弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成13年(ネ)第6316号、平成14年(ネ)第1980号 商標権侵害に基づ
く損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件(原審・東京地方裁判所平成12年(ワ)第
15912号)              平成14年7月16日口頭弁論終結
            判    決
  控訴人(附帯被控訴人・一審原告) 田辺インターナショナル株式会社
                   (以下「一審原告」と表示)
  訴訟代理人弁護士         島 田 康 男
  被控訴人(附帯控訴人・一審被告) 株式会社ジェイティービー トラベラン
ドトレーディング
                   (以下「一審被告」と表示)
  訴訟代理人弁護士         三 浦 雅 生
  同                山 本   厚
  同                古 笛 伴 雄
  一審被告補助参加人        株式会社ムース
(以下「補助参加人」と表示)
  訴訟代理人弁護士         池 末 彰 郎
            主    文
1 一審原告の本件控訴を棄却する。
2 一審被告の本件附帯控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。
 (1) 一審被告は一審原告に対し、金25万2162円及びこれに対する平成12
年8月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 (2) 一審原告のその余の請求を棄却する。
3 一審被告のその余の附帯控訴を棄却する。
4 訴訟費用は、第1、第2審を通じてこれを10分し、その9を一審原告の、そ
の余を一審被告の負担とし、補助参加によって生じた費用は一審原告の負担とす
る。
5 この判決は、2項(1)に限り、仮に執行することができる。
            事実及び理由
第1 当事者の求めた判決
 1 一審原告
  (1) 原判決中1、2項部分を次のとおり変更する。
    「一審被告は一審原告に対し、金10,216,800円及びこれに対す
る平成12年8月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。」
  (2) 訴訟費用は、第1、第2審とも一審被告の負担とする。
  (3) この判決は仮に執行することができる。
2 一審被告及び補助参加人
 (1) 原判決中一審被告敗訴部分を取り消す。
  (2) 一審原告の請求を棄却する。
  (3) 訴訟費用は、第1、第2審とも一審原告の負担とする。
第2 事案の概要
 1 一審原告は、一審被告が別紙被告標章目録記載の標章(被告標章)を付した
カナダ産メープルシロップ(被告商品)を一審被告の通信販売用カタログ(本件カ
タログ)に掲載し、販売した行為が原告の有する登録第2377063号商標(本
件商標)の商標権(本件商標権)を侵害すると主張し、一審被告に対して商標権侵
害による損害賠償を求めた。原判決は、商標権侵害を認め一審原告の損害賠償請求
の一部を認容した。
 本件商標は、別紙原告商標目録のとおり、円形の背景の中にデザイン化された楓
の葉の図形(本件図形)を描き、その下に「CanadianMapleSyrup」、「カナディ
アン メープル シロップ」の文字を横書き上下2段に配した構成であり、被告商
品に使用された被告標章は、円形の背景の中に本件図形を描き、本件図形の中央部
やや下寄りに「CanadianMapleSyrup」の文字を表した構成である。被告商品は、
一審原告と以前取引関係にあったカナダのターキーヒルシュガーブッシュ社(以下
「ターキー社」という。)が製造したもので、これを、補助参加人又は訴外有限会
社ア(以下「ア社」という。)が輸入して一審被告に販売し、一審被告が「海外宅
配便・おみやげおまかせ」と称するカタログ通信販売の方法により顧客に販売して
いる(平成8年度中の販売分は補助参加人から、平成11年度中の販売分はア社か
ら納品された。)。
 2本件において前提となる事実(当事者間に争いのない事実及び証拠により明
らかに認められる事実)並びに争点及び主張は、当審における当事者の主張を次の
3のとおり補充、付加するほか、原判決事実及び理由欄の「第2 事案の概要」の
1及び2(原判決2頁11行~10頁10行)記載のとおりである。
 なお、原判決中の「被告標章」、「被告商品」の語は本判決でもそのまま用い
る。
 3 当審における当事者の主張の要点
【一審原告】
(1) 被告標章を付した被告商品の販売数量について
   ア 被告商品の平成11年度における取扱数量   
 原判決は、一審被告が販売した被告標章を付した被告製品の数量を、平成8年4
月から翌年3月までの期間について7821セット(単価2800円、売上高21
89万8800円)、平成11年4月以降の期間について873セット(販売期間
平成11年4月から5月まで。単価3800円、売上高331万7400円)と認
定し、これに基づいて損害額を算定したが、平成11年度(平成11年4月から翌
年3月末まで)については、6746セットが損害算定の基礎とされるべきであ
る。すなわち、被告標章を付した被告製品を掲載したカタログ(本件カタログ)
は、平成12年3月まで完全に回収されることなく一審被告の代理店の店頭に置か
れて、通信販売に使用されており、上記6746セットは、その期間における取扱
い数量である。一審被告は、平成11年6月以降に販売された被告商品については
被告標章を除去したと主張するが、通信販売においては購入者はカタログを見て商
品を購入するのであるから、購入者に送付される商品から本件商標を付したラベル
が除去されても、そのことによって商標権侵害による責任に消長をきたすものでは
ない。
   イ ア社との共同不法行為に基づく損害賠償責任
 ア社は、一審被告との間の契約に基づき、被告標章を付した被告商品をカナダか
ら輸入し、その全量(少なくとも6746セット)を平成11年度中に一審被告に
納品した。ア社の輸入行為は商標権侵害に当たる。一審被告は、ア社をして被告商
品を輸入せしめ、これを販売したのであるから、ア社と共同して本件商標権を侵害
したものとして、上記輸入数量(6476セット)について商標権侵害による損害
賠償義務がある。  
 (2) 商標法38条1項の解釈適用について
 原判決の説示「諸般の事情を総合的に勘案すると、一審被告の本件商標権侵害が
なければ一審原告が自己の商品を販売することができたという関係はそもそも存在
しないというべきであるから、商標法38条1項によって一審原告の損害を算定す
ることとは相当とはいえない。」は、実質上、損害賠償における因果関係の立証を
権利者に要求しているに等しく、商標法38条1項の解釈適用を誤ったものであ
る。本件においては、侵害品の「譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を商標権
者又は専用使用権者が販売することができないとする事情」は存在しない。したが
って、侵害品の全数量(平成8年4月から同9年3月までの販売数量7,821セ
ット及び平成11年4月から同12年3月末までの取扱数量6,747セット)に
ついて、商標法38条1項による損害の算定をすべきである。
【一審被告】 
 (1) 権利濫用
 一審原告は、自身が日本で本件商標の登録手続を進めていること(昭和63年3
月4日出願)を秘して、ターキー社が日本及び他の国に輸出する全商品について本
件図形標章を使用することをターキー社に提案した。一審原告は、ターキー社が上
記提案を受けて、本件図形標章をターキー社の商標として使用すべく、カナダにお
いて商標登録も試みることを了承していた。一審原告は、本件図形標章の使用をタ
ーキー社に提案した後である平成4年2月28日に本件商標が一審原告の商標とし
て日本で登録されたにもかかわらず、これをターキー社に通知しなかった。また、
ターキー社との取引が平成11年に終了した際にも、ターキー社の商標として使用
させてきた本件図形標章の取扱いについて、ターキー社と何ら協議せず、本件商標
が日本で商標登録されている事実をターキー社に知らせることもしなかった。一審
原告は、ターキー社が本件図形標章を付した商品を補助参加人や一審被告を通じて
販売していることを認識しながら、これに対して何らの警告も発することなく、む
しろ意図的に放置して侵害実績を拡大させた。
 以上のような事情の下での一審原告の請求は、権利行使に当たっての信義・誠実
義務に反するものであり、権利濫用というべきである。
 (2) 無過失
 商標権侵害について一審被告に予見可能性がなかったとする特段の事情があると
はいえないとした原判決は、流通の実態を全く無視したものである。一審被告のよ
うに膨大な数の商品を取り扱う末端の小売業者にとって、取扱商品全品の権利抵触
関係を調査することなどは現実には不可能である。本件商標権の侵害について、一
審被告には過失がない。
 (3) 商標法38条3項の使用料相当額
 本件商標は、全く市場認知度を有していない。本件商標は、カナダの国旗の楓の
葉に似せたデザインであり、同種製品にも同じような楓の葉のラベルデザインが使
用されているから、他との識別機能は無に等しい。一審被告が被告商品から被告標
章を除去した後も売上状況には何ら変化がない。被告商品の販売は、専ら海外土産
品を予め購入するという特徴的な販売コンセプト、JTBのブランド力、全国30
00店舗を擁する販売力によって支えられている。一審被告の販売は全てカタログ
販売であり、しかもそのカタログ上、被告標章はほとんど視認することができな
い。つまり、被告標章が付されていることは被告商品の販売に何ら貢献していない
のであり、これらの事情を考え合わせると、原審認定の使用料相当額(売上高の5
%)は高すぎる。
第3当裁判所の判断
 1 商標権侵害の成否、権利濫用の有無、真正商品の並行輸入の主張の可否及び
一審被告の過失の有無
 当裁判所の判断も原判決と同一であるから、原判決事実及び理由欄「第3 当裁
判所の判断」の「1 本件商標と被告標章との類否及び商標権侵害の成否につい
て」、「2 権利濫用の有無について」、「3 真正商品の並行輸入の主張の可否
について」及び「4 被告の過失の有無について」の項(10頁12行から14頁
16行)の記載を引用する。
 なお、ターキー社が被告標章を使用してきた経緯等について、原判決摘示の証拠
及び弁論の全趣旨によれば、原判決事実及び理由欄「第3 当裁判所の判断」の
「2 権利濫用の有無について」の(1)イ及びウ(12頁14行から13頁5行)に
記載のとおりの事実を認めることができる。これらの事実は、商標法38条3項に
より本件商標の使用に対し受けるべき金銭の額を算定するに当たって、考慮するの
が相当である。
 2 損害額
 (1) 商標法38条1項及び2項による損害算定の可否
 当裁判所も原判決と同様に、本件においては、商標法38条1項により一審原告
の損害を算定することも、同条2項により一審被告の利益を一審原告の損害と推定
することも、相当ではないと判断するものである。
   ア 商標法38条1項は、侵害者の譲渡した商品の数量に、商標権者がその
侵害行為がなければ販売することができた商品の単位当たり利益の額を乗じて得た
額を、商標権者の使用の能力に応じた額を超えない限度において、商標権者の受け
た損害の額とすることができる旨規定している。この規定は、平成10年の商標法
改正(平成11年1月1日施行)により新設されたもので、その趣旨は、商標権を
侵害する商品が販売されることによって商標権者の商品の販売が減少するという関
係(侵害商標を付した商品が販売されていなければ、需要が商標権利者の商品に向
けられたであろうという、市場における代替関係)を認め得る事情が存在する場合
であっても、商標権を侵害する商品の販売によって減少した商標権者の販売数量を
立証することが実際には困難であることに鑑み、その立証の困難を救済することに
あると解される。このような規定の趣旨からすれば、商標法38条1項による損害
の算定をするためには、侵害商標を付した商品と商標権に係る商標を付した商標権
者の商品との間において、市場における代替関係が存在することが前提となるとい
うべきであり、「その侵害行為がなければ商標権者が自己の商品を販売することが
できた」という関係が存在しない場合にまで同条1項による損害算定をすることは
相当ではない。
 ところで、商標権は、商標それ自体に当然に商品価値が存在するのではなく、商
品の出所たる企業等の営業上の信用等と結び付くことによってはじめて一定の価値
が生ずるという性質を有する。「その侵害行為がなければ商標権者が自己の商品を
販売することができた」という関係は、商標権者の商標に何らかの顧客吸引力があ
ることを前提としてはじめて成り立つことといわねばならず、この点を抜きにして
侵害商標を付した商品と商標権者の商品との間に当然に代替関係が成立するという
ことはできない。また、侵害商標を付した商品と商標権者の商品とでは、商品自体
の性能や効用等が異なる場合もあり得るのであり、そのような場合にも侵害商標を
付した製品が販売されていなければ需要が商標権者の商品に向けられ、商標権者の
商品が購入されたという関係が当然に成り立つということはできない。
 そうすると、商標法38条1項所定の「商標権者がその侵害行為がなければ販売
することができた」か否かについては、商標権者が侵害商標を付した商品と同一の
商品を販売(第三者に実施させる場合を含む。以下同じ。)しているか否か、販売
している場合、その販売の態様はどのようなものであったか、当該商標と商品の出
所たる企業の営業上の信用等とどの程度結びついていたか等を総合的に勘案して判
断すべきである。
   イ そこで、上記観点から検討するに、一審原告の営業状況及び一審被告に
よる被告商品の販売状況は、原判決摘示の証拠及び弁論の全趣旨によれば、原判決
事実及び理由欄の第3の5、(1)イ(原判決15頁17行から16頁末行)のとおり
と認められる。これらの状況に照らすと、原判決説示のとおり(同ウ、原判決17
頁1行から21行)、一審被告の本件商標権侵害がなければ、一審原告が自己の商
品を販売することができたという関係はそもそも存在しないというべきである。
 したがって、本件において、商標法38条1項によって一審原告の損害を算定す
ることは相当とはいえない。また、同様の理由から、侵害の行為により侵害者が得
た利益の額を、侵害によって権利者が商品を販売し得なかったことによって蒙った
損害(喪失利益)の額と推定する旨定めた同法38条2項によって、一審原告の損
害を算定することも相当とはいえない。
 (2) 商標法38条3項による損害の算定
 商法法38条3項の規定により、本件商標の使用に対し受けるべき金銭の額(使
用料相当額)を算定する。
   ア 被告標章を付した被告商品の売上高
 被告標章を付した被告商品の売上高が、平成8年4月から同9年3月までの期間
については2189万8800円(7821セット、1セット当たり2800
円)、平成11年4月から5月の期間については331万7400円(873セッ
ト、1セット当たり3800円)であり、その合計が2521万6200円である
とした原判決の認定は、証拠に照らして正当と認められる。
 一審原告は、平成11年度については、平成11年4月から同12年3月末まで
の取扱数量6746セットに1セット当たり3800円を乗じた2563万860
0円が使用料相当額の算定基礎とされるべき売上高であると主張するが、平成11
年6月以降に被告標章を付した被告商品が販売されたことを認めるに足りる証拠は
ないから、原告の主張は採用することができない。
 なお、証拠(甲53の1ないし18、54の1ないし18)によれば、被告標章
を付した被告商品を掲載した一審被告の本件カタログの一部が、回収されないまま
一部の代理店で平成12年3月ころまで使用されていたことがうかがわれるが、カ
タログに被告標章を付した被告商品の写真(当該写真からは本件図形標章の特徴を
ほとんど看取することができない。)が掲載されていたというだけでは、使用料相
当額の損害が発生したということはできない。
 また、一審原告は、ア社の輸入行為について一審被告は共同不法行為者として損
害賠償責任を負うと主張するが、上記輸入行為自体から損害が発生したと認めるこ
とはできないから、この点に関する一審原告の主張は採用することができない。
   イ 使用料相当額について
    (ア) 本件商標は、円形の背景の中にデザイン化した楓の葉を描いた図形

分と、その下にアルファベットの「CanadianMapleSyrup」及び片仮名の「カナデ
ィアン メープル シロップ」の文字を横書き上下2段に配した文字部分とから構
成されており、その要部ないし特徴的部分は、楓の葉の図形(本件図形)であると
認められる。本件図形は、一般によく知られたカナダ国旗の「メープルリーフ」を
やや変形して葉先や葉柄部分にわずかな丸みをつけ、葉の中心に向かって斜方向に
順次交互に直交する直線を表したものであって、そこにデザイン的な工夫の跡は見
られるものの、全体としてみると、カナダ国旗の「メープルリーフ」との印象を強
く与えるものである。そして、カナダ産からの輸入品であることを宣伝してなされ
る商品の販売や催し物について、しばしば「メープルリーフ」又はこれをイメージ
させる図形が使用されることは当裁判所に顕著な事実である。そうすると、本件商
標は、カナダ産のメープルシロップであることを示す文字部分と相俟って、特定の
商品主体の商品であることを需要者に認識させるものというよりは、むしろカナダ
の産品であることを強く印象づけるものにすぎず、メープルシロップがカナダの一
般的な特産品であることも合わせ考えると、商標自体の自他商品識別力(出所識別
力)は低いものといわざるを得ない。
    (イ) 一審原告がその商品に本件図形からなる標章(本件図形標章)を使
用した状況は、原判決摘示の証拠及び弁論の全趣旨によれば、原判決事実及び理由
欄欄の第3の5(1)イ(ア)に摘示のとおりと認められる。
 すなわち、一審原告は、本件図形標章を一審原告のパンフレットや価格表に用い
たことがあるものの、雑誌等の広告媒体やカタログには、単に本件図形標章を付し
た容器に入ったメープルシロップ類の商品写真が掲載されているだけで、本件図形
標章と原告の名称とを関連付けて掲げた例は少ないことが認められ、これらのこと
から判断するに、需要者及び取引者の間における本件図形標章の認知度は、さほど
高いものではなかったことが推認される。
    (ウ) 一審被告による被告標章の使用状況等
 一審被告による被告標章の使用状況及び被告商品の販売態様は、原判決摘示の証
拠及び弁論の全趣旨によれば、原判決事実及び理由欄の第3、5(1)イ(イ)に認定さ
れたとおりと認められる。すなわち、一審被告は、大手旅行会社(JTB)のグル
ープ企業であり、主として同旅行会社が主催する海外旅行の参加者向けに「海外お
みやげ宅配便・おみやげおまかせ」の名称でカタログによる通信販売事業を営んで
いる。その通信販売の方法は、一審被告の代理店等に各種土産品を掲載した本件カ
タログを備え付けておき、海外旅行に出発する旅行者から、予め本件カタログに基
づいて土産品の注文を受け、旅行者の帰国と同時に、これを自宅又は指定先に配送
するというものである。
 本件カタログの平成8年度版及び平成11年度版(ただし、改訂前のもの)に
は、被告標章を付した被告商品の写真が掲載されているが(甲3の1ないし3、甲
4の1ないし3、甲6の1)、それらの写真からは、かろうじて「メープルリー
フ」の形を判別することができるものの、楓の葉先や葉柄部分に丸みをつけ、葉の
中心に向かって斜方向に順次交互に直交する直線を表した本件図形の特徴は看取す
ることができない。
    (エ) 被告標章の使用の経緯、被告商品の売上動向等
被告商品のラベルに本件図形標章が使用されてきた経緯は、原判決摘示の証拠及
び弁論の全趣旨によれば、原判決事実及び理由欄の第3の2(1)(原判決12頁14
行から13頁5行)記載のとおりと認められる。すなわち、ターキー社は、昭和6
3年にターキー社との間で代理店契約を締結してターキー社製のメープルシロップ
の輸入販売をするようになった一審原告の要請により、同社が日本に輸出する商品
(後には日本以外に販売する商品についても)に本件図形標章を用いたラベルを付
するようになったが、一審原告が本件商標について日本で昭和63年3月4日に商
標登録出願をし、平成4年2月28日に登録を取得した事実については知らされて
いなかった。その後、ターキー社と一審原告との間の代理店契約が解除され、平成
8年3月の出荷を最後に両社間の取引はなくなった。その際、本件図形標章の使用
に関しては、何ら取り決めがされず、ターキー社は、一審原告との取引関係解消後
も本件図形標章の使用を継続した。
 さらに、証拠及び弁論の全趣旨によれば、ターキー社は平成11年5月にア社か
らの照会を受けてはじめて本件図形標章の使用について一審原告が商標権侵害を主
張していることを知ったこと、一審被告は商標権侵害侵害のクレームを受けた後直
ちに被告商品から被告標章を全て除去し、被告標章の使用を中止したこと、被告商
品から被告標章を除去して販売するようになった後も被告商品の売れ行きに変化は
ないことが認められる。
    (オ) 以上認定の事実を総合して判断すると、商品の販売に対する本件図
形標章の貢献は僅少なものにとどまるというべきであり、これに相応して本件商標
の持つ経済価値も低いと認めるのが相当である。そして、カタログに基づいて注文
される被告商品について、被告標章がカタログに掲載された被告商品の写真中に必
ずしも判然としない態様で表れているにすぎないこと等の事情を考慮すると、被告
商品の販売に対する被告標章の貢献度は、極めて小さいといってよい。さらに、本
件においては、本件図形標章の自他商品識別力(出所識別力)及び需要者における
認知度から推して、本件商標について使用許諾を求める需要があるとは考え難く
(このことは、商標権侵害問題の発生後、ターキー社及び一審被告が直ちに本件図
形標章の使用を中止したこと、使用中止後も被告商品の売れ行きに変化がないこと
からも推認される。)、本件商標についてのライセンス可能性が一審被告の侵害行
為によって害されたことを認めるべき事情もない。
 以上の諸点と併せて先に認定した商標使用の経緯その他一切の事情を勘案すると
き、本件商標についての使用料相当額は、被告商品の販売額の1パーセントと認め
るのが相当である。
 したがって、一審原告の蒙った使用料相当額の損害は、アで認定した被告商品の
売上高合計2521万6200円に1パーセントを乗じて得た額25万2162円
ということになる。
3 結語
 よって、一審原告の請求は、一審被告に対し25万2162円及びこれに対する
訴状送達の日の翌日である平成12年8月23日から支払済みまでの遅延損害金の
支払いを求める限度で理由がある。よって、一審原告の本件控訴についてはこれを
棄却し、一審被告の本件附帯控訴は一部理由があるから、原判決を変更することと
し、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第18民事部
       裁判長裁判官     永   井   紀   昭
          裁判官     塩   月   秀   平
裁判官     古   城   春   実
(別紙)
原告商標目録被告標章目録

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛