弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主       文
被告人を懲役4年に処する。
未決勾留日数中30日を刑に算入する。
理       由
(犯罪事実)
被告人は,平成15年6月30日午後9時15分ころ,a市b区c条d丁目e
番f号被告人方において,養女であるA(当時5歳)に対し,その背部を突き飛
ばして座椅子等に打ち付けさせた上,その腹部を左手拳で殴打する暴行を加え,
よって,同女に加療6か月以上を要する肝臓破裂,膵臓挫傷,上腸間膜静脈損傷
及び十二指腸穿孔等の傷害を負わせた。
(法令の適用)
罰      条     刑法204条
刑種の選択懲役刑を選択
未決勾留日数の算入     刑法21条
訴訟費用の不負担     刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
本件は,被告人が同居する5歳の養女に対し,判示のとおりの強度の暴行を加
え,瀕死の重傷を負わせた事案である。
被告人は,被害者が自分の言い付けどおり玄関の鍵を閉めていなかったことに
憤激し,就寝中の同女を起こして鍵をかけるよう指示したが,寝ぼけた同女が別
の方向に歩いていこうとしたことから,怒りにまかせて同女を突き飛ばして座椅
子等に打ち付けさせ,被害者が痛みを訴えたにもかかわらず,暴行を止めるどこ
ろか,非情にも「本当に痛いというのはこういうことを言うんだ。」などと言い
ながら,さらに強度の暴行を加えたのであり,本件は,しつけが行き過ぎたこと
により発生した傷害事件ではなく,被告人が自己の怒りを幼い子供に向けた,し
つけに名を借りた虐待である。
また,被告人は,本件犯行の数か月前から,被害者の両手両足を配線バンドで
縛って水風呂に入れたり,被害者の臀部が腫れ上がるほど強く掃除機の柄で殴打
するなど日常的に暴行を繰り返してきたものであり,本件はかかる暴行の一環で
ある。
被害者は,本件により体内の血液の3分の2が失われるなど死亡寸前の重篤な
傷害を負い,幸い一命はとりとめたものの,事件後2か月以上経過した現在でも
死の危険は去っていないのであり,身体的傷害自体相当に重い。加えて,被害者
は,被告人の日常的な暴行に対し,抵抗することはおろか,他に助けを求めるこ
ともできず,その結果,本件により瀕死の重傷を負わされるに至ったのであっ
て,5歳という人格の基礎が形成される時期に同居する養父からこのような激烈
な暴行を受けたことが被害者の精神に与えた悪影響も甚大であり,将来にわたっ
て同女の健全な心身の発達に重大な悪影響を与えたことも併せ勘案すると,本件
の結果は重大である。
以上によれば,被告人の刑事責任は相当重い。
そうすると,他方,被告人が本件犯行を認めて反省の態度を示していること,
被告人には前科がないこと,本件のような重大な結果が生じるに至ったのは,被
告人の被害者に対する従前の暴行を容認していた母親の態度にも原因があると認
められることなど被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても,主文の実刑は
免れないと判断した。
(求刑・懲役4年)
平成15年9月24日
札幌地方裁判所刑事第1部2係
裁判官 中  桐  圭  一

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