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裁判例


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         主    文
     本件各抗告を棄却する。
         理    由
 本件各抗告の趣意は、別紙第一のとおりである。
 まず、職権をもつて調査すると、原裁判所は、昭和四六年九月申立人らを被疑者
とする本件付審判請求事件を受理したのち、別紙第二記載のような審理方式(以下
従前の審理方式という。)を定めたところ、申立人らの弁護人から、従前の審理方
式の違法を主張して、同裁判所を構成する裁判官三名に対し忌避の申立がされ、そ
の特別抗告事件において、従前の審理方式の適否に触れる判断が示された(最高裁
昭和四七年(し)第五〇号同年一一月一六日第一小法廷決定・裁判集刑事一八五号
四九九頁)ため、原裁判所は、右決定及び同種事案についてされた最高裁昭和四七
年(し)第五一号同年一一月一六日第二小法廷決定・刑集二六巻九号五一五頁の趣
旨等を検討した結果、従前の審理方式一部を別紙第三の一のように修正する(以下
修正後の審理方式を本件審理方式という。)とともに、別紙第三の二記載のように
証人A及び同Bを取り調べる旨の決定をし、昭和四八年六月一日申立人らの弁護人
らに告知したところ、申立人らの弁護人らから本件審理方式及び証拠調の決定に対
し、原裁判所に異議の申立がされ、原裁判所が右異議の申立を棄却したため、本件
各抗告に及んだものであることが認められる。
 ところで、本件各抗告の対象の一部である審理方式の点について考えてみるに、
審理方式なるものは、裁判所が当該事件について審理に関する方針を宣明するもの
にすぎず、これによつて直ちに一定の訴訟法上の効果を生ずるものではないのが一
般であつて、例外的に審理方式中これを関係人に告知することにより一定の訴訟法
上の効果を生じさせると認められる部分を除き、審理方式自体に対し不服申立をす
ることは許されないものと解すべきである。
 この見地から本件審理方式をみるに、わずかに請求人及び被疑者の弁護人に捜査
記録の閲覧謄写を許す部分が当該関係人に閲覧謄写権を付与する訴訟法上の効果を
生ずる決定と解されるほかは、本件付審判請求事件の審理に関する方針を宣明し、
関係人の協力を要請したものにすぎず、これによつて直ちに一定の訴訟法上の効果
を生ずるものではないと認められる。
 そうすると、本件審理方式中請求人及び被疑者の弁護人に捜査記録の閲覧謄写を
許した決定を除外した部分については、不服申立をすることは許されず、これにつ
いての異議申立棄却決定に対する本件各抗告もまた不適法であるといわざるをえな
い。
 つぎに、本件審理方式中請求人及び被疑者の代理人に捜査記録の閲覧謄写を許し
た決定並びに別紙第三の二の証人A及び同Bを取り調べる旨の決定に対する異議申
立を棄却した部分について考えてみるに、これらの決定は、本件においては、訴訟
手続に関し判決前にした決定に準ずるものとして、これに対し刑訴法四三三条の抗
告が許されない場合に当たるものと解されるから、これらの決定に対する異議申立
を棄却した決定に対する本件各抗告もまた不適法である。結局、本件各抗告はすべ
て不適法であるから、刑訴法四三四条、四二六条一項により、裁判官全員一致の意
見で、主文のとおり決定する。
  昭和四九年三月一三日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    高   辻   正   己
            裁判官    関   根   小   郷
            裁判官    天   野   武   一
            裁判官    坂   本   吉   勝
            裁判官    江 里 口   清   雄
 (別紙第一)
 弁護人大槻龍馬、同重宗次郎の抗告趣意(昭和四八年七月一八日付)
 一、異議申立の対象となつた決定について
 本件決定は冒頭において、
 「よつて案ずるに、まず、本件異議申立の対象とされる決定は、昭和四八年六月
一日(なお異議申立書に五月三〇日とあるのは六月一日の誤りと認められる)当裁
判所が被疑者らの弁護人大槻龍馬、同重宗次郎および同笠松義資に対し、口頭で説
明したものであるが、その審理方式の概略ならびに証拠調の決定は別紙第二記載の
とおりである。」
 なるほど、本件異議申立の対象とされいている決定について弁護人らが口頭でそ
の告知を受けたのは六月一日ではあるが、別添証人A、同Bに対する証人召喚状の
作成日付は、いずれも五月三〇日となつているので、弁護人らが本件異議申立の対
象とした決定は、おそくとも五月三〇日までになされた上、六月一日告知を受けた
ものとの判断のもとに異議申立をした次第である。
 従つて五月三〇日付で作成された証人A、同Bに対する証人召喚状にもとづく審
理方式は、別紙第二記載の審理方式を採らないで、裁判所が独自に取調なされるの
であり、これとは別個に六月一日決定がなされ、その決定が別紙第二記載の審理方
式を採用することを内容とするものであるならば、異議申立方式もさらに考慮を必
要としたわけである。
 しかしながら、弁護人らが、六月一日告知を受けた証人調の日程などは、別紙第
二の二の証拠調の決定と同じ内容のもので、前記証人召喚状の内容とも一致するも
のであつて、二個の決定があつたわけではなく、おそくとも五月三〇日以前になさ
れた一個の決定しか存在しない筈であると思料し、これに対する異議申立が棄却さ
れたものとして、本特別抗告の手続をとる次第である。
 二、本件決定は、昭和四七年一一月一六日、最高裁判所第二小法廷の決定の判断
に牴触するものである。
 1 本件決定が是認する審理方式は、従前の審理方式(本件決定書別紙第三)を
修正した本件決定書別紙第二記載のものである。
 右修正の内容は、代表請求人制度及び請求人事務局員の立会を廃止したうえ
 (一) 請求人側申請の証拠を取調べる際には、裁判所が相当と認めた場合に限
り、請求人のうち弁護士である請求人八名に立会および質問を許す。但し、右八名
のうち二名は弁護士でない請求人をもつてかえることができるが、弁護士でない請
求人には質問を許さない。
 被疑者側申請の証拠を取調べる際には、裁判所が相当と認めた場合に限り、弁護
人および被疑者らの立会ならびに弁護人の質問を許す。
 右いずれの場合においても、事実の取調は一般にこれを公開しない。
 (ニ) 本件審理に関して作成された調書は、原則として、弁護士である請求人
および被疑者らの弁護人に閲覧謄写を許す。
 とするものである。
 2 而して昭和四七年一一月一六日、最高裁判所第二小法決定(昭和四七年(し)
第五一号)は、いわゆる付審判請求事件の審理方式につき、
 (一) 裁判所は、厳正公平な立場から、その権能を行使すべきものであると鑑
み、事実調査の実効の確保、被疑者、その他の関係人の名誉保護等のため、密行性
をも重視する必要があるのであつて、その結果、手続の進め方、特に判断資料収集
の方法等につき、おのずから制約を受けることもまた当然である。
 (ニ) 具体的にいえば、審理の公開、被疑者の在廷等は、法の予定するところ
でなく、請求人はなんら、手続の進行に関与すべき地位にないのであり、判断資料
の収集については、対立的当事者の存在を前提とする訴訟関係人の書類、証拠物の
閲覧謄写権、証拠申請権、証人尋問における立会権、尋問権等の規定の適用、ない
し準用がない。
 (三) もちろん裁判所は、審理における事実取調の方式ににつき、適切な、裁
量により必要と認める方法を採りうるが、手続の基本的性格に背反するがごときこ
とまで許されない。
 裁判所が裁量を誤り、その限度を逸脱した措置をとつたときは、これを違法とす
べき場合もあり得る。
 (四) 裁判所がみずから判断資料の収集を行なうに先立ち、検察官から送付さ
れた全記録の閲覧謄写を請求人代理人に許すこと、証人尋問に請求人およびその代
理人を立ち合わせることのみならず、これに発問を許すことなどは、密行性のかな
り広汎な解除による真実歪曲の危険、および被疑者ならびに捜査協力者らの名誉侵
害の可能性などこれによつて発生する弊害に優越すべき特段の必要性がないかぎり
裁量の許される範囲を逸脱している疑いを免れない。
 と判示した。
 3 本件決定は、右2の(四)のうち、
 (一) 検察官から送付された全記録の閲貰謄写を請求人代理人に許すことにに
つき、
 「検察官から送付を受けた書類のすべてがすでに閲覧謄写を完了していること、
右閲覧謄写が弁護士である請求人によつて行なわれ、それらの保管もすべて弁護士
である請求人によつてなされていること、今後全記録の閲覧謄写を申請するような
ことは殆んど考えられないことなどから修正された審理方式において特に触れなか
つたものであるが、今後の記録の閲覧謄写については、修正された第六項の場合を
除き、必要に応じ相当と認めた場合に限りこれを許可する方針である。」
 と述べており、そのうえ、修正された第六項では、本件審理に関して作成された
調書は原則として弁護士である請求人および被疑者らの弁護人に閲覧謄写を許すと
いうのであるから、検察官から送付された全記録の閲覧謄写についてはすでに完了
しているとの理由から、なんらこれに対し適切な措置を講じないで放置しているの
みでなく、さらに今後の審理過程における全記録についても閲覧謄写を許可するこ
とを原則としているのである。
 従つて、この点においては前記最高裁判所の決定にいわゆる特段の必要性が存在
するものとは到底考えられない。
 (二) つぎに、証人尋問に請求人およびその代理人を立ち合わせこれに発問を
許すことにつき「裁判所が相当と認めた場合に限り、請求人のうち弁護士である請
求人八名の立会及び質問を許す。但し右八名のうち二名は弁護士でない請求人をも
つてかえることができるが、弁護人でない請求人には質問を許さない。」
 としたうえ、その相当と認めた理由につき
 「当裁判所は、請求人側から申請のあつた証人A、同Bについて、申請人側に立
証趣旨ないし尋問事項を記載した書面の提出を求め、これを検討したところ、本件
においてはCの死因が何であるかが最も重要な争点であるところ、証人両名は、右
Cが受傷した当日、曾根崎警察署内に設けられた救護班の班長ならびに班員として、
右Cの応急措置に当つた者であると認められ、右Cの受傷直後における病状、行動
等について直接これを目撃しているものと考えられるので、前記死因を判断するに
つい重要な資料を提供するものと考えられる。したがつて、これらの、点について
裁判所の質問を補充して1人をして供述を尺させ真相の究明に益するために前記修
正された審理方式第四項にしたがつて立会質問を許すことが相当であると考え、別
紙第二記載のとおり証拠調の決定をしたのである。
 と述べている。
 なるほど本付審判請求事件においては、Cの死因を確定することが必要であり、
証人A、同Bがその判断につき重要な資料を提供するものと考えられるかも知れな
いが、そうだからといつて、裁判所の質問が充分に行なわれないとの前提に立つて、
裁判所の質問と同一の機会に請求人八名もが立会してこれを補充しなければならな
いという理由があるとは到底首肯できない。
 また、前記請求人八名のうち二名は、秘密保持を強制しうる法的根拠のない弁護
士以外の請求人をもつてかえることができるのであるから、被疑者らの名誉、プラ
イバシーの侵害の可能性が大きい。
 裁判所が最初から自己の質問が不充分であつて、これが補充されることを期待し
なければならない程度の準備をもつて、前記のような方式で証人尋問を行なつたと
きは、請求人側の関与により被疑者に不利益に証拠が歪められる危険性は極めて大
となり、そのうえ、そこで作成された証人尋問調書が、後日、刑訴法三二一条一項
一号書面となり得ることを考えると、被疑者にとつては極めて重大な問題であると
いわねばならない。
 裁判所が最初に行なう証人尋問において、請求人の補充質問を予期していきなり
前記のような方式を採用する本件においては、付審判請求事件が捜査に類似する性
格を有するという基本に背反するのみならず、前記最高裁判所の決定にいわゆる特
段の必要性を欠くもので、裁量の範囲を逸脱するものといわねばならない。以上の
理由により、本件決定を取り消し、相当の裁判を求めるため本特別抗告に及んだ次
第である。
                              以   上
 (別紙第二)
 一、請求人および被疑者の弁護人に対し、本件記録の閲覧・謄写を許す。
 但し、もとよりこれは、本請求事件のために必要と考えるからの措置であり、従
つて一般公開はいうまでもなく、他の目的のために絶対に使用しないこと。
 二、記録を謄写した場合は、その部数と謄写記録の保管者を裁判所に明示するこ
と。
 三、請求人および被疑者側は、職権の発動を促す趣旨で証拠の申請をすることが
できる。証拠の取調べは、請求人側申請のものから始める。
 四、請求人側申請の証拠を取調べる際には、請求人の立会および質問を許すが、
一般には公開しない。被疑者側申請の証拠を取調べる際には、弁護人の立会および
質問を許すが、一般には公開しない。
 五、、請求人多数につき代表請求人制度を設け、その数を三名とする。代表請求
人は、請求人側申請の証拠の取調べに常時立会われたい。代表請求人以外の請求人
が審理に立会うことは差しつかえない(現在代表請求人は弁護士佐伯千仭、同松本
健男、同樺島正法である。)
 なお、本件審理は集中審理を予定するので、請求人側の書記役として請求人事務
局員二名(原則として特定のもの)の立会を認める。
 六、本件審理に関する記録は、請求人および被疑者の弁護人に閲覧・謄写を許す。
             以   上
 (別紙第三)
 一、審理方式
 1 従前の審理方式第四項を次のとおり改める。
 請求人側申請の証拠を取調べる際には、裁判所が相当と認めた場合に限り、請求
人のうち弁護士である請求人八名に立会および質問を許す。但し、右八名のうち二
名は弁護士でない請求人をもつてかえることができるが、弁護士でない請求人には
質問を許さない。
 被疑者側申請の証拠を取調べる際には、裁判所が相当と認めた場合に限り、弁護
人および被疑者らの立会ならびに弁護人の質問を許す。
 右いずれの場合においても、事実の取調は一般にはこれを公開しない。
 2 従前の審理方式第五項はこれを削除する。すなわち代表請求人制度はこれを
廃止し、請求人が審理に立会うことおよび請求人事務局員二名が書記役として立会
うことは、請求人につき前項の場合を除き、これを認めない。
 3 従前の審理方式第六項の次のとおり改める。
 本件審理に関して作成された調書は、原則として、弁護士である請求人および被
疑者らの弁護人に閲覧謄写を許す。
 二、証拠調の決定
 請求人側申請の証人Aを昭和四八年六月二九日午前一〇時、同じく証人Bを同年
七月六日午前一〇時に取調べる。取調べの場所は法廷外の適当な部屋で行なうが、
それらがない場合には法廷で行なう。右の取調べに際しては審理方式(修正後の)
第四項にしたがつて請求人側の立会、質問を許す。
             以   上

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