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平成29年3月14日宣告窃盗,窃盗未遂,死体遺棄被告事件
判決
主文
被告人を懲役4年6月に処する。
未決勾留日数のうち120日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,Aと共謀の上,
第1〔平成29年1月18日付け起訴状記載の公訴事実第1〕
平成27年6月21日頃,愛知県田原市a町bc番地B駐車場において,同
所に駐車中のC所有の普通乗用自動車1台(時価約2万円相当)を窃取した。
第2〔平成28年11月2日付け起訴状記載の公訴事実〕
平成27年12月31日頃,愛知県新城市d字ef番g所在の廃屋において,
D(当時71歳)の死体を同所トイレ便槽内に運び入れ,同死体に木片等をか
ぶせて覆い隠し,もって死体を遺棄した。
第3〔平成28年12月21日付け起訴状記載の公訴事実〕
別表記載のとおり,平成28年1月5日午後零時2分頃から同年3月8日午
前10時31分頃までの間,前後9回にわたり,愛知県豊橋市h町字ij番地
kEF店ほか6か所において,各所に設置された現金自動預払機に,不正に入
手したG信用金庫H支店発行のD名義のキャッシュカード1枚を挿入して同
機を作動させ,株式会社I銀行お客さまサービス部長Jほか5名管理の現金合
計17万6000円を引き出して窃取した。
第4〔平成29年1月18日付け起訴状記載の公訴事実第2〕
平成28年3月10日頃,愛知県豊川市l町mn番地o株式会社K駐車場に
おいて,同所に駐車中のL管理の普通貨物自動車1台(時価約60万円相当)
を窃取した。
第5〔平成28年9月9日付け起訴状記載の公訴事実第1〕
平成28年7月20日午後5時38分頃,愛知県田原市p町qr番地Mにお
いて,同所に設置されたさい銭箱等からN会会長O管理の現金約200円を窃
取した。
第6〔平成28年9月30日付け起訴状記載の公訴事実〕
平成28年7月23日頃,愛知県田原市s町tu番地v株式会社Pクラブハ
ウス従業員通用口前付近において,同所に駐車中の同社取締役社長Q管理の普
通貨物自動車1台(時価約20万円相当)を窃取した。
第7〔平成28年9月9日付け起訴状記載の公訴事実第2〕
平成28年7月30日午後8時59分頃,愛知県田原市p町qr番地Mにお
いて,同所に設置されたさい銭箱を手で持ち上げてひっくり返すなどし,同さ
い銭箱内から前記O管理の現金を窃取しようとしたが,現金が入っていなかっ
たため,その目的を遂げなかった。
(法令の適用)
1罰条
⑴判示第1,第4ないし第6の各行為
いずれも刑法235条,60条
⑵判示第2の行為刑法190条,60条
⑶判示第3の各行為いずれも刑法235条,60条
⑷判示第7の行為刑法243条,235条,60条
2刑種の選択判示第1,第3ないし第7の各行為につき,いずれ
も懲役刑を選択
3併合罪刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も
重い判示第4の罪の刑に法定の加重)
4未決勾留日数の算入刑法21条
5訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
1事案の概要
本件は,被告人が,共犯者と共謀して,自動車盗(判示第1,第4及び第6の
事実)やさい銭盗(判示第5及び第7の事実)を行うとともに(ただし,判示第
7の事実については未遂にとどまっている。),被害女性の遺体を山奥にある廃屋
のトイレ便槽内に遺棄し(判示第2の事実),同女性名義のキャッシュカードを使
用して複数回に渡り現金自動預払機から現金を窃取した引出盗の事案(判示第3
の事実)である。
2自動車盗及びさい銭盗について
被告人は,交際相手である共犯者とともに車上生活をする中で,生活費や生活
の足場を確保するために自動車盗やさい銭盗を繰り返す中で,判示第1,第4な
いし第7の各犯行に及んだのであって,共犯者と一緒に過ごしたいがために安易
に各犯行に及んだという誠に身勝手な動機及び経緯に酌むべき点は何ら見いだせ
ない上,常習的犯行であり規範意識の鈍麻がうかがわれる。態様をみても,被告
人らは,人目の付かない祠を狙ってさい銭盗に及んだり,エンジンキーが付いた
ままの自動車を狙って素早く窃取したりするなど,大胆で手慣れたものである。
被告人は,共犯者と見張り役や実行役を分担してこれらの犯行に及んだのであり,
当然のことながら犯行により利益も享受していたのであるから,共犯者から犯行
を持ち掛けられ,これに応じるがままであった点があるとしても,被告人の関与
の程度は小さくない。このような犯行に対して,被告人からは何らの慰謝の措置
も講じられていない。
これらの事情に照らせば,被告人の刑事責任は相応に重いというほかない。
3死体遺棄について
被告人は,被害女性に対する暴行行為の発覚を避けたい共犯者から同被害女性
の遺体の遺棄を持ち掛けられるや,これに同調して犯行に及んだのであって,被
告人が,一旦は被害女性を病院に連れて行くように共犯者に提案している点を考
慮しても,自己及び共犯者の保身を優先した身勝手な犯行といわざるを得ず,そ
の動機や経緯に酌量の余地を見いだすことはできない。
態様をみても,被告人は,共犯者が運転する自動車に同乗して遺棄場所を探し
た上,最終的に本件遺棄現場まで被害女性の遺体を自らが担いで運んだ上,木く
ず等で覆い隠して遺棄したのであって,犯行に当たり重要な役割を果たしている
ことは明らかである。
犯行の結果,被害女性の遺体は,発見されるまでの約9か月間,廃屋のトイレ
便槽内に完全に白骨化するまで放置されたものであり,死者に対する敬虔感情を
害する程度は大きい。被告人らは,被害女性の好意に甘えて同女性宅に居座り,
同女性の年金及び生活保護費等を当てにした生活を続けながら,このような死体
遺棄の犯行に及んだのであって,好意を踏みにじられたあげくに無残な状態にさ
れた被害女性の無念さは計り知れない。このような姿で被害女性を迎えることを
余儀なくされた遺族の悲しみや無念さもまた計り知れず,同遺族らが,被告人に
対して厳しい処罰感情を有しているのも当然のことである。
これらの点を考慮すれば,死体遺棄に係る被告人の刑事責任も重いというほか
ない。
4引出盗について
被告人は,共犯者とともに,被害女性の死亡後,被害女性名義のキャッシュカ
ードが手元にあり,年金,生活保護費及び被害女性の長男からの仕送りが毎月振
り込まれることを奇貨として,共犯者との生活費や遊興費を得るために引出盗に
及んだのであって,利欲的な動機及び経緯に酌むべき点はない。
犯行態様をみても,被告人らは,9回にわたって堂々と店舗に赴いて現金を引
き出している点で大胆な犯行といわざるを得ず,被害金額は合計17万6000
円と比較的多額であり,結果も見過ごすことができない。
被告人は,9回の引き出し行為のうち,7回を自らが行っているのであるから,
犯行への関与の程度も高く,引出盗についての被告人の刑事責任も,重いものと
いわざるを得ない。
5総合判断
以上からすると,被告人の刑事責任は相応に重いというべきである。被告人に
は,共犯者に追従して本件各犯行に及んだ側面があることは否定できないが,他
方で被告人が本件各犯行で果たした役割は大きく,共犯者と共に過ごすことを優
先して安易に共犯者に同調して各犯行に及んでいることは,強く非難されるべき
といわざるを得ない。
そうすると,被告人が判示の各事実についていずれも争わず,今後は共犯者と
の関係も断つ旨述べていることや,被告人には平成19年の執行猶予付き懲役前
科1犯を除いて前科がないことなど,被告人にとって酌むべき事情を最大限考慮
したとしても,被告人に対しては,主文掲記の程度の実刑はやむを得ないと判断
した次第である。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑懲役5年)
平成29年3月14日
名古屋地方裁判所豊橋支部
裁判官奥山浩平
別表については添付省略

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