弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
一 上告人A1、同A2及び同A3の上告を棄却する。
二 原判決中、被上告人らの上告人A4、同A5及び同A6に対する各予備的請求
に関する部分を破棄し、第一審判決中、右請求に関する部分を取り消す。
三 前項の部分に関する被上告人らの請求をいずれも棄却する。
四 上告人A1、同A2及び同A3の上告費用は右上告人らの負担とし、上告人A
4、同A5及び同A6と被上告人らとの間に生じた訴訟の総費用は被上告人らの負
担とする。
         理    由
 第一 上告代理人田辺照雄の上告理由第一点について
 一 本件は、第一審判決添付の別表1及び別表2記載の各公金の支出が違法であ
るとして、京都市の住民である被上告人らが、地方自治法二四二条の二第一項四号
に基づき、京都市に代位して、上告人らに対し、右違法な公金の支出により京都市
が被った損害の賠償を請求する住民訴訟であり、本件訴えは、同号所定の「当該職
員」に対する損害賠償請求として提起されたものである。
 原審の適法に確定したところによれば、京都市においては、局長等専決規程(昭
和三八年五月一六日訓令甲第二号)により、支出金額の多寡に応じてそれぞれ専決
を任される者が定められており、被上告人らが本件訴えの提起時において被告とし
た者らのうち、上告人A2は、右各公金の支出に関し、右規程により一件一〇万円
以下の支出決定について専決を任されており、Dはおよそ専決を任されていなかっ
たところ、被上告人らは、平成六年一月二六日、行政事件訴訟法四三条三項、四〇
条二項、一五条一項に基づき、その金額が一〇万円を超える第一審判決添付の別表
1記載の番号1、2、4、6、8ないし11、13ないし18、21及び22の各
公金の支出に係る訴えについて、被告を上告人A2から右規程によりその専決を任
されていた上告人A5に、第一審判決添付の別表2記載の番号3ないし5及び7の
各公金の支出に係る訴えについて、被告をDから右規程によりその専決を任されて
いた上告人A6に、同番号6の公金の支出に係る訴えについて、被告をDから右規
程によりその専決を任されていた上告人A4に、それぞれ変更する旨の申立てをし、
第一審裁判所は、同年六月二七日、これを許可する旨の決定(以下「本件被告変更
許可決定」という。)をした。
 二 地方自治法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」には、普通地方公共
団体の内部において、訓令等の事務処理上の明確な定めにより、当該訴訟において
その適否が問題とされている財務会計上の行為につき法令上権限を有する者からあ
らかじめ専決することを任され、右権限行使についての意思決定を行うとされてい
る者も含まれるが、およそ右のような権限を有する地位ないし職にあると認められ
ない者を被告として提起された同号所定の「当該職員」に対する損害賠償請求又は
不当利得返還請求に係る訴えは、法により特に出訴が認められた住民訴訟の類型に
該当しない訴えとして、不適法である(最高裁昭和五五年(行ツ)第一五七号同六
二年四月一〇日第二小法廷判決・民集四一巻三号二三九頁、最高裁平成二年(行ツ)
第一三八号同三年一二月二〇日第二小法廷判決・民集四五巻九号一五〇三頁)。ま
た、訓令等の事務処理上の明確な定めにより、当該財務会計上の行為に関し、額の
多寡に応じるなどして、専決することを任され、右権限行使についての意思決定を
行う者がそれぞれ規定されている場合において、当該財務会計上の行為につき、右
のような権限を有する地位ないし職にある者として「当該職員」には該当するもの
の、現実に専決するなどの財務会計上の行為をしたと認められない者に対する損害
賠償請求又は不当利得返還請求は、理由がなく棄却されるべきである(前掲平成三
年一二月二〇日第二小法廷判決参照)。しかしながら、財務会計上の行為を行う権
限の所在及びその委任関係等に関する法令、条例、規則、訓令等の定めや普通地方
公共団体内部の行政組織が複雑であるため、地方自治法二四二条の二第一項四号所
定の「当該職員」に対する訴えを提起しようとする住民において、その適否が問題
とされている財務会計上の行為につき、だれが右のような権限を有する地位ないし
職にある者として「当該職員」に該当するのか、また、だれが現実に専決するなど
の財務会計上の行為をしたのかの判定が必ずしも容易でない場合も多いと考えられ
る。他方、当該訴えは同条二項一号ないし四号に掲げる期間内に提起しなければな
らないとされているため、当該住民がおよそ右のような権限を有する地位ないし職
にあると認められない者又は現実に専決するなどの財務会計上の行為をしたと認め
られない者を被告として訴えを提起した場合には、改めて正当な被告に対して訴え
を提起しようとしても、出訴期間の経過により許されないことがある。以上の事情
は、取消訴訟において原告が被告とすべき者を誤った場合と異なるところはなく、
行政事件訴訟法一五条は、このような場合に、被告の変更を許すことにより原告の
救済を図ることとしているのであるから、前記のように被告とすべき「当該職員」
を誤った場合についても、地方自治法二四二条の二第六項、行政事件訴訟法四三条
三項、四〇条二項により同法一五条の規定を準用して被告の変更を許すことにより、
原告の救済を図るのが相当というべきである。
 そうすると、【要旨第一】地方自治法二四二条の二第一項四号所定の「当該職員」
に対する損害賠償請求又は不当利得返還請求に係る訴えにおいて、原告が故意又は
重大な過失によらないで「当該職員」とすべき者を誤ったときは、裁判所は、原告
の申立てにより、行政事件訴訟法一五条を準用して、決定をもって、被告を変更す
ることを許すことができると解するのが相当である。また、【要旨第二】訓令等の
事務処理上の明確な定めにより、その適否が問題とされている財務会計上の行為に
関し、額の多寡に応じるなどして、専決することを任され、右権限行使についての
意思決定を行う者がそれぞれ規定されている場合において、当該財務会計上の行為
につき、法令上権限を有する者からあらかじめ専決することを任され、右権限行使
についての意思決定を行うとされている者として「当該職員」には該当するものの、
現実に専決するなどの財務会計上の行為をしたと認められない者を誤って被告とし
たときにも、同条を準用して、被告を変更することを許すことができると解すべき
である。
 三 以上判示したところによれば、被上告人らは、前記各公金の支出に係る訴え
について、行政事件訴訟法一五条の準用により、被告とすべき「当該職員」を誤っ
たとして被告変更の申立てをすることができるから、第一審裁判所がした本件被告
変更許可決定により、前記各公金の支出に係る上告人A2及びDに対する本件訴え
は、取り下げられたものとみなされ(同条四項)、上告人A5、同A6及び同A4
がそれぞれ被告の地位を有するに至ったものというべきである。右と結論において
同旨の原審の判断は、是認することができ、論旨は採用することができない。
 第二 同第二点及び第三点について
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属す
る証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。
 第三 同第四点について
 一 【要旨第三】地方自治法二四二条の二第一項四号所定の「当該職員」に対す
る損害賠償請求又は不当利得返還請求に係る訴えにおいて、原告が被告とすべき「
当該職員」を誤ったとしてした被告変更の申立てに対して行政事件訴訟法一五条の
準用による裁判所の許可決定がされた場合、従前の被告に対する訴えの提起は、新
たな被告に対する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権についての裁判上の請求
又はこれに準ずる時効中断事由には該当しないと解するのが相当である。地方自治
法二四二条の二第一項四号所定の「当該職員」に対する損害賠償請求又は不当利得
返還請求に係る訴えは、普通地方公共団体が「当該職員」に対して有する実体法上
の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を住民が代位行使する形式によるもので
あり、右各請求権は民法又は地方自治法二四三条の二第一項に基づくものである。
最初の訴えの提起により従前の被告に対する右の実体法上の請求権について裁判上
の請求としての時効中断の効力が生ずることはいうまでもないが、時効中断の効力
は中断行為の当事者及びその承継人に対してのみ及ぶものであり(民法一四八条)、
行政事件訴訟法一五条三項は、特に出訴期間の遵守に限って新たな被告に対する訴
えを最初に訴えを提起した時に提起したものとみなす旨を規定したものであって、
民法一四八条の前記の原則を修正した規定であると解することはできず、他に右の
原則を修正したと解し得る実体法上の規定を見いだすこともできない。また、従前
の被告に対する右の実体法上の請求権と新たな被告に対する右の実体法上の請求権
について連帯債務に関する民法四三四条の規定を適用することもできないものとい
うべきである。
 二 これを本件についてみると、本件被告変更許可決定による新たな被告である
上告人A4、同A5及び同A6に対する実体法上の請求権は、地方自治法二四三条
の二第一項に基づく損害賠償請求権であるから、同法二三六条一項により、権利を
行使し得る時より五年間これを行わないときは、時効により消滅するところ、原審
の適法に確定したところによれば、右上告人らに係る前記の各公金の支出は、いず
れも、昭和六一年一二月一七日までに行われたものであり、他方、被上告人らが本
件被告変更許可決定に係る被告変更の申立てをしたのは平成六年一月二六日である
というのであるから、右上告人らに対する右各損害賠償請求権は、右被告変更の申
立てがされた時点において、既に時効により消滅していたことが明らかである。
 三 右と異なり、上告人A4、同A5及び同A6に対する各損害賠償請求権につ
いて最初の訴えの提起により時効中断の効力が生じていたとして、右上告人らに対
する被上告人らの各予備的請求をいずれも認容すべきものとした原審の判断は、法
令の解釈適用を誤ったものといわざるを得ず、右違法が判決に影響を及ぼすことは
明らかであるから、論旨は理由があり、その余の点について判断するまでもなく、
原判決中右上告人らに対する各予備的請求に関する部分は破棄を免れない。そして、
以上によれば、右部分につき、第一審判決を取り消して、右上告人らに対する各予
備的請求をいずれも棄却すべきである。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小野幹雄 裁判官 遠藤光男 裁判官 藤井正雄 裁判官 大出
峻郎)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛