弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
       1 原判決中第1審原告敗訴部分のうち次の部分を破棄し,同部分
につき本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
       (1) 第1審被告が第1審原告に対し平成2年8月2日付けで現
金出納簿についてした非公開決定(同3年9月12日付け決定により一部取り消さ
れた後のもの)のうち,第1審判決別紙(2)の受欄記載の番号1ないし324,
326,328ないし576,578ないし706,708ないし722,724
ないし745,747ないし983の情報のうち支出項目「会費」に係るものが記
録されている現金出納簿中の部分を非公開とした部分につき第1審原告の控訴を棄
却した部分
       (2) 第1審被告が第1審原告に対し平成3年9月12日付けで
領収書等についてした非公開決定のうち,交際の相手方が発行した支出項目「会費」
に係る領収書を非公開とした部分及び支出項目「会費」に係る支払証明書を非公開
とした部分につき第1審原告の控訴を棄却した部分
2 原判決中第1審被告敗訴部分のうち次の部分を破棄し,同部分につき第1審原
告の控訴を棄却する。
       (1) 第1審被告が第1審原告に対し平成2年8月2日付けで現
金出納簿についてした非公開決定(同3年9月12日付け決定により一部取り消さ
れた後のもの)のうち,第1審判決別紙(2)の受欄記載の番号1ないし324,
326,328ないし576,578ないし706,708ないし722,724
ないし745,747ないし983の情報(支出項目「会費」に係るものを除く。)
が記録されている現金出納簿中の部分のうち摘要欄中の「支出の相手方」及び「支
出項目の細目」以外の各記載部分を非公開とした部分を取り消した部分
       (2) 第1審被告が第1審原告に対し平成3年9月12日付けで
領収書等についてした非公開決定のうち,交際の相手方が発行した領収書(支出項
目「会費」に係るものを除く。)のうち発行者及び現金出納簿における「支出項目
の細目」に相当する記載以外の各記載部分を非公開とした部分並びに支払証明書(
支出項目「会費」に係るものを除く。)のうち「支出の相手方」及び「支出項目の
細目」以外の各記載部分を非公開とした部分を取り消した部分
       3 第1審被告のその余の上告を棄却する。
       4 第1審原告のその余の上告のうち,第1審被告が第1審原告に
対し平成2年8月2日付けで領収書等についてした非公開決定の取消請求に関する
部分を却下し,その余の部分を棄却する。
       5 第3項に関する上告費用は第1審被告の負担とし,第2項の部
分に関する控訴費用及び上告費用並びに前項に関する上告費用は第1審原告の負担
とする。
         理    由
 第1 平成9年(行ツ)第137号上告代理人滝田誠一の上告理由について
 1 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
 (1) 第1審原告は,平成2年7月19日,愛知県公文書公開条例(昭和61
年愛知県条例第2号。以下「本件条例」という。なお,本件条例は平成12年愛知
県条例第19号により全部改正された。)に基づき,平成元年4月1日から同2年
3月31日までの間の知事交際費の使途について細目を記載した一切の公文書の公
開を請求したところ(以下「本件公開請求」という。),本件条例の実施機関であ
る第1審被告は,同年8月2日,上記期間の知事交際費に係る支出金調書,資金前
渡金精算書及び現金出納簿(以下「本件現金出納簿」という。)が本件公開請求に
対応する公文書に当たるとした上,そのうち支出金調書及び資金前渡金精算書につ
いてはこれを公開したが,本件現金出納簿については,本件条例6条1項2号,3
号及び9号に該当するとして,これを非公開とする旨の決定(以下,この非公開決
定を「本件処分1」という。)をした。これを不服として,第1審原告が異議申立
てをしたところ,第1審被告は,同3年9月12日,① 上記期間の知事交際費に
係る領収書及び支払証明書(以下,それぞれ「本件領収書」,「本件支払証明書」
といい,これらをまとめて「本件領収書等」という。)も本件公開請求に対応する
公文書に当たるとした上,これを非公開とし,② 本件処分1のうち,香料,祝金
,会費,せん別,賛助金及びその他の6種類の支出項目の中の香料及び祝金に係る
情報が記録されている本件現金出納簿中の部分のうち摘要欄中の支出の相手方,支
出項目の細目(例えば,実父葬,叙勲祝賀,病気見舞。),知事・副知事の別及び
支出金額以外の各記載部分並びに会費,せん別,賛助金及びその他に係る情報が記
録されている本件現金出納簿中の部分のうち摘要欄中の支出の相手方,支出項目の
種別(具体的には,会費,せん別,賛助金,その他の別。)及び支出項目の細目以
外の各記載部分をそれぞれ非公開とした部分を取り消して同記載部分を公開し,そ
の余の異議申立てを棄却する旨の決定(以下「本件処分2」という。)をした。
 (2) 本件条例6条1項は,「実施機関は,次の各号のいずれかに該当する情
報が記録されている公文書については,公文書の公開をしないことができる。」と
規定し,同項2号は「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報
を除く。)であって,特定の個人が識別され得るもの。ただし,次に掲げる情報を
除く。イ 法令又は条例の定めるところにより,何人でも閲覧することができると
されている情報 ロ 公表することを目的としている情報 ハ 法令又は条例の規
定に基づく許可,免許,届出等に際して実施機関が作成し,又は取得した情報であ
って,公開することが公益上必要であると認められるもの」と,同項3号は「法人
(国又は地方公共団体を除く。)その他の団体(以下「法人等」という。)に関す
る情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって,公開することにより
,当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる
もの。ただし,次に掲げる情報を除く。イ 事業活動によって生ずる危害から人の
生命,身体又は健康を保護するために,公開することが必要であると認められる情
報 ロ 違法又は著しく不当な事業活動によって生ずる支障から人の生活を保護す
るために,公開することが必要であると認められる情報」と,同項9号は「監査,
検査,取締り等の計画及び実施要領,争訟又は交渉の方針,入札の予定価格,試験
の問題及び採点基準その他県又は国等の事務事業に関する情報であって,公開する
ことにより,当該事務事業若しくは同種の事務事業の目的が損なわれ,又はこれら
の事務事業の公正かつ円滑な執行に支障を生ずるおそれのあるもの」と規定してい
る。
 (3) 愛知県における知事等の交際費の支出については,資金前渡の方法が採
られている。資金前渡員に指定された秘書課長は,毎月初めに支出見込額に相当す
る現金の前渡しを受け,必要に応じてこれを支払に充て,その都度,支払先から領
収書を徴するか,領収書を徴収することができない場合には支払証明書を作成し,
現金出納簿に支出に係る事項を記載している。交際費の支出に当たっては,交際の
相手方の地位,相手方と県とのかかわりの深浅,相手方の県行政に対する貢献度等
を考慮し,知事等の裁量により決定している。
 (4) 本件現金出納簿は,年月日,摘要,受,払,残の各欄からなっており,
摘要欄には,支出の相手方,支出項目の種別及びその細目,知事・副知事の別が記
載されている。本件領収書には,支払の相手方(発行者),支払年月日,支払金額
等が記載されており,本件支払証明書には,本件現金出納簿に記載されているのと
同様の内容が記載されている。
 (5) 交際費の支出項目は,香料,祝金,会費,せん別,賛助金,その他とさ
れている。香料は,交際の関係者及び県職員の本人又はその家族が死亡した場合に
支出したものである。祝金は,受賞,叙勲,就任等の祝賀会,総会,講演会,セミ
ナー等の各種大会,出版記念会,パーティー等の諸会合に出席した際の祝金又は祝
品購入金である。会費は,知事又は副知事が構成員となっている各種団体の年会費
及び当該団体の会合,関係者との懇談会,懇親会に出席した際の会費又は分担金等
の諸費用等である。せん別は,関係者の転任,退職,海外渡航に際して支出したも
のである。賛助金は,県が協賛した会議,記念誌刊行事業,追悼会等のために支出
したものである。その他は,県の関係者の病気,出火等に際して支出した見舞金,
遺児育英資金,スポーツ振興等の激励金及び謝礼金である。
 (6) 本件現金出納簿に記録されている合計983件の情報のうち,第1審判
決別紙(2)受欄記載の番号(以下,単に「番号」という。)325,327,5
77,707,723及び746の情報は,交際の相手方が識別され得ないもので
あるが,残りの977件の情報は,交際の相手方が識別され得るものである。本件
領収書のうち,交際の相手方以外の者が発行した領収書は,上記6件の情報に対応
するものであり,いずれも交際の相手方が識別され得ないものであるが,交際の相
手方が発行した領収書は,いずれも交際の相手方が識別され得るものである。本件
支払証明書に記録されている情報は,すべて交際の相手方が識別され得るものであ
る。
 2 本件は,第1審原告が,本件現金出納簿の公開に関し,本件処分1(本件処
分2により一部取り消された後のもの。以下同じ。)のうち本件現金出納簿を非公
開とした部分の取消しを求めるとともに,本件領収書等の公開に関し,本件処分1
は本件領収書等の非公開決定を含んでいると主張して,主位的に本件処分1のうち
本件領収書等を非公開とした部分の取消しを,予備的に本件処分2のうち本件領収
書等を非公開とした部分の取消しを求めている事案である。
 3 原審は,前記事実関係の下において,① 本件現金出納簿に記録されている
合計983件の情報のうち,交際の相手方が識別され得ない番号325,327,
577,707,723及び746の情報は,本件条例6条1項2号,3号及び9
号のいずれにも該当しないが,交際の相手方が識別され得るその余の977件の情
報は,少なくとも同項9号に該当する,② 本件領収書のうち交際の相手方以外の
者が発行したものに記録されている情報は,同項2号,3号及び9号のいずれにも
該当しないが,交際の相手方が発行したものに記録されている情報は,少なくとも
同項9号に該当する,③ 本件支払証明書に記録されている情報は,少なくとも同
号に該当するとした。
 4 原審の上記判断中,本件現金出納簿に記録されている上記977件の情報,
交際の相手方が発行した本件領収書に記録されている情報並びに本件支払証明書に
記録されている情報のうちそれぞれ香料,祝金,せん別,賛助金及びその他に係る
ものが少なくとも本件条例6条1項9号に該当するとした部分は是認することがで
きるが,上記各情報のうち会費に係るものが少なくとも同号に該当するとした部分
は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 (1) 知事の交際は,本件条例6条1項9号にいうその他の事務に該当すると
解されるから,同号によれば,これらの事務に関する情報を記録した文書を公開し
ないことができるか否かは,これらの情報を公開することにより,当該若しくは同
種の交際事務の目的が損なわれるおそれがあるか否か,又はその公正かつ円滑な執
行に支障を生ずるおそれがあるか否かによって決定されることになる。
 ところで,知事の交際事務は,相手方との間の信頼関係ないし友好関係の維持増
進を目的として行われるものであるところ,相手方の氏名等の公表,披露が当然予
定されているような場合等は別として,相手方を識別し得るような文書の公開によ
って相手方の氏名等や支出金額が明らかにされることになれば,一般に,交際費の
支出の要否,内容等は,県の相手方とのかかわり等をしんしゃくして個別に決定さ
れるという性質を有するものであることから,不満や不快の念を抱く者が出ること
が容易に予想される。そのような事態は,交際の相手方との間の信頼関係あるいは
友好関係を損なうおそれがあり,交際それ自体の目的に反し,ひいては交際事務の
目的が損なわれるおそれがあるというべきである。また,これらの交際費の支出の
要否やその内容等は,支出権者である知事自身が,個別,具体的な事例ごとに,裁
量によって決定すべきものであるところ,交際の相手方や内容等が逐一公開される
こととなった場合には,知事においても上記のような事態が生ずることを懸念して
,必要な交際費の支出を差し控え,あるいはその支出を画一的にすることを余儀な
くされることも考えられ,知事の交際事務の公正かつ円滑な執行に支障が生じるお
それがあるといわなければならない。したがって,本件各文書のうち交際の相手方
が識別され得るものは,原則として本件条例6条1項9号により公開しないことが
できる公文書に該当するというべきである。
 もっとも,知事の交際事務に関する情報で交際の相手方が識別され得るものであ
っても,相手方の氏名等が外部に公表,披露されることがもともと予定されている
もの,すなわち,交際の相手方及び内容が不特定の者に知られ得る状態でされる交
際に関するものなど,相手方の氏名等を公表することによって上記のおそれがある
とは認められないようなもの(以下「9号の例外要件」という。)は,例外として
同号に該当しないと解するのが相当である。上記の交際の相手方及び内容が不特定
の者に知られ得る状態でされる交際に該当するか否かは,当該交際が,その行われ
る場所,その内容,態様その他諸般の事情に照らして,その相手方及び内容がそれ
を知られることがもともと予定されている特定の関係者以外の不特定の者に知られ
得る性質のものであるか否かという観点から判断すべきである。そうであれば,知
事と相手方との交際の事実そのものは不特定の者に知られ得るものであっても,支
出金額等,交際の内容までは不特定の者に知られ得るものとはいえない情報は,他
に相手方の氏名等を公表することによって上記のおそれがあるとは認められないよ
うな事情がない限り,同号に該当するものと解される(最高裁平成3年(行ツ)第
18号同6年1月27日第一小法廷判決・民集48巻1号53頁,最高裁平成8年
(行ツ)第210号,第211号同13年3月27日第三小法廷判決・民集55巻
2号530頁参照)。
 (2) ところで,前記事実関係によれば,本件現金出納簿に記録されている前
記977件の情報,交際の相手方が発行した本件領収書に記録されている情報及び
本件支払証明書に記録されている情報は,いずれも交際の相手方が識別され得るも
のであるから,原則として本件条例6条1項9号に該当するというべきである。そ
こで,以下,これらの情報が9号の例外要件に該当するか否か等につき検討する。
 ア 会費
 前記事実関係によれば,会費に関する情報は,知事又は副知事が構成員となって
いる各種団体の年会費及び当該団体の会合,関係者との懇談会,懇親会に出席した
際の会費又は分担金等の諸費用等に係るものであるところ,このうち年会費ないし
会合等の会費については,その性質上,相手方が一定の金額を定めるのが通常であ
り,知事が県と相手方とのかかわり等をしんしゃくして個別に金額を決定するよう
なものではない。そして,知事が各種団体に加入するかどうか又は会合等に出席す
るかどうかは,県と相手方とのかかわり等をしんしゃくして個別に決定されるもの
であるが,例えば,知事がポスト指定として団体等の会員となっている場合やその
会合に出席する場合等,知事の団体等への加入や会合等への出席が不特定の者に知
られ得る状態で行われることも少なくないと考えられるのであって,このような場
合の会費に係る交際に関する情報は,本件条例6条1項9号に該当しないと解する
のが相当である。また,分担金等の諸費用等についても,以上と同様のものが含ま
れている蓋然性がある。
 以上によれば,本件各文書に記録されている交際の相手方が識別され得る情報の
うち会費に係るものの中には,9号の例外要件に該当するものが含まれている蓋然
性が高いのであるから,第1審被告としては,抽象的に公表,披露を予定したもの
はない旨を主張立証するだけでは足りず,会費の具体的な類型を明らかにした上で
,これが9号の例外要件に当たらないことを主張立証すべきであり,この点につい
て審理を尽くさずに交際の相手方が識別され得る情報のうち会費に係るものが少な
くとも本件条例6条1項9号に該当するとした原審の判断には,法令の解釈適用を
誤った違法がある。そして,9号の例外要件に該当する情報は,同項3号に該当し
ない可能性があり,また,原審は,会費に関する情報が特定の個人が識別され得る
ものであるかどうかを認定しておらず,9号の例外要件に該当する情報の同項2号
該当性を確定することもできないから,上記違法は判決に影響を及ぼすことが明ら
かである。
 イ 香料及びせん別
 香料及びせん別は,その性質上,県と相手方とのかかわり等をしんしゃくして支
出の要否や金額等が個別に決定されるものであり,贈呈の事実はともかく,具体的
な金額等が不特定の者に知られ得る状態で行われるということは通常考えられない。
したがって,本件各文書に記録されている交際の相手方が識別され得る情報のうち
香料及びせん別に係るものは,少なくとも本件条例6条1項9号に該当するという
べきである。
 ウ 祝金
 前記事実関係によれば,祝金に関する情報は,受賞,叙勲,就任等の祝賀会,総
会,講演会,セミナー等の各種大会,出版記念会,パーティー等の諸会合に出席し
た際の祝金又は祝品購入金に係るものであるところ,これらについては,いずれも
その性質上,県と相手方とのかかわり等をしんしゃくして支出の要否や金額等が個
別に決定されるものであり,贈呈の事実はともかく,具体的な金額等が不特定の者
に知られ得る状態で行われるということは通常考えられない。したがって,本件各
文書に記録されている交際の相手方が識別され得る情報のうち祝金に係るものは,
少なくとも本件条例6条1項9号に該当するというべきである。
 エ 賛助金
 前記事実関係によれば,賛助金に関する情報は,県が協賛した会議,記念誌刊行
事業,追悼会等のために支出した賛助金に係るものであるところ,これらの各種行
事,事業等への賛助金は,その性質上,県と相手方とのかかわり等をしんしゃくし
て支出の要否や金額等が個別に決定されるものであり,贈呈の事実はともかく,具
体的な金額等が不特定の者に知られ得る状態で行われるということは通常考えられ
ない。したがって,本件各文書に記録されている交際の相手方が識別され得る情報
のうち賛助金に係るものは,少なくとも本件条例6条1項9号に該当すると解する
のが相当である。
 オ その他
 前記事実関係によれば,その他に関する情報は,県の関係者の病気,出火等に際
して支出した見舞金,遺児育英資金,スポーツ振興等の激励金及び謝礼金に係るも
のであるところ,これらの見舞金,遺児育英資金,激励金及び謝礼金は,その性質
上,県と相手方とのかかわり等をしんしゃくして支出の要否や金額等が個別に決定
されるものであり,贈呈の事実はともかく,具体的な金額等が不特定の者に知られ
得る状態で行われるということは通常考えられない。したがって,本件各文書に記
録されている交際の相手方が識別され得る情報のうちその他に係るものは,少なく
とも本件条例6条1項9号に該当すると解するのが相当である。
 5 以上によれば,原審の前記判断中,本件各文書に記録されている交際の相手
方が識別され得る情報のうち香料,祝金,せん別,賛助金及びその他に係るものが
少なくとも本件条例6条1項9号に該当するとした部分は,正当として是認するこ
とができ,原判決に所論の違法はない。この部分に関する第1審原告の論旨は理由
がなく,上記違法のあることを前提とする所論違憲の主張は,その前提を欠く。し
かしながら,原審の前記判断中,本件各文書に記録されている交際の相手方が識別
され得る情報のうち会費に係るものが少なくとも同号に該当するとした部分には,
法令の解釈適用を誤った違法があり,この違法は判決に影響を及ぼすことが明らか
である。この部分に関する第1審原告の論旨は理由があり,原判決中上記判断に係
る部分は破棄を免れない。そして,以上説示したところに従って,本件各文書に記
録されている交際の相手方が識別され得る情報のうち会費に係るものが同項2号,
3号又は9号に該当するか否かにつき更に審理を尽くさせるため,上記部分につき
本件を原審に差し戻すのが相当である。
 なお,第1審原告は,本件領収書等の公開に関する主位的請求に関する部分につ
いては上告理由を記載した書面を提出しないから,同部分に関する上告は,不適法
として却下することとする。
 第2 平成9年(行ツ)第136号上告代理人佐治良三,同後藤武夫,同林昇平
,同寺澤義則,同松田雅仁,同森岡士郎,同志治孝利,同若山泰文,同田中宏之の
上告理由第一点について
 本件条例は,県民の公文書の公開を請求する権利を明らかにするとともに,公文
書の公開に関し必要な事項を定めている(1条)。本件条例における公文書の公開
とは,実施機関が本件条例の定めるところにより公文書を閲覧に供し,又は公文書
の写しを交付することをいい(2条3項),実施機関は,本件条例に基づき公文書
の公開を求める請求書を受理したときは,請求に係る公文書の公開をするかどうか
の決定をしなければならないものとされている(8条1項)。そして,県内に住所
を有する者や県内に事務所又は事業所を有する個人及び法人その他の団体等,5条
各号のいずれかに該当する者は,実施機関に対して公文書の公開を請求することが
できるのであり(5条),本件条例には,請求者が請求に係る公文書の内容を知り
,又はその写しを取得している場合に当該公文書の公開を制限する趣旨の規定は存
在しない。これらの規定に照らすと,【要旨】本件条例5条所定の公開請求権者は
,本件条例に基づき公文書の公開を請求して,所定の手続により請求に係る公文書
を閲覧し,又は写しの交付を受けることを求める法律上の利益を有するというべき
であるから,請求に係る公文書の非公開決定の取消訴訟において当該公文書が書証
として提出されたとしても,当該公文書の非公開決定の取消しを求める訴えの利益
は消滅するものではないと解するのが相当である。したがって,本件処分1のうち
原審係属中に書証として提出された番号325,327,577,707,723
及び746の情報が記録されている本件現金出納簿中の部分を非公開とした部分並
びに本件処分2のうち原審係属中に書証として提出された交際の相手方以外の者が
発行した本件領収書を非公開とした部分を取り消すべきものとした原審の判断は,
正当として是認することができ,原判決に所論の違法はない。論旨は,採用するこ
とができない。
 第3 同第二点及び第三点について
 1 本件条例6条2項は,「実施機関は,公文書に前項各号のいずれかに該当す
る情報とそれ以外の情報とが併せて記録されている場合において,当該該当する情
報に係る部分とそれ以外の部分とを容易に分離することができ,かつ,その分離に
より公文書の公開の請求の趣旨が損なわれることがないと認められるときは,同項
の規定にかかわらず,当該該当する情報に係る部分を除いて,公文書の公開をしな
ければならない。」と規定している。
 原審は,番号1ないし324,326,328ないし576,578ないし70
6,708ないし722,724ないし745,747ないし983の情報が記録
されている本件現金出納簿中の部分,交際の相手方が発行した本件領収書及び本件
支払証明書について,「支出の相手方」及び「支出項目の細目」又はこれらに相当
する記載部分を除いた部分は本件条例6条1項2号,3号,9号により公開しない
ことができるものとは認められないから,実施機関である第1審被告は,同条2項
に基づき,「支出の相手方」及び「支出項目の細目」又はこれらに相当する記載部
分を除いた部分を公開すべきであり,本件処分1及び本件処分2のうち当該部分を
非公開とした部分は違法であるとした。
 2 しかしながら,これらの文書について,本件条例6条2項に基づき「支出の
相手方」及び「支出項目の細目」又はこれらに相当する記載部分を除いた部分を公
開すべきであるとした原審の上記判断部分は,是認することができない。その理由
は,次のとおりである。
 本件条例6条2項は,その文理に照らすと,1個の公文書に複数の情報が記録さ
れている場合において,それらの情報のうちに同条1項各号のいずれかの事由(以
下「非公開事由」という。)に該当するものがあるときは,当該部分を除いたその
余の部分についてのみ,これを公開することを実施機関に義務付けているにすぎな
い。すなわち,本件条例には,公開請求に係る公文書に記録されている情報が条例
所定の非公開事由に該当するにもかかわらず,当該情報の一部を除くことにより,
残余の部分のみであれば非公開事由に該当しないことになるものとして,当該残余
の部分を公開すべきものとする定めは存在しない(個人識別情報に関するこのよう
な定めの例として,行政機関の保有する情報の公開に関する法律6条2項,愛知県
情報公開条例(平成12年愛知県条例第19号)8条2項参照)。そうすると,上
記のような定めを欠く本件条例6条2項の解釈としては,非公開事由に該当する独
立した一体的な情報を更に細分化し,その一部を非公開とし,その余の部分にはも
はや非公開事由に該当する情報は記録されていないものとみなして,これを公開す
ることまでをも実施機関に義務付けているものと解することはできない。したがっ
て,実施機関においてこれを細分化することなく一体として非公開決定をしたとき
に,住民等は,実施機関に対し,同条2項を根拠として,公開することに問題のあ
る箇所のみを除外してその余の部分を公開するよう請求する権利はなく,裁判所も
また,当該非公開決定の取消訴訟において,実施機関がこのような態様の部分公開
をすべきであることを理由として当該非公開決定の一部を取り消すことはできない
というべきである(前掲平成13年3月27日判決参照)。
 本件各文書についてこれをみると,前記第1の1(4)の事実関係等によれば,
本件現金出納簿については,各交際費の支出ごとにその年月日,金額,摘要,金員
の受払等の関係記載部分が当該交際費に係る知事の交際に関する独立した一体的な
情報を成すものとみるべきであるから,当該記載部分を更に細分化して相手方識別
部分等その一部のみを非公開としその余の部分を本件条例6条2項に基づいて公開
しなければならないものとすることはできない。本件領収書及び本件支払証明書に
ついては,各交際費の支出ごとにこれに対応する領収書又は支払証明書に記録され
た情報が全体として当該交際費に係る知事の交際に関する独立した一体的な情報を
成すものとみるべきであるから,同様に,これを更に細分化してその一部のみを非
公開としその余の部分を公開しなければならないものとすることはできない。
 3 以上によれば,原審の前記判断には法令の解釈適用を誤った違法があり,こ
の違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり,原判決中上
記判断に係る部分は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,本件
処分1及び本件処分2のうち,番号1ないし324,326,328ないし576
,578ないし706,708ないし722,724ないし745,747ないし
983の情報(会費に係るものを除く。)が記録されている現金出納簿中の部分,
交際の相手方が発行した本件領収書(会費に係るものを除く。)及び本件支払証明
書(会費に係るものを除く。)についてこれを全部非公開とした部分に違法はない
から,この部分については第1審原告の控訴を棄却すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
    最高裁判所第一小法廷
(裁判長裁判官 井嶋一友 裁判官 藤井正雄 裁判官 町田 顯 裁判官 深澤
武久)

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弁護士 求人 採用
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激動の時代に
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