弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用および上告費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人伊東清重の上告理由第三点について。
 工場抵当法二条は、同条により抵当権の効力の及ぶ機械、器具は、抵当権の設定
された土地または建物と所有者を一にするものたることを要する趣旨であることは、
原判示のとおりである。ところで原判決の確定したところによれば、訴外株式会社
D鉄工所は昭和二七年二月二二日上告銀行との間に元本極度額を金一五〇万円とす
る手形取引契約を結び、その際右債務につき同訴外会社所有の原判決添付目録記載
の機械、器具のみを担保に差入れようとしたが、上告銀行から工場抵当でなければ
特別の融資はできないといわれ、右訴外会社の代表取締役である訴外Eはその個人
所有の原判決添付目録記載の各建物と同建物内に備付けてある右訴外会社所有の右
機械、器具に工場抵当法二条による根抵当権を設定することを承諾し、右訴外会社
と上告銀行間の手形取引根抵当権設定契約に基づき、右訴外Eは担保貸主兼保証人
として上告銀行と右訴外会社の債務担保のため右各建物ならびに機械、器具につい
て前記法条による根抵当権設定契約を締結したものであるというのである。
 しからば、かかる事実関係の下においては、本件不動産および動産たる機械、器
具を一体として根抵当権を設定されたものであり、そして原判決添付目録記載の各
建物につき、根抵当権設定登記がなされ、その際、工場抵当法三条による本件機械、
器具の目録も提出されたのであるから、本件建物および機械、器具は一体として同
法二条の適用をうけ、本件根抵当権の効力は右機械、器具に及ぶものと解するを相
当とする。されば原判決は、この点において工場抵当法二条の解釈、適用につき誤
あり、被上告人のした審査決定は違法であつて、所論は理由があるといわなければ
ならない。
 よつて、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決はこれを破棄すべき
ものであり、そして本件はこの段階において自判するに熟するものと認められるか
ら、被上告人がした審査決定が違法であることは前述のとおりであり、第一審判決
の理由は上述したところと異るけれども、本件審査決定を取消した同判決は結局正
当たるに帰するので、被上告人がした本件控訴を棄却するものとし、民訴四〇八条、
三八四条、九六条および八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決す
る。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫
            裁判官    高   木   常   七

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