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鳥取地裁平成21・4・10
316条の20棄却
主文
本件請求を棄却する。
理由
第1本件請求の趣旨及び理由
本件請求の趣旨及び理由は弁護人作成の裁定請求書記載のとおりであるが,要するに,
弁護人が検察官に対し,刑事訴訟法(以下「法」という。)316条の20に基づいて,被告人
にかかる警察官作成の取調べメモ(手控え),取調べ小票,調書案,備忘録等(犯罪捜査規
範13条に基づいて作成されたものを含む。ただし,既に開示されたものを除く。以下「警
察官作成の取調べメモ等」という。)を含んだ証拠の開示を請求したところ,検察官が,そ
の手持ち証拠の中に存在せず,また,警察署に保管されているものの中にも存在しない
ので,開示には応じられないと回答したため,前記開示を請求したもののうち,警察官
作成の取調べメモ等についての裁定を求めたというものである。
第2当裁判所の判断
1本件請求を受けて,当裁判所は,検察官に対し,求意見をし,さらに,釈明を命じ
たが,その経過及び内容は,次のとおりである。
(1)検察官は,平成21年3月23日,警察官作成の取調べメモ等は現時点では物理
的に存在せず,警察官が取調べ時に作成したメモについては,公訴提起により捜
査が終結した時点で廃棄したため,現時点では存在しない旨回答した。
(2)そこで,裁判所は,検察官に対し,同月24日,前記回答の信用性判断等のため,
下記アないしウの事項について釈明することを命じた。
ア検察官ないし警察官において開示の対象となり得ると判断したものであるか
にかかわらず,取調べ中に作成された手控え類ないしその内容を記録した書面
は一切存在しないか明らかにされたい。
イ当初存在したとされる取調べメモの作成者について明らかにされたい。
ウ取調べメモを作成した警察官は,どのような理由ないし根拠により同取調べ
メモを廃棄したのかを明らかにされたい。
(3)これに対し,検察官は,同月27日,前記アについて「一切存在しない。」,前記
イについて「倉吉警察署刑事課所属のA警部補及びB巡査部長」,前記ウについて
「上記2名は,被告人の取調べを担当していた警察官であるところ,被告人の供述
調書作成のため,私物のノート,ルーズリーフ及び資料のコピーにその供述内容
の一部を備忘のためにメモしたことはあったが,その内容を供述調書に反映させ
たため,不要と判断して廃棄済みである。なお,廃棄の時期については,A警部補
は,最初の逮捕(公訴事実第2記載の事実についてのもの)である平成20年10月
27日から同年11月6日までの間,被告人の取調べを担当し,B5版サイズのルー
ズリーフ用紙にメモを取ったが,研修のために取調べ担当を外れ,公判請求がな
された同年12月8日から約1週間後に捜査終結の目処がついたため廃棄したも
の,B巡査部長は,A警部補の後任として同年11月8日ころから公判請求後の同
年12月13日まで被告人の取調べを担当し,B5版サイズのノートに被告人の供述
内容の一部や参考人の連絡先等の本件事件の捜査を行うための備忘事項をメモ
し,また,本件現場となった旅館のパンフレットの図面のコピーに被告人の供述
内容の一部をメモしていたが,公判請求後,補充捜査を終了した平成21年1月5
日の数日後ころに廃棄したものである。」と回答した。
2以上を踏まえ検討する。
法316条の26第1項の証拠開示命令が認められるためには,開示を求められた証拠が
存在することがその前提となる。そして,前記のとおり,検察官は,取調べ中に作成され
た手控え類ないしその内容を記録した書面が現時点において一切存在しないと回答し,
以前に存在した取調べメモについて,その作成者を明らかにした上で,廃棄に至った理
由及び時期等について具体的な回答を行っており,弁護人の意見を踏まえ検討しても,
その回答の信用性に疑問を抱かせるような事情が見受けられないことに照らせば,現時
点では警察官作成の取調べメモ等は存在しないものと判断すべきである。
なお,累次の最高裁判例(最高裁平成19年12月25日第三小法廷決定・刑集61巻9号
895頁,最高裁平成20年6月25日第三小法廷決定・刑集62巻6号1886頁,平成20年9
月30日第一小法廷決定・刑集62巻8号2753頁)により,相応の範囲の取調べメモが証拠
開示命令の対象となり得ることが明らかとされており,かつ,警察官が捜査の過程で作
成,保管するメモが証拠開示命令の対象となるものか否かの判断は裁判所が行うべきも
のであるところ(前記平成20年6月25日決定),当初存在したメモは,ノートやルーズ
リーフ等に被告人の供述内容の一部等が記載され,公判請求後までは保管されていたと
いうものであることなどに照らすと,開示の対象となると判断され得たものが警察官に
より廃棄されてしまった可能性も否定し得ず,そのこと自体の問題のほか,事案によっ
ては,かかる事情が,問題となる供述調書等の信用性判断においてより慎重な姿勢を示
すべき要因の一つとなり得ることもある旨を付言する。
第3結論
以上によれば,本件請求は理由がないから,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官・小倉哲浩,裁判官・空閑直樹,裁判官・野口登貴子)

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