弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人川添賢治、同籔下吟次郎の上告理由(上告状記載の上告理由及び訂正
のため別に提出した上告理由を含む)について。
 (一) 論旨第一点について。
 所論は、本件争議が、もつぱら、D、E等に対しなされた依願退社の慫慂の撤回
を目的としてなされたものであることを前提として、右争議は団体交渉の目的とな
らない事項を目的とする違法争議であるのに、原審がこれと反対の見解をとつたこ
とは、憲法二八条により保障された勤労者の権利を誤解したことに基くものであつ
て、憲法に違反するというに帰する。
 しかし、原審の認定するところによれば、F労組と上告人会社との間に、雇傭条
件、昇進、解雇等一般的人事事項に関する労働協約が締結されていない状況下にあ
つて、組合側は、右両名の解雇処分に付された理由、手続に不安を覚え、将来にお
いて組合員に対しても同様の事態の発生することを懸念し、組合員の利益を守るた
め、人事機構の確立を要求して闘争すべきであるとし、かつまた、組合員たる平社
員も累進して、他日は上告人会社の経宮補助者として非組合員たる地位に立つこと
を慮り、非組合員たる右両名の解雇問題を、ひとり組合員の問題であるのみならず、
従業員一般の立場において捉えて考え、右解雇反対闘争をしたというのである。右
認定によれば、本件争議は、所論のように、もつぱら、D、E両名の解雇の取消乃
至依願退社の慫慂の撤回のみを目的として行われたものではなく、かえつて、組合
が本件争議において両名の解雇の取消を要求したのは、公正な人事機構の確立を要
求することにより、組合員その他従業員の労働条件の改善乃至その経済的地位の向
上を図るための手段として、もしくはそのための要求の一環としてこれを争議目的
の一つに加えたものであることは明らかである。所論は、原判決の認めない事実を
前提として違憲を云為するに帰し、採用の限りでない。
 (二) 論旨第二点について。
 論旨は、本件争議行為はいわゆる抜打争議であつて違法な争議行為であるのに原
審がこれを適法な争議行為と解したことは、憲法二八条に規定する勤労者の権利を
誤解したことに基くものであつて憲法に違反する、というに帰する。
 しかし、原審の認定するところによれば、F労組は昭和三元年七月二日上告人会
社に対し、G、E両名の解雇撤回を申し入れ、翌三日この要求事項につき団体交渉
を行つたが上告人会社がこれを拒絶したので争議行為を開始したというのであつて、
両名の解雇撤回要求が争議行為開始後になされた旨を云為する論旨は、原審の認め
ない事実関係を前提とするものである。また、原審の認定する事情の下で、初めの
団体交渉における解雇撤回の要求と後に争議において要求事項として掲げられた人
事機構の確立の要求とは、基礎を同じくし密接な関連を有するものであつて、かよ
うな場合に、初めの団体交渉において明確に人事機構の確立の要求を掲げていなか
つたということだけで、直ちに、本件争議をもつていわゆる抜打争議に当るといい
得るものではない。
 所論は、原審の認めない事実関係を基礎として本件の場合がいわゆる抜打争議の
場合に当るとし、これを前提として違憲を云為するものであつて、採用の限りでな
い。
 (三) 論旨第三点について。
 論旨は、所論の争議行為は財産権乃至人格権に対する侵害として本来違法な行為
であるのに、原審がこれを適法なものとし或いは解雇の理由とならないものとした
のは、憲法二八条の勤労者の権利が二九条の財産権、一三条の人格権よりも優位に
あると誤解したことに基くものであつて憲法に違反する、というに帰する。
 しかし、原審は、本件争議行為の大部分は、それが争議状態の下で行われたもの
であることにかんがみれば、直ちに財産乃至人格権に対する侵害として違法視さる
べきものでなく、また、一部の行為は違法であるが解雇乃至懲戒解雇の理由に当ら
ないとしたものである。右判断の当否はともかく、ことは単なる法令解釈の問題に
過ぎない。論旨は名を違憲に藉りて実は単なる法令違反を主張するに外ならないか
ら採用できない。
 (四) 論旨第四点について。
 所論は、原審の引用する第一審の判決が本件解雇をもつて解雇権の濫用に当ると
したこと、及び原審判決が本件解雇を懲戒解雇とした上でこれを無効としたことは、
原審が財産権乃至企業経営権よりも動労者の権利が優位にあると誤解したことに基
くものであつて憲法に違反する、というに帰する。
 しかし、この点に関する原審の判断の当否はともかく、これまた単なる法令違反
があるか否かの問題に過ぎない。論旨は単なる法令違反を非難するに、語を憲法違
反に藉るものに外ならないから採用できない。
 よつて、民訴四〇九条ノ三、四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一
致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    河   村   又   介
            裁判官    島           保
            裁判官    垂   水   克   己
            裁判官    高   橋       潔
            裁判官    石   坂   修   一

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