸点から公労法一七条の合憲性を説明して
おり、これはそのまま国有林野事業に従事する作業員にも妥当する。すなわち、国
有林野事業に従事する作業員は雇用形態、給与体系等において定員内職員とは異な
つた処遇を受けているとはいえ、ひつきよう国家公務員である以上、その給与は国
の財政に依存し、勤務条件は本来的に立法府において決定されるべき地位におかれ
ていることに変りはない。また、これら作業員の社会的経済的関係における地位に
つき他の国家公務員と特に別異に扱うべき根拠は見出し難いし、既に認定した国有
林野事業の規模、公益的機能からみてその職務の公共性も肯認し得るところであ
る。更にこれら作業員も分限、不利益処分に対する審査請求等身分保障の規定を含
む国家公務員法の適用を受けると共に公労法により当局との間の賃金額の決定をは
じめとする諸紛争につき公平な公共企業体等労働委員会のあつせん、調停及び仲裁
を受ける機会を与えられているのであるから、その代償措置も整備されているもの
ということができる。もつとも、定員外職員である作業員は国公法付則一三条に基
づき一般職に属する職員に関する例外として定められた人事院規則八ー一四により
二ケ月以内の期間を定めて採用された非常勤務職員としての扱いを受けるのである
から、いわゆる雇用期間の定めのない定員内職員とは異なり期間の経過によりその
地位を失うことになり、その他このことから派生して定員内職員と全く同一の扱い
を受けていない面もあるが、この点は国有林野事業の雇用形態が受ける自然的季節
的制約に由来するものである以上やむを得ないものというべきであり、このことが
直ちに作業員の争議行為について公労法一七条の合憲性否定にまでつながるものと
はいい難い(付言すれば、作業員の雇用形態も期間の反覆更新、優先雇用、失職期
間中の退職手当又は失業保険金の支給等の運用により実質上通年化、長期化がかな
り実現していることは、既に認定したとおりである)。以上述べたところによれ
ば、国有林野事業に従事する定員外職員である作業員につき、他の公労法適用下の
職員と特に区別し争議権を認めなければならないような事情は見出し難い。
 なお、公労法は国有林野事業を含む五現業及び三公社の職員に対し団結権及び管
理運営事項を除き当局側と団体交渉権、労働協約締結権を認め、政府又は三公社に
財政に関する一定事項につき決定権を与えているが、それらは前記名古屋中郵事件
の大法廷判決が示すように、憲法二八条の当然の要請によるものではなく国会が憲
法二八条の趣旨をできるだけ尊重しようとする立法上の配慮によるものというべき
である。このように国有林野事業の職員が公労法上有する団体交渉権等が憲法上の
ものでないとされる以上その背後に争議権の存在を当然のものとして予定すること
はできないのである。換言すれば、国家公務員の勤務条件につき本来の決定権者で
ある国会に対し争議権の行使が許されない以上、国会からその決定権の委任を受け
た政府に対してもまた争議権の行使は許されないことに帰着せざるを得ないのであ
る。
 このほか、原告らは立法事実の欠如又は消滅ということを違憲性の根拠として主
張する。しかし、実定法規はそれが適法な手続を経て廃止されない限り効力を有す
るものとして合理的に解釈すべきであり、これまで述べた憲法及び公労法の解釈
は、現憲法体制下におかれている公務員としての地位の特殊性ということに着目し
て導かれたものであるから、原告らの右主張は失当である。
(二) 次に原告らは国有林野事業に従事する職員の争議行為による影響という観
点から同事業には公労法一七条を適用すべきでないこと又は同条を限定合憲解釈す
べきことを主張する。しかし、公労法一七条一項の法意が公共企業体等の職員の職
務の公共性に着目し争議行為による国民生活への支障防止の趣旨を含むことはもと
よりであるが、何よりも財政民主主義にあらわされている議会制民主主義という国
政の基本原則を保持することに主眼をおいているものと解せられ、名古屋中郵事件
の大法廷判決が引用する昭和四八年四月二五日の大法廷判決が判示するように「勤
務条件の決定は民主国家のルールに従い、立法府において論議のうえなされるべき
もので、同盟罷業等争議行為の圧力による強制を容認する余地は全く存しないので
ある」から、争議行為による影響の有無、程度いかんは合憲性の判断処分の適否そ
のものを左右するものではなく、事情により処分の当否、すなわち処分権者の裁量
権の濫用の有無を判断するための一資料になるにとどまるものというべきである。
(三) 原告らは作業員の業務形態と民間林業従事者のそれとの同一性、本件各ス
トの態様(単純労務不提供、四・二三、四・三〇、五・二〇各ストに治山関係職員
不参加)、本件各ストに至るまでの林野庁の不誠実な対応等からみて本件各ストに
公労法一七条一項を適用することは憲法二八条の趣旨に反する旨主張する。
1 先ず原告らが国家公務員として扱われる以上作業員の業務形態及び本件ストの
態様を理由に公労法一七条一項の適用を否定することは相当でない。
2 次に、本件各ストにおいて、公労法一七条一項の適用を否定しなければならな
い程林野庁当局に不誠実な対応があつたかどうかについて、検討する。
(1) 四・二三スト関係
 全林野の雇用安定化要求の中心をなす定員外職員である作業員の常勤化問題はひ
とり林野庁固有の問題ではなく、多かれ少なかれ他の省庁にもみられるところで、
これら職員を定員に組入れるか、或は定員外の常勤職員として制度的に処遇するか
いずれの措置をとるにしても、それはいわば政府全体の問題として国家公務員制度
の根幹に触れるものであり、究極的には広く非現業及び現業の国家公務員全体に通
ずる勤務条件にかかわる立法上予算上の措置を要する事項として、立法府の意向と
無関係には決し得ないものであつて、林野庁当局をも含め政府において独自に抜本
的な解決を期待しうる性質のものではない。
 国有林野事業に限つてみても、四・二三ストにおいて全林野が要求した常勤制の
確立、全員の常用化等を実現するには、右のような制度的制約を改めるほか、同事
業にとつて避け難い自然的、季節的制約下にあつて継続した事業量を確保し、かつ
可能な限り事業経営における収支の経済性を維持する必要があるのであり、かかる
状況下にあつて、既に認定したように、林野庁は、全林野の要求に対応し、労働協
約の締結、行政上の運用措置等によつて、事業の通年化、多数作業員の常用化、雇
用期間の反覆更新・前年度雇用者の優先雇用・年度間の失職期間中の失業保険金支
給等による実質的な雇用継続の実現、賃金以外の諸手当の支給、各種休日休暇等の
有給化等を実施することにより、いわゆる「二確認」等において示した作業員の処
遇改善に努めてきたことを認め得るのである。しかし、法形式上作業員が定員外職
員として期間二ケ月の非常勤職員として扱われる以上定員内職員と全く同一の処遇
をすることは困難であり、常用作業員と、定期作業員との間においても後者が冬期
間失職する身分である以上両者に処遇上の差異があらわれるのもやむを得ないもの
があるというべきであり、現に弁論の全趣旨によれば、昭和四五年度の新賃金事案
についての仲裁裁定において、公共企業体等労働委員会は、現時点における格差縮
小の必要を認めつつも「定員外職員は職務内容、雇用形態、賃金体系などの点で、
定員内職員と異なるから、両者の賃金水準が必ずしも同一でなければならないとは
考えない。」旨の見解を示していることが認められるのであり、このことは同じく
定員外職員である常用作業員と定期作業員との処遇にもあてはまるものということ
ができる。
 要は全林野が要求する作業員の雇用安定化の問題は国政という高い見地から長期
的視野の下に改革の途を見出すべき性格のものというほかはなく、勿論その間にあ
つて、林野庁を含め政府として、これを放置すべきではなく、現行制度の枠内で可
能な限りでそのための対応措置を講じなければならないが、既に認定したような当
局による諸々の措置、全林野に対する諸提案、その実現のために払つた各省庁との
折衝等は、一応評価すべきものを含んでいるものと認めて差支えなく、(原告c本
人尋問の結果によれば、全林野としても、処遇改善についての当局側の努力を評価
していないわけではないことを認め得るのである)、それにもかかわらず、全林野
がなおこれを不満足として争議行為に訴えたことは、公労法一七条一項に違反する
ものと認めざるを得ない。
(2) 四・三〇、五・二〇スト関係
 昭和四六年度の賃金値上げ交渉の争点の一つである日給制賃金の格差是正につい
ても月給制との比較自体が困難な要素を含むうえ、「一〇確認」による他産業五〇
〇人規模を目標として毎年漸次解消の方向で賃上げが行なわれていたこと、原告c
本人尋問の結果によれば、民有林野事業の従業員のほとんどが日給制であつて、こ
れと対比すると国有林野事業の従業員の方が逐次改善された結果全般的に高水準に
あると認められること、既に認定したように昭和四五年度の国有林野事業経営は大
幅な赤字であり、昭和四六年度も赤字予算であつてある程度の低額回答もやむを得
なかつたことを考慮すると林野庁の団体交渉における対応が不誠実であつたとまで
評価することはできない。従つて、四・三〇、五・二〇ストにつき公労法一七条一
項の適用を否定しなければならない事情は見出し難い。
(3) 五・八スト関係
 景山丸の廃船問題をめぐる経過をみるに廃船によつてその一部乗組員について職
種が変更するなど勤務条件の変更を伴う者或いは退職勧奨を受ける者もおり、当該
組合員にとつてその処遇は一身上の極めて切実な問題であつたであろうことは十分
肯けるところである。しかし既に認定したように輸送量の減少、輸送コストの増
加、老朽化による修理費の増大、継続就航する場合の中間検査、定期検査に要する
多額の出費は事業経営上無視できないものであり、同時に示された乗組員に対する
関連措置が六〇歳以上の高令職員につき勧奨退職、その余の職員につき配置転換を
内容とするものであることを考えると廃船を前提とする業務計画が不当であつたと
まではいえない。原告らは景山丸の廃船は「二確認」及びその後になされた確認の
趣旨に反する旨主張をするが、前記のとおり「二確認」が本件のような事業経営上
必要な合理化についてこれをなさない旨表明したものでないこと勿論であるから原
告らのこの点の非難は当を得ないというべきであるし、原告fの本人尋問の結果中
木工所廃止問題を官船に波及させない旨の確認がなされたとの部分は本件における
弁論の全趣旨に照らしにわかに採用し難く、他に廃船問題についての確認があつた
ことを認めるに足る証拠はない。また、原告fの本人尋問の結果によれば、五・八
スト当時当局が廃船を前提としながら中間検査を申請し、これを組合側に匿してい
たことが認められるが、原告らはこの事実をもつて信義則に反する旨、主張する。
しかし、既に認定したように、景山丸の廃船及びこれに伴なう乗組員に対する措置
は経営上やむを得ないものがあるし、五・八スト当日まで林野庁としても各種の資
料を提示して組合側と回を重ねて交渉しその理解を得るべく努力をしていたのであ
るから、当局による中間検査申請の事実が労使関係からみて遺憾な点があつたとし
ても、そのことの故に五・八ストが公労法一七条一項の適用を免れることにはなら
ないのである。
(四) 究極のところ、国有林野事業に従事する職員、特に定員外職員である作業
員の争議権の問題は、最高裁判決が示す前記のような五現業及び三公社職員のおか
れた地位の特殊性を前提とし、広く国政の立場から国有林野事業の性格、作業員と
定員内職員との差異等国有林野事業とこれに従事する作業員が有する固有の事情を
他の公共企業体と比較・検討のうえ国会において論議、決定されるべき性質の立法
事項といわざるを得ないのであつて、実定法が現にこれを禁止している以上は違反
してなされた争議行為は違法と評価するほかないのである。
五 公労法一七条一項違反者に対する国公法による懲戒の適法性
 被告は、a、c、bを除くその余の原告らが公労法一七条一項、国公法九九条に
違反したとして、国公法八二条一号、三号により同原告らを別紙(二)記載の懲戒
処分に付したのであるが、原告らは公労法一七条一項違反者に対しては同法一八条
による解雇のみが許され、集団的労働関係における争議行為に対して、個別的労働
関係における懲戒処分を課することは許されない旨主張する。しかし、公労法一八
条は同法一七条に違反して争議行為を行なつた者に対し国公法上の職員の身分保障
に関する規定にかかわらず解雇をすることができる旨を定めたものと解せられるか
ら、公労法一七条違反者に対し同法による解雇をするか、国公法にもふれるとして
同法による懲戒処分を選択するかは処分権者の裁量に委ねられているというべきで
ある。従つて原告らの右主張は理由がない。
六 本件処分の相当性
 本件各ストにおいて、原告らが全林野労組の役員として指導的役割を担つてきた
ことは前記三の(四)に述べたとおりであり、その行為は公労法一七条一項に違反
するほか、国公法九九条にも違反するから、国公法八二条一号及び三号の懲戒事由
に該当するものということができる。
 そこで、原告a、同b、同cに対する公労法一八条による解雇及びその余の原告
らに対する国公法八二条による別紙(二)記載の各懲戒処分の相当性について判断
する。
(一) 前記四に述べたように、争議行為を禁止した公労法一七条一項に違憲性は
認められず、また、本件各ストに同条を適用したことについても違憲性は認められ
ないのであるから、本件各ストは同条に違反する違法なものというほかはない。し
かして、本件処分は右のように違法と評価された本件各ストに対する原告らの指導
責任を問うものであるから、これを不当労働行為であるということはできない。ま
た、原告らが主張するような本件処分にあたつての被告の反組合的意図を認むべき
証拠もない。
(二) 本件各ストに至るまでの林野庁当局の対応に不誠実、不信義があつたもの
と認めることができないことは既に述べたとおりであり、一方、全林野は要求事項
につき幾多の制約の下にあつてそれなりの成果を得たものと評価することができる
から本件各スト実施につき、労組側に法による代償措置をもつて補完できない程緊
急やむを得ない動機があつたとは認めがたい。特に、四・二三、四・三〇、五・二
〇ストについては当局側より事前の警告を受けているにもかかわらずこれを無視
し、前記のとおり全国的規模にわたり延べ一一三営林署の延ベ六三三六人がこれに
参加して実施されたもので、しかも、それは労組側により、当局との交渉を有利に
導くため、昭和四五年七月の定期大会において昭和四六年春闘の一環として当局に
対する牽制手段として、かねてから計画されていたものと認めざるを得ないのであ
る。
 次に原告らがいずれも全林野労組の専従役員として本件処分の場合と同様争議行
為の指導等を理由に別紙(三)記載のとおり停職減給戒告の懲戒処分を受けている
ことは当事者間に争いがなく、特に原告a、同b、同cは昭和四六年一月三一日停
職九ケ月、同hは同年二月三日停職五ケ月、dを除くその余の原告らは同年一月三
一日停職五ケ月の処分を受け、いずれも本件各スト当時停職中の身分であつたこと
は、いかに労働運動のためとはいえ、同種の違法行為を反覆したものとして、前記
三の(四)に述べたような原告らの本件各ストにおける指導的役割と共に本件処分
の当否の判断にあたつて軽視し得ない事情というべきである。
 以上述べたような本件各ストに至るまでの経緯、その規模、原告らの役割、原告
らの処分歴等を総合すれば、全林野中央本部にあつて、いわゆる組合三役として
四・二三、四・三〇、五・二〇ストに関与した原告a(執行委員長)、b(副執行
委員長)、c(書記長)に対する公労法一八条による解雇処分、執行委員としてd
を除く原告らのうち、四・二三、四・三〇、五・二〇ストに関与したi、j、k、
h、l、m、n、oに対する国公法八二条による七ケ月の停職処分、右ストのほか
五・八ストにも関与したe、f、gに対する同条による八ケ月の停職処分、旭川地
方本部執行委員として四・二三、四・三〇、五・二〇ストに関与した原告dに対す
る同条による一〇日の停職処分は、いずれも社会観念上著しく妥当を欠くものとま
ではいえず、被告が処分権者として委ねられた裁量権の範囲を超えてこれを濫用し
たとまで認めることはできない。
(三) なお、本件処分の当否と本件各スト(特に四・二三、四・三〇、五・二〇
スト)の国有林野事業及び国民生活に与えた影響との関係について触れると、前記
各ストによるこれら影響は確定的には論じ得ないが、既に述べたように同事業が高
い程度の公共性を有し種々の公益的機能を果たし、その諸業務の実施が統一的計画
的に行なわれるのであるから、これに対し前記各ストが全国的規模で連続的に計画
されて実施されたことを考えると、事業に対する影響が全くなかつたものと断定す
ることはできない。のみならず、公労法の適用を受ける国営企業、公共企業体にお
いて、職員により争議が行なわれた場合その事業及び国民に対する影響を直ちに物
理的に測定できる企業体とそうでない企業体があるのであり、後者の企業体にあつ
て、個々の争議の影響が物理的に測定し難いとの理由で争議関係者に対し処分をせ
ず或いは重くない処分のまま放置することは、ひとしく公労法の適用下にありなが
ら一部の企業体の職員についてだけ法により禁ぜられた争議行為の続発を容認する
ことにつながるおそれがあるし、また、その積み重ねがいつしか重大な影響の発生
へと発展しかねないとも限らないのである。そして、争議行為禁止の主たる理由が
財政民主主義にあらわされている議会制民主主義の尊重にあることと、前記各スト
に至る経緯、その規模、原告らの役割、処分歴等本件にみられる諸事情を勘案すれ
ば、争議の影響の度合を確定的に測り得ないとしても、本件においてはそのことが
処分の軽重の当否を判定する決定的な要因とはなり得ないものというべきである。
 また原告らは本件処分はその後の争議行為の処分事例に比し、重きに失する旨主
張し、成程、成立に争いのない甲第五四号証と原告d本人尋問の結果とこれにより
真正に成立したと認められる甲第六三号証、及び原告c本人尋問の結果を総合する
と本件以前のいわゆる春闘を主とする争議行為に対する処分事例として中央本部役
員の解雇は昭和三四年に一三人、昭和三八年に一人があるのみで昭和四八年度にお
いては本件各争議行為より広範囲、長時間にわたつて実施されたのに中央本部段階
では処分者が少数であることが認められるが、なお前記証拠を詳細に検討すれば、
全林野中央本部役員の被処分者が減少しているのは在籍者が減少していることによ
るもので、地方本部段階では本件争議行為の際の処分より重い処分を受けている者
もあることが認められる。懲戒処分は前記のとおり被処分者の争議行為において果
した役割、地位、被処分者の処分歴、争議行為の規模、動機など当該処分をするに
あたつて存する固有の諸事情を勘案してなされるものであるから右各証拠をもつて
本件処分がとくに他の処分事例に比し、重きに失するとまではいえないというべき
である。
七 以上のとおり本件処分を無効とする原告らの主張はいずれも採用できない。よ
つて、原告らの請求は理由がないから失当として棄却し、訴訟費用の負担について
民事訴訟法八九条、九三条一項本文を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 松野嘉貞 濱崎恭生 牧弘二)
(別紙(一)、(三)及び(四) 省略)
(別紙(二)) 官職等目録
<19566-001>
<19566-002>

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